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MARION MSR2 (1994)
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1990年代の analog synthesizerとして登場したMSR-2は、 本体 Mainframe と、音源boardとしての analog synth moduleで構成された 大変ユニークな発想の synthesizer systemで、最大2枚の音源 boardを 本体スロットに搭載できる仕様となっています。

音源 boardは analog synthに限定されたものでなく、拡張 board扱いですの で、メインフレームの規格にあいさいすれば 別の音源boardにさしかえたりす ることができるという先進的な設計です。

本体 mainframeは、LCD、SW、volume等の user interface部、 音源boardの program memoryの管理転送(MSR-2では音源boardは program memory機能 を持たず、本体が sound edit softとして機能する)、電源、MIDI-I/F、mixer equalizer、2基のslotで構成されており、音源は mainframe内の slotに音源 boardを取り付けるという形となります。

異なる音源に対しても同じユーザーインターフェイスを用いることがで きます。 標準装備されている音源boardは ASM(analog synthesizer module)です。 結局、ASM以外の音源boardは発売されませんでした。  ASMには8っの外部入力端子があり8CH分のAUDIO信号をVCF,VCAで加工できます。

試作段階ではXpander Likeな6っのつまみを持ちMSR2より大型の 液晶パネルを持つ2U typeが楽器フェアで陳列されていました。 

80年代後期の X pander、 matrix6等の synthの仕様をベースとして、90年代の技術 を用いて oscillatorに high resolution oscillatorなるものを使用し、 analog部にはOn Chip Systems (旧Curtis社)の特注 chip MS1215なるものが使用されて います。

機能、hard design的には設計者の描く理想のanalog synth(70..80年代ではなし得なか った)に仕上がっているような気がし、好感が持てるものになっています。 

このASM(analog synthesizer module)は matrix6のDCO部をグレードアップした synthと考えればあたらずも遠からず。 matrix6には timerICである8254が使われて いましたが、synthの oscillatorとして使う分には分解能不足であったわけです。  そのため Master clockを VCO化したりという、analog 的なテクニックも加味して 分解能不足をおぎなっていたわけですが。

設計者としてはその部分がはがゆかったのでしょう。 HROでは単独で十分な 分解能が得られかつ、softwareにより HROを自由にmodulationできるようになった のでしょう。

個人的な感想としては、この精度の高いoscillatorが出てくる音としてはわざわい しているように思います。 すなわち全く色気のない発振器になっているという 印象を受けます。 8254のDCOよりさらにそっけないというか、手持ちのVA synth であるALESIS IONの発振器の方がつやがあります。

MSR2の内部写真を見るとわかるのですが、 hardwareとしてはかなりしっかりした 内容になっていると思います。 元々 oberheimの synthというのは基板がしっかり とした作りになっているのですが MSR2もそれを継承しています。  しかしこのMSR2、商品としてトータルで見てみると?と思えるところがいくつも あるのです。 たとえば 上下のふたがあまりにも柔なアルミでできている とか、シルク印刷があまく簡単に印刷が取れてしまうとか。 またマニュアル があまりにもゾンザイで hardの志の高さに見合わない、メーカサイドの思い入れ が感じられない点とかなぜかちぐはぐです。

またsoftwareにも問題があったようで、販売後1年後くらいしてから、OSの修正が あり、ユーザには修正されたROMが送られてきました。  よい資質を持っているが完成度が悪いsynthという印象です。 

このMSR2 プロトタイプの初期のものが1991年の楽器フェアで登場しました。  その時は上記のように 2U versionも発表されかなり意欲的なプロジェクトに 思えたもですが、その後なかなか発売のめどがたたず、1993年の楽器フェアにも 改訂版が登場していたもののまだその時点では販売されずようやく1994年中に 販売のはこびとなったというしりつぼみな状況も上記のような完成度の悪さ の原因なのでしょうか。 同時期にもうひとつのoberheim synth OBMXが登場 しているのですがこの機種もMSR2と同様 1991年に楽器フェアーでプロトタイプ が登場し、1993年に改訂版が登場、販売のめどが立たずようやく1994年に販売 の運びとなるという同様の経過をたどってしまいました。


* プロトタイプのOBMX(1991年version)


ただ個人的にはこの時代、紆余曲折を経てなんとか完成にこぎつけたsynthであって PCM synth全盛時に 90年代のanalog synthを発表してくれたことに敬意を表し 、発売されてすぐに購入ました。(約15万円くらいでした。) 発売から15年が経過し、 sound的にはあまり魅力的でないものも手放す気にはなれないsynthです。






* 全体  ASMを抜いた状態。
非常に魅力的な設計だと思います。



* mainframe (表と裏)
表は CPU関連、裏は電源とaudio出力関連。



* mainframe (拡大 電源は D5V, A-5,+5,-12,+12V)
外部電源から+12/12Vが来ているので内部でA-5/+5を作っている。



* ASM基板(D-sub conectorはVCF sig in *8用 )



* 電源UNIT SW電源です。 +5V/+12V/-12V出力
+12/-12V出力は出力段がanalogの3端子Reg.のようです。


   
* Program  Global/Layer  SuperPatch *

* PROGRAM PARAMETER *

HRO-1 Freq
Sync (off/soft/med/hard)
Wave (off/pulse/wave/both)
Shape (RAMP波)
Freq Mod. LFO1
PW Mod. LFO2
HRO-2 Freq
Detune
Wave (off/pulse/wave/both)
Shape (RAMP波)
Freq Mod. LFO1
PW Mod. LFO2
MIX HRO-1&2 Mix
Exit Sig. noise/Ext
Amount
VCF Freq.
Pole (2/4)
Resonance
Freq Mod. ENV
Freq Mod. Pres
Freq Mod. LFO2
Freq Mod. Note (off/1/4/1/2/full)
VCF Envelope Attack
Decay
Sustain
Release
Delay
Hold
Env amplitude
velocity
Trigger (note/ped1/2/3/LFO1)
Trig Mode (single/multi)
FM (filter FM) Amount
Gen. ENV
Press.
VCA Env.
Pan.
VCA MIDI
Pan MIDI
VCA Envelope Attack
Decay
Sustain
Release
Delay
Hold
Env amplitude
velocity
Trigger (note/ped1/2/3/LFO1)
Trig Mode (single/multi)
General Purpose EG Attack
Decay
Sustain
Release
Delay
Hold
Env amplitude
velocity
Trigger (note/ped1/2/3/LFO1)
Trig Mode (single/multi)
LFO-1/2 Wave (sine/tri/up saw/down saw/squ/random/sample)
Rate
Amp
Rate mod. by Pres.
Amp mod. by ramp1
Trigger src ()
Retrig point
Trigger mode
delay
sample src()
RAMP Gen. 1/2 Trigger src()
trigger Mode (single /multi)
Amp
Rate
Voice Allocation mode (Dynamic/Reassign/Rotate/
reassignRob /Rotate Rob / monophonic/
unizon2 /unizon4)
Mono Play priority()
Sustain Sustain Ctrl.()
Portament Rate
Mode (fixed/variable/expo.)
velocity modulation
legate ()
velocity/Tunning
MIDI setting
Modulation Buss 1..10 mod. src
dst.
amount
ASM -SYSTEM transpose
transpose MIDI ch
fine tune
Vibrato wave
Vibrato rate
Vibrato Amp
Vibrato mod. by press
Vibrato Amp mod by CTRL1
MIDI ch
MIDI mode
MIDI Enable
Receive patch change
ASM overflow
Gloval velocity / Tunning
MIDI controller Assign 1/2/3/4/5
MIDI controller Assign Pedeal1/2/3
Patch map enable
Patch map programming
User Tunning
User velocity Curve
Auto Tune (wave/filter/all)
MAIN FRAME - SYSTEM Mixer
Graphic EQ.
MIDI controll
Superpatch
Module MIDI controll
Display View angle

* matrix modulatin source
OFF
VCA EG.
VCF EG.
Gen. EG.
LFO 1 / 2
Vibrato
Ramp 1 / 2
Note
Voice No
Random
velocity
Reverse velocity
Pressure
Bend
MIDI CTRL 1 / 2 / 3 / 4 / 5
Pedal 1 / 2 / 3

* matrix modulatin destination
HRO 1 Freq.
HRO 1 PW.
HRO 1 Shape
HRO 2 Freq.
HRO 2 PW.
HRO 2 Shape
HRO Mix
VCF FM
VCF Freq.
VCF Reso.
VCA Vol.
Pan
VCA EG dly/atk/dcy/rel/amp
VCF EG dly/atk/dcy/rel/amp
Gen. EG dly/atk/dcy/rel/amp
LFO 1 speed
LFO 1 amp
LFO 2 speed
LFO 2 amp
Portament rate
Ext amount



・回路
Oscillator (On Chip Systems) HRO MS1225
wave shaper/VCF/VCA? (On Chip Systems) MS1215*8
finalVCA? (On Chip Systems) PA381 dual VCA*4
7band EQ (NS) LMC835
S/H (On Chip Systems) PD508 8ch S&H *8
EG soft
LFO soft
CV D/A AD669
CPU 68000 *2 (mainframe/synth)



* MSR-2 ASM(Analog Synthesizer Module)構成


* Oscillator (HRO)


HROを1Voiceあたり2基搭載しています。  pitch指定範囲はFREQというparameterで半音単位で-99から+99まで指定可能。 0で 通常の8'、最大16octaveの指定が可能ということになります。   実際に発音できる範囲は最低 pitchが19.4Hz、最高音は parameterで+67(12KHzくらい) となります。 またDetuneは 半音の 1/256の解像度で-99から+99まで指定可能という高解像度です。 

波形は Wave(ramp波),Pulse波を持っており、Shapeと Widthによりバリエーションが得られ Pulse波はPWMが可能、Wave波も matrix modulationにより modulate可能という Oberheim Matrix6的な仕様となっています。

syncは Soft、Med、Hardの3段階の typeを選択できます。

defaultの modulatorは FMがLFO1、PWMがLFO2となっています。



* VCF


VCFは90年代の Curtis VCFといったところの On Chip Systems MS1215が使われています。 このchipは Matrix6の chipと同様、wave shaperも内蔵したchipだと思われます。 Filterの仕様は 2/4Poleの切り替えが可能な Oberheim OB-8 typeとなっており、 resonanceの効きも良好です。  2pole時は OB-8と同様 resonanceの効きが制限されます。  audio入力は HRO、NOISEの他に各 Voiceごとに外部入力が可能となっています。 (D-sub端子から 最大8個の独立した外部信号を入力可)

default modulatorはVCF ENV、Pressure、LFO2、Noteとなり、resonance、 audio Mixerも matrix modulationを使えば modulation可能です。

resonanceは 4Pole時は発振可能なので発振させ、 HRO2による Filter FMに 利用できます。



* VCA


MS1215に内蔵された?VCA sectionが使われていると思われます(未確認)、 専用 VCA EGと PAN指定が可能、その他のdefault modulationは MIDIによる pan & volume modとなります。

このMS1215のあとに PA381 VCA chipが 付いています。



* EG


VCF、 VCA専用 EGの他に汎用EG(GP EG)が搭載されており、 parameterは Delay、Attack、Hold、 Decay、 Sustain、 Releaseがあり Oberheim Matrixシリーズタイプの EGに Holdが追加された形となっています。  default modulationは Velocityで EGの AMPを modulateします。

EG triggerは single/multiの切り替えができ、 Trigger sourceを選択できます。



* LFO


voiceあたり 2基の LFOと、 General LFOとしての Vibrato LFOが搭載されています。  これも Oberheim Matrixシリーズを継承しています。  Waveは7種類でこの中には sample & Holdも含みます。

default modulatorは Pressureと、 RAMP Gen.でそれぞれ rate、ampを modulateします。



* Other


Oberheim Matrixシリーズと同様のRamp generatorを2基搭載しています。  Ramp gen.は 起動開始triggerを単に KBD triggerからだけでなくいろいろ選択可能です。

Voice Allocation modeもOberheim Matrixシリーズと同様多種の modeを持っており、 さらに unison2、 unison4という modeがあります。  この modeは単音 modeということではなく1音に対して2、4 voice moduleが unisonで 機能するという通常のunison modeよりも現実性が考えられた modeとなっています。  この場合最大同時発音数はそれぞれ 4音、2音になります。

portamentは fixed、 variable、 exponentialの 3 typeが用意されており、 legato portamentが可能です。

Voice layerは最大4voiceまで可能です。

電源は switching電源で外付けで digital +5V, analog +/-5V, +/-12Vです。



* Matrix modulation


Oberheim Matrixシリーズと同様な matrix modulationを備えており、 各 modulation先に対しての modulation数の制限をするtypeでなく、 patch cordの数が最大10本という範囲内で自由にpatchが可能です。


* Mainframe


Mainframeは最大 2個の音源 boardを管理し、 2CHの MIDI I/Fを装備しており 各 音源 boardに MIDI信号や、user interfaceから入力された program NOの指定 や parameter edit情報を各音源 boardに送ったり、さらに 音色のpatch の bulk dataを音源 boardに送る機能、音源 board及び 外部 audio入力のMixing、Equalizer 機能、2個の音源 boardに対してのコンビネーションを記憶できる super patchを備えて います。

MSR-2の各音源 boardにはpatchを記憶する機能はなく、音色 dataは mainframeが管理 する為、 MSR-2を電源 ONすると patchの bulk dataが Mainframeから各 音源 boardに 送られます。


* System Exclusive *

資料は公開されていないので、独自解析してみました。

後日ネットでTom Oberheimから提供されたOriginalの System Exclusive Data 表を 掲載しているサイトを発見しました。 上記のparameter changeは合っているようです。


K.T
<2009/12/28 rev1>