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 OP AMP 動作と負帰還
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OP AMP使用のantilog 回路においてIc変動(OFFSET変動)が押さえられることを考える前に Key DeviceであるOP AMPの性質を整理しておきましょう。 


入力が差動入力構成で裸の電圧GAINが大きい(たとえば1万倍とか,,,,)増幅器を考えます。 出力段はたとえばコンプリメンタリーエミッタフォロワのようなPush, Pull動作で電流は吐き出し、吸い込みでき外部に対して定電圧を出力できる増幅器。

差動入力構成なので入力の2端子間の電位差を増幅するわけであり、電位差が発生すればそれを数万倍増幅する増幅器なので裸状態でちょっとした電圧の印加で出力電圧はクリップしてしまいます。  すなわちこの状態では単なるコンパレータでしかないので外付け回路により負帰還をかけて使用します。 負帰還をかけるのでこの増幅器の外から見た電圧利得は大幅に減少します。

負帰還をかけてもこの増幅器の裸の増幅率(OPEN LOOP GAIN)は変わらないので結局この増幅器に印加される実印加電圧が大幅に低下するということになります。 増幅率が∞なら(にならないと)両端子電圧は0(にはなりません)でいいことになります。

たとえば裸の増幅率100の増幅器に対して出力の100%の負帰還をかけた増幅器に1Vの印加電圧をかけた場合、出力は0.99Vになり実際にこの増幅器に印加される電圧は0.0099Vになります。 すなわち 0.0099Vを100倍したものが出力 0.99Vになります。 0.0099+0.999=0.9999=...1

・ 真の入力電圧 = 1/(GAIN+1)
・ 出力電圧 = GAIN/(GAIN+1)
・ GAIN .... open loop gain

裸のGAINが100でも真の入力電圧はわずか1%になってしまうわけで100でなく1万であれば1/10001で約0.0001Vすなわち0.1mVとなってしまう。 さらに裸GAINが大きければ便宜上0とみなすというか。

GAIN=100で40dB、通常OP AMPは100dB程度はあるとすればGAINは10万なので1Vの入力に対して0.01mV=10uV程度になるのでしょう。


上記の式は抵抗の直列回路における分圧と同じなので、R1の両端子電圧が真の印加電圧、R2の両端電圧が出力電圧のイメージ。 R2>> R1になるに従って分圧結果は入力電圧に近づく。 これも100%の負帰還のイメージか。


出力を1にしたければ裸GAINは∞必要です。 すなわちこの場合極限値(収束値)は1なので裸のGAINと出力の関係は、裸の増幅率が大ききなればなるほど1に近くなるというLOGカーブを描くということです。(裸GAIN 1で出力は0.5) 理想的なOPAMPを考えると裸のGAINが∞なので入力の両端子間の電圧は0となる。 すなわち2端子間はバーチャルショート状態になる。


非反転増幅


例としてもっとも単純なものが 非反転増幅器のボルテージフォロワーです。 この場合印加電圧は(+)端子に直接印加し、出力を100% (-)端子に負帰還した形で上記の説明通りの反応となります。 帰還経路に何も入っていない状態。 

電圧が印加されれば上記のように負帰還の特性によりマイナス端子とプラス端子には真の入力電圧という電位差が発生しその電位差分出力電圧は低い。 すなわちマイナス端子の電圧が低く、系はそれでバランスしている。 これは両端子の電位差を裸GAINで増幅した結果である。 つまり厳密には両端子間は同じ電位にならないが非常に小さい値なので無視して考えてよい。 これを理解していなで本当に0だと思ってしまうとなんだか動作がよくわからない回路になってしまいます。 (+)、(-)の2端子間には必ず微量ですが真の印加電圧が印加されているということが前提です。

負帰還作用のポイントとしては帰還ループ内になにが入っていても(どのような変化があっても)入力の両端子がほぼ同じ電圧になるように制御されるサーボ作用が本質だということ。 増幅と言うことばとは違和感があるが。 これは増幅器の裸のGAINが非常に大きいことがなせる技。 すなわち本来の増幅度の余裕を残した上でみかけは増幅度の小さい増幅器を構成しているので変化があっても条件が維持されるということか。

右の図は2倍の非反転増幅でありこの場合、抵抗により出力を分圧したものがマイナス端子に印加されるので負帰還が1/2に弱まった状態なので出力電圧はボルテージフォロワの2倍になる。 負帰還が弱まるから(+)、(-)の2端子間に加わる真の印加電圧はボルテージフォロワーの2倍になることによって裸GAINと出力の対応が成り立つ。マクロ的にはこの場合も(+)、(-)の電位差は0と考える。

分圧抵抗は直列回路なので R1、R2を流れる電流値は同じであって(+)、(-)の電位差が0になるようにこの電流が流れることによってバーチャルショートが成り立つのだからVin /R1で発生する電流は定電流源と同じだ。 VinとR1が変化しなければ R2を変化させてもこの定電流値は変化しないことがOP AMPの負帰還の本質。

負帰還が弱くなって真の印加電圧が2倍になっても裸GAINは変わらないのだから抵抗値が2倍になっても抵抗を流れる電流値は 変わらないということ。


OUT PUTとVsa((+)端子と(-)端子の電圧差)の関係
ボルテージフォロワと2倍非反転増幅の電圧印加時から定常状態までの電圧変化イメージ

OUTPUT=0時、(+)端子に印加される電圧は同じなので Vsaも同じだが最終的には0に近づいていく。  出力電圧=2Vの場合の方が負帰還が弱いのでVsaは大きい。 出力が2倍の方が安定化するのに時間がかかる。(Through Rateが存在する) また負帰還が強いほうがover/under shootが大きい)

Vsaの比較
裸GAIN=40dB(100倍)時のVsa

水: ボルテージフォロワ
赤: 2倍非反転増幅

裸GAINは固定なので出力が2倍になるのは真の入力電圧が2倍になる。 これは負帰還が1/2になったため。


反転増幅


次に反転増幅器を考える。 これは非反転増幅器よりむずかしい。 すなわち印加電圧が直接(-)端子につながっていないし、出力を負帰還させる先が入力と同じ (-)端子であるので複雑。 印加電圧を直接(-)端子に印加できないのは出力も同じ端子に戻すから。

入力電圧はマイナス入力なので出力はマイナスになりそれをマイナス端子に帰還するので出力の帰還は入力と反転関係である。 入力と出力がマイナス端子1点に重畳されるので マイナス端子に印加される電圧は入力側からみた回路と出力側から見た回路の重ね合わせである。

上図の直列回路を流れる共通電流により得られる出力電圧のイメージは反転増幅の動きとよく似ているが上回路では出力のドライブ能力とPush/Pull出力でないこと、出力の直流レベル、入力バイアス電圧が必要なことが異なるが負帰還反応と抵抗に流れる共通電流の部分では反転増幅と共通点があります。 またVe電位はエミッタフォロワ出力なので100%負帰還の非反転増幅そのもの。


非反転増幅との対応

RinとRfが10Kの同じ値の反転増幅を考えると上記の2倍の非反転増幅と同じ抵抗の構成だが出力電圧が2倍違うことに気づく。 これは入力電圧が1/2に分圧されて(-)端子に入っているのと、 負帰還側は両者とも50%に落ちていることによる。

ボルテージフォロワーが負帰還100%なのでこの両者の負帰還は50%であれば真の印加電圧はボルテージフォロワーの2倍になるがこの非反転増幅では(-)端子に印加される電圧が1/2になっているので出力電圧は -1Vとなる。

Vout = -Vin*{Rf / (Rin + Rf)} * {Rin / (Rin + Rf)} = -Vin *(Rf / Rin)

Voutは上の式で求まるがこの時、真の印加電圧はボルテージフォロワーの Rf/Rin倍増加している。 すなわち Vinが変わらずVoutが2倍になるためには真の印加電圧の増加が必要なので負帰還が弱まったことになる。

非反転増幅との違いは印加電圧と負帰還のラインが独立していないので同じラインに両者の電流が重畳されること。 すなわち重畳された結果が定電流となる。


たとえばVin=1V, Rin=10K,Rf=20Kとした場合、入力側は 20K/(10K+20K)で マイナス端子には Vin*(2/3)が印加される。一方の出力側は 同様に -Vout(10K/20K+10K)となり -Vout* (1/3)となり合成結果が マイナス端子で0となるように出力が決定され結果出力が -2Vとなればバランスするわけだ。

この際Rin, Rfに流れる電流値は入力ループ、出力ループの両者の電流を足した値が流れる。 またこの電流はVin/Rinと同じ値となる。 この場合出力がマイナスになるので両者の電流方向は同じであるから重ね合わせをつかわなくとも容易に答えは得られる。 しかし重ね合わせで考えるとこの回路の働きがよく見えてくる。

上記のように印加電圧側のループと、出力電圧側のループに流れる電流の和が最終的な電流量であるのだが、増幅率が-1の場合は 1:1, 増幅率が -2の場合は 1:2というように増幅率に反映して電流量の比が変化する。 各ループを構成する抵抗郡は同じものであるので電流比が2倍なら電圧比も2倍になるのは当然だからである。

またマイナス端子の電位はプラス端子の電位と同じであるからプラス端子が0であればマイナス端子も0にならなくてはならない。 入力側から見たマイナス端子での抵抗の電圧降下と出力側から見た抵抗の電圧降下が同じになる必然から電流比も上記のような比率となる。

負帰還量が減れば出力側からの電流が増える。 すなわち負帰還量を減らすためにRfの抵抗値をあげで分圧比を下げたので電流を増やさないと平衡電圧が同じにならないということ(当たり前だが重要な反応)。

OUT PUTとVsa((+)端子と(-)端子の電圧差)の関係
1倍反転増幅と2倍反転増幅の電圧印加時から定常状態までの電圧変化イメージ

OUTPUT=0時、(-)端子に印加される電圧は分圧比(RiとRfの値)で異なっているが最終的には0に近づいていく。  出力電圧-2Vの場合の方が負帰還が弱いのでVsaは大きい。  入力電圧が分圧されて(-)端子に入る値が違っても最終的にはVsaを0に近づけるべくOut putからの電圧が(-)端子にかかっていくさまがこの図を見るとよくわかる。

Vsaの比較
裸GAIN=40dB(100倍)時のVsa

水: 1倍の反転増幅
赤: 2倍の反転増幅

裸GAINは固定なので出力が2倍になるのは真の入力電圧が2倍になる。 これは負帰還が1/2になったため。 非反転増幅時と同様の反応。


では Rfが10Kと20Kでも Rinがかわらなければ合成電流値が同じである理由はどうしてか?。 これはバーチャルショートが成り立っているから印加電圧と抵抗Rinが固定なら電流は同じであるという結論ではあるがもう少し考えてみる。


抵抗に流れる電流はRfが変化しても Vin/Rinでどうして決まるのか


Rinを10Kとして Rfを1から1Mまで可変した場合の入力、出力電流の変化および出力電圧の変化を以下に示す。


橙:入力ループの電流
水:出力ループの電流


この図はまるで差動回路における電流変化と同様な変化を示している(X軸をLogスケールでとるとよりそっくりになります)。 すなわちRin=Rfの時入出力電流は同じ値で両者の和を1とすれば Rfが増えれば出力電流が増えて入力電流は減るが両者の和は常に1になる。 すなわち Vin/Rinで設定される固定値があっての反応。 定電流源からの電流が入力、出力電流に分岐するイメージ?。

Rfが大きくなれば出力ループ側のマイナス端子に印加される分圧比は少なくなるが出力側から見れば負帰還の強さがより弱くなるので出力電流は増え出力電圧も大きくなる。 すなわちミクロ的には真の入力電圧が大きくなっているので出力電流は増えている。 マクロ的には2入力間はバーチャルショートという原則ではあるが。

ではどうして入力ループ側の電流は減るのか。 それは単にRfの値が大きくなりVinの値は同じであるからで電流は減る。 電流値の和が一定ということであれば差動回路と同様に入力ループの僮の低下分出力ループの電流は 僮増える。

入力ループの電流が減っても(-)端子にかかる分圧分は抵抗の分圧比が大きくなるので増えている。  また負帰還は1/2から1/3になって低下するので出力はボルテージフォロワーの3倍であるが(-)端子の印加電圧は Vin * 2/3なので結局Voutは-2Vとなる。 結局、真の印加電圧は(-)端子に直接かかる電圧の低下と負帰還が弱まった結果との積で2倍に増えている。

出力ループ側の電流は入力ループ側と同じ抵抗構成で Rf + RinなのでVoutが Voutの2倍になるのだから電流値は2倍になる。


真の印加電圧が2倍に上がるのは負帰還の強さが1/3になり(-)端子の印加電圧が2/3になるから。 このことは(-)端子での他の電圧要素がなくなることにならないとおかしい。 すなわち入力ループと出力ループの電圧の重畳で0Vになることであるから 入力の分圧比が0.5から0.66になれば出力の分圧比は0.5から0.33低下しても出力電圧が2倍になっているので両者の電圧重畳は0Vとなる。

Rfの可変で負帰還量の変化とともに Vinは固定でも(-)端子に印加される電圧は変化していることにより平衡し、最終出力電圧はシンプルに真の印加電圧 * open loop gainで決まる。


Rfが10Kから20Kに変更されたことによって

・入力側の(-)端子電圧はRf の電位なので 0.66(抵抗値 増加) 0.33(電流 低下)
・出力側の(-)端子電圧はRinの電位なので 0.33(抵抗値 低下) 0.66(電流 増加)

となって(-)端子での電圧は 入力t出力の抵抗比が2倍になれば電流比が1/2の関係にあるので両者とも同値になり入力と出力では極性反転なので和は0となる。


また入力ループ電流 + 出力ループ電流は

入力ループ側: Vin /(Rin + Rf)
出力ループ側: Vout /(Rin + Rf)

Vin /(Rin + Rf) + Vout/(Rin + Rout) =
 (Vin + Vout) / (Rin + Rf) :=
  (Vin + Vin* (Rf/Rin)) / (Rin + Rf) =
   Vin * (Rf+Ri) / Rin*(Rin + Rf) =Vin /Rin

となり Rin、Vinが固定でRfが変化した場合、両者を足した電流値は Vin /Rinになるので

I = Vin / Rinとすると
Iin = I - Iout
Iout = I -Iin


このように 反転増幅器においてVin -- Rin -- マイナス端子間は定電流源を構成する形となる。 これは非反転増幅の場合と同様であるが非反転の場合は電流の重畳がないからより簡単だが反転増幅の場合は両者の重畳の結果が Vin/Rinと同じになるように分配されている。

非反転増幅と同様、反転増幅器においても入力にかける印加電圧がどんな値でも (+),(-)端子間に印加される真の電圧は0(に限りなく近い)なので(+),(-)端子に流入する電流も最小になる。 よってこの場合 Rinに流れる電流は OP AMP内部に流れず、そのままRfに流入しているのでなんだか OP AMPが無くてもあっても同じように見えれしまうが少なくとも出力サイドからの電流/電圧は OP AMPが出している電流/電圧である。 実際はOPAMPが電流を支配しているのだが、バーチャルショートにより計算上も Vin/Rinで得られる電流がRfにも流れる直列回路としてあつかえる。

入力ループ側と出力ループ側の電流が同方向で加算できるのは印加電圧Vinがプラスの時、両者のループとも入力側の電位の方が高いためで、反転増幅なので出力が逆というのがみそ。 差動回路の定電流源のIeに対して 印加電圧によってIc1 + Ic2 = Ieを満たすような両Icの電流変化の様子と同様なことが OP AMPに接続された抵抗を流れる入力、出力ループの両電流間で起こっていることの意味はいかに。


Vin /Rinで定義できる定電流源がOP AMPの負帰還の真骨頂なわけなのでこの部分を別の定電流源におきかえるとOP AMPの出力ループ側の反応としてはRf -- 定電流間は高インピーダンスなので切断状態と同じなの電流は流れずOP AMPの出力電圧がそのまま(-)端子にかかりそれによって両ループの(-)端子電圧が相殺されることでバーチャルショートになるというちょっとトリッキーな反応。

Vin/Rinで得られる電流が初めから定電流源に置き換わってしまっているのでRfに対する出力側と入力側のループの変化は生じることができず、出力ループ側の電流=0となることでつじつまが合う。


capactor

次にRfのかわりに capacitorをつけた積分器における負帰還について考える。 この場合も (+),(-)両端子間の電圧が0になるように回路は動いて平衡する。 入力側のループは RinとCの LPF回路であり、出力側は CとRinのHPF回路で両者の合成電圧が -端子に現れこれが +端子と同じ0になるわけだ。 たとえば 入力電圧として一定電圧を与えた場合出力はどうなるのだろうか。

入力側で考えると定常状態においてはRとCの中点電圧は入力の一定値と同じ電圧になる。 そして電流は流れない。 一方出力側は出力電圧がマイナスに向かって低下していくのだがこの出力を微分した結果が入力側の中点の電圧すなわち一定電圧と同じにならなくてはならないので、結局出力端子の電圧はマイナス方向に一定値で低下していく必要がある。

一見、出力電圧はマイナスで増加し、入力ループ側は1Vの固定値で両者の相殺が成り立つのが不思議と思ってしまいますが出力ループ側の(-)端子は出力の微分特性なので出力の定電流充電に対して微分値は一定であるので相殺される構造になっている。 このように FBループに capacitorが存在すると積分反応と微分反応が同時に起こり、重ね合わせにおいては LPFと(-)HPF電圧特性の重畳であるが結果としては定電流充電なので積分器としての動作になる。


入力ループからの電流の発生はない(変化時のみ発生)ので電流はcapacitorの微分作用のみによって得られる。 入力ループからの電流の発生は無いが微分電流は  Vin -- Rin-- マイナス端子 - C -という経由で流れる。 これは外から見ればVin/Rinで得られる定電流で Cを充電した結果と同じになる。 実際は出力サイドからの定電流のなせる作用だが。

この場合の動作は、OP AMPの内部の動作をこのように考えなくとも単にOP AMPの外の回路の振る舞いから出力電圧の変化を考えた場合と同じになる。 すなわち 外から見れば定電流源が Cに単に作用しているのと等価になる。( 但し(-)端子がバーチャルショートなのでcapacitorの右端子はGNDレベルではなく上図であれば(-)端子がGNDレベル.) 内部動作的には実際はOP AMPが一定電流を常に吸い込んでいる状態。 こうしないと 上記のように - 端子を0に保てなくなるのだから。 定電流源の元はVin / RではなくOP AMPの作用であるということ。


正弦波の印加時の反応


緑: Vin
水: 入力ループ(LPF)
橙: 出力ループ(HPF)
黄: 積分器out

印加電圧を2Vppの正弦波にした場合、簡単の為にFcにおける波形を考えると、OPAMPの積分器の出力はFc時 ゲイン-1なのでこの場合は振幅が2Vppで逆位相でさらに90度ずれた正弦波が出力されるわけですが積分なので0Vを中心に振幅は振れなくて0V - (-)2V 間をいききします。

入力サイドのループはLPFなので振幅が1.4Vpp位相の45度遅れの正弦波となりますが出力ループ側は複雑で積分器出力に対して位相が45度進んだ1.4Vppの正弦波となるのですがHPFであるため直流分が取り除かれ0Vを中心とした振動となりLPFとHPF成分は結局、位相反転した振幅の同じ正弦波となるため(-)端子電圧は0となります。

問題はFc以外の周波数での反応ですがFcより印加信号の周波数が高い場合LPFの出力は低下すると共に積分器出力も低下、HPF側は逆に出力が上昇する方向であり積分器出力 * HPF特性がLPFの出力と合致することになります。 LPFとHPFの位相関係はVinと積分器の位相関係は変化しなので結局、LPF、HPF出力はFcの場合と同じ逆相関係になる(-)端子電圧は0になります。

・ Vin * LPFgain  =  Vin * 積分器gain * HPFgain
・ LPFgain = 積分器gain * HPFgain

すなわち、
 入力ループ側 : 1/√(2πfCR)^2 +1
 出力ループ側: 2πfCR * 1/ √(1/(2πfCR)^2 +1

で出力側の式を整理すると入力側と同じ式になります。

Fc=1Khzの積分器で
Sig =0.25 Khz 入力ループ=0.96  出力= 4 * 0.24 = 0.96
Sig =0.5 Khz  入力ループ=0.89  出力= 2 * 0.445 =0.89
Sig =1 Khz  入力=ループ0.7   出力= 1 * 0.7 =0.7
Sig =2 Khz  入力=ループ0.445  出力= 0.5 * 0.89 = 0.445
Sig =4 Khz  入力=ループ0.24   出力= 0.25 * 0.97 =0.24

積分器のカーブは単純に-6dB/octのカーブでLPFのカーブはFc以降の周波数ではそれを漸近線としています。 HPFのカーブは対数軸上ではそれと逆特性ですがそれに積分特性をかけるとLPF特性が出現するという1次CR filterの原理そのものがここで出ているわけです。


電流MIX


* Fcでの電流波形
水:入力ループ電流
橙:出力ループ電流
緑:入力ループ + 出力ループ = Vin / Rin 電流

CR回路においても当然、Rinに流れる電流は入力ループと出力ループの和になっています。 正弦波を印加すると Vin/Riで発生する電流は印加電圧と位相が同じ電流になりこの電流値を1とすれば、Fcの周波数においては入力ループ側に流れる電流は振幅が0.7で位相が電圧波形に対して45度進んだ正弦波、出力ループ側は同じ CR直列接続なので振幅0.7で本来なら同じ位相の波形と言いたいところですが出力電圧は位相反転してさらに90度位相がずれた電圧なので結局、電圧波形に対して位相が45度送れた正弦波なので加算すると印加電圧と位相が同じ 振幅1すなわちVin/Rinで求まる電流振幅の正弦波とうまい具合になります。



* Fcの2倍の周波数正弦波での電流波形

積分カーブは2KHzで-6dBなので印加信号の1/2。 出力ループ(LPF特性)と積分カーブとの差は約-1dBなので約0.9倍。 -0.9*0.5=0.45。 入力ループ(HPF特性)も入力信号との差は約-1dBなので0.9倍。 上記のグラフはそのようになっています。



* 入力/出力ループ電流のF特性

上記電圧波形の場合はLPFとHPFの振幅が同じになって(-)端子電圧が0でしたが電流の場合は入力、出力ループで印加電圧が異なるため同じにはならずVin/Rinの固定電流に対して入力ループ電圧=HPF、出力ループ電流=LPF特性となります。

CRfilter回路の電流特性はHPF特性なので入力ループの電流特性はそうなっていますが出力ループ側の電流特性はなんとLPF型になっています。 これは出力電圧積分特性を受けて変動する為 Fcより周波数が低いと電圧増大なので 電流のHPF特性 * 積分特性で LPF特性になっていると言うことになります。 入力ループと出力ループの電流間においては常に90度の位相差を保持しながら上記の周波数特性に応じたMIXがなされ結果は固定値となります。

Vin/Rinで定義される定電流源を実現する為には入力ループがHPF特性の電流であれば出力特性はLPFの特性になる必然がありそれを実現する為にはこの回路では出力が積分特性になり電圧が印加電圧に対して積分倍される必要がある。

この例はOP AMPを利用した負帰還回路の基本性質はバーチャルショートですがそれと同時にVin/Rinの定電流化を実現するための出力ループの電流特性を生むために出力電圧は動くということでもあることをより明確に示しています。 バーチャルショートであることはRinの電流はVinが固定であれば変化できない道理です。


普通の1次LPF/HPFにおいては抵抗の電圧降下とcapacitorの充電電圧との関係において90度の位相差が発生しますがOPAMPの積分器においては入力、出力ループ電流の間で90度の位相差が発生するという反応。

(-)端子での電圧すなわちLPF、HPFの電圧は両者逆相でレベルは同じで電圧に関してはバーチャルショートの維持、電流MIXにおいての負帰還作用は入力ループ側の逆特性のMIXで定電流、すなわち1を保持。

回路の表向きで見られる電流変化は Vin/Rinで単に抵抗を流れる正弦波定電流でそれが積分されることですがその実態は上図のような入力ループ側と出力ループ側の複雑な電流MIXの結果だということがわかります。

実際は負帰還ループによって OP AMPの (+)端子と(-)端子がほぼおなじ電圧になるまで サーボ機構が働き同じになると平衡する反応ですが。



transistor

最後に 本題であるところのRinに抵抗、Rfの代わりにtransistorの C-E間をつないでだ場合を考える。 

この場合出力ループ側は印加電圧をGNDにすれば外付け回路だけの動作と同じだけ電流が流れるのでマイナス端子電圧はマイナス。 ということは入力サイドではマイナス端子がプラスにならなければならない。 この場合Vbeが0Vであるから電流Icは流れずマイナス端子は印加電圧がかかる形になるが............と考えてみたがつじつまが合いません。

すなわちtransistorはCapacitorや抵抗Rのような受動素子でないので単純な重ね合わせに展開はできない。 出力LOOPで考えても抵抗Riの片側がGNDであれば上図ではtransisterは飽和してしまいIcはOP AMP時のような電流値にならずVc電位は(-)Vにはならないので単純な重ね合わせは成り立たない。

重ね合わせの分解でなくOPAMとTr.の動作としてもNPN Tr.はB=Cなので飽和直前の状態になるが完全に飽和にはいたっていないのに対して重ね合わせの出力ループにおいてはRiの片側がGNDになるのでそもそも Vc > Veでありコレクタ電圧はエミッタ電圧より低くなることはできないので電流は飽和しコレクタの電圧降下はとても小さい。 よって入力ループで電流が流れずVinがそのままコレクタ電圧になれば相殺して0Vになることはできない。


この場合は初めVinに +電圧が印加されればOPAMPの(-)端子は+VinになるためOPAMPのOut putはマイナス電位に下降しようとするのでNPNのVbeが上昇しIcが流れる。 Icが流れればRiの電圧降下が生じるからOPAMPの(-)端子電位が下がるがまだプラスなのでOP AMP Out putはまだマイナスに下がりVbeは上がるのでIcは上昇する。 Riの電圧降下上昇によってOP AMPの(-)端子が0Vになる(+端子と同じ電圧) とバランスして電流の上昇は停止する。

といった負帰還ループの反応が起こりここでもOP AMPの 2端子間がほぼ0Vになることで状態が平衡する。

出力電圧はマイナスだがその値はVin/Rinで規定される電流を C-E間に流した結果のVbeの値すなわち Ic=Is{exp(q*Vbe/kT)-1} を反映した値となる。


では Vb固定 入力Vin固定で温度変化(上昇)が生じた場合、本来ならIcが変化したいのだが変化できない理由と OP AMPの出力電圧が上がる理由は?。

単純にはRf抵抗が低下したと考えればよいのでしょうか。 その場合負帰還が大きくなって真の印加電圧が低下するので出力も低下。 OUTputはマイナス出力だから出力電圧は上がる。

Vbeが変化しなければIcが上昇しようとする。IcはVbeに依存した定電流源の値。 Icが増加しようとすればRiに流れる電流も増加しようとするので(-)端子電圧は低下それを受けて真の印加電圧もさがればOUTPUTの電位は上がる。 よってVbeが低下するがまだIcは上昇しようとし(-)端子電圧はさらに低下、Vbeもさらに低下して温度上昇以前のIcの値まで Icが減った時点でVbeは温度変化以前の Vbeより減ることになる。

(-)端子での電圧はより下がる方向に向くので真の入力電圧が減ることになり、低下した真の電圧 * 裸GAINで得られる出力は下がることによってVbeも低下するがその低下の割合が温度上昇によるVbe -- Ic曲線において Vbeが低下した分その曲線上の Icも低下して元のIcになったところで平衡する。

すなわちIc値は温度上昇以前のVbe -- Ic曲線においてVbeが低下する前のIcの値と同じになってIcの変動はないことになる。

OP AMPが トランジスタの Vbeというかエミッタ電位をコントロールしてIcを一定にするというまさしくサーボ回路が働いている。 OP AMPの出力を低下させるためには真の入力電圧をちょっとばかり下げていることでつじつまが合うのだがバーチャルショートで (+)、(-)端子間の電圧が0と考えてしまうと動作がわからなくなってしまう。 正しくはというか動作原理を考える際には(+)、(-)端子間には真の入力電圧が印加されておりその電圧を取り除いた状態において2端子間はバーチャルショートなのです。


温度上昇で単体トランジスタのIcが増えるのは Is すなわちコレクタ逆方向飽和電流が増えると言うことですが、これはトランジスタのPN接合を逆バイアスした時に流れる電流でその実体はP/N接合に印加電圧等がかかっていない状態でN領域の多数キャリア(電子)とP領域の少数キャリア(電子)がPN障壁電圧のかさ上げによってエネルギー的につりあっている状態の時、両領域を自由にいききできるキャリアの量を定義している数値となります。 すなわちかさあげ分を除いた少数キャリアの量。 自由にいききできますが電圧をかけていない場合はランダムな動きなので一定方向の電流にはなりません。


*: N、P領域の電子の分布
*: ホールについてもP領域多数キャリア、N領域少数キャリアが存在。

このキャリア群はPN接合に逆バイアスをかけた場合は逆方向に電流が流れる元になります。  この逆電流は基本逆バイアスの電圧に関係せず固定値です( PN接合のブレークダウン電圧以下では)。

上記のOPAMPによる Ic変動の抑止は温度変化(上昇)によるIsの値の増大そのものを抑えることはできませんので、上式の Vbeの値を減らすことでIsの増加によるIcの変動を間接的に抑えているわけです。 上記OP AMP回路においてVbeのコントロールはOP AMPの出力電圧によって行われその元は OP AMPに印加される真の印加電圧のコントロールによるというわけです。

真の印加電圧のコントロールは何も温度変化に対するIcの変動を抑えるだけでなくたとえば反転増幅器の Rfの値が10Kから20Kの2倍に変化すれば真の印加電圧が2倍になる反応と同一の反応、すなわち負帰還回路のサーボの特性と言うわけです。 Rf抵抗の変化に対応と言うのはわかりやすいですがトランジスタのIcの温度変動と言うのは若干わかりにくい例ですがC-E間が上記と同様にRf抵抗の変化として考えればわかりやすいでしょう。

現実的には(+)、(-)端子電圧は同じにならずに真の印加電圧差分存在するわけです。 このため実際上は反転増幅であれば Vin/Rinで生じる電流を定電流値に保つ反応(Vin、Rin両者固定時)、非反転であれば同様にVin/R1で生じる電流を定電流値に保つ反応(Vin/R1固定時)が OP AMPを使った負帰還反応の本質といった所でしょう。


この回路ともう一つのNPN トランジスタで構成されたantilog ampにおいてはOP AMP ループ内の NPN Trのベースに CVを印加しますがその場合、Vbの増減に対応して同量Veが変化してIcを固定値に保つためVbeは変化せず CVの変化のみが Veすなわち指数特性の元になるもう一つのNPNトランジスタのVbeを可変させることになります。

このように トランジスタの Vbを可変させてIcを変化させようとしても負帰還によってIcは変化しません。 この反応はちょっと複雑ですが反転増幅器の基本原理から

Vbが上がるすなわちVeが動かなければIcが増えるのでRf部分の抵抗値が低下すると考えれば、負帰還が強くなる、またはIcが増加すれば真の入力電圧が低下すると考えても両者は同じですが 、真の印加電圧が下がり出力電圧の絶対値は下がりますがこの場合反転出力なので電位は上昇します。 出力が上がればVeが上昇してVbeはふたたび低下して Rfが上がり元の値になり、結果IcすなわちVin /Rinで指定された電流値に戻るがVbの外部からの増加は動かないので平衡過程の Veの増加は残ることになります。

温度変化に対する動きににてVeが変化していますがこの場合は明確なVbの変化があるのでそれと同じだけVeが上昇することでバランス、温度変化の場合は Vb固定ですのでIsの増減に対応したつじつま合わせの Veの変化ということになります。 負帰還の基本作用は同じでも結果としていろいろなバリエーションが生じます。



<2019/10/22 rev1.10>
<2019/10/18 rev1.9> 間違え修正
<2018/10/14 rev1>