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  私的Analog synthの歴史 (KIT,DIY編)
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70年代の synth 工作、 KITなど

ここ10年ほどで(09年現在) ネット上で入手できるメーカー製の昔の analog synthのhard情報 (service manual, schematicsなど海外発)は出きった感があります。 よほど特殊な機種ではない限りは メーカ製のanalog synth回路図をだれでもが容易におがめる時代になりました。 私などは1980年代前半から回路図を集め始め、ネットが利用できるようになった1994年から1997年ごろまではservice manualを販売している業者からほしい機種のmanualを入手したりしていましたが、それ以降はネットでかなり収集できるようになりました。 どのような手段にしろあこがれのsynthの回路に遭遇するとうれしくなります。

一方、もうひとつのanalog synth文化であった雑誌の製作記事とか、synth KITの情報についてですが、 海外物のKITや製作記事に関しては自分が過去に収集していた情報( PAIA, Keyboard誌, Digisound関連、ETI4600 )以上の物をネット上で収集することはでき、メーカの回路図以上にうれしくなることもあります。 国内物に関しては山下シンセやWave KITの情報ぐらいしかなくちょっとさびしい気がします。

ネットで得た情報と自前の資料を元に国内外の連載記事の一部(Modular主体)を表にしてみました。    * 連載記事一覧

上の表を見るとすでに1973年には本格的なSynth DIY記事が海外の雑誌では連載されていたということです。 WAVEKITが75年、電子展望の連載が76年ですから国内物との間には3年程度のDelayがあります。 海外の記事などを参考にしていたのでしょうか。 ヨーロッパのsynth DIY記事の充実が目立ちます。 ヨーロッパの雑誌ではKIT化を前提にしたものの記事や基板サービスが充実しているようでDIYに対する敷居が国内物より低くなっているような気がします。

ネットで得た情報と自前の資料を元に70/80年代のSYNTH工作の雑誌掲載記事の一部も表にまとめてみました。  * 雑誌記事一覧

パーツを販売している会社が雑誌も出版していると言うケースもある為、KITを前提とした記事というか、KITを雑誌で紹介すると言うような構造となっているようで国内と比べるとだいぶ状況が異なるような気がします。 それにしても毎号、毎号、基板付きの製作記事があったというのはうらやましい状況だったのだと思います。

DIY synthにおいても国によってパネルデザインのセンスが違うのが面白い所です。 あとはModularの場合、modulation入力等のpotをMOOGのように極力避けるか、ARPのようにmodule側にいくつも設けるか、EMSのようにmoduleの出力側にattenuator用のpotを設けて、入力側は極力設けないとか、製作記事によって色々なパターンがやはりあることが設計思想の違いがあって面白いところでしょう。

 *  Wireless World Modular (UK 1973) 
 *  ONDA QUADRA/SELEZIONE RADIO Modular (ITALY 1978) 

DIY Modular synthの製作記事はヨーロッパ系の雑誌に多く掲載されています。 USAは意外と少なく 調べてた限りではPAIAのみそれも一部のModuleを紹介しているだけです。(PAIA 2700の記事)  もしかすると国内のDIY Modularの記事が一番多いのかも知れません。


ヨーロッパ系の雑誌は関連がよくわからないのですが UKについて整理してみると、E&MMはmaplin 発行の雑誌。 Maplin は Maplin Electronicsと言ってElectronics部品のsupplier。 electronic and beyondや Maplin MagazineさらにはHome & Studio Recording と言う雑誌も発行していた。 Practical ElectronicsもUKの雑誌。 1971年にEveryday Electronicsと名称変更となり、途中で出版元がWimborne Publishingに変わって Everyday with Practical Electronics となり EPEは現在でも健在。 ETIは Australiaが発祥の雑誌。 1999年にWimborne Publishingに吸収され雑誌はEPEに統合される。 ElektorはNetherlands(オランダ)が発祥の雑誌で1975年からヨーロッパ各国に流通され現在でも健在。

ETI 3600/4600と言うsynth KITは Fairlight CMIの設計者が過去に発表した synthなのですが、雑誌 ETIは元々Australiaの雑誌と言うことで関連があったと言うことなのでしょう。 ちなみに3600/4600はMaplinからKITとして発売されていたようです。

ここ数年で特にUK(EURO)の電子工作雑誌の内容を知る機会が増えるにつれてSynth DIY関係の記事がとても充実しているとあらためて感じます。 上記の一覧表は実際に見ることができた記事についてのみ表記しているので実際はさらに多くの見たことが無い記事が多く存在していたわけです。


国内のsynth KIT

1970年代の国内のKIT関連というとWave KIT, 伸光, PAX electronicaなどがあるのですが、ネットで得られる情報はおおよそ WAVE KITの micro wave synthsizerのみです。 Wave KITはそこそこ売れたということでしょう。 なかなかメーカ製のsynthのように中古市場が存在するわけでもなく、またそれらを現在も所有している人はわずかでしょう。 それらの情報を発信する人はさらにわずかです。 ただわずかでもこれらの情報をネットで発見すると妙にうれしくなってしまいます。  海外では昔の珍しいKITなどもよく紹介されていますが国内では皆無に近い状態なのが残念。

今からこれらのハードを手にいれることはほぼ不可能でしょう。 それならせめてこれらの広告記事だけでも手にいれられないかと70年代後半のトランジスタ技術誌を以前から探していました。 目的は記事ではなく上記のように雑誌広告です。 最近(09年)やっと念願の78年のトラ技を数冊入手しました。 予想通り、wave KIT、 pax electronica、伸光といったところの広告に遭遇、 なつかしさを覚えます。 これらが存在したこと自体知っている人も今では少ないのでしょう。 一方、1978年というとメーカー製ではROLAND SYSTEM100MやKORG MSシリーズが発売された年でこれらの機種は現在でもよく知 られています。 ネットでは現在進行形のsynth DIYの情報は多々得られますのでここ では、当時のsynth文化の一端でもあった国内の70年代のsynth工作、KITなどの歴史を 今回得た広告記事やあまりネットで出回っていないような画像等を交えていくつか書いてみようと思います。

 ・1:WAVE KIT
 ・2:電波科学
 ・3:1975年ごろ
 ・4:PAX ELECTRONICA
 ・5:トラ技広告
 ・6:1978以降
 ・7:USA雑誌 / SSM/CEM IC
 ・8:80年代から90年台末期の analog synth / DIYなど
 ・9:70年代から90年代の海外のsynth KIT

* 1: WAVE KIT *


* SA12 Super Sound Synthesizer *

それは1975年の夏ごろでしょうか( 正確には覚えていないので確かではありませんが75年であることは確か)。 トランジスタ技術に WAVE KITという聞きなれない会社(正確にはWave corporation )の one board synthesizer KITの宣伝が掲載されました。

* もっとも初期のwave kit広告SuperSoundSynthesizer PAIAのGNOMEによく似た仕様。
* 読むだけでも楽しい広告とはまさしくそのとおりでした。
* PAIAのGNOMEは1975年11月のRadio-Electronicsに製作記事が掲載されたようです。


1975年は "Music synthesizer"というものがぼちぼち世間一般にも紹介され始めたという時期でもあります。  もちろんそれ以前、 1970年には Mini MOOGが 発売され、また国産synthも 1973年に KORG , ROLAND, Hill Woodが 一斉に 1号機 を発表し、1970年代初頭からsynthesizerはプログレッシブロックを 中心として使われ始めており、 1974年には冨田勲氏のレコードが発売されてはいるわけですが、情報としては単発的というかまとまった情報はなかなか得られるものではありませんでした。 ましてや電子回路に関する情報などしろうとが知るすべもないような状況だったと思います。

* 1970年代のメーカー製synthesizerの発売時期一覧 (一部)

海外ではUKの電子工作雑誌 P.E.誌で70年代初頭には本格的ORGAN/E.PIANO、1973年には synthsizerの製作記事が登場していました。 これがおそらく最も早い時期に連載が開始された本格的な synth DIY記事です。 また同誌では1971年3月号にVCS3さらに11月号には早くもAKSの広告が登場していますので synth DIY連載の下地はあったということでしょうか。

* EMS VCS3の広告 (1971/03 P.E)
* EMS AKSの広告 (1971/11 P.E)


米のKeyboard誌(contemporary KEYBOARD)の創刊が1975年。 ちなみに日本のKeyboard Magazinの創刊が1979年、ロッキンfが1976年7月。

この1975年という年は FM東京のThe musicという音楽番組(HOSTは福田周叶氏だったと思う)が始まった年だったと思います。 この番組では synthの話題がよく出ていました。 翌年始まったFM東京の音楽って何だ(深町純氏がHOSTの番組)でもシンセの話題は多くありました。1976年は、電気関係の雑誌でも synthの製作、synthの紹介記事の連載等が一斉に始まった年でした。 またこのころ音展(*1)でsynthesizerを多数使ったコンサートが開かれました。

*1:音響デザイナー協会主催のコンサートなど
音響デザイナー協会には当時有名な和田則彦氏なども在籍していました。
このコンサートでは バッハリヴォリューション、小久保隆氏、平沢進氏などの方々が出演しており、出たばかりの SYSTEM700を使用ていたのが印象的でした。

上記のKITは一般に知られているWaveKitの Micro Wave synthesizerではありません。 35年後(09年現在)の今見ればどうってことのない物ですが当時はえらく興奮したことを覚えていますし、そうであるからこそこのような広告を大事に保管しているわけです。 なぜか当時これは買いませんでした。(ネットでこの基板の写真を掲載しているサイトを発見しました。) Micro Wave synthesizer (SA13)の方はそれから数ヶ月して広告が出たように思います。 こちらの方は購入しました。

最も初期に購入したため有名なパネルやVR,つまみは付いておらずおまけのladder VCFも付いていないシンプルなBPFのバージョンでした。 さらには当時ハンダこてもほとんど使ったこともなく、電子回路もほとんど理解していない状態で、AC電源トランスを使った電子工作は初めての経験だったので作るのにはかなり苦労しました。 ただ回路が動いて始めてVCOのボツボツという発振音を聞いた時やNOISEの音を聞いた時は感激がありました。

なぜwavekitの初期VCFはBPFなのか?

記憶によると初期のWAVE KITのVCFはBPFです。(現在WAVE KITの回路図を所有していないので詳細は不明ですが) synthのメインVCFとしは最適ではないと思われるBPFを採用しているのは、2次以上のresonance可変の LPF VCFを実現するのがこのころはかなり面倒だった為だと思われます。 parameterが1個で Fcを可変するタイプのBPFであれば電圧制御素子が1個で済むしBPFなのでresonanceも可変できる。  1973年ごろからの初期のDIY synthは BPFのVCFがいくつもあり,transistor(FET) 1個で電圧制御の可変抵抗を簡易的に実現している物がいくつもあります。 上記の PAIA GNOMEもブリジッドT型のBPFで VCFのFc可変をFET 1個で実現しています。 (WaveKitも同様なBPFだと思います)

wavekitのsuper effectorというKITの回路図を掲載しているサイトがありそのVCFがおそらく上記のBPFと同タイプの物です。 さらには最近トランジスタ技術の 2016/04号のdrumsynthに使われているBP VCFもこれと同じ回路(*)でした。 やはりdrum synthあたりに使うのが適切なVCFでsynthのVCFとしては簡易すぎでしょう。 そんなこともあってWave KITのSA13も1977年ごろのversionからはdiode ladder VCFが追加されました。

*: BPFのFcに関わる抵抗をdiodeの動抵抗で置き換えたVCF。 CVの電圧-電流変換、温度補償にtransistorを2個使用。 CV入力と信号入力は同じ経路で重畳し、直流成分はBPFのCでcutされる方式。

このKITを作り始めた時はテスター(*1)しか持っていませんでしたが、トラブルが起きるとこれだけでは対応できなくなりオシロを買うことを決意。 といっても本格的なものを買うお金もないので最低価格のトリオの強制同期型のオシロCO1303Dを買ったのでした。 安いオシロといえど値段はこのWAVE KITと同程度。 ただ電気波形の状態を目で見られることの有用さを身にしみて感じました。

 *1: SANWAのU70Dと言うテスター。 今でも捨てずに保有しています。

上の表などを見ると海外では1973年ごろから雑誌に本格的なDIY modular synthが登場していますので海外情報を参考にしてその流れの中からWAVE KITのようなものが登場してきたのでしょう。 実際上記のWAVE KITの広告の中にも英文の技術資料の記事があります。


* これも Microwave初登場のものではなく、だいぶたってからだと思う。 (1976/10)
* これは76年ごろ77年の広告だと思います。(価格が23800円に値下げ)

上のカタログに載っている、専用パネル出現以前の自作ケースのMicroWavesynthesizerは秋葉のショールームに当時おいてありました。

上のカタログにもあるように当時はレーザリアムがちょっとしたブームだったように思います。 modular synthesizerを使った演奏会にはよくレーザー光線を使った映像演出が併用されていました。

* 新発見および訂正 *

上に書いているように長らくWAVE KITのsuper sound synthesizerの広告掲載時期は1975年夏ごろだと思っていたのですが実際は半年後くらいの1976年の頭くらい、Micro Wave synthesizerは5月ぐらいに思えてきました(要調査)。 そうであれば仕様がPAIAのGNOME に酷似しているのも納得できます。 確かMicro Wave synthesizerのKITを作っていた時は暑かったという記憶があります。 下の方で書いているように1975年のインパクトが大きかったので混同していたのでしょう。 なにぶん40年前の記憶なので不確かです...。(2015/09)

1975年の時点ではまだこのような広告です。----* WAVE KIT広告

上記広告、SVFを使ったオシレーターユニット、NOISEソースなど、次はsynth KITを発表しそうな気配が感じられます。


・ WAVE KITのトラ技広告掲載時期


* micro wave synthesizer(初期の筐体version)

その後の調査の結果SA12とSA13の広告がトラ技に初掲載された日付がわかりました。

 * SA12....(1976/03)
 * SA13....(1976/08)

SA12は電子展望の1976/03の製作記事が載った同じ月に登場したことになります。 SA13は1976年の8月号に掲載されていたので実際のトラ技の発売日は7月10日だと思います。 上に書いたようにSA13を作っていた時は夏で暑かった記憶があると書いていますがその通りで記憶は間違っていなかったようです。 おそらくこの号が出た後、速攻でこのKITを注文したのでしょう。

* SA12初登場広告

1976の3月号からwave kitの広告が1pageまるまる使った広告になりました。 その中にSA12の紹介があります。 初登場の広告では上のような地味な広告でその後に、Super Sound Synthesizer をフィーチャーした広告が登場しています。 おそらく当時この3月号の広告は見ていなかったように思われます。

* SA13初登場広告


* SA13のシルクでしょうか。

SA13は1976/08の登場です。 この記念すべき広告の記憶はかすかにあるような気がしますが、この記事はなぜか保管していませんでした。 SA13 Micro wave Synthesizer の初広告、今見ても結構インパクトのある広告だと思います。

と言うことで有名な WaveKItの Micro Wave Synthsizerは 1976年の7月に登場したというのが真実です。  よって上や下に書いている WaveKitが 1975年に登場したと書いてあるのは間違いでした。 wave kitのSA12が登場してから40年後になって正確な登場時期がわかりました。 このSA13は個人的にはanalog synthに接したルーツなので発売年がわかってすっきりしました。 銀メッキした鍵盤パターンが懐かしい。


・ SA13の回路概要

このサイトを見て下さったある方からマニュアルのコピーおよび基板画像をいただくことができました。  これまでは具体的な回路の内容も記憶の中にしかなく詳細はわからずでした。 このマニュアルを見ると40年前の記憶が蘇ってきます。 大雑把ではありますが以下にSA13の回路概要を示します。

SA13回路概要


当時は回路のこともほとんどわからず状態でsynthであることに感激しこのSA13を入手しました。今改めて回路を実用的なsynthと言う点で見るとアバウトな部分がいくつもあります。 このKITを実用的に使う為にはいくつもの改造が必要でしょう。 問題があるのを承知でこの回路でmoduleを作って見るのもよい勉強になると思います。

最後に、私の場合は WAVE KITというと上記の手作りパネルのSA13が思い出されますが一般的には下記のブラックアルミパネルの SA13の方が有名なのでしょう。



* 2: 電波科学 *

雑誌の電子工作記事としては1974年に電波科学にアマチュアの作った自作 synth (栗原信義氏)が掲載されました。


* 電波科学の記事 *


これは今思えば、一般のsynthesizerとはちょっと違った構成のいわば多機能の function generatorと呼べるようなものでした(心臓部は東洋電具のBA205)が当時は大変興奮しましたし、遠い存在の synthが少しは近い存在に感じられた感覚を感じました。

上記のように通常の VCO, VCF, VCAという構成ではなくいわゆるkeyboard楽器としての synthesizerではなかったです。 どちらかというとsound effect主体の機器というか。 当時はアマチュアにはあまりsynthesizerの資料は入手できなかったのかそれとも雑誌に記事を書くくらいの方なのである程度の資料は得ていたのかわかりませんが。 それにつけてもパネル、基板製作の見事な工作技術がすばらしいです。

私も当時 BA205のデーターシートを東洋電具に請求し、その後青焼きのデーターシートが送られてきました。 BA205はfunction generator用のVCOで、振幅変調も可能なICで、トーンバーストとかも出来ます。 この製作記事では BA205の後に差動増幅器タイプのVCAを配置したユニットを2台用いてVCA出力で相手のVCOにFM変調をかけたり、相手のVCAに対してAM変調をかけたりできるよううな構成になっています。 またVCAに対しては簡易EGがついています。 VCOに対しては簡易的な音階発生装置がついているという構成でMOOG typeのsynthというよりはBUCHLA typeを意識していたようにも改めて見ると思えます。

ICのBA205については1975年のトラ技でもこれを使ったFunction Genelatorの製作記事が掲載されています。

1974年というと国産のsynthesizerがぼとぼち出てきた時期で、近所の楽器店でもROLANDのSH1000などは見ることができましたが私としては外国のsynthは現物を見たことが無く、レコードのジャケットやNHKのヤングミュージックショーのVIDEOなどでMOOGやARPのsynthを見るだけでした。

リックウェイクマンのソロアルバム(1973)の内ジャケットの機材群の写真(MinMOOG)とか、冨田勲氏の月の光(1974)のLPの裏ジャケットのMOOG 3Pの写真などは特に印象的でした。 VIDEOだとPINK FLOYDのポンペィのLIVE(1972)の映像(EMS VCS3/AKS)。

1973年 NHK FM(*2)の春休み特番で、冨田勲氏が銀河TV小説で用いたSEの音をMOOG modularで再現するという番組があり、この番組で analog synthsizerの基本原理少し理解したように思います。

海外に遅れること数年でそれを踏襲した国産synthがこの時点で存在しているわけですが、上記の製作記事を見てもanalog synthを特徴づけるVCFやportamentといった機能はありません。 さらにはantilog AMPもありません。 まだまだ一般にはsynthesizerの中身は未知数だったといったところでしょうか。

普通のsynthと比べるとかなり違和感はあります。 製作記事の中で、この機材は音響デザイナー協会のN氏から依頼を受けて製作したとあるのでその方の意向もあってこの形になっているのかも知れません。

上のwavekitでも初期versionのVCFは単純なBPFであったわけで、VCO,VCA,EGなどは既存の回路等が参考になってもVCFというちょっと特殊な回路はこの当時メーカーサイドでも多様性はないという事実もあるわけで、この部分がこの当時synthをDIYする上で難しい部分であったのではないかと思います。  実際、1975年ぐらいまでの海外の製作記事においてもVCFはまともなものがほとんどなくあってもdiode ladder VCF。 VCFに使う電圧制御素子に適当なものが無かった、有用なアイデアが無かったということでしょうか。 Transistor ladderは特許の関係で使いにくい?。

1974年以前、メーカーが採用していたVCFの方式は MOOGのtransistor ladder,その特許逃れとも言われる diode ladderが多くその他としてはSTEINER-PARKER独自のVCF、KORG独自のdiode ring VCF(*1) (どちらも正帰還型のsallen & Key)、ARPのNorton amp使用のVCFなど種類は限られていました。 それ以降になるとCA3080と言うOTAのICが一般化してくるのでOTAを使用した物が続々登場してきます。 雑誌のDIY synthのVCFでユニークなのはWireless Worldの 1495を使用したVCF,ETI4600のanalog SWを使ったSVFなどがあげられます。

*1: YAMAHAもこの時期はKORGと同様のdiode ring filterを使っていたと思います。 ROLANDはdiodeもしくはtransistor ladder。 diode ring VCFはこの当時のVCFとしてはユニークなものでdiode ringによるanalog SW回路をVCFに応用したものです。 当時は現在のようにsynthの回路がだれにも容易に手に入る時代ではなかったため70年代を通して個人的にはと言うか多くの人にとっても謎のVCF回路(*)でした。 後日この回路図を入手して動作原理を理解した時には感動がありました。 この回路は1973年のMini KORGに初採用された物なのでKORGがオリジナルなのですが特許はGX1発売以降YAMAHAの方から1975年ごろに出ています。

*: この回路はCVが急変化しても原理的にはdiode ringの出力nodeの直流レベルが変動しないとか、diodeによる非対称歪が回路によって相補的に補正改善されるとか、Audio信号とCVの経路の分離方法など、回路形式は違えど基本原理部分は差動増幅回路を用いた transistor / diode ladder VCFにとてもよく似た回路なのです。( 但しfilterとしての形式は異なります。) 当時はtransistorだけで回路を構成していたのでCV周りのドライブ回路、Buffer等の脇役回路が複雑になっていますが根本部分はシンプルな技ありな回路です。 sallen & keyの抵抗部分にdiode ringがぴたりとはまっているのがみごとと言うか。

このdiode ring VCFは1979年発売の MS50、さらには2013年発売のKORG VOLCAのVCFに採用されています。 VOLCAのVCFは700と言うよりはMS50 VCFの簡略化 versonのようです。

*1: diode ring VCFの原理図
*2: diode ring の動作原理

*2: もしかしたら1974年かも知れません。 このころのFMの音楽番組には今でも印象に残っているのがいくつもありました。 FM東京だと上記の音楽ってなんだ、The MUSICやよく聴いていたのは土曜日の午後にやっていた確か1時からは宮川泰のコーセー歌謡ベストテン、2時からはすぎやまこういちの日立サウンドインナウ、3時からはNHK FMの各ローカル局のリクエストアワー等 月曜の深夜は 片岡義男/安田南の気まぐれ飛行船などがありました。

このころはラジカセ全盛期で特にSONYのラジカセは魅力的な機種が多かったです。 私もSONYのCF1050(*)を使っていて、これでFMのエアーチェックをしていました。 その後初のaudio装置、NIKKOのレシーバーR2000を買いました。 R2000は1973年か1974年発売なのでまさしくこの電波科学の記事が掲載されたころでした。

*: 本当はCF1500が欲しかったが買えず1050を購入。 CF1050は1971年の発売でカセット部のメカが少し特殊でSONY のTC1010がベースになっています。 数年前になつかしさにつられてjunk品を購入(上記の写真)。

この記事は1974年3月号でWAVE KITが出る1年前のできごとです。  このころ電波科学をよく読んでいたかどうかは忘れましたが、当時AUDIO ファンだったので 表紙に写っている L&G(Lux & Groupe)のレシーバーに興味がいったか、長岡鉄男氏の記事でもあったのかしてこの本を手にとったのかもしれません。 その中に偶然 Synthの自作記事があったのでしょう。


* 3: 1975年ごろ *

このWavekitが発売された、1975年という年は ROLAND system700, system100、SH-5 という本格的な機種がオーディオフェアー、楽器フェアーでデビューしています。 個人的にはたいへん衝撃を受けました。 オーディオフェアーにROLANDのsynthesizerという場違いな感じなのですが、当時はオーディオファンも対象内にとらえていたということなのでしょう。 私自身、当時オーディオファンだったのでよくわかります。 国産synthは1973年に登場しているのですがやはりこの1975年が 国産synth元年的な年だったように個人的には思います。


・ ROLAND



* 75年のAUDIOフェアーでもらった ROLAND system100のパンフレットとWah,Wah。  Vol5から所有していました。 

当時はパネルのツマミの意味を理解していなかったのですが、同時にもらったROLANDの季刊誌ワウワウが analog synthのよきテキストになりました。 さすがに現物は今は所有していませんが、解説記事を切り抜いてファイルした物は残っています。(黄ばんだ右の写真) system100のパネル図は当時毎日眺めていました。

1976年になって念願のsystem100の101は購入しました。 当時の印象としてはパネルデザインがB級オーディオメーカみたいだなあという印象が強かったです。  101は10万円くらいしまいたが当時の感覚では10万円もすればオーディオなら結構高級な部類のアンプが買える値段なのに高いと思ったということなのでしょう。  オーディオといえば、当時ROTELと言うaudioブランドがあって正式名称をローランド電子(株)といいました。 日本ではマイナーでしたが海外では有名なメーカーでした。 当時はてっきり楽器メーカーのROLANDと同じ系列のメーカーなのかと思っていましたがそうではないようです。 初synthであるところの101は現在はもう所有してはいませんが未使用の101のpatchシートが残っていました。


* 76年ワウワウに同梱されていたproduct news。

国産初のmodular synthにもかかわらず、700は外観デザインの完成度が非常に高いです。 当時ROLANDは system700の大型ポスターを確か送料を払うとプレゼントしてくれるということをやっていて私もそのポスターをもらったことを思いだしました。

パネルデザイン等のアイデアは海外の方のアドバイスがあったと言うようなことを、楽器フェアのROLANDのブースで当時聞いたような記憶がかすかにあり、その本人が同ブースにいたような記憶もあるのですが、40年も前のことなので確かではありません。

ROLANDは特にsynthesizerの普及に積極的で上記ワウワウの紙面をみてもその意気込みがわかります。 101の10万円が高いと上で書きましたが実際、発売当時は101は最低価格(*1)のsynthesizerです。 ワウワウの影響を受けてどうしてもsystem100が欲しくなってしまいました。 101購入時、同価格帯のTEISCO 100FKORG 770も候補に上げていたのですが、patchのできる拡張性を考慮するとやはり101になってしまいました。 今考えると2万円ほど高いですが 2VCOの770を買った方が音的には満足できたと思います。

*1: 1976年にTEISCOの100Fが出て100Fが最低価格のsynthとなりました。
 1977年1月のようです。 101購入は1977年か?、候補に挙げたのは770だけか?。

1975年夏にWAVE KITと遭遇、秋のAUDIOフェアーではSYSTEM100と遭遇、さらに同年10月の楽器フェアーではSYSTEM700に遭遇と立て続けにanalog synthの情報が飛び出してくる状況でした。 この年の楽器フェアーではYAMAHAからは GX-1, SY-1が KORGからも700Sと最新の800DV,PE1000が出ていたのですが、ROLANDのsystem synthの迫力は他社を圧倒しおりsystem700の置かれているブースは異次元空間をかもし出していたことがいまでも記憶に残っています。

TEISCO 100F
TEISCOは他の国産メーカーからすると遅れてsynthsizerに参入した形になっています。 そのかわりと言うか他メーカーのいいとこどろ的な要素が垣間見え特に100FはMINI MOOGの影響が大なように思えます。 VCFはMINI MOOGと定数も同じようなTr. Ladder VCFで、VCF回路の+Vccをわざわざ10Vにしたりと。 後年の110FではVCFの各ladder 部分にdual Tr.を使用している所も気の利いた設計になっていると思われます。 また国内では初のLINEAR Portamento回路が搭載されたりています。 上の100Fのカタログのうたい文句のように"技術の結晶。 95000円"なのでしょう。

当時は回路図など見るすべもなかったわけですが回路的に魅力のあるsynthであることは確かでそれが当時わかっていれば100Fという選択肢もあったかもと思います。

* LINEAR Portamento 回路について
* TEISCO 100F VCOについて

こうして回路を追って見ると確かに技術の結晶ですね。 KIT物とはちょっと違う回路センスを感じます。 これも回路図が簡単に手に入る時代の恩恵です。


当時から現在に至るまでほしいsynthではあるのですが、普通の部屋に700のfull setを置くには巨大なsystemです。(重量もかなりのもの) 15年ほど前(1995年ころ)に中古品full setが50万で売っていたのを発見して購入しそうになり数日悩みましたが、やはり置き場所を考えると断念せざる終えませんでした。 実際は数日後に店にいくと売れてしまっていましたが。 700にはfull set以外にもコンパクトな 3VCO仕様のシステムがあるのですがそれが中古で安くで売っていたのなら買っていたでしょう。 まあ中身的にはsystem100Mと基本的には大きな差はないので(OTAは異なるが)100M所有で我慢していますが、やはりこの風貌は今もって魅力的です。

結局の所 1975年に楽器フェアーで見た SYSTEM700の強烈なイメージが尾を引いてsynth好きになったように思います。

* 1977 ROLAND総合カタログ


・ STEREO誌1975


この1975年にはaudio誌のSTEREOでも22ページにおよぶ synthsizerの大特集が組まれました。 特集のなかでオディセによるpatchの説明があったのですが当時は全parameterを理解できませんでした。


* STEREO誌の特集記事
* いわゆる第一世代の国産 monophonic synthたちです。

左ページ
  * Hillwood ブルーコメッツ73
  * ROLAND SH-3
  * KORG 800DV
右ページ
  * KORG 700s
  * ROLAND SH-1000
  * YAMAHA SY-1

AUDIO誌のSTEREOで22ページの特集が組まれるくらいsynthesizerが注目され始めた時代なんだと思います。 さすがにSTEREO誌なので回路に関する情報とかは無いのですが、synthのparameterを紹介して音色のpatchを 組む過程を説明するという内容がありました。 あとは冨田勲氏のインタビュー、synthを使っているミュージシャンの紹介など。


・ 初歩のラジオ 1975


初歩のラジオでも十数ページにわたるシンセ特集があったようです。(話題の電子楽器…シンセサイザーのすべてを追う! / 福田修) この特集は当時の記憶にありませんがこの本は古本屋で見たことがあります。800DVの中身の表紙は覚えていますが本の中身は忘れました。


福田修さんは後に” サウンド・エフェクト シンセサイザー オーサム SEM-1”を初歩のラジオ 1976/04/05/07で発表されています。(下図)

*:1973年の間違いでしたので後にでなく以前に.....。

ミニモーグ SEM-1という意味深な名のこの製作記事は当時は全く知りませんでした。 後になって90年代に古本屋でこの記事を見つけて購入しました。(05月号のみ) 内容はtransistor 1石とCRによる位相発振器にtransistor 1石の簡易GATE回路が鍵盤数ついた全鍵盤Polyphonic音源で各gateにはトレモロ等の振幅変調がかると言うもの。

全鍵独立oscillatorのKORG PE1000(1976年)のある意味先を行っていた製作記事?。 電圧制御ではないのが残念。 名前も oberheime SEM(1974)と同じと言う偶然?。

Polyphonicとは言え、電波科学の記事と同様、発振器+GATE回路と言う域は出ていずsynthesizerとはちょっと違う存在になっています。 始め、1976年の記事と間違えここの項目に入れたのですが実際は1973年だったわけでこのころではまだ、製作記事を書かれる方にとってもsynthの回路情報はまだ皆無に近い状態だったのでしょうか。 国産analog synthの1号機 KORG 700の発売が1973年3月でほぼこれと同時期の製作記事なので無理もないとは思います。

この時点で入手可能なsynth情報があるとすれば、MOOGのsynthを購入するとservice manualが添付されていたはずなので例えばMINI MOOG(*1)を手に入れるとか、ちょうどこの時期に海外で掲載されたsynth DIYの記事を手に入れるぐらいでしょうか。 もしかしたら国内メーカの人から情報を得るとか。 1973年当時この記事を見ていたらインパクトはかなりあったことでしょう。

*1:これが本物。 ただし当時(1976年時点)のMINI MOOGの価格は65万円でした。 今見てもすばらしい存在感。 上のネーミングもこれに対する憧れの現われでしょう。

おとなの工作読本(2004 No5)を見て思ったのですが、当時synthの回路は情報が無くともそれ以前のオルガン等の回路情報等は存在していたはずなので、たとえば1966年発行の電子楽器と電気楽器のすべて(誠文堂新光社)といった文献などを参考にしていたのかも知れないとふと思いました。

海外の文献などでは、voltage controlled ELECTRONIC MUSIC MODULES (1964/10/ Robert MOOG / AES ) *   ELECTRONIC MUSIC its Composition and Perforance (1967/02/ Robert MOOG / Electronics World) *  などと言うMOOG synthsizerに関する情報が上記の電子楽器と電気楽器のすべてと同じ時代に出ています。

MOOGといえば1976年にはこんなMOOG新聞というYAMAHAの販促物もありました。 確か2号までは続いたと思います。 同じく76年にはこのようなカタログの入手もできていましたので73年と76年とではわずか3年ですがsynth関係の情報量はかなりの差がありました。 ちなみに輸入元のYAMAHAは上記の新聞でも"モーグ"でなく"ムーグ"と言っています。


雑誌の表紙にシンセの臓物写真を載せるということでは初ラより先の1974年に同じ誠文堂新光社の電子展望がROLAND SH1000を載せています。 電子展望は国内雑誌では最も早く(1976年1月)に本格的なAnalog Synth(当時はミュージックシンセサイザーと呼ばれていた)の製作記事を載せた雑誌でしたがその前触れと言った感じ。

1975年ごろと言うとシンセを多用してた国内のミュージシャンとしてはファーイーストファミリーバンド、バッハリヴォリューション、上記の深町純氏などが有名だったかと思います。 特にバッハリボリューションの田崎和隆氏は自分でmodular synthを自作されたりしていたので印象に残っています。 modular synthを自作していたミュージシャンとしては神谷重徳氏も有名でしょう。 神谷さんは国内でいち早くARP 2500を購入したり一時ARPの国内での代理店のようなこともされていたと記憶しています(*1)。

*1:  電子音楽 in Japanのインタビュー記事によると、直接USAのARP社に2500を買いにいかれたとか、またJAN EMSというsynthのレンタル/プログラマー派遣/メンテ会社を主宰していたそうで、その中のスタッフに田崎氏もいたそうです。



・ 1976年の雑誌


1976年になると、電通大/東工大の方々( 樫田素一/鈴木昭司 氏)による電子展望の連載記事が始まり、またI/O誌では原真氏、無線と実験誌では泉たかし氏(ROLANDの則安氏のペンネーム)の連載がはじまりました。 当時は analog synth普及の黎明期と共に上記のように I/O誌が創刊され、さらにその後 ASCII誌が創刊されるというようにmicro computer普及の黎明期でもあったのです。



* 電子展望の記事(1976/01/03/04)   * 無線と実験の記事



* 電子展望1976/4月号表紙

意外とかっこいい概観だと今は思えます。 電源内蔵のケースとしてはこのタイプの形はベストな選択であると思えます。

この1976年の電子展望の連載は実質国内で初めての本格的なSynth DIY記事だと思います。(上記の74年の電波科学、73年の初歩のラジオの記事は通常のSYNTHとはちょっと異なるタイプだったので) 当時電子展望は目にとめて毎月見るような対象の雑誌ではなかったのですがなにかの偶然で手に取った中にsynthの連載記事があったのでしょうか。

 1: VCO block
 2: VCF block

コンパクトにまとまっていますが結構大掛かりなsystem。 電源がケース毎に独立しているのもポイント。

電子展望ではこの後もシンセ関連の連載記事が1980年ごろまで続きました。 毎号とは言わないまでもsynth関連の記事は多く、国内で最もsynthの回路が掲載された雑誌でした。 他の雑誌と比べると研究要素が強かったように思いますし、当時の自分にとっては難しかった分、印象が弱いです。 電子展望と言えば、宣伝広告が殆ど無く良い紙を使っている雑誌。 この為他紙と異なる印象があるのしょう。

私もsynth関連記事の約7割りくらいは購入して必要ページを切り取って保管していたのですが、紛失してしまい現在持っているのは1976年の記事と今関さんの記事のみです。 本来は他の記事以上に電子展望関連が70年代のsynth DIYに占める割合は大きいと思いますが上記の理由により、ここでは 連載記事一覧に示すのみに留めます。


下の写真はAUDIO誌である無線と実験にsynthesizerの連載記事があるという当時ならではの状況。 広告ページにROLANDの社員募集の広告がありました。


* 無線と実験のグラビア記事にROLAND system100の中身が掲載された。


* 76年から連載が開始されたI/Oの記事

上記、無線と実験の記事(*1)やI/Oの記事(*2)は製作記事ではないのですが、synthの回路がちょこと掲載されたりしていました。 当時はI/O誌に掲載された回路は何が元ネタかわからなかったのですが、そのひとつに後年ネット時代になって一躍有名になったスタイナーのVCFがありました。 あとはMOOG modularとか ROLAND 100の回路、USAやUKの雑誌に載った回路などであったことが後日わかりました。

Populer Electronics誌に掲載されたEG & Sequencer For Electro Music (1976/01)の回路なども載っていました。 これなどは40年近くなった現在になってネットのおかげで元ネタに接することができ感激しています。


* Populer Electronics誌のオリジナルの記事

手持ちで残っている分の内容.

*1: ミュージックシンセサイザー入門(オーディオの新しいソース)
  [2] VCO/NOISE antilogの説明図

*2: I/O ミュージックシンセサイザーのすべて
 [2] VCFの使い方......[回路] スタイナーVCF
 [3] VCAの使い方......[回路] ROLAND 100 VCA/ MOOG Modular VCA
 [4] EGの使い方 ......[回路] Populer Electronics誌のEG
 [5] S/Hユニトの使い方......[回路] 無し


ネットに 1976/1977年ころのI/O誌の内容がupされていましたそれによると....

ミュージックシンセサイザーのすべて
1976/11  [1] ミュージックシンセサイザーの基礎
1976/12  [2] VCF
1977/01  [3] VCA
1977/02  [4] EG
1977/02  シンセサイザー マニュピュレイション教室[1]

チャッタレス・奥山のいいたいほうだい
1976/11 シンセサイザーの自作について
1976/12 マイコン・シンセサイザーについて
1977/01 プリセット・シンセサイザーについて
1977/02 オーディオ・マニアについて

その他シンセ記事として
1977/01 ウェーブキットのミュージック・シンセサイザーの製作と実験
1977/02 BBDの使い方 ミュージックシンセサイザへの応用
1977/05 シンセサイザーとマイコンのインターフェイス[1]
1978/05 ミュージック・シンセサイザ徹底研究[2]
1978/06 ミュージック・シンセサイザ徹底研究[3]
1979/02 ミュージック・シンセサイザ雑話

などが掲載されていました。 やはり76年11月の創刊号から1978年くらいまでがシンセの話題がけっこう出ていたようで、創刊号の次の号からI/O誌をこのころは毎月買っていたことを思いだしました。 当時I/O誌は秋葉の東京ラジオデパートの2Fの書店で買っていたと思います。 と言うのも初めは一般書店では売られていなかったような記憶があります......。 創刊から数号はページ数も少なく同人誌的な感じで独特な感じが漂っています。

個人的にはこれより少し前にWaveKITを購入していたので、上記のウェーブキットの製作記事は印象に残っており、これを見ると当時のことが鮮明に思い出されます。 この記事は切り抜きを持っていたのですが無くしてしまっていたので今回この記事に出会えてとても感激しました。

* wavekit製作記のPANEL design

この記事の著者の方(高橋宏爾氏)は後日 "シンセサイザーと電子楽器のすべて" 1980/1981 誠文堂新光社)の特集で電通大のシンセサイザー研究会の一員として名を連ねており写真も載っています。 PAXの原真さんや電子展望の著者の方々といい、なぜかこの時期の analog synth関係者には電通大の方が多いような...。

チャッタレス・奥山のいいたいほうだいもあらためてみると内容がとても面白く、のっけからWaveKitのBBD delay KITが popular electronics誌の記事のパクリであることも見抜いているなどさすがな内容。 ASCII誌立ち上げ前の西和彦氏の連載なども載っています。 あらためてこの時期はマイコンとシンセの黎明期だったのだと思います。

1975年12月発売の電子展望(1976/01月号)のシンセ製作記事の連載開始、1976年5月発売のロッキンfの創刊号(1976/06号)、7月にWaveKitのMicro Wave Synthの発売、そして10月にはこのI/O誌の創刊(1976/11月号)と国内のsynth DIY情報が一気に出てきた感じです。 上記のいいたいほうだいにもこのような状況として電子展望、Wave KIT、ロッキンfのことが書かれています。 また原真氏の連載には無線と実験の連載のことが書かれています。

STEINER-PARKERのsynthと言うと当時YAMAHAの渋谷店にSYNTHACONの現物が置いてありました。 MINI MOOGなどと比べてもより手作り感が強いsynthでDIY心をくすぐるような作りにときめいたものでした。 パネルの配置がMINI MOOGと完全に逆向きなのも新鮮でした。 国内ではサディスティックスのkeyboard 今井裕氏が当時 SYNTHACONを使っていたと記憶しています。

上の電子展望の製作記事の中のVCAの基本的なアイデアは偶然かどうかは不明ですがこのSYNTHACONのVCAがベースになっていることが後日わかりました。


1976年でなく翌年ですが、1977年7月号にトラ技でミュージックシンセサイザーの製作記事がありました。(トラ技 1977/07 鵜ノ口武彦氏 ) 当時はすでに上記の電子展望の連連載に加えて初歩のラジオで77年初頭から自作記事の連載が始まっていました。 またラジオの製作でもシンセの自作記事の連載が始まったのも77年くらいだったと思います。

このトラ技の製作記事はパネル、基板のマウントの方法が好みだったのが記憶に残っていました。 長らくこの記事を見てになかったのですが古いトラ技を集めた際にたまたまこの記事にめぐり合えました。

1977年と言うことでは DIY本ではありませんが synth本として”だれにでもわかるシンセサイザ入門 (1977 鈴木寛 / 音楽の友社)”がありました。 この本は synthesizer情報が少なかった当時、貴重な本でした。 ご存知の方も多いかと思います。


・秋葉の三神ビル

一般に知られているWave KITの micro wave synthsizerは 基板と部品に追加基板としてVCF, LFOが添付されさらに有名なパネルがセットになって 売られていたやつだと思います。 このバージョンは確か 1977年以降になって登場したように思います。 さらに後にはvolume,knob, transも込みで売られていたように思います。

このパネルはけっこうかっこよく、映画さよならジュピター(1984)の宇宙船のコクピットとして1枚のパネルを複数コピーしたものがたくさん使われていたように記憶しています。ビデオは持っているのですが再確認はしていませんが。 あとKORGのPS3300もコクピットパネルとして使われていました。

VIDEOを再確認したところ、PS3300は作業連絡艇6号のコクピットにまたWAVEKITのパネルは木星軌道上のミネルヴァ基地 内の壁のパネルに大きく拡大したものが使われていました。


* WAVE KIT     PS3300

よく見ると微妙にwaveKITパネルはモディファイされて使われています。 PS3300パネルは上下逆にしてレイアウトされています。 時代設定は2140年。 (* よく見たら上下逆でなく単に2段重ねでした。)

余談ながら当時は映画の中でメーカーのシンセが使われていたりすると妙にうれしくなったものです。 有名なところでは未知との遭遇(1977)でARPの2500(+ARPエンジニアのPhilip Dodds氏), YAMAHA SY-2が使われていたとかファントムオブパラダイス(1974)でのMOOG Modular、 Lipstick(1976)での EMS AKS VCS3とか。だいじょうぶマイフレンド(1984)のKORG PS3300など。

さらに余談ですがさよならジュピターで製作されたミニチュアの現物が当時、銀座の伊東屋で展示されていました。 小川モデリング製作の宇宙船と、東宝スタッフ製作のジュピターゴーストも展示されていました。 いずれも完成度がとても高く感激したのを思い出します。 しかし映画の画面ではその精巧さが伝わってこず悔しい思いをしたものでした。


* WAVE KIT カタログ(その1)
* WAVE KIT カタログ(その2)
* WAVE KIT カタログ(その3)
* WAVE KIT カタログ(その4)
* WAVE KIT Micro Wave Synth スペック
* PS3300 panel


WAVE KITは通販の他に秋葉の三神ビル(LAOXのコンピュータ館が建つ前のビル(*1)の1Fで出張所がありそこでも売っていました。 当時このビルの近くには ROLANDの synthesizer studio(Show Room内にあった)があり system700とかがおいてありました。 さらに有名な秋葉原エレックトリックパーツでも基板を販売していました(この店は現在でも存在しています)。

  *1: 三神ビルは別名、神尾ビルとも呼ばれ昔ここに秋葉の神尾病院があったらしい。



* Rolandの秋葉 show room(小暮ビル)におかれたと思われるSystem700の勇姿
  (ROLAND catalogの表紙より)レイアウトが使いやすいようにかえられている。
  自作の multiple junction jackが見える。 後の100Mでは標準装備になった。

東京地区ではこの秋葉のショールームと神田商会のショールームでsystem700 を見ることができました。( 当時の価格240万は夢のsynthでした )

これだけ巨大なシステムでも主要部分は9VCO, 4VCF,5VCA,8EG,3LFOでしかありません。  後のPolyphonic synthesizer 1台分にも満たないのですがいかにも機械然としているところがModularの魅力なのでしょう。 そういう意味では昨今のユーロラックのmodularは合理的ではありますが魅力は半減してしまいます。

巨大と言うことではもう一方のModular synthの勇、MOOG system55も700と同規模のmodularですが55の構成は7VCO,2VCF,5VCA,5EGと700より小規模なシステムと言うことになります。  とはいえ両者とも70年代を代表する強烈なanalog synthのイメージを漂わせています。


秋葉の三神ビルのWAVE KITでは micro wave synthsizerがROLAND system700のkeyboardにつながれておいてありました。 700のKeyboardはdual note対応だったので2音の演奏ができました。 

このころから数年間はこの三神ビルに wave kitのお店はありました。 77年ごろ?になるとトラ技のwave kitの広告で SSMのICを売り出すということが書いてありました。 確か1個 2500円?くらいしたように思います。 私は意を決して買いにいきましたが売り切れで、SSMのデーターシートのみをもらって帰ったのを思いだしました。 それ以来 SSMのICもこれまた憧れになりました。


* オーディオフェアー


楽器とはあまり関係ないと思われる オーディオフェアーにもこの当時はanalog synthがよく展示されていました。 特にROLANDが積極的で、1975年に新製品である SYSTEM100を中心とした展示がありそれ以降毎年ROLANDのブースが存在していました。 1978年は確かSystem100MとRS-09等の09シリーズがROLANDのブースに置かれていました。

この09シリーズは従来より安価なアマチュア向きを狙ったシリーズでRS-09はpolyphonicなstrings synthesizerが10万以下で買えるというのは画期的なできごとでした。 今でもオークションに数多く出品されていますが結構な価格が付いているのがちょっと不思議です。 ROLAND独自の4相コーラスが魅力なのでしょうか?。 私としては翌年に登場したKORG DELTAというstrings synthesizerの方が5万円ほど高いですができがよかったように思います。 このころのROLAND製品は他社に先行してはいるのですがつめがいまいちといった印象がありました。 逆にKORGの方は後発にまわっているのですがその分よくできているという印象がありました。

1976年か1977年か忘れましたがメーカー製でない自作のみごとなmodular synthがオーディオフェアーに展示されていたのが印象に残っています。 写真を撮っておかなかったのがくやまれます。

このころはオーディオメーカもsynthsizerを発表していた時期で製品としてはテクニクスのSY1010、日立Lo-DiからもsynthがまたVictorからはKORG M-500のOEMが出ていました。 確かSONYもSIN波合成のフーリエシンセなるものの試作機を発表していたように思います。 もう少し前だとTRIOのRhythm Box付きレシーバーなどというのもありました。 SONYのRhythm Box付きラジカセもあった。


* VICTORの広告 *

上の画像は1978年当時のVICTORのシスコンの雑誌広告です。 pre AMP部にmixing 機能他が付いているようでそこにsynthや他の楽器をつないで録音したりしてAUDIO機器を積極的に使おうと言った提案の広告になっていてKORGのOEMのVICTOR版M-500やKORGのrhythmマシン(mini pops120)が写っています。 さらに上の方にはMOOG55やMOOG IIIを使ってパッチングしている冨田勲先生が写っているという貴重な広告写真。 肝心のコンポMM-11はハンドルもついてそれっぽいのですがラジカセライクなデザインにも見え、MOOGのかっこよさとは相容れないようにも思いますが銀色パネルのM-500とは合いそうです。

この時代VICTORに限らずAUDIOメーカのこのようなアプローチはいくつもあったように思います。 記憶にあるのはSANSUIのCONSOLETTEシリーズというのがあってAX-7はAudio Consoletteと言い MIXER機能にプラスしてRec select, reverbなどが搭載されたpre amp的な存在、また MA-7は VU meter unitと monitor SP/AMPの セットで構成されていました。 AX-7の方は今でもオークションでよく出ていますが、MA-7の方はまず見かけません。 MA-7はルックスもかなり良いできの機材です。 MA-7は昔所有していましたが今はありません。 今思うととっておけばよかったと思います。

さらに80年代初頭(と思ったら1983年)のオーディオフェアーでAKAIのブースにAKAI初の電子楽器としてanalog polyphonic synthesizer AX-80が展示されていたのを思いだしました。(AX80はhillwood消滅後Hillwoodの元メンバーの技術供与で製作されたようです。) なぜか同時期にデビューしたDX-7を意識したデザインの外観はanalog synth色は薄かったです。

当時オーディオフェアは今は無き、晴海の見本市会場で行われるのが通例。 一方の楽器フェアは武道館の隣の科学技術館で行われていました。 70年代中期から80年代中期にかけては毎回これらのフェアーに行くのが本当に楽しみでした。 楽器フェアーは毎年でなく1年おきに開催されていましたがこのころは特に毎回とてもインパクトの高い製品が発表されており興奮したものでした。 フェアーではカタログ集め、ステッカー集めも楽しみの一つでしたし、各メーカの催すミニコンサートの類も興味深いものでした。

* 当時集めたステッカー集(一部)

楽器フェアで印象的だったのは確か77年に見たEMS AKS。 このころにはsynthのparameterは理解していたのですがVCS3はかなりparameterが特殊であることとmatrix pin boardを採用していることもあって会場でいじっても使い方がよくわかりませんでした。 あとはこれも77年だったと思いますがOberheimの4Voice。 とても巨大でメカニカルなデザインのsynthに思えました。 4Voiceを構成するSEMも魅力的。 音の方では83年に登場したSCIのprophet T8のデモ演が印象に残っています。

オーディオと言えば当時は各オーディオメーカーのショールーム巡りをよくしていました。 銀座地区はメーカーのショールームも多く、 YAMAHA、SONY、 TECHNICS、 TOSHIBA AUREX、日立LO-D、三菱DIATONEがあったのでよくいきました。 SANSUIは確か西新宿、FOSTEX(FOSTER)は水道橋にありました。 この当時は各AUDIOメーカが小冊子を作っていてそれをもらうのも楽しみでした。

* SANSUIの冊子、聴きにこないかシリーズ  SANSUIのこのシリーズは特に好きだったので今でも数冊保管しています。  この冊子ではライフスタイルに合わせた、コンポの組み合わせ例がいくつも提案されており上記のページは学生用の最もシンプルな構成、レシーバー+ヘッドフォンでFMを楽しもうと言うものでSANSUIのレシーバーTAC505が紹介されています。  1973年か74年ごろの冊子だと思います。 当時はラジカセしか持っていなかったのでこれには憧れましたが、TAC505の価格は当時59000円。 すぐには手に届く価格ではありませんでした。

この時代のSANSUIのAMP群(たとえばAU9500)はやたらとかっこよくmodular synthと共通するたたずまいがあったので当時はあこがれていたのだとあらためて思います。 TAC505 (1971) はそれに加えて円形の回転式チューナーパネルが秀逸でした。 40年以上前(2016年現在)に入手したカタログTAC505が掲載されていました。 手持ちのカタログではおそらく一番古いです。


* 4: PAX Electronica *

確か1977年? PAX ELECTRONICAというメーカのMICRO PAX というsynthesizerが楽器店(石橋楽器)におかれました。 おそらくこのsynthがおかれたのは神田の石橋楽器だけだったのではないかと思われます。 めずらしい機種だったので ROLANDの方々(上記の則安氏とか..)がこのsynthを見にきているのをたまたま目撃しました。


* Micro PAX synthesizer試作機 *

Micro PAX synthsizer (82000円 1977/08発売)
ロック&キーボード1979エイプリル出版に4Pほど特集がありました。  確かパネルは黄色で keyboardはタッチキー方式。 それ以外の雑誌でこの機種をみかけたこともない正に幻のsynthesizerです。 海外だとこの手の幻のシンセを持っている人がいたりするのですが国内では無理でしょうか....。


翌年に同社の MODULE TYPE  synth LOG cardシリーズ及び、SYGNUSシリーズが発売されます。 SYGNUSは楽器店(LAOXになる前か直後の朝日無線の楽器売り場にあった)におかれROLANDのsystem100シリーズの対抗機種的な位置づけでした。 一方 LOG cardシリースはVCO,VCF/VCA , EG, MIXER等の基板moduleを単品発売するいわゆるDIYer向けの商品でトランジスタ技術誌の広告でアナウンスがあった後、秋葉の電子部品屋の亜土電子や東急ハンズ(できてまもない?)で売られおり、WAVE KITに興味を持った層などが対象であったように思いますが、 WAVE KITほどポピュラーではなく今となってはその存在を知っている人はわずかでしょう。

雑誌広告としてトラ技に1978年ころ数回掲載されました。 PAX ELECTRONICAでは当時海外の synth専門誌だったSYNAPSEを扱っていたのも印象に残っています。 (ネットにSYNAPSE Magazine 13冊の内容を紹介しているサイトがありました。)

 
* ボーグ艦のような?表紙

synapse誌は石橋楽器のBOOKサイドに売っていたように記憶しています。 もしかしたら書泉の洋書コーナーか...... 上記のものは当時入手した物。 この雑誌の入手性はよかったので私も7冊ほど持っているのですが、回路等のハード情報は意外と少ないです。


Log cardシリーズは dual VCOの cardが 2万程度、 VCO controllerが 1万,EG,LFO等の cardが8000円程度したと思います。 全部集めると結構な値段がしました。 当時猛烈に欲しかったのですが1978年にKORGの MS20, ROLANDのRS09を買ってしまったためそこまで手がまわらず買えずじまいでした。 そうこうしているうちに物自体が市場から消えてしまったように思います。 もう少し前か後に出ていたのなら購入したことでしょう。 今思うととても残念に思います。


* トラ技に登場した LOG card の広告 *
合理的な基板設計です。

ちなみにこのPAX ELECTRONICAという会社は 当時 I/O誌でsynthのハードの連載をされていた原真氏の率いる集団で、analog synthのほかに当時同時期的に発展していった micro computer関連のハードを販売していたメーカです。 現在でもパソコン関連のサプライ品を扱っている同名のメーカは存在します。 


LOG cardの販売が停止したころ, 亜土電子のジャンク品のコーナーに LOG cardシリーズのひとつ、VCO controllerだけがぽつんと数百円で売られていたのでそれを購入し今でも持っています。



* 唯一所有している VCO controller 基板

( octave Fine Wave )*2 切り替えSW周りを集約しています。 電子部品はわずか。 端子は22pinのコネクタ。 LOG cardシリーズは確かに存在したという証拠です。 当時このcardが売られていたのは私の知る限りは亜土電子、東急ハンズだけでした。 はたしてどれだけの人がこの基板を手にしたのでしょう。 こういうのの回路図(できれば実物も)は本当にほしいです。

PAXのLog Cardは秋葉の九十九電機でも販売していたようです。 当時は気づかなかったですがラジオの製作の広告に載っていたようです。 その広告にはLog Cardがラックマウントされた勇姿が載っています。


* LOG CARDを使った 4Voice moduleだそうです。


実は SYGNUSの中身はこの LOG cardが入っています。
SYGNUSは SYGNUS 1,2,4,8という型番のUNITで構成されています。
いかにもというネーミング。

SYGNUS 1 main unit
SYGNUS 2 keyborad unit
SYGNUS 4 digital sequencer
SYGNUS 8 expander unit


* SYGNUS System


* SYGNUS広告

ネットでSYGNUS8の中身の画像を公開されている方がおられます。その写真を見ると中身はまさに上記のLOG cardが入っているのがわかります。 上の広告画像はその方から頂いた画像です。


* 5: トラ技広告 1978 (1977,1979) *

さてここで本題です。 最近78年のトランジスタ技術誌を雑誌広告目的で数冊入手 することができたのですが、78年にもなると synthesizer KITが花盛りというか Wave KIT, PAX electronica 、伸光などからいくつもの KITが発売されていたことが わかりました。 当時の記憶にないKITもいくつかあり新発見でした。



* WAVE KIT 78年1月号広告
この時点でパネル付き microwaveが\29800、ばら売りmoduleに microwaveのパネル を付けたものが\19800ですね。 


* WAVE KIT 78年5月号広告
カタログと同じ写真があります。



* WAVE KIT 78年7月号広告
新製品の digital sequencerが登場しています。 記憶にはありませんでした。



* WAVE KIT 78年8月号広告
Glide synthなるものが発表されています。 リボンコントローラを使ったもの らしいです。 これも記憶にはありません。 基板とvolumeのマウント方法が 参考になりそうです。 synth module KITは 22pinのエッジコネクター仕様。 


WAVEKITの広告はこの時代毎月あったようです。 一般的にはこの時期 のパネル付KITがWAVE KITの標準KITなのでしょう。

WAVE KITのトラ技広告は1979年ころにはなくなっていたように思います。  1980年台にはいってもKIT自体は秋葉のエレクトリックパーツでは売っていたように 記憶しています。 1981年ごろ(*1)になると雑誌 月刊マイコンかRAM(?だったと思う) でマイコンを使った電子楽器の制御といった連載が始まり、このWAVE KITが使われて いたのを思いだします。 MicroWave synthsizerの回路と基板のパターンが載って いました。

この雑誌の基板パターンでプリント基板を作って(1981年時点では1975年の WAVE KIT基板は廃棄していた) WAVE KITの製作の再チャレンジをしました。 RCAのTr.arrayが特殊部品だったので当時RCAのICを取り扱っていたダイデン商事(秋葉の万世橋にあった)で購入したことを思い出しました。 確かCA3080も買いました。 今はその基板もなく、連載の載っていた雑誌も捨ててしまいました。 今思うともったいない。

*1: 1979年ころかも知れません。 記憶があいまいです。

WAVE KITではPhilips製の抵抗が使われていました。 この抵抗は普通に売られていた抵抗と比べると少し角ばっていて小型で形のよいものでした。 この抵抗は当時秋葉では交通博物館近くのラジオガーデン?にある店で(だけ?)売られていて私もその店でよくその抵抗を買っていたのを思い出しました。



* WAVE KIT 78年9月号広告
マイコンシンセなる物が登場しています。 これも記憶にありません。
volumeの基板実装方法が参考になりますね、



* PAX ELECTRONICA 78年4月号広告
LOG cardシリーズのマニュアルが 500円と書いてあります。  入手したようなしなかったような。 今となってはわかりません。

LOG cardの現物は上記のように亜土電子と東急ハンズにおいてあったのですが記憶としてはハンズのショーケースに陳列されていたことは今でも鮮明に覚えています。 PAX ELECTRONICAのlog cardは30年たった今でもほしいアイテムです。 どこかで発掘できないものか.....

ネット時代になって楽器メーカのanalog synthの回路図はかなりの機種のものが入手できるようになり、海外にいたってはmaplinとかETIの雑誌記事に載ったsynthの回路図すら手にはいるというのに日本のこのようなメーカのsynthの回路はおがむことができないのは大変残念であります。



* 伸光 広告1
* 伸光 広告2
* 伸光 広告3
* 伸光 広告4

かなり豪華な内容ですが、当時伸光には興味がなかったです。 というも ROLANDの SH-5/3などをまねたパネルに二番煎じ的な、かっこ悪さを感じていたからです。 また78年にもなると国産メーカのsynthが 10万以下で買える時代になっていたのでもっぱら興味はそちらの方にいっていましたし、初歩のラジオで synthの自作記事や電子展望の新しい記事が連載になっていてそれらは以前の連載記事に比べて格段とっきやすかったのでそちらの方にも興味がいっていたころでした。



< 追加 1977,1979のトラ技 >

さらに1977年,1979年のトラ技を入手しましたので広告の追加を以下に示します。 1979年の広告は記憶にないものが多いのですがこれは1979年くらいになるとメーカのローコストsynth等が台頭してくるのでKIT物よりそちらの方が魅力的で興味がそっちに向いていたということなのでしょう。

* 伸光1977/9月号広告

伸光の初期の広告のようですね。


* WAVE KIT 1977/6月号広告

ケースを含めた完全KITがあったようです。


以下より1979年の各社の広告ですが WAVE KITに関してはTK80を利用した商品がいくつもありますが記憶に残っていませんでした。 CMU-800登場以前になたような物が発表されていることが面白い。


* WAVE KIT 1979/1月号広告(右ページ)
* WAVE KIT 1979/1月号広告(左ページ)

WAVEKITの広告(左側)。TK-80につながるという広告。 1979年ではまだPC8001すら存在していない時代。温度補償用オプションが興味深いです。

WAVEKITの広告(左側)。 4Voice POLYPHONIC synth + TK-80による自動演奏装置。 記憶にはありません。 ちょっと新鮮です。 その他 A/D . D/A とワンボードマイコンを使用した Audio処理装置。


* WAVE KIT 1979/4月号広告

SSMのシンセICの販売が始まりました。 上の方で1977年?ごろ販売が始まったと書きましたが 79年の間違いでした。 よく考えれば SCIのProphet5が1978年ですからそれ以前には販売されていないかったのでしょう。


* アドブレイン 1979/1月号広告
* アドブレイン 1979/3月号広告


* KORG 1979/3月号広告

トラ技にKORGの宣伝があったのには驚きというか。 ROLANDの100Mなどを意識したのでしょう。 考えて見ればPS3000シリーズは GATE信号のコントロールだけでPOLY PHONIC演奏が可能だったわけですし。 興味深いのはこの当時KORGもPS3000シリーズの中に幻のポリフォニックシーケンサがあったのですが... 販売までにはいたらなかったようですがカタログには予告があったのです。 確かに当時トラ技にKORGのこの広告はあったと言うことを思いだしました。


* ROLAND 1976/1月号広告

こちらはROLANDの広告ですが、社員募集の広告です。 System700/100が近日発売予定と書いてあります。 無線と実験にも同様の広告がありました。


* PAX ELECTRONICA 1979/3月号広告

LOGカードを利用したラックマウントPOLY PHONIC SYNTHがすばらしい。


* SE研究所 1978?広告

SE研究所のKIT



* keyboard unitの入手

analog synthに接続する CV/gateを出力するKeyboardですがこの当時はROLANDのsystem100の101とかsystem700の高価なKBDを利用する方法とKeyboard unitをどこかで購入して自作する方法がありました。 Keyboard unitの入手先としては1976年ごろは秋葉のラジオデパートの3Fに HillWood製のKBD unitが売っており私もそこで購入した記憶があります。 その後1978年ごろになると上記の伸光がKBD unitを販売したりトラ技の広告でシンクアクトのKBD unitが販売されていました。

このシンクアクトという会社はドラムメーカのパール楽器の本社の近くにありおそらくそのKBD unitはパール製のkeyboardに使われているものだったのではないかと思います。 パールとKBDというと関係ないようにも思いますが当時パールは polyphonic音源のkeyboard(PK-701)を発売していた時期でした。 その後パールは ポリセンサーという独自の音源方式のシンセを1982年に発表しています。 またパールは Drum synthもいくつか出していたりEffectorも出していたりしていて結構synthよりの商品があったメーカでした。


* シンクアクト 1977/7月号広告
  1977/7月号の広告でこのような鍵盤のアナウンスもありました。


1980年ごろになると秋葉原エレクトリックパーツでもKBD unitが売られるようになりました。 これは当時ここでもWAVE KITのシンセを売っていた関係からでしょう。 また秋葉の鈴商でも松下製のKBD unitが時々売られていてこれは1990年代の終わりごろまであったように思います。 鈴商にはスプリングリバーブユニットも以前はよくおいてありましたし、90年代になってもほぼ新品のROLANDのSH-09がかなり高い 値段で売られたりと結構不思議なものが置いてあって面白かったのですがさすがに近年はそういうことはなくなってしまいました。

海外(USA)ではやはりKBD unitというとPratt Read が定番というか DIYの世界でもPAIAがPratt Readの KBD unitを DIYer向けに販売していました。 山下シンセのKBD unitもこのPratt Readを使用していたようです。

* PAIAで販売していたのは上の写真にあるlowcost タイプ、 USAの主だったsynthに使われていたのは下の写真の根元が鉄製のタイプ。(下の写真は以前に所有していたmulti moog用のスペアーパーツ?で1接点タイプ。)


1975年ごろ、すなわちWAVE KIT登場ごろのOP AMPとしては メーカーのSYNTHなどでも741,301,709,1458,CA3130などが使われておりCAN typeの OP AMPも多くありました。 まだOP AMPが珍しい時代だったような。 当時WAVE KITのMicro WAVE synthを購入するとサービスパーツとして4558が2..3個おまけでついてくると言うことがあり、4558は1個200..300円くらいはしていたように思います。 1978年ごろになるとメーカーのsynthでも082,072などが使われていくようになります。 

synth用に使われる少し特殊なICとしては OTAの3080,3280,13600(当時はTCAなどとも呼ばれていた)や 1496,1495などがありましたし RCA のtransistor arrayなどもありました。 RCAのICは秋葉のどこのお店でも売っているという状況ではなく、万世橋のダイデン商事など、限られたお店でしか売っていなかったように思います。 またsynthでは有名なμA726も少し特殊な部品で値段も3000円前後とかなり高い部品でした。

それ以上に特殊な部品としてはantilog に使われるtempco抵抗で、秋葉などでは見かけることは無かったように思います。 海外のsynthではよく使われたtempco 抵抗ですが国産synthでは意外と使われてはいませんでした。 と言うのも 国産の Oct/V仕様のVCOを主に作っていたROLANDやTEISCOがμA726を主に使っていたこと、YAMAHA,KORGは主にHz/V仕様のVCOだったことからでしょう。 と言うこともあって雑誌の製作記事でtempco抵抗が使われた例は皆無に近い状態でした。 個人的にはこのtempco抵抗を手に入れたのは1994年ごろになってからでした。 

1978年ごろになると当時の電子楽器の救世主としてのIC, BBDが秋葉などでも出回ってきます。 WAVE KITでもBBDを使ったKITがありましたし、その後DIY(*1)でもBBDを用いたDelay, Echo,Chorus, Flanger, Symphonic Ensemble、Leslie Effectなど数々の製作記事はありました。 メーカの製品でも多くのBBD応用製品はありました。 BBDをいち早く使った製品にBOSSのCE-1(1976 MN3002)があります。 CE-1はBOSSブランドの製品1号機でもあります。 国内では松下のMNXXXXシリーズ、海外ではReticonのSADXXXXその他TDA1022などがあります。



*1: Popular Electronics 1976/06 にBBDを使った製作記事が出ていますがこれが調べたかぎりでは一番早いように思います。 上記WAVE KITのBBD KITはこの記事に載った回路、プリントパターンをそのまま使ったKITでありました。

* 上記製作記事のパターン。 用途に応じて Delay、 Flangerで共用できるよくできた基板。
  電源トランス& 723込み。

手持ちの電子展望の切り抜きにもBBDの特集記事がありこのpopular electronicsの回路も転載されていました。 何年の号か不明です。 1979年にも電子展望でBBDの特集があったようですのでその記事かもしれません。 またトラ技の1977/05にもBBDを使用したECHOの製作記事がありました。  BBD自体は1974年にMN3001が、翌年MN3002が松下から発売されているようです。 MN3002は上記のCE-1にも使われていました。 少し変わったBBDとしてはMN3011というマルチタップ出力のBBDもありました。 部品棚を見てみたらいくつかのBBDを発見。 MN3011やSAD512もありますが、かなり昔に入手した物だと思います。


* ダイデン商事広告 1978?
* 亜土電子広告 1978?
* 秋月電子広告 1978?

このころ信越電機商会が秋月電子通商に名前を変更しました。 "信越電機"、なつかしい響きです。

上の広告を見るとMN3005が他のBBDとは別格にとても高い値段です。 MN3005は4096段のBBDだからなのでしょうか。 MN3005はメーカー製のanalog delayによく使われたICだったと思います。 KORGのSD400などはanalog delayとしてはかなり後発と言う印象がありますが(1978年だそうです)、MN3005とMN3007を併用したちょっと変わったdelayでした。

個人的には当時メーカー製のanalog delayとしてROLANDのDC10, DC50などを買ったと記憶していますがdelaytimeを長くすると F特(*)がかなり落ちてしまいanalog synthとはあまり相性がよくなかったようにも思います。

*: 高級機種においては複数個BBDを使うことにより欠点は少し改善されているようです。 BBDのclock rateを遅くすればdelay timeは大きくなりますが、前後に入るanti arias filterのFcはより低くならざる終えません。 逆にclock rateを早くすればFcをあげられますが delay timeは短くなります。 また通常filterのFcは固定のなので最も遅いclockに対して満足するようにFcを設定するため、clockが早い場合はFcが無駄に低くなります。 F特を重視しつつdelay timeも稼ぐにはなるたけ早いclockでBBDの段数を増やすことになるわけですが、段数を増やせばcostとさらにBBDではS/Nが不利になります。

最適なfilterのFcを設定させるためにはclockのレンジごとにFcを切り替えるようなことをすればよいのでしょうが多くの場合Fcは固定です。 上記のROLANDのDCシリーズにおいては clock周波数に追従してfilterのFcが可変するチョッパー方式のFCF filterというものを利用しておりFcがdelay timeで変化します。 DCシリーズはsynth専用のdelayと言うわけでもないのでどちらかと言うとdelay timeを重要視してその分F特は犠牲にしたような設定になっており他の楽器やMICをつなぐ場合はよいのですがsynthには使いにくかったような印象があります。

ROLANDのDCシリーズと言うとDC10、DC20、DC30、DC50という機種があってDC50 (1977)が一番初めに発売されました。 このDC50だけ他とデザインが異なりRE201などのEcho Chamber系です。 その後DC10(1978)が発売されさらにDC30(1978)、DC20(1979)と続くのですが DC30の前にDC30より高機能のDC60だかDC70だったかの型番の機種が雑誌広告に登場したのが記憶に残っていますが発売されずじまいでした。 ネットで検索するとDC60と言う型番のDC50によく似た機種の写真がHitするのですが、雑誌に載ったのはどちらかと言うとDC30系列(*1)だったのでそれとも異なります。 当時の広告記事を取っておけばよかったと今になれば思います。 この例以外にも広告等でアナウンスがあったのに事情があって発売されなかった機種と言うのが各社何機種かは存在するようです。

Analog delayと使用 BBD

*Roland DC50 MN3001 * 2 49500円 (2048段)
*Roland DC10/20 MN3005 * 1 /49800円 (4096段) F特 1.5Khz@delay400ms
*Roland DC30 MN3005 * 2 NE570 /65000円 (8192段) F特1.5Khz@delay600ms
*Korg SD400 MN3005/MN3007 NE570 /54000円 (4096段) delaytime 400ms
*Yamaha E1010  MN3005*4 /MN3004 NE570 / 108000円 (16384段)
             F特 8Khz@delay10ms / 2Khz@delay300ms

*1:
その後このsiteを見てくれた方からDC70の雑誌情報を頂きました。 DC10の下に新製品予定のDC70。 確かにDC10と2段重ねに写っていた宣伝の記憶があります。

ハンドル付きで2Uのラックマウントのようですが、機能的にはDC30とほとんど同じと見うけられます。 Mode Selector SWが全く同じ。 これを見たらROLANDのDigital Delayで同様にSDE2000の前あたりに宣伝はあったか発売されなかった機種があったような記憶が??。

上記のDC50に良く似たDC60と言う機種というのもよく見たらDC70と明記されていました。 幻のDC70は2っ存在したということでしょう。


* 6: 1978以降 *

・ MS20


1978年になるとメーカーのsynthesizerの低価格化が始まります。 modular synthで はKORG MSシリーズ、ROLAND system100Mが登場します。 KIT, DIYではないですが 他の製品に比べればかなりこちらよりの存在だと思います。 その証拠に1979年のトラ技にKORGの広告が掲載されたりした時代です。


* 10万円以下のsynth KORG MSシリーズカタログ

超低価格のpatchingができる semi modular synthでした。(full modularにしたらこのコストではできません) PSシリーズで得たコストダウン技術を利用した、まさしくKORGの第二世代 analog synth。 このカタログは当時、私にとってはかなり衝撃的でした。

MS以前のKORGのsynthというのは独自のパラメータが多いせいかとっきにくかった のですが、MSシリーズで突如、正統派かつ安価な patch synthが登場してきてびっ くりしました。(要は新世代のスタッフが設計に関与といった所でしょう。)  analog synthというと 1V/oct仕様がスタンダードですが、KORGはKeyboard CVに関してはExpo出力でVCOの音階入力はHz/V仕様です。 これはこれで正しい合理的な選択だと私は思います。

Hz/VなのでYAMAHAのCS monophoicとは接続できました。 KORGのKey CV電圧変化の半分がYAMAHAのKey CV電圧変化です。

MS20のVCOは実際はHz/V、Oct/V両刀使いで、antilogも簡略化された物ではありません。 またantilogのscale温度補償はユニークで同軸ケーブルの先端保護用のビニールキャップを使用していました。これでもそこそこの温度補償はできるようです。 温度補償を完全にするには該当箇所の金皮抵抗をtempco抵抗に変えればよく、現在ならtempco抵抗は比較的容易に入手できると思います。 実際、後に発売された完全独立moduleタイプのMS50のVCOはtempco抵抗による温度補償がなされていました。

KORGのVCOと言えば国産1号機synthである700の時代からPUTが使用されてきましたが、 このMS20からは従来のPUT VCOの改良型が採用されこのVCOはKORG最後のVCO synth Poly6まで使われました。 この改良型VCOは Tr.で構成したPUTにdiodeと Tr.接続の diodeを追加して性能の向上を図っておりこの MS20VCOから分周の助けを受けずに構成できるようになりました。

このVCOのcore部分も実際は PS3000シリーズで採用されたVCOがベースになっています。

*: KORG 3Tr. + diodeのPUT VCOの動作



* MS20 main基板

特殊な部品を使っていない(KORG35(*2)以外は)のにもかかわらず部品点数の少ない基板。 部品の実装方法が第一世代より合理的になっています。 それにしても回路の簡略化技術がすごい。

MS20は長期間、製造された機種で途中でKORG35の供給が途絶えることになった為か、OTAの13600を使った同様の正帰還S&KのVCFに仕様変更されました。 82年の初めにはすでにOTAバージョンのVCF基板に変更されいましたがいつから変更されたかは?です。

これは前期/後期バージョン(*3)ということでよく知られていますが、それと同時にVCAも改定されています。 MSのVCAはtransistorの飽和領域での抵抗動作を利用した VCRですが 初期versionはtransistor 1個で非線形歪の改善は負帰還のみ、新versionはtranistorを2個使いにして非対称歪を解消しています。 動作的には差動増幅回路の動作と酷似しており、差動増幅の+出力と-出力を加算(一方は反転加算)した結果と同様な効果が得られるような巧妙な構造になっています。 以下の回路をよく見ると構造が差動回路と似ているのがわかります。  この2Tr VCAはTRIDENT以降に採用されたKORGのoriginal VCAで色々な機種に使われました。

 *: 2Tr. VCAの構造
 *: 2Tr. VCAの動作原理

*2: KORG35はVCFのICですが、KORG35の自体は個別部品で構成されたハイブリットモジュールであり特別な部品で構成されてはいませんでした。 このこともあってネット時代になって海外のDIYerの要望からメーカーサイドが回路図を公開するというできごとがおきました。

ICの回路図が公開される以前、実のところはKORG のGuitar synth X911のVCFがKORG35を個別部品で構成させた回路だったためX911の回路図を所有していた人にはKORG35の構成は承知のことがらだったのです。

KORG35を個別部品で構成したVCFは後にmonotronのVCFにも採用されました。 これは構成がシンプルであることと、単電源でも使用できる回路だったからでしょうか。

*: KORG35の3っのTr.の動作原理

ハイブリットモジュールと言うことでは国産初のanalog synthesizer KORG 700もVCO / VCF/ VCAにモジュールが使用されておりそれらを個別部品で構成させたのが後のKORG 770でしたので上記の例とよく似ています。 KORGに限らず、国内、海外のsynthでもこの70年代前半期にはハイブリットモジュールを使ったsynthがいくつも存在しました。

 *3: 正確には3versionありごく初期のMS20のNOISE回路はFETを使った物でした。


・ Oct/VとHz/V

MOOGはVCOのpitchとCVの関係を1V/octで対応する仕様にした為、VCO側には EXPO変換回路(antilog AMP)が入り、 KBD CVはLINEARな電圧変化を出力することになりました。(OCT/V仕様)。  これはvoltage controllというanalog synthを象徴する仕様の一部でもあります。 一方この方式を取らず Hz/V方式と言うVCO側は入力電圧と発振周波数がLINEARな仕様すなわちKBD CV等のCV側にEXPO変化をもたせた方式を採用した代表的なメーカーが KORGとYAMAHAでした。

OCT/V方式の場合はVCOのpitchの上げ下げが現在印加されているCVとは独立に別の電圧の加算、減算で済むというメリットがあります。 すなわちKBD CVをかけておいて別のCVでpitchの上げ下げが可能。 逆にデメリットはantilog AMPの温度ドリフト対策が必要なことです。

Hz/V方式はantilogがVCO側には無いのでantilogの温度補償が必要ないというメリットがあるかわりにVCOのpitchの上げ下げはKBDCVを含む現在のCVの集合値に対して乗算、除算が必要になる、すなわち単純にCVの加算、減算では対応できないのでその部分の対応がめんどうです。 またKBD CVと同様 LFOなどのVCO modulatorに対してEXPO特性を持たせる必要が出てきます。

このため Hz/V方式と言っても実際にはOCT/V方式を併用して KBD CVだけはHz/V , LFOなどのmodulatorに対してはOct/V仕様の入力側に接続することとし、KBD CVに対してだけ乗算、除算をするような構造となるようになっている物が多いと思います。

KORG MSのVCOは一般的な antilog AMPの Iref入力に EXPOのKBD CVを印加するしくみになっており、KBD CVに対して抵抗分圧で乗算、除算を行い Octave selectができる合理的な設計になっています。 すなわちMS はHz/V synthといいつつも普通のoct/V synthと同様の antilog ampを積んでいるわけでspanの温度補償が 簡易型だと言うことです。

Hz/V方式の semi modular MS20は若干特異なsynthではありますが、KBD CV出力がEXPOであってもMSシリーズだけで完結している(full modularのMS50などとつなぐ)分にはmodular synthとしての破綻はほとんどないでしょう。 あるとすればVCFを発振させKBD CVで音階を出そうとした場合音痴になると言ったことぐらいでしょうか。

*  MS20の Hz/V Oct/V 共用 antilog AMP

oct/Vが主流であることは事実なので雑誌等に掲載されたDIY synthは PAIA等一部を除くと、やはり oct/Vでした。  YAMAHAは1号機のGX1から最後のanalog poly synth CS70Mまで Hz/V方式を貫きましたが、KORGの方は Key assignerのpolyphonic Tridentとpoly6は基本 oct/V方式になっているのですが、よくよく回路を見るとantilogは一つしかありません。 これは考えようによっては1個のantilogはEXPO出力のkey CV出力回路であって各voiceのVCOは Hz/Vというふうに見えないこともないというか設計思想的にはそう見るのが正しいようにも思えます。 いかにもHz/Vメーカーらしいアプローチだと思ってしまいます。

一方のYAMAHAは EXPO出力のKey assigner ICを早くから開発し使用しています。 このこともあってYAMAHAのCS80等のpoly synthはCPUを使っていません。 YAMAHA最後のanalog poly synth CS70MのみがCPUを使っており この機種だけがKey CVに関して EXPO出力のDACで対応しています。 DIY poly synthにおいてもoct/V仕様が 普通ですがCS70M / Poly6を参考にしてHz/V polysynthを作ると言うアイデアはどうでしょう。


* SYSTEM 100M


* カタログの一部のページ

DIYerと相性のよかったsynthがROLAND system100Mだと思います。 100MもMS20と同じ年の秋に発表されています。 1978年秋のオーディオフェアーでこの100Mは発表されました。 この100Mは各moduleがばら売り可能であったことも魅力的でした。 moduleの中にはNECのTK-80用のI/F unitもあったのですがこれは数台作られただけで一般的でないということか?実際は発売されませんでした。 System100M自体は多くの方々が当時所有していたでしょう。

庶民のModular synth 100Mですが5 unit格納ケースと5 moduleを購入すると23万程度はしましたしさらにKBDを付けると25万以上してしまいます。 まだまだsynthは高価であったことは確かです。 module類はsystem700のmoduleをほぼ網羅していましたのでsystem700を買えない物としてはかなり魅力的であったことは確かです。 私の場合は84年ごろになって中古のModuleを14個、ケースを3個買いました。 そのころには中古で5module+ケースで3.5万程度で購入できました。


* お買い得なVCO module 112

100Mはパネルがアルミダイキャストという点もユニークでこの為、家にある100Mも40年近く経っているわりにはmodule外観はけっこうきれいです。 願わくばつまみ類、ケース自体がもっと高級感があれば存在価値がさらにあがったのにと思います。 最大の難点は個人的にはDIN jackを使った電源供給方法とスライドボリウムの質です。

100Mの筐体の全体のデザインが何かに似ていると思っていたらsynlabのmodular synthにとてもよく似ています。 synlab modularは1975年登場なので100Mよりも3年早いです。 参考にしたのか、偶然似ているのか?。

100Mは同じ機能の物が2っまとまって1っのmoduleになっているのが基本なのですが、moduleの中に111(VCO-VCF), 120(VCF-VCA)という変わったmoduleがあります。 これはカタログによっては写真が出ている物がありますし、実際楽器フェアーなどでも実物を見たことがあったように記憶しているので短期間は販売していたと言うことなのでしょうか。

100MもMS20と同様、販売期間が長かったせいか初期の物では基板のパターン面がはんだメッキの物、後の物はレジスト処理された物や基板の材質の違い、内部コネクタの有無、ケース蓋にPOT調整用の穴の有無等いくつかのバリエーションがありました。 特にVCOはケースをはずさなくても1V/Octのスパン調整が出来るように後の物では改善されています。

また100MにはおそらくROLAND 初のカスタムOTA chip BA662(*1)が使われました。 かつてのROLAND synthでは CA3080が多く使われていましたが、いずれも選別して使っていたようでその手間を省く為にBA662が開発されたのでしょうか。 この時代 synthに カスタムchipを使用していたのは半導体製造部門を持っているYAMAHA(*)だけでしたがこれ以降各社がカスタムchipを使用するようになっていきます。 時同じくして海外では SSM, CEMのsynthsizer専用chipが開発され使われ始めるのでした。

*: key assignerなどのdigital chipは自社製ですが,VCO等のanalog synth chipは設計は自社でも製造は他社(三菱等)に依頼していたようです。

海外のanalog synthメーカーとしてはそれ以前MOOGがpoly MOOG(1975)開発時にpolycom IC(DM8670)という chipをNSに発注しています。 全鍵polyであるpolyMOOGの各鍵盤個々に対してsynth機能を持たせる為にcustom chipが必要だったのです。

1: 同じ1978年発売のSH-1/SH-7まではVCF/VCAにCA3080が使われており、100M以降のSH-09/SH-2,JP4などにはこのBA662が使用されており、SH-1/SH-7が最後のCA3080使用のsynthとなりました。 個人的にはBA662のキャラクターは好きではありません。 後に発注先のRhomからBA6110というSIPのOTAが一般に販売されました。

  * System700 (1976/04) CA3080
  * SH-1  (1978/01) CA3080
  * SH-7  (1978/03) CA3080
  * SH-09 (1978/10) BA662
  * 100M (1978/11) BA662
  * SH-2  (1979/03) BA662
  * Jupter4  (1979/03) BA662

* この中でSH-1がsystem700直系の回路構成だと思います。 スライドVRのノブも700と同じ物を使っていました。 とてもよいsynthだと思いますが、とても短命でSH-09にとって変わってしまいました。

analog 電子楽器に使われたcustom chipですが、YAMAHAは CS80、 CS10といったsynthあたりから VCO、 VCF、VCA、 EG、 Key assignerなどの chipを使っていました。 IG00151、IG00153、IG00156 など多数。 ROLANDは上記 BA662を皮切りに VCF用にIR-3109やhybridIC等。 KORGは80年にSSMのICを使い始めたので 自社custom chipの使用は遅れ83年のNJM2069が始め。 正確には digitalの MSM5232/MSM6235の方が先となります。

* MSM5232(*)はKORGが沖電気に生産を発注したcustom IC ですが一定期間経過後、沖電気から汎用chipとして外販された為KORG のsynth以外でも使われたICとなり、有名な所では国産のアーケイドゲームの音源として使用された為、現在でもこの音源のファンがいるようです。 FM音源以外で楽器メーカーが作ったこの時代のchipが外販される例はめずらしいのではないでしょうか。(とは言うもののFM音源のように一般には外販されていないので製作記事等はありません。)

*:このころから楽器関係でもdigital回路において Gate Arrayが利用できるようになるため自社で半導体を製造できるメーカーでなくとも custom chipが設計できるようになっていきます。

 * MSM5232 ---- SAS20 / POLY800(II) /PSS50等で使用
 * MSM6235 -----DDM110 / DDM220 / MR16 / PSS50等で使用

これ以前ICメーカーが作るtone generator chipは CPU使用を前提としないORGAN的用途の全鍵発振用とか1979年ごろになるとパソコン/ゲーム機用のPSGなどがありました。 

  * AY-3-0214(GI): top octave devider:
  * MK 50240(mostek) : top octave devider:
  * S10430(AMI): devider keyer:
  * SM304(siemens): Keyboard Encoder:
  * SM305(siemens): Organ Tone Generator:
  * TMS3617(TI): Multiple Octave devider/keyer

上記のchipは国内外のKBDやDIY記事にも使われたorgan系のchipです。
S10430は5232同様4octave分の矩形波をfeet mixするタイプの音源chipですが全鍵発振用です。  MIDI以前は音源moduleと言うのもほとんど存在しませんが以後は多くのmoduleが出現するわけで、 上記のorgan ICはKBD(鍵盤楽器)を想定しているので音源moduleには少々使いにくいかとも思われます。  80年代に入るとCPU使用が前提となるためkey assignerに対応した、register mapに値を指定するタイプの音源になります。 5232は上記のS10430を時代に合ったように使いやすくしたchipとも言えるでしょう。

S10430はIC 1個で22keyしかまかなえないので、鍵盤数に応じて複数個のICが必要です。 さらには全鍵発振では各鍵盤にGATE回路が必要になり複雑なenvelopeを作ろうとした場合とても大変です。 これに対して5232は8音polyですが、簡易(AR/AD) EG内蔵でこのchip 1個で poly 音源が実現でき、さらにはsolo出力、noise gen.も内蔵していました。 またA/Bグループ各4音に対して別のmaster clockを設定することも可能でした、 当時の使い方としては音源出力以降に固定のtone filterを付ければ low costの ensemble音源が出来る為 Lowcost Ensemble Generatorなどとも言われました。 1980年ごろにはCASIO tone 、 YAMAHA porta sound といった 安価なdigital polyphonic KBDが出現している時期でもありこれらの初期の製品はこのような規模すなわち digital tone generator + analog tone filter群で構成されたensemble KBDだったわけです。 MSM5232もこのような製品に対応すべく開発された chipなのでしょう。 実際5232の初使用はSAS20といういわばKORG版のporta tone, casio Toneに該当するkeyboardでした。

この為5232は沖電気から外販されるとなんとROLANDのEM-101(1986)と言う音源BOXに使われることになりました。 EM-101は上記のように固定filterを設けるのではなくKORGのPoly 800のように1個のVCF(IR3109)/VCA(M5241)という構成になっています。 この当時ROLANDがKORGのICを使っているという噂があったことを思い出しました。 これが真実だったとはと今になって思います。 これなどは service manualが容易に入手できる時代になってならではの確認事項かとも思います。

SM305はdraw bar organ用のchipで各feet 出力が独立してmixingされて出てくるのが特徴でこれはS10430も同様です。 SM305/SM304の登場によって各社から9本ドローバーのORGANが続々登場しました。 これらのchipが出現する前の1970年代前半まではAY-3-0214などのtop octave devide以降の分周は汎用ICで行う為回路がとっても複雑でした。 ROLAND VK1(1978)と KORGのCX3(1980)の回路を比べると複雑さの違いがわかると思います。

9本 drawbar organはHAMMONDクローンですから当然sin波なのですがICの出力は矩形波なので固定filterにかけて出力をsin波近くにしています。 この場合単純にfilterを装備すれば 61Key*9=549のfilterが必要になるのでSM305においては1octave key 内の同じfeet出力をひとまとめにして出力し出力はoctaveごとに5個の出力になりそれぞれにFcの異なるfilterを設けるので9本drawbar分では9*5=45個のfilterで済むことになります。 1octaveの鍵盤内の同一feet出力に対してfiltertが1個なので波形は音域で少し変化てしまいます。  このこともあってKORG CX3等は hammondとも違う独特のキャラクターがあるように思われます。 またS304は5octave鍵盤で2個使い、SM305は3個使用することで9本 drawbar分の分周を処理、harping matrixと言う機能でどのfeetを分周させるかを指定する構造のようです。 この時代のICとしてはかなり複雑です。

TMS3617は SM305/SM304の機能を1 chip化したような ICで 1chipで 1 octave分をまかなえますが、draw bar出力は6本しかありません。 この為ROLAND VK09とか Firstman FO999s などのlow costのORGANに使われたchipです。

国内ではYAMAHAが自社製の音源chipを使っておりたとえばこの時期だとSKシリーズ(1980)などには7音のpolyphonicのtone generator chipが使われていました。 あとは海外では5232と同時期の1982年にSID(6581) chipが登場しています。  80年代初頭はanalog synthのoscliiatorのDigital化が始まる時代で、それに必要なIC chipが開発されていきます。 ROLANDもtimerを使ったDCOの後にαJUNOでは専用の6voiceのDCO chip (MB87123)を開発しています。

* NJM2069はCESのCEM3378/3379 SSMのSSM2047タイプのICでデビューもおそらく同時期の複合chipでありより柔軟な構造になっており、国内のanalog synth chipとしては大規模な魅力的な chipと言えるものです。 NJM2069は外販はしていなかったので以下の古いsynthから部品をはぎとるくらいしか入手手段はないでしょう。 また DATA sheetも流通していないので詳細はわからんchipと言うことです。 手元にDW8000のVCF/VCA基板があるの何かに応用できないかと考えます。

* NJM2069 --- poly800(II) / SG1(D) / DW6000/8000 / EX8000 / DSS1 / DSM1
         DDD1の(dsb1) で使用。

* 意外かも知れませんが CASIOのKBDにもanalog synth chipが搭載されています。 CASIOのhybrid synth HT6000などに使用されていたVCF chipが確かNJM2090と言う型番でした。


MS20, System100Mは同じ年に発売された庶民のModular synthですが設計思想が全く異なります。 MS20はとにかく各機能に対して部品点数を極力減らした回路が使われていてこれは元々全鍵PolyphonicのPSシリーズの1voice分をグレードアップして Monophonic synthにしたてあげたようなものなので、各moduleの独立性は重要視されておらずpatch接続も可能なsemi modular synthと言う位置づけです。

一方のsystem100Mは正にsystem700のローコスト版なのでFullModularな構成となっており正統派な回路構成のmoduleといった感じです。

MSシリーズは Hz/VなのでKeyboard CV出力は当然 EXPOとなり MSシリーズ単独ではなく他のOCT/V synthと混ぜて使う場合には大変都合が悪かったため MS02と言う antilog AMP, log AMPを内蔵した変換UNITが存在しました。 これなどは考えようによってはとてもDIYerサイドの商品であったように思います。 MS20同様、antilogの dual trにはビニールキャップが付いていました。 MS02もtempco抵抗無しです。

MS02については当時、冨田勲氏がCS80に複数のMS02をつないでCS80をOCT/V化して使用した(おそらくMC-8につなぐためか?)写真が雑誌に掲載されていたのを思い出しました。

またMS20には特殊な部品が使われていなかったこともあってか35年たった2013年に一部を現代化してMS20MINIとして復刻されました。(個人的には20世紀のうちに復刻されればより興味ぶかかったとは思います。)

MS20は回路がシンプルなことから、ネット時代になって回路図が流通するとMSのVCO,VCF等を自作する方が多く出てきました。 回路はシンプルですが回路動作はとても複雑です。  また逆に部品点数は多いですが100Mは回路がMSに比べて素直なのでanalog synthの基本回路を学ぶにはもってこいな存在だと思います。 どちらもDIYerよりのsynthだと今になれば思いますが、当時は service manualなどは見るすべもありませんでした。

ROLANDはaudioフェアーに積極的に参加していたり、patchのできるmodular synthを作っていたりしていたのでDIY的にはなじみが深いメーカーでした。 一方KORG、YAMAHAといったメーカーはよりKeyboard Player向けの製品を作っていたためたとえばKORG 700Sなどは当時は意外ととっきにくいsynthでした。

1977年になると楽器フェアで、KORGからはpatchingができる、まるでmodular synthのような風貌のある意味system700を意識したようなpolysynth PS3300/PS3100が発表され、さらに翌年にはMSシリーズの登場で一気に身近なメーカーになったようにも思います。 PS3300は144台のmini synthが内蔵されているという常識はずれのsynthでもありました。 一方YAMAHAの方も1977年の楽器フェアでCS30が発表されます。 これは完全2系統のVCO/VCF/VCA/EGさらには8stepのsequencerを備えたYAMAHA版のmodular synthに対する回答といった機種でpatchingこそできませんがそれを補う形で実用的な各modulatorのselect SWが配置された機種でした。 CS30を楽器フェアで見た時にはわくわくしたものです。

上記のようにMS20,100M、SH1等は特殊な部品を使っていなかった(*)のでこれらの回路図が入手できるようになるとかなりDIYには参考になります。 一方YAMAHAはCS30のころはすでにYAMAHA製のcustom chipを使っていたので回路図が入手できるようになってもDIY的には大きくは参考にならないのは事実ですが、回路図をよく見ると専用IC以外の部分の回路には参考になるようなアイデアはいくつも存在します。 ここらへんがdigital synthの回路図とは異なる analog synthの回路図にのいいところだと思います。

*: 100M/SH1はuA726が特殊な部品ではありますが用途はわかっているので。
 MS20もKORG35は特殊ですが回路構成がわかっているので。


・連載記事



* 初歩のラジオの連載記事   電子展望の連載記事

この二誌の連載(初ラ.山下春生氏/電子展望.今関洋一氏)はとっつき易い内容でした。
上の写真を見ると両者とも時代を感じさせる、サイマルシンクのオープンデッキ (SONYとTEACの)が写っています。 

上の写真のように初ラの製作記事は40年近くもたっているので黄ばんでしまっています。 製作記事は当時毎号買っていたように思っていましたが、初回と直接製作に関係の無いと思われる2回分の計3冊分は買わなかったようで不足していたので数年前に国会図書館のサービスを利用して揃えました。

山下氏の記事は78年だと思っていたのですが、再確認すると77年1月から78年3月まででした。 以前からModuleのまとめ方、panelのレイアウト等がROLANDの100Mと共通するセンスを持っていると思っていたのですが、100Mよりこちらの方がデビューは早いわけです。  勝手に察するに、両者はsystem700をお手本にしているのではないかと想像します。

今関氏の方は80年4月からでProphet5が78年に採用した SSM2030なども使っています。 こちらのパネルデザインはおそらくPolyfusion(*1)を意識したのだと思われます。 国内の雑誌でSSMのICを使った製作記事はおそらくこれが初。 但しこれは参考と言うことで部品の数値等は明記されていませんでした。 VCOはあともう一種類リセット型のVCOでこれにはuA726を使用して温度補償しています、 製作記事の中で確か CA3080を使用したVCFは当時作ったと思います。

 *1: よく記事を見たらpolyfusion ライクなのはVCOのみでそれ以外はMOOGのパネルデザインを参考にしているようです。

初ラの製作記事は最もわかりやすい記事でしたので、VCO,VCF,VCA, EG, PhaseShifterなどを確か作ったと思います。 特にモリリカのMCD521を使用したPhaseShifterは効果的で作ってよかったと思わせるmoduleでした。 synth製作の雑誌記事で基板の配線パターン図が掲載されたのはこれが始めてだったと思います。 それだけでも従来の記事に比べてsynth DIYの敷居が低くなり追試をした方が多かったのではと思われます。 現在でも国内の DIY synthにおいて知名度がNo1 なのもわかります。

初ラのシンセと言うと下図の基板(ICB-95)が多用されていたので私もこれを買って製作しました。 個人的にもこの万能基板は好みなので現在でも数枚確保していますが、秋月の基板などと比べるとベークのくせにかなり高価です。

* 訂正 *
この基板ICB-95だと思っていたのですが製作記事をよく見るとKELの5710-900-22という基板でした。 と言うことは当時、私もKELの基板を買って製作したのだと思います。 それから何十年かたってICB-95を見つけた時に初ラで使っていた基板だと思って購入したのでしょうか。 ただこの基板とKELの基板は22pinの端子も同じで大きさもおそらく同サイズの物だと思われます。 さらに電子展望の記事を確認したらこちらもKELのこの基板を使っていることを発見。 こちらの方は端子も有効に活用して端子にコネクタを接続する仕様のようです。 初ラの記事を読んでいたらフィリップスの小型抵抗を使うとすっきりまとまるというくだりを発見。 WAVEKITと同じ抵抗ですね。


上記の80年の電子展望の記事の連載終了後、数ヶ月後には "より楽器らしいポリフォニックシンセサイザ"という今関氏の新しい連載が始まります。 これはMOOG opus3、 ARP omni、 KORG delta 、ROLAND rs505と言ったsynthと同様な全鍵発振のsynthの製作記事でした。 確か電子展望の表紙に製作中のシンセの写真が掲載された号があり、パネルにはPETRICK 製のSWが使われていたのを思い出しました。 さらに81年6月からは"プログラマブル・ポリフォニック・シンセサイザの製作"の連載が始まっているのですが、この連載は記憶に残っていないのでこのころには電子展望を購読していなかったのでしょう。 このころの電子展望を探して読んでみたいものです。

2015/2月に上記の山下さんが”アナログシンセ資料室”と題したサイトを立ち上げており往年の初歩のラジオ モジュラーシンセの全回路図を公開しておられます。 70年代synth DIYについては海外物の情報に比べて国内情報が皆無な状況にあってこれは画期的なできごとだと思います。

 *: 書籍化に伴って回路図の掲載は無くなりました。



analog synthのhardに関する情報は電子回路の雑誌の連載記事で得られたのですが、同時に1976年に創刊した音楽誌ロッキンfでも得ることができました。 ロッキンfは創刊号から楽器用の電子工作記事が掲載されそれが1回でなく毎号連載されるという画期的な雑誌だったのです。 創刊号はFETを使った MIXER だったと記憶しています。 当然analog synthのhardに関する記事もありました。

とにかく音楽誌にDIY記事というのが画期的だったと思います。 少なくとも電気雑誌のような堅苦しさが無いかっこよさがありました。 当時はわかりませんでしたが今になって見ると海外電気雑誌の楽器よりのDIYに触発されこのような連載が発生したのではないかとも思われます。


* ロッキンfの77年、78年ごろの analog synth特集記事の表紙。

* 第二世代のsynthesizerはこれだ!(1977/06 11P) by 峰雅彦&フェイズ・ロック・グループ

特集ではsynthの回路も(VCO/VCA/EG/Key)のっていましたが電子工作記事としてsynth module全般を作るとという企画はついにありませんでした。

VCO,VCAは初歩のラジオの回路とほぼ同様の回路、(VCOは全く同じ。初歩のラジオは1977年1月から連載) ですが、antilogのscale補償にサンスイのトランス(ST73)をtempco代わりに使うというアイデアが書かれています。  1977年10月のWireless Worldにもよく似た回路が掲載されています。

EGは555を使った物、Key CV回路はdual voice対応の回路。 VCFの回路は無し。 VCOとVCFの基板の写真が出ていました。 これは以前ロッキンfで写真が載った峰氏製作のsynthの基板のようです。 さらにHz/V VCOに対応したpolyphonic key assigner回路の原理図が載っていました。 このassignerのexpo CV発生回路はR2-R ladder + multiplexer / decoderを使用した有用な回路です。 これを1chipにIC化したものがYAMAHAのCSシリーズなどに使われているkey assigner回路ではないかと想像します。

* オルガンの新しいかたち、それがポリフォニックシンセサイザー(1977/10 10P) by 峰雅彦

写真真ん中の記事はpolyphonic synth特集でYAMAHA GX-1,KORG PS3300, MOOG PolyMoog, Oberheim 4Voice等が掲載されていました。 特にKORGのPS3000シリーズはこの号が発売された月に発売されたほかほかの新製品でした。

当時GX-1, POLYMOOGは現物を見たことがあったのですがOB4Voiceは初耳でした。 その年の楽器フェアで現物を見ることになるのですが現物は圧巻でとにかくすごかったです 。

* Synth wars  by Phase Rock Group(1978?/?? 11P)  菊池公一 峰雅彦

写真右の特集ではこの時点で手に入るsynthの一覧や、1978年になってあいついで登場した国産低価格mono synthの特集をしています。 mono synthに関してはVCO,VCF.VCA等の回路形式の一覧表もありました。

1973年に国産 monophonic synthが登場してから5年後の1978年には各社がpolyphonic synthesizerを発表しており、また SH-1, CS-15, MS20などの第二世代 Low cost monophonic synthesizerが登場しています。 この当時のsynthの新製品はとにかくインパクトがありました。 偶然と言うか現在 CS-15,SH-1,MS-20(基板のみ)の3機種は所有しています。 (全てもらい物)


YAMAHAのGX-1が世界で最も早く登場したpolyphonic synthで1974年です。 1978年にもなると各社がpoly synthを発売しており1978年/11のUSAのKeyboard誌には特集記事があり以下の機種の詳細が紹介されていました。



  * Emu 4060 polyphonic scan Keyboard (197?)
  * Oberheim 4Voice (1975?)
  * MOOG Poly MOOG(1975)
  * RMI Keyboard computer II(1977)
  * KORG PS3300 (1977)
  * ROLAND JP-4 (1978)
  * YAMAHA CS-80 (1977/5)
  * SCI Prophet 5 (1978)
  * ARP QUADRA (1978)
  * MULTIVOX MX3000 (1978)

すでにProphet5が登場しています(*1)。 YAMAHA,ROLAND,SCI,OberheiがいわゆるKeyAssignerを使ったPoly synthで KORG,MOOG, ARP, Multibox(Hillwood)が全鍵発振タイプの音源を使用したsynthで,RMIはDigital KBD( (1周期Wave Table?)です。 E-muの4060はE-Mu modular用のpolyphonic Keyboard controllerです。

 *1: 上記の雑誌広告は最も初期にUSAのkeyboard誌に掲載されたもの。

この中でRMI Keyboard computerは有名ではありませんが、この当時UTOPIAのliveでRoger Powellが使用していたのをVIDEOで見たことがあります。 また1977年ごろのI/O誌にも初代のRMI keyboard computerの話題が出ていました。 MULTIVOX MX3000とEmu 4060については私は現物を見たことがありません。 QUADRAはTony Banks 使用で有名ですが、analog synthの中で屈指の外観デザインのsynthだと思います。

QUADRAと言えば確か1993年、状態のかなりよい中古が石橋の新宿店に置いてあり価格は15万ほどでした。 とても気にはなったのですが購入しませんでした。 今考えるとどうして買っておかなかったのかと後悔しています。

analog polyphonic synthへのアプローチとしては organベースの全鍵発振のpolyphonic synthesized ORGAN とも呼べる物、純粋にmonophonic synthを必要voice分集めてkey assignerで処理する方式があります。 key assigner的な発想がなければ必然的に前者となるわけです。 世界初のanalog poly synthはYAMAHA とMOOGが同時期に発表しています。 YAMAHA GX1は key assigner方式ではありますが計35台のmono synthを内包するシステムで後にも先にanalog音源のkey assigner方式では最大の物です。 このような物が今から40年も前に出現していたことがすごいです。

一方MOOG Poly MOOGは全鍵発振方式で各Keyに対して音源はmaster 発振を分周した音源が割り当てられ、それ以降のwave shape/VCF/VCA/EG等が各鍵盤に独立に配置される構造となります。 鍵盤数(71鍵)だけ処理moduleが必要になるためこの方式では処理moduleは通常のmono synthに比べて簡略化された物になってしまいます。 またoscillatorに対する変調はmaster clockを変調することになります。 事実Poly MOOGでは簡易VCFは各鍵盤に付くもののmain VCFは全体で1っと言う構造になっています。 同様な構造のKORG PS3100では鍵盤数を48鍵に減らすことや回路の簡略化でVCFの省略はなく全鍵盤に対して付いています。 とは言えこの方式を取ったanalog polyphonic synthesizerはPOLY MOOGとKORG PSシリーズ(別名POLY KORG)のみで CPU使用が普通になれば必然的にKey assigner方式のpoly synthが作られていくようになり、MOOG、KORGとも後にkey assigner方式のMemory MOOG、Tridentを他社より遅れて発売します。 key assigner方式になれば全鍵発振では問題にならなかった発振器の安定度への対応が課題となります。

これらに対して上記のQUADRA/MX3000のpolysynth部分のような準polyphonic synthと呼ばれる機種では基本 string ensembleの発展系なのでVCF/VCA/EG等の処理moduleはおまけ的に音源の後に1系統という構成でごまかしているものがほとんどです。

1978年時点ではDIY,KITともにkey assigner方式のpolyphonic synthはまだ登場していません。 メーカーでさえ擬似poly synthを作っていたりしたので当然ですがORGANやStringsSynthの類の製作記事/KITはありました。 PAIAのORGAN KITが1978年、String synthsizer KITが1979年。 ( 国内でも1978年に電子展望にPOLY SYNTHの記事がありましたが手元に資料が無いのでkey assigner方式かどうかは不明。)

polyphonic synthの前段階としてROLANDのRS09/SA09というpolyphonicのORGANの類(全鍵盤発振)にVCFを1個かましてpoly synthもどきにするという使い方がありました。 当時はこれはうそPolyphonic(*2)などと呼ばれており 上記のARP OMNI,ROLAND RS505やKORG PE1000などがその元祖だったと思います。

これとは別にPOLY音源ということではKey assigner方式をいち早く取り入れた ROLANDのEP-09というanalog PIANOがありました。 これはTimer ICを音源として使うという画期的な試みでもあり、直後に ROLAND Juno6というDCO poly synthが生まれてくるのです。 DIYerの間でも貴重な安価なPOLY音源としてこのEP-09(*1)やRS-09は人気がありました。

*1: EP09は数年前junc品が1000円で出ていたのでなつかしさもあって買ってしまいました。 電源が入らないということでしたが、中身を空けてみると半田のクラックがあったので半田を付け直すと正常に動作しました。  外観は非常にきれいで30年以上も前の機材とは思えないくらいでした。 但しSW. volumeの埃流入防止用のフェルトは劣化していましたが。

*2:
strings synthsizerにVCFを1っ付けたKBDの元祖的な存在はARP OMINでした。 polyphonic synthが一般化する以前やlowcost poly synthが出るまでの時期には各社がこの手のKBDを出していました。 またこの時期 KITや雑誌記事でもstrings synthsizerはいくつかありましたがVCF搭載の機種は電子展望の今関氏の記事くらいしかありません。

* VCFが1個の poly KBD *
・ARP OMNI(1975)
・KORG PE1000(1976)
・ARP OMNI II(1977)
・ROLAND RS505(1978)
・EMS Poly Synthi(1978)
・CRUMAR DS1(1978)
・ARP QUADRA(1978)
・MULTIVOX MX3000 (1978)
・MOOG OPUS3(1980)
・KORG DELTA (1980)
・YAMAHA SK(1980)

* DIY/KIT *
・String synthsizer (PAIA) (1979)
・ETI String thing (1979)
・SPERIMENTARE / STRING SYNTHESIZER (1979)
・電子展望 /より楽器らしいポリフォニックシンセサイザ(1980)

ARP OMINIは全鍵発振の音源を元にstrings sectionとsynthesizer sectionが並列に存在する形を取っています。 OMNIではさらに独立したBASSとBASS synth sectionを搭載しているわけです。 他の機種もOMINIにならって同様な構成の物が多いです。 OMNIとよく似た機種にROLANDのRS505がありかなり機能的にはOMINIの影響を受けた機種でした。 この505はparaphonic505という名称を持っていました、

このparaphonicと言う造語は上記のように共通音源で複数のsectionを持つKBD、 すなわちvoice layerができる KBDと言う意味のparaphonicと言う意味だと思うのですが、昨今ではVCFが1個のうそpolyphonic synthを指す言葉になっているようで個人的にはこの使われ方にはとても違和感を感じます。

このいわゆるparaphonic 方式のsynthとして最大規模の機種がARP QUADRAで
・string BASS/ BASS synth section
・Strings section
・Poly synth section
・Lead synthesizer
の4sectionを内包していました。

Poly synthになるとより発振器の安定度が重要になります。 ROLANDではTimer ICを使ったDCOの前段階として特殊なVCOを用いたSH-7が1978年にデビューしており、メーカーもより安定度を重視したVCOということを強調しており、その延長線上にpolyphonicのJP4(1979)や2VCOのPROMARS(1979)の新VCOが登場します。 さらにCPUを使うことが普通になってくる1980年代になればその思想を受けついてTimer ICによるDCOが出現するのも当然のなりゆきとなるのでしょう。

一方、普通のVCOを使ったpoly synthにおいてはAuto tuneと言う機能がprophet5から搭載されました。 すなわちそれ以前のpoly synth たとえば OB 4voice、 CS80、 Jupter4などにはAuto tuneと言う機能は搭載されていません。 auto tuneは各 VCOのscale, offsetずれを計測して結果的に正しい発振周波数になるようにCV側でそれに対する補正値を増減する機能です。 prophet5以降 autotuneという機能が一般化しましたが国産poly synthは意外と採用している機種は多くありません。 これは海外のpoly synthに比べてantilog typeのVCO polysynthが少ないこと、DCO等のdigital oscillatorへの移行が早いのも原因かとも思います。

KORGのPoly6は表だったautotuneのSWは付いていなのですが内部ではfull timeの hardwareによる antilogに対するauto tuneが実行されていると言うユニークな機種です。 これは6voice分のantilogを共用しているから可能なようなアイデアでもあり、Hz/V 方式を採用していたメーカーだから考え得た方式なのかも知れません。

完全なるPOLY synthが登場する以前のこれらの準POLY synthと呼べるような機種は各社各様の簡略化技術とも言うような工夫をこらして回路が出来ているものが多く Poly synthとしてはかなり不完全なのですが、 回路的には楽しめる存在です。

これらの準POLY synthの多くは全鍵発振の音源にVCFが一つという構成なのですがVCF用のEGに対するトリガリングがsingle triggerのものが殆どです。 これはmono synthと違ってmulti trigger検出は回路を工夫しないとできないからでそれを可能にした機種にKORG の DELTAがありました。 この機種はさらにVCFのKey followも付いているという優れた機種でした。

1980年代になるとkey assigner方式のpolyphonic synrthの製作記事が国内外でいくつか掲載されています。 これはCEM/SSMのICの入手が容易になったことを受けてのように思いますが記事の数はごくわずかです。 やはりanalog poly synthはDIY/KIT化するのはたいへんということなのでしょう。


この翌年の1979年には一冊まるごとanalog synthの製作記事を掲載した、シンセサイザーの実験と工作という書籍が発売になっています。


* ミュージックシンセサイザーの実験と工作

  * Module一覧

BUCHLAぽいsynthが写っている書籍カバー。 

この書籍の画期的なところは掲載されている回路が基本的にMOOG modular(15,35,55以前のI,II,IIIがベース)とBUCHLA modular(100シリーズ?)の回路であるということです。 また著者は白砂昭一氏でいわゆる電気畑の方ではなく音楽畑の方が書かれた synth DIY本というのもユニークな点です。synthの回路自体は第一世代のanalog synth回路ということでtransistor主体の回路でしたので当時はたいへんとっきにくかったです。

この本に出ているMOOG 904AVCFは1999年に作りました。 掲載されている回路図とプリントパターンが異なっていました。 具体的にはresonance周りの回路が異なっています。 基本的にこの製作記事の回路図は MOOGのoriginalと同じなのですが回路図通りの接続をさせると正常に動作しませでした  プリント基板の方が正解です。 これに限らず当時の製作記事には間違いもよくあるようなので回路動作をよく理解してから製作した方がよいということをあらためて感じたケースでした。

MOOG moodularのコピーをしてみようとVCF以外にもこの本に載っているVCO/VCA/EGの部品をそろえて袋に分けてしまってあるのですが今だに作るにいたっていません。


一冊まるごとsynthの製作記事という本はこの本のほかにも当時2冊ほどありました、一冊は上記の電子展望の今関氏の記事をまとめたもの(+ ROLAND技術陣が書かれた回路解説記事.. シンセサイザーと電子楽器のすべて 1980/1981 誠文堂新光社)と他方は電波新聞社から出ていたもの(シンセサのすべて1978 ラジオの製作の連載をまとめたもの)です。 (2冊とも30年前は所有していましたが現在は所有していません。)

シンセサイザーと電子楽器のすべては近所の図書館にありました。 synthの回路も載っていますが、analog電子PIANOの回路にかなりのページをさいています。 1978年というmono synthは一段落してpoly phonicのKeyboardの開発が次のテーマになっていたのをうかがわせます。 事実1979年には新しい設計思想を持ったEP09という電子PIANOが登場しています。

当時この本を購入した時、System100のVCOの回路が載っていたことに喜んだことを思いだしました。 確か部品の定数は書いてなかったと思いますがそれでもメーカーの回路図が見られるというのは貴重でした。

ラジオの製作に掲載されていた synth DIYについての記憶は各moduleに対してとても高いケースを使用していたという印象しか残っていなく回路自体は記憶にほとんど残っていません。 と言うのも同時期に初ラに掲載された山下氏のsynthの方が自分の望みに近かったからだと思います。


電子楽器工作本としては下の2冊の本も有名でしょう。(それぞれ何バージョンかあるようです。 下のものはVer3と1982年版)


上記の表紙のエフェクタ入門は確か1982年の夏ごろ購入しましたが、初歩のラジオの DIY Effectorの連載は1981年から1982年にかけてあったようです。 初ラ関連では石原マサト氏が有名かと。 この本でも上記の今関氏、石原氏も著者として名を連ねています。 さらに1982年に石原氏は無線と実験誌に本格的なFrangerの製作記事を発表されていました。 この時代に無線と実験に楽器関連の製作記事が掲載されるのはめずらしいことです。 この記事の切り抜きを当時は保管していたのですが紛失してしまい、数年前に国会図書館のサービスを利用して手に入れました。

自作&操作術の方は毎回メーカー製機種の回路図が1っくらい載っていたのがうれしかったです。 上記の号にはBOSSのCE-2, YAMAHA(実はKORG)のOC-01の回路図が載っていました。 別の年の号には CMU-800の回路図が掲載されたように記憶しています。 自分の場合は初めに発売された本と上記のversionの2冊を買ったと思います。

雑誌掲載の製作記事としては上記、国内外の連載記事のように電子展望、トランジスタ 技術、初歩のラジオ、ラジオの製作、各紙に記事がありました。


1978年には他にもanalog synthやKeyboardを特集した別冊本がいくつも出ていました。 ちょっと変わった所では音楽の友社が発行していたロクハンという雑誌がありました。 この雑誌は1975年創刊だそうで当時、カセットデンスケなどによる生録ブームを背景に誕生した雑誌ですが1978年にもなると synthを使った録音というテーマで別冊本が出ました。


左:表紙 右:1page目のイラスト

ロクハンの別冊ということで他誌とはかなり異なる内容。 シンセの一般的な解説の他にシンセの録音を中心に書かれています。 当時この種の別冊本では定番だったバッハリボリューションの田崎氏のスタジオや神谷スタジオが写っています。 平沢進氏の録音講座の記事があったりSH-1の基板の写真が掲載されていました。 

シンセの内部基板を見れるだけでも得をした気分になりました。 録音と言うことでは 4Ch MIXERの製作記事が載っていました。 回路としては初ラの山下シンセのaudio MIXERや上記エフェクター入門に載っていた 4CH MIXERと同等な回路でしたがこの種の本に回路が載るのは画期的。 当時作ったような記憶があります。

右の図面を見ると記憶が蘇ってきます。

*:
上記ロクハンの資料を提供して下さった方から連絡がありこれは別冊でなく通常の号内での特集であるとのこと。 表紙を良く見ると隔月刊とあり1978/12月号としっかり書いてありました。  別冊でなく(隔)月刊誌としてこれだけ充実した内容とは驚きです。


同じ1978年初歩のラジオの10月号に何度目かのシンセサイザー特集がありました。  この年は上記のように国産第二世代のシンセがたくさん登場した年でもあって、高嶺であったシンセが初ラの読者にも購入可能範囲に入ってきたころなのだと思われます。 すでに初ラでは山下シンセの連載が終了していた後ですが、この特集では回路まわりの話題は無く、一般的なシンセの紹介記事になっています。 ここでもSH-1がフィーチャーされています。


この時期ヨーロッパの電子工作系の雑誌では国内、USA以上に豊富なSynth工作の記事 が掲載されていたようです。 当時は全く知りませんでしたが私の場合は1994年ごろ FORMANT modulaerやDIGISOUND80やmaplinの記事のコピーを海外から取り寄せ購入しま した。 今ではこれらを含めて多くの掲載記事がNETで見られるようになりましたので 国内記事よりも海外記事の方が簡単に手に入るという状況です。(上記雑誌掲載記事一覧を参照のこと)

雑誌とかsynth製作本ではありませんが、リニアIC実用回路マニュアル( 横井与次郎 / ラジオ技術社)は analog 電子楽器の回路に使えそうな例も多く、参考書として有用でした。 実際メーカー製品の回路の中にもこの本からアイデアを得ているような回路もあります。


1978年以降、synthesizerの制御にマイコンが使われるのが当たり前になっていきます。そのさきがけとなったのがROLAND MC-8,JUPITER4, CR78,SCIのprophet5でした。 この傾向は当然ながら多少遅れてDIY,KITの世界でも浸透していきました。

ASCII誌 1980年12月号では Digital Sequencer CM6の製作記事が掲載されました。 これはAPPLE-IIにつないで使うMC-4ライクな 6CHのCV,GATE信号発生ハードウェアとソフトウェアの記事です。 ちなみにROLANDのMC-4はこの年のオーディオフェアーでデビューしました。 1980年にもなると内外各社からいわゆるパソコンが続々登場した時期でもありましたし、マイクロコンピューターを利用したsynthsizerの自動演奏と言うのは格好のネタでした。

上記のWaveKITでも79年にTK-80を利用した自動演奏UNITが発売になっていますし、当時のマイコン誌である月刊RAM,月刊マイコン誌でもこのようなsynthネタがありました。 また同様に上記のエフェクタ自作&操作術81にもMZ-80を利用したsynthの自動演奏記事が出ています。

Wave Kit 4Ch Music Box System

* 月刊RAM誌(1979)のMUSIC SCRAMBLEという特集記事で紹介されたWaveKitの4ch Music Box System。  値段も手ごろで当時としては先進的なシステム。 現在でもこれを参考にして作ってみても面白いと思います。

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NECのTK80の発売が1976年で、PC8001が1979年、 MZ80が1978年、APPLE II, PETが1977年だそうです。 I/Oの創刊が1976年でASCIIが1977年、月刊マイコンは1977年、月刊RAMは1978年の創刊だそうです。

マイコン(パソコン)+synth を利用した自動演奏がより一般的になっていくのは少なくとも国内では1982年にROLANDから発売されたCMU800からではないでしょうか。 あとは上記のPAX ELECTRONICAが PC8001用に作ったルンルンシンセというシーケンスソフトもこの時期にありましたがこれは外部ANALOG SYNTHをコントロールするものではなくPSGを音源とするものでした。

* 上記のCMU800の84年版カタログを見ると対応パソコンは11機種にも及びますが全て8bitマイコン対応のようでPC9800などには対応していなかったようです。

さらに83年以降のMIDI時代になるとCV,Gate interfaceがいらなくなるためCMU-800のSOFTとしてのシーケンサー部分が独立して知る人ぞ知る CP-YOU社のRC/98などというMIDIシーケンサーソフトが登場していくのでした。(* 有名なレコンポーザの前身SOFT) 

 

このソフトはCMU800から派生したソフトであったことからかCP-YOU社の専用I/Oカードを用いることでMIDIの他にCMU800をもコントロールすることが可能でした。 とはいうものの実はROLAND製のPC98用のMPU401 I/Oカード基板には CMU800用のコネクタのパターンが装備されれおり部品を追加すれば(他のCMU800 I/Oカードのエッジコネクター部分を取り付ける)CMU800をつなぐことができる裏仕様があったためこの改造をCP-YOUですることによりCMU800にも対応できるという意味だと思います。

レコンポーザの前身と言うこともあってFile管理がDISK BASICを使うことと画面解像度以外は基本的な操作はレコンポーザと同様であったと記憶しています。 ファイルの拡張子は確か.CMPだったかと。 このソフトはMSDOSでは動かなく、データーファイルもDISK BASICでしか読めませんのでDOS上で読むには変換ソフトは必要だったと思います。

このソフトはまだ捨てずに持っているのですが(*1)、このマニュアルの裏を見るとCP-YOUの秋葉店が文京区湯島のカクタビルにあると書いてあります。 この場所は確か秋葉の鈴商の近くの交差点から湯島天神方向にちょっと行ったところだと思います。 このCP-YOUというお店では当時ROLANDのJX-3Pの改造とかもしていたように記憶しています。

*1: FDは5インチ。 なのでもし動かすにはFDDが5インチのPC98とMPUも必要。
  この時代はまだPC9801/E/F/M とかの時代でその後にVX/VF等の機種が登場。
  FDDは5インチが主流で8インチのFDDもまだ普通にあった時代。
  MSDOS版レコンポーザーはMPUとRS-MIDIどちらにも対応していましたが
  これはMPUのみ対応。

  最安価であるPC9801VFでも当時 定価が34万円くらい、実売価格28万程度。
  これとセットになるカラーディスプレイが 8万程度はしました。
  当時これらを買いましたが FDDが 2DD仕様で後からコンピューターリサーチの
  2HD対応KITを別途購入。 20MbyteのHDDも5万くらい出して買いました。
  さらにMPUとこのソフトを買ったわけでかなりの出費
  当時実用に使えるパソコンはとても高かったことを思いだしました。

* レコンポーザーの前身と上で書きましたがこのソフトの説明書にはしっかりレコンポーザーと書かれているのでこれが元祖のようです。

調べて見るとCP-YOUと言うショップはROLANDの関連会社だったようでまた,CP-YOUのスタッフの方々がレコンポーザーのカモンを立ち上げたそうです。 

ちなみにanalog synth用の CV/Gate タイプの DIGITAL Sequencerとしてはプロ用ではROLANDのMC-8が1977年、MC-4が1980年です。 アマチュア用としては同様にROLANDのCSQ-100が1979年で69000円、CSQ-600が1980年登場で10万9000円です。  また上記PAX Electronicaの章でも紹介したSYGNUS-4 (198000円)があります。

これに対してCMU800はメインの処理をパソコンで処理させる為、本体としては1982年で65000円です。  8chのCV outとEP-09相当なpolyphonic音源、さらにTR606相当なDrum音源が内蔵されていたお買い得な機材であり DIYerよりな機材でした。 当時のメジャーなパソコンそれぞれに対応した形になっていましたがたとえば PC-8001を使ったとしてPC-8001が約17万でしたのでCRTモニターを4万程度としてもあわせれば27万前後の出費が必要でした。

それ以前ではEMS, SCI, oberheim , E-mu等がDigital Sequencerを出していましたが機能の割には高価なものでしたし、リアルタイム入力が基本です。

SCIのsequencerで思い出したのですがUTOPIAの1975年の日本公演でKeyboardのRoger Powellが確かこれ(model600?)を使っていたのを思い出しました。 おそらくこのsequencerが出てまもないことだったのではないかと思います。 (1992年の日本公演でも出たばっかりのK2000を確か使っていました。 1977年?の公演ではGX1を使用)

EMSのsequencerはEMS universal sequencerと言って AKSからsequencer部だけを独立させたものだったと思います。 AKSよりだいぶ後になってから発売されたもので確かUKの雑誌に載った紹介記事を切り抜いて持っていたのですが今はありません。 EMSのは確か256 stepでした。

すっかり忘れていましたが当時 ROLANDの CSQ600を持っていたことを思いだしました。 後にCMU800も持っていましたがこれは1980年に初めて買ったパソコンの PC8001につないで使いました。

CMU800は正確にはROLAND本体ではなくAMDEK(後にROLAND DG)と言う関連会社から出た製品でAMDEKでは半完成タイプのEffector KITや A/D、D/Aコンバーターなどが同時に発売されていました。 Effector関連のKITは主にBOSSやROLANDのすでにある製品をKIT用に少しアレンジしたような物が多かったように思います。 Effector Kitといえばこのころ石橋楽器がBIASブランドでいくつかKITを発売していたことを思いだしました。 確かPhaser KITは買った記憶があります。 KITではありませんが Drum Synth BS-1, BS-2なども発売していましたね。 これは海外では CORON DS7として売っていたようです。

DIYのsequencerは国内でもASCIIの物以外に1980年前後にいくつかあったと思いますが、記憶に残っているのは上述のエフェクター自作&操作術81のTK-80を利用した1CH sequencerや、同じくTK-80を利用した8CH sequencer(新村氏),ともうひとつDR55タイプのDigital sequencer DM-55(沖田氏)がありました。

CSQ100が出る少し前か後くらいにナショナルから200音くらいの単音演奏を記憶できる音源付き(矩形波発振)のメロディ演奏器が発売されており、ロッキンfでも紹介されていました。 15000円程度だったので購入した記憶があります。 使ってみるとGATE OFF区間がなく全部音がつながってしまう仕様でかつ単調な音色なのでそのままでは使い物になりませんでしたが、MS20のESPに入れてPitch抽出をして Pitch -> CV変換を使ってそれをVCOに入れるとシーケンサーもどきになりました。 そのままではEGをトリガーすることができず、gate 検出をするためには analog synthのKey CV -> gate 検出回路のような回路を作る必要がありましたが安価ではありました。

CSQ600が登場したころにTR808が登場しました。 TR808はSYSTEM700でanalog rhythm音源を作ってそれを簡略化したものを音源にしたような構成になっており、当時としてはリアルなDrum音源で、演奏機能部分も Digital sequencerの技術を受け従来のプリセットリズムからprogramできるようになったりと当時の analog synthesizer技術が生かされているわけです。 TR808に限らず1980年前後のRhythmマシン、たとえばKORGのKR55Bなどもanalog synthesizer技術が簡略化されて入っているわけです。 一方DIYにおいて、いわゆるsynth DRUMのDIYというのは内外とも結構あるのですが、本格的なanalog Drum音源を使ったDIYのRhythm マシンというのはDIY記事/KITともほぼ無かったように思います。(簡易的なものはありますが.. 1980年代前後になるとPCM rhythm machineが登場してきるので analog rhythm machine自体は衰退していきます。

この時代のrhythm machineとしてDIY的には忘れてはならないのが、TR808とはある種、真逆にある簡易型のDR55(1980)です。 CPUを使わず hard logicだけで program が可能な方式を採用したrhythm machineということもあってDIY的にも魅力のある音源でした。 DR55の亜流rhythm machineもKIT,製品ともにいくつも作られたようです。 上記のDM-55のprogrammer部分もDR55の回路をお手本にして作られたものです。



1980年に続き 1981年にはASCII誌で2回目の synthesizer特集があり、今回は SN76489を使った SE音源、 PSGを使った 音源の制作に加えて フェアライト CMIの解説等がありました。

パソコンが普及してくると音を出す為のDigital音源chipが色々登場しこのころの代表的な chipがPSGでした。 上記 SN76489はPSG系の音源ですが、同メーカーの SN76477/SN76488はSE用の音源として内外の電子工作系雑誌で多く取り上げられた音源chipでした。 調べてみるとトラ技の1978/10月号にも製作記事が出ています。 SN76477は基本的にはVCO, NOISE GATE+EGで構成された音源 chipですので製作記事では効果音発生器としての使い方がほとんどでしたが、唯一polyphony誌でDrum synthの音源、synth用の音源/modulatorとして有用に使われていました。

digital音源chipと言うと1983年のMSXの登場後YAMAHAのMSXにFM音源が使われていましたがいくつかのFM音源chipが外販されたりして秋葉の部品屋でも購入できるようになった1986年ごろには雑誌でもこれらを使った音源の製作記事がありました。 FM音源登場以前の楽器系音源chipとしてはCommodore 64(1982)に採用されたSID(6581)がありました。 これは 3 oscillator,  3 amp, 1filter(LP/HP/BP), 3EGの構成でとてもanalog synth ライクな構成のchipでinternet時代になって再評価されたchipで一部で今だに人気があります。 DIYer注目のchipらしくかつて、1984年ごろのpolyphony誌に4回ほどSIDに関する特集記事がありました。 SIDは Sound Interface Deviceの略ですが、私などはかつてのSF TVシリーズ謎の円盤 UFOのSID (Space Intruder Detector) を思い出してしまいます。

SID(6581)の開発メンバーは後にENSONIQ社を立ち上げlow cost Samplerの Miargeを発表します。 Mirageの心臓部は通称"Q-chip"と呼ばれる DOC 5503が使われていました。 このchipは後にENSONIQ初のanalog Hybrid synth ESQ1(*1)やApple II-GSにも使われました。 ESQ1のvoice構成は上記の SID chipに酷似していました。

*1: ESQ1の構造はOSCの後にDCAが付きその後にVCF/VCAという流れになり、OSCが3系列あるということ、かつ1周期のWavetableで振幅の変調が個々にできる、digital OSCながら sync, OSC outでDCAに対してAMが出来、matrix modurationでmodulatorも豊富なので、音源のくせはあるもののかなり幅広い音作りが可能なsynthで現在でも存在価値のあるanalog synthだとあらためて思います。 私もESQ1とESQMを所有していますが、ESQ1の方はdisplayが壊れてしまい直しようのない状態ですがESQMの方は30年たった現在でも問題なく動いています。 ESQ1はいくつかのユニークな mode(*2)を搭載しています。 analog synthは他社よりかなり後発ですがキメの細かい仕様がすばらしい。

1987年にROLAND D50が出るとENSONIQはそれに対抗すべく、1周期のWavetableにプラスしてshort sampleのPCM波形の追加、擬似reverb用にEGを拡張したSQ80投入します。 short sample波の追加はDOC5503が元々sampler用のICだったので可能なことでした。 88年ごろのkeyboard誌にD50 KillerとしてのSQ80の過激な広告が載ったのを思いだしました。 とはいえDigital Effect内蔵、short sampleとは言えSQ80のPCM波形より良質なPCMを搭載したD50とは同じ土壌で勝負するのは不利だったようでENSONIQは1989年に完全digitalのVFX(PCM容量は1.5Mbyte 21voice)を発表します。 すなわちSQ80はVFXが出るまでの時間稼ぎ的な機種だったのでしょうか。 VFXも1programで最大6layerを基本とするESQ1に劣らない個性的なsynthでした。 ESQ1以来ENSONIQ ファンになっていたのでVFXも当然購入しました。 このVFXは少々フライング気味に発売されたようで半年後にsequencerを装備して Drum Sampleを追加、さらにはFDも付いたVFX-SDと言う機種が発売されてしまいました。 これはある意味KORG のM1の対抗機種と言うことなのでしょうがVFXを買った身としてはたまったものではありませんでした。

*2:
・Voice restart Controll
ONで reset assignになるようで、同一keyを弾くたびに同じ voice moduleが assignされ ます。 OFFで後着優先。

・Envelope restart Controll
ONの時は同一keyを弾くたびに releaseが残っていてもEGは resetされ0レベルからスター ト。 OFF時は直前の レベル(release)を引きずります。

・Oscillator restart Controll
ONの時は一般の sample playback音源のように波形が始めの pointから再生され (1周期波形ではありますが)、OFF時は Free Run動作をするので開始位相はランダムと なります。  つまりPIANO等の sampled wave formの場合はONで使用し、 SAW、SQUARE等のclassic waveformの時は Free Runにすることで analog oscillator的 な動きをさせるというような使い分けが可能です。

・Envelope cycle Mode
ONの時は EGが drum音源のような trigger ドリブンになり、EG再生中に鍵盤を離しても EGの各segmentの TIMEが0でない限りその時間分 EG動作が実行されます。  OFF時は通常動作。

* ESQ1/ESQM parameter一覧
* SID parameter

* DOC5503
32 oscillators
8bit volume resister / oscillator
16bit frequency register
oscillator mode:
 * Free-run
 * Swap
 * Loop
 * Sync/AM
wave memoly: max 128Kbyte



* 7: USA雑誌/ SSM/CEM IC *


USA雑誌


この時代、海外の雑誌としては USAの keyboard誌が入手が容易なのでよく買っていました。 この雑誌でも analog synth関係のDIYがCraig Anderton氏のコーナーなどでこの時期ちょくちょく出ていました。 またKITメーカのPAIAが発行してた polyphonyというsythesizer DIY関係の雑誌がありました。 上記のCraig Anderton氏が編集長の時期もありました。 この雑誌はメジャーな物ではないので通常は入手困難でしたが当時ほしい雑誌のひとつであり、私の場合80年代になってからなんとか入手することができました。 

 * KBD Craig Andarton Electronic Project 一覧

上記の表を見ると1979/12月にはすでに多機能のmultimode Identity Filterの製作記事が発表されています。(上の写真がそのパネル) これはかなり画期的で当時この記事を読みながらあこがれたものでした。 だた使用しているICがCEM3320だったので当時はまず入手不可能でした。

ちなみにこのmultifilterは、
  01: LPF 24db/oct, HP 24db/oct
  02: LPF 18db/oct, HP 18db/oct
  03: LPF 12db/oct, HP 12db/oct
  04: LPF 06db/oct, HP 06db/oct
  05: BPF 12db/oct, BP 06db/oct
  06: lopsided BP(low freq slope 06db/oct , upper freq slope 18db/oct)
  07: lopsided BP(low freq slope 18db/oct , upper freq slope 06db/oct)
  08: Bandpass plateau response width small dip
  09: HP + notch
  10: all pass dual notch .. notch freq間隔選択可能
  11: all pass single notch
  12: sing notch (shallow/deep)

というmodeを持っています。 ネットを探せば回路図はみつかるはずです。


* Craig Anderton氏と言えばこの本も有名でしょう。 ロッキンfの元ネタ的 製作記事もあります。 また、Guitar Magazineや Modern Recording誌でも製作記事をいくつも発表していました(PAIAのKIT)。 当時は知りませんでしたが DEVICEと言うnewsletterも発行していたようです。

USAの雑誌ではあとRadio ElectronicsとかPopular Electronicsなどに Synth関連の製作記事が時々掲載されていました。(多くはPAIAのKIT関連) 上でも書きましたがヨーロッパの電子工作雑誌はUSAよりはるかに豊富なSynth関連の記事が掲載されていたようでその当時それらの存在を知らなかったことが残念に思えます。


* Popular Electronics 1979/9の記事(SVFによるEQ)

上のParametric EQの製作記事は実はKITの紹介記事でもあってPHOENIX SYSTEMSというメーカのKITでありました。 このEQを含めたこのメーカーのいくつかのKIT記事にNETで出会うことができたいへん感激しました。

ロッキンfでSVFのparametric EQの製作記事が出る以前にこのようなStereo 2Band Parametriq EQの製作記事がありました。 これはたいへん印象に残っていた記事で当時自作しました。 雑誌のプリントパターンを伊東屋で第二原紙にコピーしてもらって感光基板を作りました。

Radio Electronicsの掲載記事では Drum synth (PAIA The DRUM)の記事は大変興味深い記事で1980年当時、この記事を洋書屋(確か東京堂書店の洋書売り場)で見つけた時はときめきました。 このDrum synthはUTOPIAのJohn Willie Wilcoxが使っていたことでも有名かと思います。

あとはanalog synthの回路関連の情報としては 雑誌ではないですがElectroNotesの存在でしょう。 これも当時は存在を知りませんでした。 ElectroNotesから出ていた Musical Engineer's Handbook (USA 1975 bernie  hutchins)はよい本だと思います。 よりDIYよりでは Electro Music Circuit(barry Klein)という本がありこれも良著です。

 
* polyphony magzine * Keyboard    * Electro Music Circuit * MEH(ElectroNotes)

* 1977--1979 表紙
* 1980--1981 表紙
* 1982--1983 表紙
* 1984--1985 表紙
* PAIA Polyphony 製作記事の一部

 polyphony誌は当時のライターの方がNET上で紙面の内容を一部公開しています。


USAのこのような雑誌には部品屋さんの広告があり、SSMやCEMのICが通常の部品として購入できるようでした。 国内の部品屋さんではこの手のICは入手困難でしたのでうらやましく思ったものです。

* 当時のparts shopの広告

SSM2033が $10と書いてあります。 当時(1979年ごろ) 1$が220円くらい。  waveKITが短期間取り扱っていた時の価格が3800円(SSM2030)しました。



* CES社自身の広告 *

Polyphony誌に掲載された CEM chipの宣伝記事。 CESのICはoberheimに初めて採用されたこともあってか。この広告でもoberheimの2voiceのkeyboardが写っています。


USAのkeyboard誌の購入目的の主はsynthの掲載広告をみたいがためでもありました。 広告の中にはPAIAのKIT広告があり当時はあこがれでもありました。

   
* PAIA Hyper Flanger

PAIAの Hyper Flangerの広告にはあこがれました、 CEM3340をLFOとして使い、三角波の出力で自分自身にself modulation(LFM)をかけ analogでHyperTriangularity波(双曲線三角波)を生成させる PAIAの Hyper Flanger。  要はROLAND typeのBBD clock変調回路をシンプルな方法で構成した物。 これも Craig Anderton氏の設計で1983年のModern Recording誌に製作記事が掲載されていたと言うことをネットで知りました。  CEM3340をLFOに使うなんてなんてもったいないと当時は思いましたが、考えて見るとPAIAでこのICを扱っていたのでその消化の手段としても3340を使った設計と言うのは当然のなりゆきだったのでしょう。

* Hyper Flangerは1994年ごろPAIAから製作manualを購入しました。 製品はこの時期にはもう残っていませんでしたがmanualはコピーでなく当時の物が残っていたらしくそれが送られてきました。 その中にはプリント基板のパターン図も載っていました。 使用しているBBDがSAD1024だったので基板を作ろうとは思わなかったのですが。


* PAIAのKITカタログ

       

後に(80年代になって)このカタログを手に入れた時はうれしかったです。 このカタログはPAIAのラインナップが充実していた時代のものです。


* Modular synth KIT


USAの雑誌にはARIESの modular synth KITの広告がよく出ていました。 また当時は知りませんでしたが synthメーカのEMLが DIYer向けにmodular synthのKITを発売していたようです。 上記のPAIAも 2700,4700シリーズというKITを出していました。(上記PAIAカタログ参照)


* ARIESのModular synth KIT



* EMLの modular synth KIT(Electrocomp-EML modular Synthesizer system)

上で当時は存在を知らなかったと書きましたが所有していた雑誌の中にこの広告がありました。(上の左の画像。 その他の画像は90年代になって後日入手した、EML modular KITのData sheet,回路図等の情報をまとめた本から) またネット(matrix synth site)にはEMLのmodularの実物の画像がありました。

 * EML Modular synth KIT Module 一覧




* SSM/CEM IC



* Emu product catalog(1980)

上の画像は Emu社の当時の総合カタログの表紙です。 内容はmodular2000シリーズの各moduleの説明、 E-mu Audity(*1)の説明、Hobby productとしてのSSM ICのData sheetでまだ Emulatorはこのカタログには掲載されていません。

*1: Audityのblock図に当時ときめきました。 1980年当時の最も進んだsynthでしょう。 Polyphony誌(1981/11-12)にEmu社の創設者 DAVE ROSSUM , SCOTT WEDGE氏へのインタビュー記事 がありAudityの開発にも触れていました。


1970年代後半から1980年代、はては1990年代まで使われた(*1) SSM/CEMの synth ICです。 SSMのSSM20XXシリーズは E-mu社のDavid Rossum氏らが開発した一連のsynth IC、CEM33XXシリーズはCES(curtis)のdoug curtis氏が開発した一連の synth ICです。


* 刻印を見ると90年代後半の物もある。

*1:現在でもVCA関係のSSM ICは現行機種でありますし、CEMのIC(後にOn Chip Systemsとなる) もメーカー向けには作っているようです。

* 1990年代
     Waldorf Micro Wave
       CEM 5508 or PD508
       CEM 3389 or CEM3387 (VCF/VCA)
     Waldorf The Wave
       CEM 3387 (VCF/VCA)
       PD508
       SSM2024
     Oberheim OB-MX
       SSM2024( Quad VCA )
       CEM3374( Dual VCO )
       CEM3382( Dual VCA )
       CEM5508( Octal S/H )
     Marion MSR-2/Prosynth
       PA381(OnChip Systems / 旧CEM3381)
       PD508(OnChip Systems / 旧CEM5508)
       MS1215(OnChip Systems / waveshaper/VCF/VCA)
       MS1225(OnChip Systems / HRO)
* 2000年代
     DSI
       MS1215(OnChip Systems)
       PA381(OnChip Systems)
       PA397(OnChip Systems / waveshaper/VCF/VCA)

  * PA397/MS1215共にCEM3396タイプのICのようです。
  * MS1215がDSIの初期のモデルに使われていることにちょっと驚きです。

SSMのICは 1978年に SCIのprophet5に採用され、1970年代の終わりには自社のpolyphonic synthesizer E-mu Audityに使われました。 一方のCEMは oberheimの programable EG (CEM3310)に初めて採用されました。 以後 analog synthが polyphonic化するにつれて各社のsynthでSSM/CEMは使われるようになっていくのです。

一方 SSM/CEM chipはhobbist用に少なくとも海外では一般にも売られていましたしごくまれに国内でも短期間売られることがありました(*2)。

*2: 80年代になって国内のsynthでもSSM/CEM chipが使われるようになったのでそれを扱う代理店が存在したようです。 ちなみにSSM chipを使っていた国内メーカーは KORGとTEISCO(KAWAI)、CEM chipを使っていた国内メーカーはROLANDとAKAIです。

70年代には wavekitがごく短期間 SSMの chipを販売していました。 83年に日本のキーボードマガジンでSSMのICを使った製作記事が連載され読者が代理店経由(TALK studioというemulatorの代理店?)で Chipを入手できたようです。 海外ではPaiaなどもCEMchipの販売をしていましたし、ヨーロッパでは DIGI SOUND 80/2000などというDIYer向けのKITにCEM/SSM chipが使われていました。


CES社はその後 On Chip Systemsとなり90年代になっても一部の analog chipを作っていましたが analog synthの衰退とともに Digital Chipの方に進出し 1990年にSAM8905(*1)を発表します。 SAM8905は16voiceの汎用のDIGITAL sound chip だそうで FM, PM,Wave table等に対応できたそうです。

90年代になるとGM音源規格ができ各社がGM音源を発表するのですが、当時フランスの DREAMと言うメーカから GM(*2)音源が発売になったことがあり国内でも短期間売っていました。(当時石橋楽器が代理店だったような) その後 DREAM社は PCサウンドカード、MIDIドーターボード用の Sound Chipを供給するようになるのですがその sound chipは SAMXXXXという名称になっていることからOn chip system社が絡んでいたのは確かだと思います。 現在この SAMXXXXという音源chipは ATMEL社が所有しているようです。  ネットで調べて見ると Qvisionの MIDIStarと言う MIDIドーターボードにSAM8905が使われていました。

もう一方のSSM社もPMIその後はanalog devicesに吸収されたようで現在も汎用のVCA chip等は生産されています。

*1: 1990年2月号のトラ技で特集されていました。(SAM8905評価ボード ISA)

*2: ネットでこの音源の画像を発見。 名称は Dream SAM XRと言うそうです。 正確にはGM音源ではないようで99音色内蔵の16voice音源。確かにこのような変な形をしていたことを思い出しました。(DREAM SAM XR)


 
* Emu module      * Emu2000内部

上の画像は Emu product catalogに載っていた E-muのsub moduleです。 このカタログにはSSMのICも載っているのでこのmodularにはてっきりSSMのICが使われていると長年思っていたのですが、最近NETで見つけたE-muのmoduleの回路を見るとディスクリートの回路構成です。modular自体は1972年ごろから存在するようなので確かにそうかも知れないですね。(SSM chip自体は1977年から登場しているようです。)

E-muのModularと言えば1977年ごろでしょうか何の雑誌かわすれましたがpolyphonic演奏ができるmodular synthがあると話題になったことがあります。 なんでもその時の記事(*1)にE-muのmodularは専用のsynth ICを使っていると書いてあったように記憶していたので上記のようにてっきりSSMのICを使用しているのかと思っていたのでした。

*1: 記憶をたぐって見ると確かSTEREO誌の記事かなにかでPATRICK GLEESONが E-muのmodularにE-muが新たに開発したpolyphonic scan KBDをつないでpolyphonic modularとして使っていると言うような内容だったように思います。 このころはanalog synthといえばまだ一般にはmono synthの時代だったので印象的な記事でした。 netで調べてみるとPATRICK GLEESON(E-mu Polyphonic Synthesizer)とクレジットされているアルバムが見つかりますがこれははたしてmodularなのか AUDITYなのか、時代的には modularだと思いますが。


* SSM/CEM EvaBoard *

SSM/CEM ICにはそれぞれ評価ボードが存在しました。 SSMはE-mu IC Evaluation Board 1600というhobby用のKITを、 CEMはメーカ向けの評価ボードとしてCEV3301というボードを出していました。 SSMのもの(というかE-muの)は1970年代のpolyphony誌に広告が出ていました。 一方CEV3301の方は現物及び資料を1982年に確か見たことがあったとように思いますがさだかではありません。

* SSM *


このカードとE-muのpolyphonic scan KBDを利用してpolyphonic synthを作った例が ネットにありました。 またタンジェリンドリムがこのカードを使って機材を作ったと かいう情報をどこかで読んだような記憶がありますが(*)....

*: 上記のCardとは別物で、Blue Cardというcomputer controlledの 16 voice cardで一部のmusician向けに売っていたそうです。  これは 1Voiceあたり 6VCO、2VCF,2VCA,3EGという構成のboardだとか。 上記の雑誌記事はことによるとこのことを言っていたのかも知れません。(要調査)


* E-muのボード polyphony誌の広告より

comming soon lowcost VCF and super VCRTGとあるのは SSM2044とSSM2056のことで しょう。 さらにSSM 5010というevaboradがSSMから出てい たようです。 chip構成は SSM2033, SSM2044, SSM2022, SSM2056


* CES *


* CEV3301 CES発行のsynthesource(1981)より

CESが発行していたsynthesouceというNewsletterにCEV3301の記事がありました。
SyntheSourceの該当Page 1p  3p  4p

記事を見るとOEM以外の一般ユーザでもUSAでは当時CEM ICを扱っていたPAIAで入手で きたようです。 またヨーロッパでは当時CEM ICを使ったsynth KIT(DIGISOUND80)を 出していたDIGISOUNDがこのボードを扱っていたようです。

board上にあるPOTは半固定のvolumeでとりあえずはこのborad以外に何も足さないでも音が出せるということです。 さらに本格的に動かしたければ外部にvolumeを用意したり、DAC+multiplexerで複数のCVを用意してコントロールできるわけです。

どちらも所有はしていませんが、SSM/CEM両ボードともネットで資料(manual)を公開さ れているかたがいます。 たいへん貴重なものです。 このBoard(CEM)は80年代の初めころ現物を見た記憶がかすかにあり、その時にこの資料を見た記憶があったので、ネットでこれに出会えた時は本当にうれしくなりました。 

SSMのものは手持ちのChipでは対応chipが足りないので作ることはできませんが、CEMの方は手持ちの部品で対応できますので作ってみたいものです。


* Paia EKx CEM Evaluation Card *


CEMのeva boardということでは PAIAが出していた EKxシリーズがあります。 これはCEM3340, 3320,3310,3330の各ICの評価Board的内容のもので当時$30程度で売られており90年代中盤になっても在庫が残っていて$39程度で売られていました。 私の場合は94年ごろに購入しましたがさすがに現在では在庫は無いようです。


* PaiaのEkX board  Ekx10  Ekx20  Ekx30  Ekx40

VCOのEKx40が一番小規模な部品構成。 逆にVCAは2系統と言うこともあってか部品点数が多いです。 EGも外部CV対応(MIX)なので部品点数が多め。 この為メーカーのsynthではこのVCAを使う例が極端に少ないのかも知れません。 VCFもmulti対応なのでこれも若干多め。

* EkX boardを使ったSystemの例 EkX Voice  VCFのEG modにVRが入っていないのが不思議(というか新鮮)。

上のEkx関連と言うことではMIDI時代になってから

* MCVI (MIDI-control voltage interface/cpu)
* MV8 (MIDI-control voltage processor)


* MV8

と言う 8chの MIDI-CV I/F KITを80年代にPAIAは出していました。 PAIAのサイトにmanualが上がっていますが、実物の写真はnetを探しても出てきませんのでこれの存在を知っている方はわずかなのでしょう。 このKITは CV/GATE INと CV/GASTE OUT両方を持ったちょっと変わった I/Fでした。



海外では CEMのICを全面的に使用したDIGISOUND80というmodular synth KITがありました。 DIGISOUND 80の前のversionはSSMのICを使用したものでした。 その他 Elektor New synth, Poly formant, E&MM Spectrum Synthesizer, PAIAproteus1などのKIT,製作記事で CEMのICが使われています。


国内では1980年に電子展望の連載記事にまた1983年にキーボードマガジンの連載のsynthDIY記事にSSMのICが使われました。(上記 連載記事一覧 参照) キーボードマガジンに製作記事が載るのはたいへんめずらしいできごとです。 と書きましたがこの記事のタイトルはハンドメイドマニュアル2となっていますので実際はそれ以前にも大塚氏の製作記事(*1)はあったと言うことなのでしょう。 大塚氏の本と言うことではにたタイトルのハンドメイドプロジェクトがありこちらはguitar effctorのDIYです。 以前にそこに書かれていたRING MODULATORを参考にして作ったことを思い出しました。

 

ネットで探してみるとこれを追試した方のブログが発見できました。 また海外のサイトにおそらくこの連載記事で作者が製作したsynthそのものと思われるハードの画像がありました。 いかにも作者である大塚氏の作品といったパネルデザインです。

あとは国内ではSSM2040を使ったVCFの記事(上記のVCFと同様の回路のようです)がロッキンfに載っていたようです。 さらにトラ技でもVCF chipの紹介記事が1985年にあったようです。 このころは私自身は国内の雑誌記事をおっかけていなかったので上記のキーボードマガジンの記事も実際はだいぶあとになってから知りました。

このsynthの特徴はmixerのphantom電源のようにトランス+整流Block部分が分かれており、synth module側にregulator部分を装備していましたので全てが1っのケースにおさまることはできませんがすっきりした構成にはなります。 あとは基板のとめ方が少し変わっていたりととても参考になる部分も多いです。 またこの製作記事の電源は少し特殊で+/-15Vと+15V仕様になっており、2っ目の+15VはSSM2033のヒーターとMonitor AMPのLM380用だそうです。 なお連載記事の本文中で山下シンセにふれられており”私もこれで勉強させてもらった"と書かれていました。

あとはかなり本格的なケース、パネルを使用しておりパネル厚は3mmだそうで加工が大変そうです。 デメリットとしては3.5mmのジャックのナットが厚みでとめられないそうでどうも接着で対応しているようです。  やはりmoduler synth DIYの最大の難関がケースの選択、製作、加工だと言うことをあらためて思います。

このDIYではケース/パネル(X8)代で1.5万かかると書いてあります。 ちなみにSSM2033が 4700円、SSM2040が3500円で入手できたようですがちょっと高い気もしないでもないです。 と言うのはこの当時だとSYSTM100Mの5unit(5X2module)+電源の中古が3.5万で買えた時代です。 しかしSSMのchipの購入サポートがあったと言うのは国内のDIYでは初めてのできごとかと思います。

*1: 1981年2月から1982年9月にかけてハンドメイドマニュアルと言う製作記事があったようです。 かなり長期間の連載です。 当時キーボードマガジンは見ていたと思いますが、不思議と記憶には残っていません。  記事を見れば思い出すかも知れません。 20回の連載で上記マニュアル2とあわせると35回分あるわけで1冊の本になっていいような内容だと思いますが知る限りではそうはなっていないのが残念だと思います。

1982/06月号の記事を入手しました。 この号では万能VCFというタイトルでSSM2044を使ったEffector UNITが紹介されています。 万能VCFと言うことでてっきりSSM2040を使った多mode VCFかと思いましたが SSM2044で、内容は2044の前にHead AMPを置いたLFO Modが出来るVCFでした。 外部CV入力も付いており電池駆動のEffectorです。 ちなみにSSM2044は2500円で入手できたようです。 当時の定番タカチのTS-2ケースが懐かしい。 大塚氏の定番つまみも。

どちらにせよSSMのICを使った製作記事は国内ではめずらしいと思います。 ちなみにKeyboard Magzineはこの号で創刊3周年でした、 国内ではこの時期を境にanalogの製作記事は無くなっていきます。

1982年と言えばMIDI時代の夜明け前で、この号の広告にはVICTORのdigital KBD KB50や、ジャイアント馬場が宣伝したPortaSound PC-100などが載っています。 KORGのanalog PIANO SP80Sの宣伝も大々的に載っています。
 


CEM , SSMのICを使ったsynthと言うとprogramable polyphonic synth が多くを占めるのですが、modular synthでも CEM, SSMのICを使ったものもいくつかあります。 メーカー製の完成品としては Synton Modular3000シリーズ(*1)がCEMのICを使用してコンパクトな基板を実現しておりvolumeと基板間の実装方法もスマートな物となっています。 ネットで探すとその内部画像が見られるはずです。 残念ながら schematicsは見つかりません。 SyntonはHolland製でUSAではBig Briarから発売されていました。   synth以外では SCIのproFXというRACK Effectorや VOCEのSPINなどにも使われていましたしアーケイドゲームの音源としてCEM3394は使われたようです。 余談ですが昔MOOG社製のホッケーゲームと言うのをよく見かけました。 確か electronics by MOOGとか書いてあったような。 ロゴはMOOGそのものでしたが。

*1: CEM33XXを使用しているので3000シリーズでしょうか。 81年ごろ発売されたようです。 CEM chipを使っているmoduleは 3010 ADSR /  3021 VCO / 3224 VCF。 syntonの元メンバーの方が1999年ごろにFenix modularという新しいmodularを発表しました。 このころ私のサイトでmodular3000の情報を掲載していたところ開発者の Marc Paping氏よりメールを頂いたことがあり3000シリーズのいくつか情報を得ました。 

KITでは上記のDIGI SOUNDのほか,BohmなどいくつかCEM使ったmodular synth KITが存在しますが、資料が入手しやすのはDIGISOUNDです。 DIGISOUND80を扱ったDave氏のサイトにいくとほとんど全ての資料が入手できます。 個人的には80-C9 Voice Card、 CEM3391を使ったDev91などが特に興味深いです。 このサイトにあったCEMのapprication note APCEM-001も大変興味深いもので、これは CEM3374,3372,3371を使用したシンプルなVoice moduleの構成記事でとても魅力的です。

個人的には SSM . CEMのICは80年代にもらったりして入手し、さらにinternet時代になった94年ごろから90年代後期にかけて PAIA, Synthesis tech.,Wine country等で、さらには2004年ごろ国内から入手しています。 購入価格は安いもので1個350円くらいから高いもので1500円くらいでした。 まあ妥当な価格でしょうか。 また処分したSynthからICを保存(*)したりしています。 結構な数が集まってしまいました。

上記のようにPAIAはCEMのICを70年代末から販売しており、90年代中盤になっても在庫が残っていました。 Synthesis techは90年代半ばからかなりの種類のCEM chipを2000年代になっても在庫していたようです。 Wine countryは SCI製品のメンテなどをしている会社で私もSCIの中古synthを何台か買ったのですが、時々synth ICのセールをやることがあってCEM3394が安価で売っていた時に購入しました。

1995年当時Wine countryではProphet5のrev3.3 MIDIが $1500、Prophet600が$500程度で売られていたと思います。 当時1$=85円くらいなので、日本円で13万と4.5万くらいでしょう。 CEM3394は760円くらいでしょうか。

SSMのICはもらったものが多いのですが購入したのはSSM2024、これは確かMAPLINあたりで90年代中盤には普通に売っていました。 汎用VCAだからでしょう。 もう少し早く気づけばここでSSM2045,47といったICも購入できたのですが残念。 SSM2100はPAIAで購入しました。 これはSSM2033からanrtilog部分だけを抜き出したようなchipでμA726のような恒温槽タイプのもので出力は電圧、電流出力が可能です。 log AMPにもなります。  CEM3391,CEM3371は2004年に国内の業者から在庫処分で安価に購入しました。


* 所有Chipの種類一覧 *

セラミックパッケージは珍しいかも。
所有数はCEM3340が一番多いです。 CEM3340は最小の部品でfull仕様のVCOが簡単にできてしまうのがうれしいところです。


* CEM3340を使ったのVCOの例


2016年、CEM3340がまさかの再生産が開始されたようです。 上記写真の3340は1981年の刻印ですから35年経過していることになります。

このような内容のサイトをやっていますがここ十数年DIYと言うのをしたことがありません。 CEM3340再生産記念と言うか、少し前にCEM3340を使った簡単な実験をしたのでそれについて書いてみます。

* CEM3340 VCOの実験


メーカの synthでCEM3340を使っている synthは何かと調べてみると以下のような機種がありました。、

メーカー製synth
・ SCI Prophet 5 (rev3) * (Prog Poly)
・ SCI Prophet 10 * (Prog Poly)
・ SCI Prophet 600 * (Prog Poly)
・ SCI Prophet T8 * (Prog Poly)
・ SCI Pro 1 * (Mono)
・ Oberheim OB8 * (Prog Poly)
・ Oberheim OBXa * (Prog Poly)
・ Oberheim OBSX * (Prog Poly)
・ ROLAND Jupter 6 (Prog Poly)
・ ROLAND MKS80 * (Prog Poly)
・ ROLAND SH101 * (Mono)
・ ROLAND MC202 * (Mono)
・ ROLAND CMU810 (Mono)
・ Moog Memory MOOG * (Prog Poly)
・ Crumar Sprit * (Mono)
・ SYNTON SYRINX * (Mono)
・ SYNTON 3021 ?? (Mono)
・ Doepfer A111 (Mono)
・ Bananna Poly Synth (Prog Poly)
・ Steiner EVI (Mono)
・ CES CEV3301 (Mono)

DIY KIT
・ DIGISOUND 80 * (Mono)
・ POWER TRAN Poly synth * (Poly)
・ PAIA Proteus 1 * (Prog Mono)
・ PAIA EKX * (Mono)
・ Bohm modular (Mono)

DIY 記事
・ Elektor poly formant (poly/mono)
・ Elektor Newsynth(mono)
・ Keyboard
・ Polyphony
・ Modan Recording
・ Radio Electronics
・ E&MM
・ ETI

* 印の物は回路図があるので参考になるでしよう。
?? は使っているかどうかはさだかでないがおそらく使っていると予想。

メーカ製のsynthで20機種ほどです。 自分が昔所有していたsynthでもProphet5,Pro1, Prophet600,OB8,SH101,MC202と6機種ほどありました。 analog synthを支えたchipであることには間違いないようです。


CES 初のchipは型番通りVC EGの CEM3310(*1). その次がVCFの3320,さらにVCAの3330、最後に3340とと言うのが初期の基本chipになるようで VCOが一番後に出来たようです。 doug curtis氏は1971年にExponential Multiplierの設計で特許を取っており(*2)それがCEM3340に生かされているのでしょう。 VCFに関しては3320より後の物 (CEM3372など..)は設計思想が初代の3320とは少し異なるようです(*3)。

基本chipの開発以降は複合機能を同一chip上に配置するsystem chipが開発され、各synthメーカーの要求する機能を持ったICが設計されていきました。 たとえば

SCI社用に設計された CEM3394 (Trakシリーズ/MAX)
HORNER-------> CEM3391 (PK250)
Oberheim ----> CEM3396 (Matrix6/1000)
Ensoniq ----> CEM3328 (Mirage)
Emu --------> CEM3387  (E-III)  など。 
   これらの chipは後に他社でも使われましたが。

*1: oberheimからのリクエストを受けて製作したchipのようです。

*2:これはdavid blackmer氏のexponential回路の特許をかわす為に考えられたそうです。
**:海外ではexponentialという表現が多いのに国内ではなぜかantilogと言う表現一辺倒。

*3: Tom Oberheim's Personal through about (1996 Keyboard Magazine)
  第4回 半導体の魔術師~ダグ・カーチス・インタビュー
  第5回 シンセの発展を支えたCURTISチップ
  上記の記事の中に書かれています。
  doug curtis氏をゲストに招いてCEM chip開発の経緯などを扱った珍しい記事です。
  この時代のKeyboard Magazineではこのような記事がまだ存在可能でした。

VCFについてCEMは多数のchipがあるものの、多くの複合chip内のVCFは同じものでしょうから、初期のCEM3320, 歪を好意的に考えたり、Qをあげた時の通過帯域のGAIN低下の補正、OTAのGAIN配分を見直したそれ以降の4pole type, さらにはこれらとも設計思想の異なるSVF typeのCEM3350, 最後にPCM oscillatorを前提にしたような多poletypeのantilog無しのVCFに(CEM3387等)分類されるかと思います。



* 8: 80年代から90年台末期の analog synth / DIYなど *


80年代前半は多くのメーカーが従来と比較してより高性能や,安価なanalog synth特にPolyphonic Synth(*0)を発表していきます。 すなわちメーカの開発の主たる対象は和音の出るsynthsizerに完全に移行していくわけです。 一方DIYによるPoly synthの製作はより敷居の高いものであり、国内でもわずかに製作記事はあったのですがそれを追試するのはなかなか困難な状態であったように思います。 海外ではSSMやCEMのICがアマチュアレベルでも入手が容易であったようで、CEM ICを使ったPoly synthの製作記事(*1)などがあり、プリント基板のサポート等もあったため国内よりは敷居が低かったようには思います。

SSM/CEMのICを使うと従来より安易にsynthが組めるためそれらを使ったmono synthや modular synthの製作は内外問わず存在しましたが(*2)、Digital Synthの台頭などもあってか analog synthの製作記事は1983-4年(*3)ころを境に内外ともに無くなっていきます。

80年代中盤になるとanalog synth は Digital Oscillator + analog VCF/VCAという構造を持ったhybridなanalog synthなるものが登場し、制御系はdigital化(*5)され、ある種analog synthは到達点を向かえます。  この時期にすでにmodular synthや mono synthというのはメーカーでも作らなくなり、メーカー製のanalog synthも1985年以降衰退していき、80年代終盤になるとKORG M1を始めとする便利ないわゆる ROMベースのplayback samplerとしてのPCM Digital Synthが台頭してくるのでメーカー製のanalog synthもほぼ無くなります。

PAIAが発行していたsynth DIY関係の雑誌POLYPHONYも1985年を持って廃刊になりElectronic Musician誌となりますがDIY記事は激減しました。 各雑誌の製作記事としてはMIDI規格ができたこともあってMIDI関係の製作記事や、Effectorの製作記事(*4:)はまだあったように思います。


* superseq(EM 1985) EM創刊時期のDIY記事

*1: key assigner方式のpolyphonic synthesizerのKITが販売されていたことには驚きます。

*2: 製作記事で使われたSSM/CEM IC

*3: 海外では84年ごろにはSamplerのKITなどがあったようです。(POWERTRAN MCS-1) 国内でも83年にレコーディングマガジンにLMD-649miniの製作記事がありましたが。

*4: トラ技の80年代の製作記事

*5: modulatorのsoft化は海外では CHROMA、PROPHET600が初め。  国内ではJX3P/ JP6が初め。600とJX/JPは共に初のMIDI対応analog synthでもあります。 KORG初のMIDI対応synth Poly800もsoft modulator。

*0: polyphonic analog synth(mono synthを含む)の弱点としてはmodular synthのように audio 信号系のルーティングを変えられないことにあり、一般的には VCO-VCF-VCAの接続を変えられません。 この時代のanalog polysynthにおいてそれが可能(**)なのは RHODES CHROMAだけです。 modulation系については digital化により可能になったmatrix modulationにより自由度はmodular synthに近づいていきました。 matrix modulationという言葉を始めて用いたのは oberheim EXPANDERですが、このアイデアも CHROMAが先で EXPANDERの設計者はCHROMAのリスペクトからmatrix modulationを考えたというようなことをどこかで聞いたことがあります。

**: CHROMAのaudio信号系アルゴリズム *
  CHROMAはその他にもARP PIANOで培った鍵盤技術など見るべきものが多く
  当時、後発のSCIのprophet5に遅れを取ったARP社の意地が感じられるsynthです。
  ちなみにCHROMAにはCEM3350/3360が使われていました。


国産のlowcost poly synthは ROLAND Juno6とKORGのpoly6から始まりました。 どちらも1981年の発表になります。 juno6は169000円でnon programmableでしたが半年後に programmableの Juno60(238000円)が登場しています。 poly6は VCO方式のprogrammable poly synthとしては当時最も安く 248000円でした。 これ以降この価格が国産poly synthの標準価格帯となり各社ともこの値段帯でメインのsynthを発表していきます。

 
 * Juno6 / Poly6カタログ
 庶民のpolysynth ですが今見るととても初々しい感じがします。
 同時期に同じような物が出るのはよくあることでjuno6は初めはpoly6と言う名前だった。


それ以前のpoly synthが最低でも40万したのに比べると大幅にコストダウンしたことになります。 その原因のいくつかとして、junoの場合はEP09から始まるTimmerを使用したOscillatorのDCO化、VCFのcuston chip化などがあげられるかと思います。 Poly6の場合は前年発表のTRIDENTのsynth部分を簡略化したsynthでありOscillator部分のantilog AMPの合理化、同様にVCF/EGのcustom chip採用があるかと思います。 どちらの機種とも面倒なOscillator部分の合理化が決めてのようにも思われます。

海外synthにおけるlow cost poly synthの先駆けはSCIのprophet600で発売当初は100万近くもしましたが国内生産になり確か 34万程度の価格まで落ちました。 当時の海外製のpoly synthは100万以上が当たり前の時代にこの30万円台というのはかなり画期的なできごととなり、後に Oberheimのmatrix6(これも国内生産になった時点で100万から29万と価格が大幅に下がる)や RHODES CHROMA POLARIS(こちらは初めから国内生産)も30万前後の同価格帯で発売されました。 これらのどのsynthにおいてもmodulator部分のDigital化 CESのsynth chip CEM33XXの採用、国内生産がコストダウンにつながっているのでしょう。

 
  * 第2世代のCEM chipを使用した prophet600 / polaris カタログ
  上記の国産機と10万以上高い為、両者とも2VCO仕様を保持。

  * Prophet600: CEM3340/CEM3372
  * Chroma polaris: CEM3374/CEM3372

80年代に入るとanalog poly synthにおいてはIR-3109/NJM2069他などの自社製の custom chipを使う一部の国産synth以外はSSM/CEMのsynth chipを必ず使用していたと言うことが事実としてあるわけです。

さらには1983年以降、ROLANDから約14万円のJuno106、KORGから約10万円の polysynth Poly800、CASIOからも約9万円のDigitalのCZ101が発売されるにいたります。 しかし何よりも1983年に24万円台で発売されたYAMAHAのDigital synth DX7の登場はそれ以上に画期的なできごとでありました。 YAMAHAは 1981年発表のCS70M以降analog poly synthは作らずDigital synthにいち早く移行していきました。


4/6voice程度のanalog polysynthであっても回路規模は大型modular synthをしのぎます。 すなわちanalogsynthにおいては voice数分の回路部品が必要になるわけです。 ローコスト化の為にSCI社ではより回路を簡略化するためCESに1chip synth voice IC CEM3394を発注します。 このCEM3394を用いてできたのが1984年に登場した SCIの6Voice synth SIXTRAKです。 またCEM3394は CVのdemultiplexer周りを簡略化できるため、SIXTRAKはおそらくこの価格帯であるにもかかわらず市販されたanalog synth初のmultitimbre synth(*1)となりました。 EG/LFOなどのmodulatorはすでにsoft化されている為、1Voiceあたりの回路規模はかなり小さくなっています。 残念なことは2VCO仕様でなくなってしまったことですがその代わりと言うわけでもないですがpolyphonc sequencerを備えmulti timbre仕様というのが売りでした。

 
* CEM3394使用のSCI multiTRAKの6 voice基板
  CEM3394と4051とDACなどわずかなパーツで構成されています。

回路がかなり簡略化できるので雑誌のDIYでもこのCEM3394を用いた記事があってもよさそうですが、調べた限りでは内外とも存在しないようです。 (私自身もこのころは雑誌記事などをおっかけてはいなかったのでもしかしたらあるかも知れませんが....) CEM3394はCEM3340 / 3320 / 3310などのように容易に海外でも当時は入手はできなかったのでしょうか?。

SCI以外でCEM3394を使ったsynthと言うとAKAIやSIMMONSなどがありますが1986年以降に発売されています。  ちなみに データーシートのリリースは1986年になっています。 このころにはanalog synth DIYもフェードアウトの時期なのか、YAMAHAのFM音源chipがアマチュアでも手に入るころなのでそちらの方がDIYの対象としては最適だったのか。 国内でも1987/88年にマイコン関連雑誌、プロセッサに古村隆明氏がFM音源chipを使った音源moduleの製作記事を発表しています。

*1: multitimbreとは同時に複数のPartに対して別音色を割り当てられる音源です。 今ではごく当たり前の概念ですがこの当時は画期的なできごとでした。 Oberheim Xpanderも1984年の発売なのでこれらが初のmulti timbre Analogかと思いきや1981年ごろに Mcleyvier(*)が発表されているのでこちらの方が時代的には早いようです。 さらにはE-muの Audityもmultitimbreで1980年の発表ですからanalogとしてはこれが一番早いのかも知れませんが両者とも製品化はされず。


* Mcleyvier * (spec)

*: Mcleyvierは、CRT端末、ASCII Keyboard等を有した元祖 analog workstation synthと呼べる機種で製品化はされませんでしたが試作機は何台か作られたらしく、ネットで画像をいくつか発見できます。 Mcleyvierについては vintage synthesizersに当時の状況が書かれていました。 Digitalだとこの時期にはSynergy、Fairlight CMIやSynclavier II が出ていました。 Mcleyvier、Synclavier II 供にscore editorを搭載しており、DECのVT100CRT端末に譜面表示をさせていたことを思いだしました。

*: Mcleyvierに影響を受けてかKORGがCMCSというシステムの試作機を確か1983年の楽器フェアで展示していましたがこれも幻となりました。 楽器フェアで展示されていたシステムの音源部は8voiceで複数のanalog modulation busを持つ analog polyphonic synth rackでしたがこれも、multi timbreでありXpanderなどと同じような発想のsynthでした。 音源部以外はVT100互換CRT、本体、ASCII KBD付きPIANO鍵盤KBD等で構成されていたようなかすかな記憶があります。

* これらはCMS(Computer Music Systems)と当時は言ったそうです。  realtime multitask OSを搭載したcomputerを核とした音楽作成systemです。 ちなみにCMCSはComputer controlled Music Create Systemの略。 今の時代ならPCを使えばよいということになりますが、まだパソコンが一般には普及していないかつ非力なMIDI登場以前の時代です。 analog synth開発メーカーとしてはE-muがこれらより早くにModular等でcomputer systemを利用したアプローチをしていたと思います。

* 80年前後にはいくつのもDigital synthが開発された時代ですが、YAMAHAのFM音源を除けば販売/量産までにいたったのは上記のSynergy、Fairlight CMIやSynclavierくらいです。 この中でSynergyはItalian synthメーカーのCrumarが1978年に開発したsin波合成のGDS systemの量産化versionとして販売されました。 この時期 既存のsynthメーカーが開発したdigital synthと言うことで貴重でしょう。  GDSもやはりKBD操作部分に加えて上記の機材同様 CRT端末+ Ascii KBD、本体のcomputer等で構成されているようです。 1980年のAES ELECTRONICAのガイドブックの中にGDSの貴重な広告画像 がありました。


* 初期のmulti timbre synthにおいてはStatic Voice Allocationと呼ばれるPartごとに使えるvoice数を予め設定するタイプの音源(YAMAHA MSX /ROLAND MKS7など)でしたがこれだと空いているvoiceを有効に使えないなどの問題がある為、後にDynamic Voice Allocationと呼ばれるどのPartかに関係せず空いているvoiceに対して動的に音源のvioceを割り当てをする方式が一般的になりました。

このころ(84年/85年)を継起にmultitimbre音源が続々登場し、YAMAHAのMSXのFM音源、ROLAND MKS-7、SCIのTRAKシリーズ等がこの時期に存在していました。 さらにはKORGからMU5000というdigital(NLS) multitimbre音源+ PCM drumとうい音源BOXが雑誌等にもアナウンスされていましたが発売にはいたらなかったと言うできごとを思いだしました。 MU5000はKORG仕様のEPSON製PC HC40を採用した上記YAMAHAのMSX音楽Toolと同様の製品という位置づけ、ROLANDはCMU800の後、PC9801を用いたMKS7による同様のシステムがあり、これらは上記のMcleyvier等のsystemの普及版と言った意味合いがあると思います。 これらはCMU800から始まりGM音源にいたる1っの音源で曲をまがりなりにも演奏させると言う新しい音源用途のさきがけでした。 そして1984年には初代のMAC、1985年にはATARI STの登場となりそれらがプラットフォームとなり音楽Toolが続々登場します。 ちなみにYAMAHAはMSXに続いてIBM PCベースの音楽computer C1(1987)と言うのを発売していました。

1986年になるとENSONIQからESQ1というmultitimbre multitrack sequencerを備えた元祖 work station synthが登場しそれの改良版のSQ80が1987年に登場します。 DIGITALでは1986年にYAMAHAのFB01(FM)、1987年のKORG DS8(FM)もmultitimbre音源でしたが、実用的なmultitimbreの音源としては1987年のROLAND MT32が初めての機種だと思われ、MT32の登場を受けてPC98用の音楽softがいくつも発売され、1988年には初の実用的workstation synth KORG M1の登場という流れとなります。


80年代中期以降synth関連の製作記事は無くなって行くと上で書きましたが、これは自分が見ていた国内の雑誌とUSAの雑誌についてであって、当時見ることのできなかったヨーロッパの雑誌には必ずしも当てはまらないようです。 ヨーロッパと言うかUKの雑誌と言うとETI, EPE(PE), E&MM, Elektorなどがあります。 Elektorに関しては80年代中期からやはりsynth関連の記事は激減しているようです。 

E&MMは名前の示す通り楽器関連により特化した雑誌なので関連製作記事も多かったようですが86年ころには雑誌そのものが無くなっていることを考えてもsynth工作が下火という事実を示しているように思います。 これに対してETIの方は80年代後半から1990年代になってもコンスタントに楽器関連記事は続いていたようですがやはり当然のようにMIDI関連や、Effector関連の記事が中心になっていったようです。

私の場合は 94年ころから2000年になる少し前まで、EPEとMaplinを購読していましたが、楽器関連記事ではEffectorとMIDI関連が時々載る程度だったと思います。 当時 それらの雑誌の90年頭くらいまでのback numberは購入できたのでいくつかの楽器関連記事を収集しました。 黄金期である80年代前後のback numberが揃えられないのが残念でした。


* EPE(Chorus/Flanger) / EM(MIDI fader) / Maplin(WawPedal) 各誌のDIY記事 *

このころUSAの雑誌 Electronic Musician, Nutes & Bolts 、Populer Electronics 、Electronics NOW なども購読していましたがやはり楽器関連の記事は少なく購読を止めようかとも思いましたが時々楽器関連記事が載ることや、何年分かまとめて購読するとかなり割安になるのでとりあえず続けていました。 

 * ヨーロッパの雑誌の表紙を飾ったDIY synth(KIT) 集

2000年以降 USAの老舗のElectronics NOW、poptronics 両誌はあいついで消滅。 後発のNutes & Bolts誌は健在。 一方 UK (Euro)の雑誌はと言うとEleKtor, EPEが健在しており両誌ともUSAにも進出。 EPE誌については80年前後にはおよぶべきもないものの電子楽器周辺の製作記事はそこそこ掲載されているように思います。

それに比べると国内ではもうこのような製作記事の連載は無いと思いきや2015/08のトランジスタ技術でsynth/effectorの製作特集が出現、その後電子楽器&エフェクタ回路集と言う富沢 瑞夫氏の連載記事が始まりました。 また山下春生氏のsynth本が2015/11に発売されるそうです(*1)。 21世紀に入ってから(というかlここ数年?)のmodular synthブームの影響もあるのでしょうか。

*1: 約40年前の雑誌の切り抜きは全て持っているし、2月に立ち上ったWeb Siteも見ていたし、この本はわりと高価なこともあってネットで中身を見ないで注文するのはよして、中身を見てから買うかどうか考えようと思いまずは本屋へ。 いざ本屋でこの本を手に取って見ると製作された各moduleの写真が見事と言うか丁寧な作り技量に魅了されてしまいました。 初歩のラジオ掲載時は写真もモノクロで鮮明ではなく、カラーグラビアなども確かなかったと思います。 このころこのカラー写真を見たらどんなにときめいたことでしょう。

カラーの写真は Web Siteでも見てはいたのですが各moduleの鮮明な写真は初見です。 Moduleの横箱(基板マウント部分)の形状がMOOG modularぽいっと言うのが好印象。 またこの本はやたらと紙質が豪華で製作記事の本と言うよりは愛蔵本(版)と言ったたたずまいです。  掲載時の初ラの紙質とは大違い。 これなら黄ばむことも無いでしょう。 写真を見ていると38年前にタイムリープするような感覚にとらわれました。 製作記事自体は既知でありますがそれ以外の要素(*2)につられ購入。 良著だと思います。

この種の本は近くの本屋では置いていないので近辺では本の在庫量が最大だと思われる丸善に足を伸ばし行ったのですが、電気電子本のコーナーにはなく、オーディオ本のコーナーにもなく、店内検索で芸術のコーナーにあると言うことがわかり、その付近にはeffector本などのコーナがありここかと思って見ても見当たらず、あきらめかけていたところ想像とかけはなれた場所にポツンと1冊置いてあるのを発見しました。 新刊なのにこの扱い、東京の本屋ならもっと安易に発見できたのでしょうが、世間一般から見るとやはり特殊な本なのでしょう。

本来であれば連載終了後の1979年ごろにこのような本が出ても当然だったように思うのですが、40年後の今になっての書籍化は快挙なのでしょう。

* 11/20近所の書店で1冊発見しました。

*2: ・VCO/VCF/VCAの動作原理の詳細と数式等の設計NOTE
  ・今作る場合のversion UP,改良点。
   ・VCO: syncシンプル化/span温度補償/linearity改善/summing amp追加
   ・VCF: MOOG VCF化
   ・VCA: refine
   ・EG: velocity対応
   ・LFO: 振幅delay対応
   ・KBD: 2CH MIDI-CV converterで置き換え

今一度作ってみたくなる魅力のある内容となっています。 回路の動作原理(ladder filterの原理、微分抵抗(dynamic resistance)、transistorとdiode ladderの違い、差動増幅型VCAの基本原理、antilogAMPなどsynth回路の必須項目)についてわかりやすくかつ詳細に書かれているのが好感触です。 (この説明、40年前にこそ出会いたかったです。)




 

PCM synthがありふれてくる90年代、1994年になるとanalog synthの復活を示唆するようなできごとがいくつも起きてきます。 まずはUSAのKeyboard誌の別冊としてVintage Synthesizers(*1)という本がでます。 この本は日本語版もしばらくしてから発売されました。 また Doepferから MS404, PAIAからは FATman、NOVATIONからBASSstation, MARIONからはMSR2, OberheimからはOB-MXがあいついで発売されます。 さらに94年というと偶然というか、thereminの映画、”THEREMIN:An Electronic Odyssey” が国内でも公開された年でもありました。  95年にはanalog modeling synthの Norad Leadの初代が発売されます。

* 1: 正確にはUSA版Vintage synthesizersは1993年後半、日本版は1994年前半の出版です。 また2000年にVintage Synthesizersの改訂版が出ています。追加された内容としては、電子ピアノ関係の記事と、1993年以降にKeyboard誌 に掲載された KORG/ROLAND/SERGE MODULARの特集記事が掲載されています。 この他1994年前後には古山俊一さんによる海外、国内vintage synth紹介 VIDEO、安西史孝さんによるVINTAGE SYNTHESIZER MUSEUM CDROMなどが出ていました。 

またUS版 Vintage synthesizersが出る直前に USAのkeyboard誌で VINTAGE SYNTHS: THE RETRO REVOLUTION  (1993/06)という特集がくまれていました。

analog synthの復活の兆しは91年のWALDOLF The waveや、Studio electronicsのMIDI MINI(MOOG), 各社から出たTB303のクローンsynthなどがあったのですがこの94年にいくつものことが集約されたように思います。 94年ということでは当時NIFTYのFMIDIのあるフォーラムでFIVE-Gからanalog synth KITが発売されるという話題を出され方がいました。 このKITというのは実は上記のPAIAのKITであったのですが、この話題がきっかけとなってそのフォーラムでanalog synthの回路の話が約1ヶ月間に渡って繰り広げられました。 上記のvintage synthesizersの本も話題になっていましたし、それこそ70年代の WAVEKIT,電子展望、初歩のラジオ等の話題やMOOG filterの動作原理、KORG VCFの謎等の話題も出ました。 FMIDIは本来電子回路の話題が出るようなフォーラムではないのですが analog synth DIYに興味のある、あった人々はそこそこいたということで、このできごとは当時かなり画期的だったように思います。 何より一般的には現在のようにだれでもが多くのanalog synthの回路情報を持ち合わせている時代ではなかった時期にこれは貴重であったと言うことです。

94年というとまだOSレベルでinternetをサポートしている状況ではありませんでしたが、 WEBブラウザはいくつか出ていたのでinternetを体験することができるようになった時代です。 しかし当時はまだNIFTYなどのパソコン通信が主体で、通信環境も常時netにつなげられるような環境ではなく通信料金は従量制であったことや当時は低速のモデムだったため、internetなどにつないでしまうと1ヶ月に数万円の通信料金がかかってしまう(プロパイダ+電話料金)という状況でしたが従来では得ることのできない情報がinternetにはあり料金がかさむのを覚悟でinternetを利用するようになりました。 当時のsynth情報のsiteとしては analog heavenが代表的で後にSynth FOOLが登場します。 まだ情報源は多くはありませんでしたがそこには今まで見たことのないような synthの回路図がいくつかあって興奮したものでした。

この中でElectronic Musician誌(*1)に掲載されたPAIAのFATMANの製作記事は特に画期的なものでした。 当時Electronic Musican誌は購読していましたのでこれが掲載された時はとてもうれしかったです。  KITの価格も $149という手ごろな価格だったので記事掲載後即PAIAに注文しましたが届いたのは確か3ヶ月後くらいたってからだったと思います。  ともあれWAVEKITの1975年から20年近くたった1994年に新たな synth KITが誕生したことにときめきました。

国内の雑誌 Mac Brosの analog synth特集(95/01)でも FATMANの制作記がありましたし、Keyboard Special?かなにかの雑誌にも製作記事が載りましたので国内でも知名度は少なからずあったはず。

1996/07の DIGITAL BOY誌最終号にラブ・マシーン・ジャンキーズというタイトルでanalog synthの特集がありました。  このように1995年以降国内雑誌でanalog synthの特集記事が随所で見られるようになります。

*1:85年創刊のPolyphonyの後継雑誌で過去にいくつかのDIY記事があった。
 EM誌と提携していた国内の雑誌が80年代末期にありDIYもわずかにありました。(名前は失念)


 
* Electronic Musician 1994/03 * PAIA 1994catalog


netでメーカーsynthの回路図等の情報が得られるようになるとともに過去に海外雑誌に掲載された記事なども入手できるようになってきます。 またPAIAがFATmanの発表後、活動が活発になり次々にKITを発売するようになりました。 上記のvintage synthesizersの影響もあってか海外ではanalog synth関連の本がいくつも発売されるようになり,1995年にはSUSURREALからThe A-Z of Analogue Synthesizersという全世界のanalog synthを網羅した本が発行され、聞いたことのないようなsynthがいっぱいあるのに驚いたものです。  その中にあったイギリス製の synth KIT DigiSound80に興味を抱き、ちょうどこのSUSRREALで記事のコピーが入手できることを知ってその記事を取り寄せたりもしました。

この当時はまだnetで入手できるsynthの回路図は多くはなかったのですが、service manualを販売する業者をいくつも見つけることができたのでこのころはmanualをよく購入したものです。 それと同時に国内では入手がむずかしかった synth ICなどのパーツも入手できたのでこのころよく買っていました。 国内ではHiro Suzukiさんがメーカーのサービスマニュアルや、Electro Notesなどの海外文献などを販売していました。

inter netのおかげでと言うか昔のanalog synthの回路図が出回るようになるとsynth DIYも盛んになっていくようになり、特に海外のDIYerが作品や自作の回路を発表するようになってきます。 このころ SDIYのメーリングリストを知りました。 とにかく94年を境にしてanalog synthの回路や機種情報はそれ以前と比べると比較にならないほど豊富になりました。 自分の場合はそれなりに回路図をちまちまと集めてはいたのですが、全世界的な情報が得られるネット時代になってから得られた情報はメーカー製、雑誌記事とも貴重な物でした。

やはりsynth DIYと言うとmodular synthと言うことで、そうなるとパネルの規格をどうするかと言うことが話題になってきます。 95年に登場したDoepferのA100ではEURO RACKが使われました。 EURO RACKは70年代にあったFORMANT modular(*1)にも使用されたパネルでした。

他のパネルとしては70年代のmodularの規格から MOOG modularのパネルの規格を採用する物がいくつか出てきました。 95年になるとPAIAが FRAC RACKというパネルの規格を出して話題になり,PAIAが新しいmodular synthを発表します。 私もこの当時IDEALのEURO RACKと、MOOG規格のパネルとFRAC RACKを購入しました。  あとはSSM/CEMのIC供給でも有名な Synthesis tech. が独自のパネル規格のmoduleを販売していました。

Synthesis tech.のMOTM moduleは 1997/98年ごろに登場したように思います。 このころはmodule kitを販売していた業者は今のようには多くありません。 その中でMOTMは高品位なmoduleであったようで値段もかなりしました。 その当時は回路図は公開されていなかったように思いますが、今ではこのシリーズも製造していないようで回路図等が公開されていることを最近知り感激しました。 MOTMのmoduleが販売されてからもう15年以上もたっていると言うのもちょっと驚きです。 MOTMシリーズの電源unitにはpower oneのHAA15-0.8AGが使われていました。 私もこの電源にあこがれて2008年ごろにHAA15-0.8Aを購入しました。


MOOG type Panel (5U)      EURO RACK      FRAC RACK(3U)

*1: Doepferの採用したパネルは3UだったのでそれがEURO RACKの標準になってしまいましたが、Formantでは3Uと6Uのパネルを使い分けていました。


このころ、1996年ごろだと思いますがネットでPAVOというメーカーのMIDI TOOLSと言うMIDI関係のコントローラーのKITを見つけて購入したことを思いだしました。 これは今でも筐体だけは手元に保管してあるのですが、ネットで検索したらこれを今でも取り扱っているサイトを発見。 こういったことが国内と海外の違いなのかと改めて思いました。

1996年と言えば Nutes & Bolts誌を購読し始めたころです。 購読し始めた理由はかつてPolyphony誌のwriterでもあったTHOMAS HENRY氏の記事が掲載されていたからか、それ以外で目にとまった記事があったからかどうかは今となっては忘れてしまいましたが。


90年代中期になるとMOOG synthの復活の話題がいくつも出てくるのですが、それは本家でなく他のメーカからで確かMINI MOOGや MOOG modularのレプリカ(*1)というのがいくつかありました。 本家はMOOGという名を当時は名乗れずBig Briarという名でPro用のthereminを作っていましたが、96年になると Electronic Musician誌でthereminの製作記事(*2)を発表し動きが出てきます。 後にEFFECTORを作るようになり、次に期待されるのはやはりsynthということで2000年になると performance synthというmono synthを発表します。 これは現在のMINI MOOG Voyagerの原型となるsynthです。

2000年にはもうひとつALESISから画期的なanalog poly synth Andromeda(A6)という synthが発表されます。 この synth は発売されるかなり前から SDIYで話題になっていました。 audio信号系はMOOG, Oberheimの回路を踏襲しておりそれをcustom analog ASIC chip に収めるという構成でanalog synthながら16voiceを実現しており音色の守備範囲もanalogとしてはかなり広い、analog synthのひとつの到達点と呼べるsynthでした。 このようなものがいままでanalog synthを開発したことのないALESISから登場したことに驚きもし感動もしました。

2015年現在、大手のメーカーがanalog synthを復活させているという現実があるのですが、ALESISのAndromedaほど正統的な本格的なチャレンジのanalog synthは登場していないと個人的には思います。 A6はちょっと早すぎるデビューだったのかも知れませんし、今となってはALESISも残念ながらこのようなsynthを作ることはないでしょう。


*1: 例えばStage Electronics Inc (SEI) の Mini Remote(1994)やMINI MOOG model 204EというUK製?のレプリカ(1998)など。 また5UのラックマウントMOOG modularを販売していたメーカーもありました。(メーカ名は思い出せません。)

*2: EM theremin(BIG BRIAR ETHERWAVE theremin 1996/02)


* prototype *

ちなみに1995年から数年は thereminのDIYがちょっとしたブームになり、1996年はElectronics Now誌(PAIA theremax), Everyday Practical Electronicsのsimple thermin (1995)、Everyday Practical Electronics誌(Elysian theremin 1996)などが製作記事としてありました。 上記の映画、”THEREMIN:An Electronic Odyssey”がトリガーになっていたのでしょう。

* EMの記事を見た後、BIG BRIAR にメールを出しEHERWAVE thereminを購入しました。 その時に付いていたカタログの中にMINI MOOG用のLintronics MIDI-CV converterがあったので後日これも購入しました。 現在ではLintronicsのサイトに回路図が上がっています。


* Lintronics MID-CV

またEM誌ではこのtheremin製作記事の翌月号に Service Clinic Build a MOOG filterという記事がありMOOG prodigy ベースの VCF,VCAユニットの回路が掲載されました。このころはまだinternetの analog synth情報もそんなに多くない時期であり、2号続けて有用な記事に出会えたことにわくわくしたものでした。 このときばかりは定期購読しておいてよかったと思いました。

1990年代の国内雑誌に目を向けると1996年ごろからKeyboard Magazineで頻繁にanalog synth特集(*1)がありました。 また1998年に電子音楽 イン・ジャパン(1998 田中雄二/ASPECT)と言う本が出ていて、70年代の日本の電子音楽、 analog synthに関するエピソードがたくさん載っていました。 これなどはここで書いた上記の1章から7章までの内容と時代的にもシンクロする情報です。


* 電子音楽 イン・ジャパン

一方、電子工作関連では上記のFatman関連の記事が音楽雑誌に載りましたがそれ以外は目立った物はなかったように思います。 トラ技の特集記事で analog synthによく使われるようなICの関連記事が載ったことはいくつかありました。

* トラ技特集記事

*1;
・ アナログ・シンセサイザーの世界 (1996/??)
・ VINTAGE SYNTHS [特別編] THE CHROMA (1996/??)
・ Vintage Synthsizer Gallery (1997/10,11,12./1998/01..09)
・ モジュラー・シンセの愉しみ (1998/??)
・ 松前公高のアナログ"ピコピコ"訪問記 (199?/??)


* 9: 70年代から90年代の海外のsynth KIT *
海外の電子工作系の雑誌では基板のパターン図が掲載されているのが普通のようです。 国内の電子工作雑誌の初歩のラジオ、ラジオの製作といった雑誌も基板のパターン図が掲載されるのは普通のことでした。 トランジスタ技術においても70年代、80年代には基板のパターン図が掲載されていました。 ヨーロッパの雑誌ではさらにプリント基板のサービス(*1)も行っている物も多いようです。 これは現在になっても行われているようですが、現在では表面実装の小さな部品がこれらの製作記事にも使われるようになってきているので実装は大変なようにも思います。

海外のsynth関連の工作記事では、KITメーカのKITを製作記事として掲載しているケースも多くあり、KITの中には大規模な製作記事もあり 過去には modular synth, polyphonic synth, programmable synth, sampler , digital delay, vocoder などのKITもありました。

当時の海外のsynth関連KITメーカーですがそれほど多くは無いようです。 USAではやはりPAIAが老舗という感じで種類が断然多い。 他に雑誌掲載があったメーカーとしては上にも上げたPHOENIX SYSTEMS、雑誌掲載以外では同様に上にあげたARIESやEML。 よりマイナーなところではBLACETと言ったところでしょうか。 BLACETはネット時代になって復活しています。

ヨーロッパ勢としてはPOWERTRANがDIYとしては大規模なKITを展開しています。 その他の雑誌掲載のKITとしては DIGSOUNDやTANTEKがあります。  SYNTH KITの元祖的存在として ETIの3600/4600がありますがこれは特定のKITメーカーではないようで、ETI誌の企画なのでしょうか。 後にはMAPLINからもKITとして発売されていたようです。 MAPLINは楽器関係でもいくつもKITがあったようです。 またUKの雑誌にはCLEFと言うメーカーもいくつもの楽器関連KITを発表していたようです。 あとはITALYのONDA QUADRA誌とSELEZIONE RADIO誌に掲載時期をずらしてmodular synthと analog PIANOの製作記事が出ていましたが両誌とも同じ内容の物ですのでこれを扱っていたKITメーカが存在していたのでしょうか。 紙面の広告記事にそれらのKITが掲載されていました。

* 1: 私も90年代の後半ごろに掲載された記事のプリント基板や部品込みのサービスを利用したことがありますが、残念ながらsynthの製作記事ではなく Effector関連でした。

 ・Digital delay Line /Analog Delay and Flangerの基板 
 ・MIDI Keyboard scannerの基板と部品セット


PAIAのKITで大掛かりの物というやはり KBD付きのKITで4700 modular, Strings Synthesizer, Combo ORGAN,あとはprogrammable synthの PROTEUSと言ったところでしょうか。 特に DIY KIT 唯一のprogrammable synthかとも思われるPROTEUSはKITの規模が大きい為、設計サイドでも難産だったと言うことが vintage synthesizersの中の記事にも載っていました。

* 上記の記事を読んでproteus1の回路が気になり1994年当時せめてmanualだけでもとPAIAで製作manualだけ購入したことがありました。 とてもpage数の多いmanualで通常のKITよりmanual代も高かったです。 現在ではPAIAのサイトで無料でダウンロードできますが。

特徴としては programmable synthなのにCPUを使わずhard logicだけでprogrammerを組んでいたのにちょっと驚きましたが今と違い80年代初期ではCPUを搭載するとKITの価格が高くなってしまうのでそれを避けたのかと思われます。 Proteus1の残念な所はA/D - D/A のresolutionが4bitしかなくparameterは最大で16段階しかないという割り切った設計だったことです。 この規模の回路に対して片面基板でかつコネクタエッジに信号線をひとまとめにしているので、基板表面はプリント基板なのに線材だらけという特徴ある基板もユニーク。


* proteus1 main基板 *

* jumper線も多いが、それ以外の丸で囲んである端子からエッジコネクタなどの同じ名前の端子まで配線が必要な構造。

一方UKのPOWERTRANのKITはさらに規模が大きいというか4voice polyphonic synthのKITがあるかと思えばそのvoice数を拡張するExpander KITもあると言う国内ではまず考えられないようなKITを出していたようです。 さらにはsamplerのKITがあったり、本格的なDigital DelayのKITがあったりと....。 このメーカーのvocoder KITの基板などを見てみるとロッキンfのvocoderがおそらく参考にしただろうと思わせるような内容になっていたりします。 modular synthのKITとしてはDIGISOUNDの DIGISOUND80が質、量ともに他の追従を許さない規模のKITでしょう。


* POWER TRAN KIT広告 *


海外のKIT、国内のKITについてわかる範囲で機種を表にまとめてみました。

 ・ 内外のKITメーカによる KIT 一覧



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K.T

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