Prophet600について


1982年末、世界初のMIDI対応機器として登場したprophet600。



prophet5のLowcost版としての製品でもあるため基本構成はprophet5と同じような構成で1voiceあたり2っのCEM3340VCO、VCFとVCAさらにVCO MIX用のVCAを1ICに統合したCEM3372という構成でEG、LFO等のmodulator はSOFT制御にすることによってprophet5よりかなり簡略化されています。 制御系のCPUまわりはprophet5と大きくは変わってはいません。

analog voiceの合理化によって電源回路もコンパクトになっており電源トランスもProphet5に比べてかなり小さく大きさはほぼ KORG MS20のそれと変わりない感じ。(prophet5も電源は他のメーカー機種に比べて小さめですが平滑用のケミコンがとても巨大でした。)

何より筐体がコンパクトであると言うのが最大のメリットと自分は感じています。  というのも比較的コンパクトであるprophet5にしても実機を目にするとかなり大きく重く、かなり頑丈な作りです。 この時代のこの手のKBDはプロ用機材でステージで使用させることなどが主目的なので当然なのですが普通の家の部屋に何台も置くにはやっかいです。 さらに同時代のOberheim OBXとかOB8はさらに巨大このクラスのpoly synthはどれも同様なイメージが。 自分もprophet5とかOB8を所有していましたがこの巨大な筐体がじゃまになりprophet600を中古で購入した後に処分してしまい、OB8はanalog voice基板をprophet5は基板が巨大でかつしっかりしていないのでパネルとIC chipだけ保管しています。

保管しているPro5のパネルと同様にKBDだけ保管しているDX7のKBDを合体させて写真を撮って見ました。  これをMIDI controllerとして保管しているoberheim OB8基板を動かしてみたいものです。


prophet600は5ほど艶のある音はでませんが、それでもそこそanalog synthとしての音は持っていますし、このコンパクトな筐体ゆえ現在も保有しています。

CEM3340は両者で共通、VCFもCEM3320と3372ではコンセプトが違うので同じ音ではないですが同じCEMであることから大幅な違いは無い様に思われます。 modulation系がanalogと初期のdigital Soft modulationという違いはそれなりに大きいのですが意外とVCO MIX用のVCA、 final VCAが両者で違う、個別部品のVCAの方がルーチンが複雑などということが影響しているのかも知れません。

 prophet5..... VCA=CA3280(MIX/VCA/Resonance)
 prophet600.... VCA=CEM3372内蔵VCA(VCA=4個) + CEM3360(volume用)

prophet600は世界初のMIDI機器と言うこともありますがおそらく量産型のanalog synthとしては最も早い時期にsoft modulatorを採用したanalog synthだと思われます。 さらには調整用のPOTが必要最小限とか部品がとっても少ない設計という部分は当時の他のanalog synth製造メーカーにとっては脅威のanalog polyphonic synthでありました。

prophet600は最初期のsoft modualtor搭載のanalog synthとしてデビューしましたが翌年の1983年、ROLANDのanalog synth Jupiter6やJX3Pといったsynthもsoft modulator仕様のanalog synthではありましたし、さらに同年の年末に登場したKORG Poly800も soft modulator対応のsynthでありました。 ということで1983年以降に登場したpolysynthはほぼすべてsoft modulator構成です。 さらに言うとsoft modulator対応のanalog synthとしてはprophet600より少し前の1980年にARPが CHROMAを発表しているのですが ARP社の倒産を受け量産機が発売されたのは1982年とprophet600と同時期になっています。

prophet600発売当時はprophet5が170万したのに対して確か90万円台だったと思います。 prophet5の手作り感に比べると600はかなり量産機器でLOWcost versionであるにもかかわらず当時の日本の代理店モリダイラはこのような価格を付けて販売していました。 SCIの初期の代理店はYAMAHAですがこのころにはモリダイラに移っています。

当時はsynthを買うユーザはプロを除けばそれほど多くない時代でしたのでprophetという名前もあってこのような価格設定だったようですが、1983年YAMAHAのDX7が25万という低価格で発売されたのが原因か、prophet600の国内での生産体制が開始されたせいか後に37万程度に価格が改正されました。 実際当時の同程度の国産analog syjthと比較しても90万という価格ではなくこの30万円台の価格が本来の価格ではないでしょうか。 当時海外ではどの程度の価格で売られていたのが気になるところです。

と言うことで1997年に wine country products(*1)が発行していた冊子SEQUENTIAL connectionを見ると1983年当時の価格は$1999-だそうで1983年時点での換算レートを考えれば約230円程度なので約46万程度それが2倍の価格で日本国内では最初は発売されていたということです。 ちなみに他機種のUSAでの価格は...

 Prophet5.........$4495(1978).....200円換算で約90万
 Propet600........$1999(1983).....230円換算で46万
 Prophet T8.......$4995(1983).....230円換算で約120万
 Prophet VS.......$2999(1986).....170円換算で約50万
 SIxTrak............ $1095
 *1:SCIの元社員の方が経営するSCI製品のリペア会社。(2019年現在現存)

各機種ともほぼ国内価格は上記の2倍に設定されていたようです。 この当時synthはかなり高価な物だったと今更ながら思います。 SCI製品に限らず EMU、obeheim、MOOG等、輸入synthはとにかく高かったです。


* PROphet600 analog voice基板(+DAC/CV S&H)


* PROphet5 analog voice基板

pro5とpro600のvoice boardの比較。 pro5の基板の巨大さがわかるかと思います。 上記pro600基板はCV用のS/HとしてOPAMP、4051、DACと各Voice用のCEMICと、polymod用のVCA(CEM3360)と後はfinal VCAとして volume設定用にCEM3360が半分使われており残りの3360はなんとFilter CV INの入力電圧がこのVCAを通過するようになっていて CV S/HからCVがこれ用に出ています。


prophet600を購入してから2019年現在で23年ほど経過しますが中古購入(OS SIX-08、wincountryで購入 当時$450程度)ですのでこの個体自体は1983年の製造の物のようなのでなんと36年前の機材ということになりMIDI規格と同じ今年で36年が経過しています。 ここ6から8年近く?電源を入れていない状態でしたが最近になって動かしてみたところ初めは何も音がでない状態でした。 予想としては使用しているKBDが悪名高い松下のLOWcost鍵盤(*2)なので長年使っていないとゴム接点とそれが接触する基板のコンタクト部分が接点不良になることはよくあることあのでその覚悟はしていましたがそれより状態が悪いようです。

*2: KORG poly6/61/monopoly/oberheim OB8、SCI Pro1(一部)などで使用。


しばらくいじっているとmanual modeでは音が鳴らないがpresetを選択して内蔵sequenccerを起動するとわずかに音が出ます。 さらにこんどはsequencerを止めてKBDを弾くと1octave程度の範囲で音がなるようになりましたが途切れ途切れ。 manual mode時は VRとSWの接触不良が醜く、特にSWのON/OFFの認識が悪く音が出たりでなかったりするようで時間とともに状態がよくなってきました。

となればあとは鍵盤の接点不良をなおすべくKBDをばらして接点を消しゴムでみがき、ゴム接点側を簡単にふいたところ接点がだいぶ復活しましたがならない鍵盤がいくつか発生する状態が続く。 ならない鍵盤をよく見ると導電ゴム接点を内包しているカバー部分の端の劣化で端の部分が基板にぴったりくっかなくて接点がうまくKBDの打鍵部分に当たらなくならないもようなのでその部分を修正したらやっと全鍵盤がなるようになりました。 そうこうしているうちに電源を入れている時間が長く発生したことでManual modeでもほぼまともに動作するようになりました。

prophet600のリチウム電池はこの時代の大容量タイプがついていますので電池交換から20年程度経過してもプリセットは問題無しでした。 600に使われている SWは5のようなタクトSWで無いので高級感が無いとともに感触もよくなくチャチで接点不良も多発します。このSWは当時pro1にも使われていましたが現在でも入手できるかどうかは不明。


* KBD コンタクト部分


netを見ると600のCPUを交換してOSを取り替えて高性能化するTeensy++ prophet 600 upgrade(P600fw)というのがあり2013年当時このマニュアルをダウンロードしたのを思いだしました。 当時はver1.0でしたが最近見たらver2.0になっていました。 そろそろこれを試してみようかとも思います。

CPUを交換して元々ついているROM/RAMは使用せず、DACのの制御、UARTに対する通信、KEY Scan portの制御、 Auto Tuneの制御等に対して必要Address、Data 信号、-WR等の制御信号を またI/Oから-NMI等の入力信号に対してNEW CPUの I/O portでまかなう構造になっています。 Teensy++もZ80もともに40pinであることから変換基板を使わず、一部の都合の悪いPiNだけ直接は基板側につながらないようにしたり、電源/GND等をTeensy++の PINに対応させるためにJumper線を数本つなぐようです。

prophet600はわりとanalog voiceがシンプルでsoft modulator仕様のsynthなのでこれはありだと思います。 自分も同様のことがやりたくてmultitrakやOb8のanalog 基板を保持していますのでそろそろ始めなければとも思います。


改造と言えば国内生産のprophet600はかつてモリダイラでNOISE音源を追加する仕様のものがありました。 これは当時prophet5にはVCF mixerにおいてVCO1/VCO2/noiseがそれぞれ独立してMIXができwheel modulationにもMINI MOOGと同様にnoiseが使えたのに600ではこれらが使えないことを改善するもので国内版のみの仕様です。

これらの改造は当時どうやっているのか興味があったのですがnetを見るとその詳細が書かれているサイトがありました。 それを拝見した感じとしては prophet600には CV pedalを使ったFilter CV inの端子がありそれは当然各VCFの CV inに入るのですがなぜかCV 入力側に CEM3360 VCAをかましています。 そして3360のCV inには他のCVと同様 CPUからの CV S&Hにつながっています。

おそらくこれは CEM3360の1/2があまったので付けたような仕様で3360のCV outには単にmax値が出ているだけで 3360を使っても使わなくてもいいようになっているようです。 モリダイラの改造はこのVCAをnoise levelに使って、SOFTを改造して noise levelをpreset化できるようにするものらしいです。 filter CVはそのまま3360をスルーして 各VCFに接続する仕様のようです。  当然noise generatorは追加基板を追加。

初めからこの機能を通常製品版に持たしてもよかったような大元の構成になっている所がこの改造を可能にした部分だと思います。 CEM3360は各vioceのpolymod用のVCAとfinal volume用のVCAに使われているため1/2個があまってしまうわけです。 ということでnetでこのような記事を国内で書いておられる方がいることにとても感激しています。

ちなみに noise基板は 2SC1815汎用 Tr.の逆バイアスの出力にPNP Tr.の反転AMP(gain=1)と最後にOPAMPの非反転増幅器に1次LPF機能がついた回路とシンプル。

2013年ごろの記事のようですが最近発見したしだいです。 そもそもいつでも動かせるようにしてある機材以外はprophet600も含めて棚に保管状態なのですが、ここの所それらのsynthのメンテを立て続けにしていて再度これらの機材に興味がわいたと言ったところです。


<2019/03/03 rev1.2>
<2019/02/21 rev1>