この庭(埼玉県南部)では、5月下旬から6月中旬がラベンダーの季節になります。
(ラベンダーで有名な北海道の富良野では7月中旬から下旬が見ごろです。)
ラベンダーには、いくつか品種があり、現在も新しい品種が作られていますが、
富良野でラベンダー畑を見たのが栽培のきっかけなので、
富良野のファームから買った品種をメインに育てていて、
その後、富良野の品種以外のものも入手しました。
当初、品種を増やすと、愛情が分散して、それぞれの品種への愛情が薄れるのでは
ないかと思い、初めに買った早咲き3号だけにするつもりでしたが、
結局、品種が増えてしまったのですが、その後、増えた品種のいくつかは枯れてしまい、
残っているのは、早咲き3号、ようてい、はなもいわ になっています。
なお、下記品種名の( )内の号は、品種につけられた別名のようなものです。
香料を採るための優良品種選抜試験の際の系統名の後側の数字をつけたものではないかと思います。<- 推測です。
ようてい は1号である というのが多数派になっているようですが、ここでは
”わたしのラベンダー物語”新潮文庫版 149ページの記述に基づいて、ようていを3号としています。
このほうが、選抜試験の系統名から付けられたという(推測)関係がすっきりするように思います。
(ようていを1号にすると、選抜された順に2号はおかむらさきになるのが自然かと思います。)
ようていが1号とされているのは、富良野の生産者が呼んでいるのを言っているものではないかと思われます。
品種を示す号については、参考論文を元にさらに後述します。
濃紫早咲きは”のうしはやざき”と読みます。
略して早咲き3号、または濃紫3号と呼ばれることがあります。以前は早咲き3号と呼ばれることが多かったのですが、
最近は濃紫3号と呼ばれているのを見かけるようになっています。
濃紫早咲きと呼ばれたり、品種名ではなく愛称として こいむらさき と呼んでいるところもあります。
つぼみのころから美しい紫色になるので、鑑賞期間を長く楽しめます。
香料を取るための優良品種からは外れましたが、鑑賞用に栽培されているそうです。
つぼみが丸っこいので愛らしいです。
一般には香が弱いと言われていますが、ラベンダーの香を楽しめると思います。
3号は品種名の一部で、おかむらさきの4号に当たる号は付けられていないと思います。
選抜試験系統名:早咲き2-3 ? かも。 想像ですが論拠はこちら
花人を迎えるファームから購入しました。
見た目がきれいで香もあります。
選抜試験系統名:早咲き1-3
丘の上にシンボルツリーがあるファームから購入しましたが、このファームは閉園されているかもしれません。
濃紫早咲き3号と並んで、富良野で広く栽培されていますが、
うちの庭では成長が遅い感じがするので、
関東ではむずかしいのかもしれません。枯れました。
茎がまっすぐ成長せず、曲がりやすいです。
選抜試験系統名:遅咲き1-4
ややピンクがかった花が咲きます。
この写真のバックの紫色は、早咲き3号です。
おかむらさきより遅咲きと言われていますが、
うちの庭では、おかむらさきより早く開花が始まるようです。
花穂の花の部分が短く、花数が少ない(株が小さいときだけかも)ですが、とてもよい香がします。
選抜試験系統名:中咲き2-2
花人を迎えるファームから購入しましたが、この品種は通常は販売されていないようです。
つぼみの状態です。
右 : 早咲き3号 つぼみは丸っこくて、色が濃いです。
中央: ようてい つぼみは細長くて色づいています。つぼみは赤味が強いと説明しているところがありますが、ここのようていはそうでもない気がします。
左 : はなもいわ つぼみは細長くて白っぽいです。このあと、つぼみの先端側は少し色が濃くなります。
開花した状態です。
早咲き3号とようていは、上のつぼみの状態から2日くらいで開花しましたが、はなもいわは一週間後にやっと開花しました。
なお、開花状態のよいものを選んでいるので、早咲き3号とようていは上のつぼみと同一の花ではありません。
枯れました。
枯れました。
早咲き3号より早く開花すると言われていますが、
うちの庭では、遅咲きのようです。
枯れました。
早咲き3号の由来ははっきりしないとされていますが、香料を取るための優良品種から外れたと言われているので、
選抜試験のときには存在していたことが想定され、3という数字が何かから引き継がれたと考えると、
選抜試験の系統名が考えられ、10系統の中の早咲き種では、早咲き1-3と早咲き2-3の可能性があり、
早咲き1-3は ようてい になったので、早咲き2-3が 早咲き3号 になったのではないか、と思うわけです。
なお、上富良野では早咲き3号を早咲き2-3と呼ぶことがあるらしいです。
とはいえ、長いこと、早咲き3号の由来ははっきりしないとされてきたので、
これから新事実や文書等の記録が発見されて由来がはっきりするとも考えにくいです。
由来が謎めいていることも早咲き3号の魅力のひとつかもしれません。
を見つけました。
日本食品化学学会誌、Vol.18(3),174-182(2011)
ラベンダー花の揮発性成分の分析1 北海道産ラベンダーの形態的同定と香気成分の品種、場所、時間による変動
この論文中、富良野地方で栽培されている主な品種として、3号ようてい、4号おかむらさき、2号はなもいわ、 濃紫早咲き3号 がある。
との記述があります。
さらに、4号おかむらさき(標準種)とは別に、1号おかむらさき といわれている品種があるそうです。
ところが、品種につけられた号とは別に、富良野の地元での略称があり、
1号おかむらさき -> ラベンダー1号
2号はなもいわ -> ラベンダー2号
濃紫早咲き3号 -> ラベンダー3号
4号おかむらさき -> ラベンダー4号
と呼ばれているそうです。
ラベンダー3号は ようてい ではなく、早咲き3号 になっています。
この地元とはラベンダーの採取場所から推測すると、南富良野町または中富良野町である可能性があります。
ようていを栽培しているかどうかはさだかではありませんが、早咲き3号をラベンダー3号と呼んだほうが都合がいいのだと思います。
というか、誤解が起きにくく、受け入れられやすいように思います。
1号おかむらさきを栽培していないところでは、早咲き3号を3号にしたので、ようていを1号と呼ぼう、
ということになったかもしれません。 <- 勝手な想像です。
ラベンダーの号については、選抜試験の系統名からつけたと思われる号と、地元生産者が呼んでいる号で、一部違いがある。ということになりそうです。
ようていが3号と言われる場合と、1号と言われる場合があるのは、こんないきさつがあってのことではないかと思います。
富良野(の一部?)では既成事実になっているとしても、富良野以外のラベンダー園で、早咲き3号を ”3号”、ようていを”1号”と呼ぶことには、
違和感を感じるので、無理して何号かを書かなくていいように思います。
(論文の記述に想像を加えており、正確さに欠けるかもしれません。)
参考資料:
北海道立総合研究機構 農業研究本部 花・野菜技術センター のサイト内にある
・ラベンダー「ようてい」及び「おかむらさき」に関する試験成績、
・ラベンダー「中咲2−2」に関する試験成績(新品種名「はなもいわ」)
これらの資料によれば、10系統の候補から ようてい、おかむらさき が昭和39年に選抜され、
残った8候補から はなもいわ が昭和42年に選抜された という歴史がうかがえます。
はなもいわの資料には、10系統の成績一覧表が記されています。
・わたしのラベンダー物語 富田忠雄著 新潮文庫版 絶版らしいです。これからラベンダーに出会う人だっているでしょうに、これが絶版だなんて...。
・日本食品化学学会誌、Vol.18(3),174-182(2011)
ラベンダー花の揮発性成分の分析1 北海道産ラベンダーの形態的同定と香気成分の品種、場所、時間による変動
著者:大井和裕、義平邦利、荒木和美、落合爲一、中野昭夫、佐竹元吉、岩渕久克
改訂の記録:
2016年6月
ホームページ開設から18年が経過しましたが、調べものをしていて、ラベンダーの選抜試験成績という貴重な資料が公開され、
選抜試験系統名について書かれているのを見つけ、その内容を加味して、説明を加えました。
2016年7月
ラベンダーの号についての記述がある論文を見つけ、ようていが1号と言われるに至った経緯の可能性があるように思い、説明を加えました。
2017年5月
はなもいわのつぼみが例年より早く上がったので、早咲き3号、ようていと並べた写真を加えました。
並べて撮ることの狙いは、同じ光の状態で色を見比べることにあります。