Lambda VCEG


全鍵発振音源におけるEG

Lambdaに限らず全鍵POLYの音源の各Key独立のEGは1っのVRで全部のEGのTimeを可変する関係から当然のことながら電圧制御になっている必要があります。 ただPS3000シリーズのような完全なpoly synthではないので簡易タイプの電圧制御化がなされておりたいへんトリッキーな回路になっていて面白いです。

ここではlambdaの簡易電圧制御EGを紹介してみることにします。


・ LAMBDAの各Keyごとに装備されているAR typeのVCEG

Attack CV / Release CVの大きさによってtimeが変わります。attackは CVが小さいほど timeは早く releaseは逆です。上記の回路を見てもどうしてVCEGとして機能するのか、根本的な発想の飛躍を理解しないと直感的にはなかなか理解できません。 それにしてもわずか10個以下の部品で1鍵分の A/R VCEGができてしまっています。これならLOW COSTに出来ます。

各Diodeの微分抵抗の変化がattack/release Timeに作用するのかと考えましたが半分正解、半分不正解というか本質的ではないようです。 Diodeは単にSWとしても動いているようですがそうであればどうしてCRの時定数回路の値が変化できるのか?。 実際はかなりトリッキーな回路動作となります。一瞬、形がKORGの得意なdiode ringかと錯覚しますがそうではありません。以下の電流/電圧変化の詳細図を示します。

KEY OFF時、0.1uFの Cap.は未充電なので(*0) OutPutは+15V。 Key ONするとAttack CVの大きさによってCap.が0Vに向かって充電されて行くのでOut Put電圧は低下してKey ON時はCR回路の片方の端子はGNDなので0V(近く)になればattack終了。 Key OFFになれば release CVの大きさによってCap.が放電されて行きOutPutが+15Vになるとrelease time終了。

上記の説明ではAttack / Release Timeが Voltage Controllされていることがわかりませんので各電流の変化を考えて見ます。 Key ON/OFFにおける電流変化は上記のようになります。(OUT putのみ電圧変化)

*0:
動作上D2が無くても成り立ちそうですが、D2が無いとCap.が少し充電してしまいKey OFF時 +15Vを保てなくなります。このD2によってKey OFF時未充電 = +15Vになります。


KEY OFF時(relase終了後):
D2がONしていてI00のみが流れています。ただしAttack CV が MAX(約14.4V)時付近になっていればD2はOFF (*2)

I1、I2、I3、I01とI4はそれぞれ0。

*2:
すなわち D2のON/OFFが意味があるのではなくKey OFF時、D2のカソードが+14V以上の高電位になるようにI00は流れている。 このD2が無いとKEYOFF時out putの+15Vを保てなくなる。

KEY ON時:
D2のアノード電位がGNDレベルになるので一瞬I1がパルス状に流れる。 すなわちD1がONするとD1を通して電流が流れそれで 0.1uFの Cap.が充電されるためOut Putの低下を受けすぐにOFF。 D1のカソード電圧が瞬時にAttack CVレベルになった後にD1がOFFし充電経路0.1uFと22Mの経路で流れるI2のみとなりOutPutがGNDレベル近くになるまで続く。

D2はアノードGNDなのでOFF。

release CVが小さいとき以外はD4がON(*3)でI01が流れ、D4アノード< OUT PUT時 D3 OFF。
Out Putが0V近くになるとD3の逆バイアスが解けるくらいでoutputはバランスして0V近くで固定

I1,I2,I00,I4,I3は0

*3:
この場合もD4のON/OFFが意味があるわけではなくD4のアノードが0Vから0.6V程度の電位になってD3がOFFするようにI01が流れている。

再度KEY OFF時:
D4のカソード電圧が上がりD4がOFFするのでrelease CVがD3のアノードに伝わりI4がパルス状に短時間流れる。(*4)
始め Out Putは0Vに近いのでD3は急激にONするがI4により急速放電されるためじきにOut Putが上昇し(D3 ON --> OFF)となる。

*4:
release CVが0とか小さい場合、Key OFFを受けてD4のカソードが+15Vまで急上昇する始めの一瞬D4のアノードは0.6V程度にはあがるのでこの場合も一瞬電流は流れCap.を放電するので一瞬でD3はOFFし、out Put電圧も0.6V程度にはなる。

D2 ONなのでI00が再び流れる。
0.1uF Cap.に流れる経路としてのD3はOFFになるのでCap.を放電する経路は以後I3が22MとCap.の時定数で流れる。

上図からattack / release Timeに関与している要素は基本22Mの抵抗と 0.1uFのcapacitorだけということがわかります。すなわち基本的なattack/release timeの時定数はなんと固定なのです。ではなぜそれぞれのtimeが可変できるのでしょうか。

attck CV=0V時の例:

CRの充放電にdiodeの微分抵抗が時定数として作用するのは KEY ON直後D1がONしてcap.の電荷が D1 --R -- Attack CVに流れる一瞬時だけでそれに伴って Cap.の電位(output)急低下して attack CV電圧近くになれば D1がOFFしてその時点でのOUT PUTの電位はおおむね attck CVの値。(*1)

それ以降はその電位から 22Mの抵抗と cap.の時定数でカーブがきまる。( KEY ON直後から 22M と Cap,の時定数で電流は流れています)

Attack CVの位置まで初めにoutputが急速低下するのが CV電圧の役目でそれ以降の CRカーブは Attack CVにかかわらず同じだが目標充電電圧が差があるのでカーブがゆっくり見えたり早く見えたりするというトリック。


release時も同様にrelase CVの電圧までOut Put電圧は急上昇しそれ以降は CRの時定数で放電します。 この場合はattackと逆にrekase CVが大きい方がrelase timeが短くなります。

*1:
Attack CV=0V時でもD1の電圧降下分とRの電圧降下分がるので約2VくらいまでしかD1 ON区間で下がらずそれ以降は22Mtと0.1uFの時定数で下降。 attack CVが3V以上になるとD1、Rに流れる電流が急低下するのでほぼattack CV近くまでOut Putははじめのタイミングで下がる。


I00とI01

1: ATTACK Phase


白: OUT PUT
橙: D3 A-K間電圧
水: D4 A電圧

Attack phase時 Relase CVが out putに影響を与えないようにするためには D3がOFFする必要がある。このためにはD4が ONしてD4のアノードがGNDレベルより少し大きい値(0.4V程度)であればD3 OFF。 この時D4の経路に流れる電流がI01になる。

attackが定常状態でおちついてOut Putが0V近くになってもD3をONするのに足りうる電圧にさせない作用。すなわち relase CVの値が大きくともD3をONさせて Cap.の電圧を上昇させないようにする。


2: RELASE Phase

D1自体はAttack phaseの始めの一瞬だけONしてそれ以降はOFFなので D1があれば relase phase時Attack CV の値が小さく ともout putの電圧を低下させることはなさそうであるが D2が無いとKey OFF時の oit put 電圧+15Vを保持できないので D2は必要なようだ。


白: OUT PUT
橙: D1 A-K間電圧
水: D2 K電圧

D1のVakは上図では500mS付近で一瞬0.6V程度になり即下降してD1 OFF。
D2が無いとKey OFF区間でD1のカソード電位が低下してしまう。


Attack / Relase カーブの特徴

Attack CVの値を可変したときのAttackカーブの変化を示します。

Attack CV=0V/7V/15V

この図のように attackのカーブは2段構成になっており最初は Attack CV の値まで急激にOut putレベルが落ちます。 この場合の充電電流の経路は2っあり一つは 22Mと0.1uFの時定数。 それに加えて +15Vとattack CVの値の差分間に対して 0.1uFの cap.とD1のdiodeの微分抵抗の時定数でOut Putレベルが低下、D1がOFFしてからは22Mと0.1uFの時定数で推移しますのでそれ以降はattack CVの値によらず同じカーブなのですが残りの到達距離の違いによって違うカーブのように見えてしまう。 すなわちまるでリニアポルタメントのような振る舞い。

AttackCV=15V時はほぼ 22Mと0.1uFの時定数のカーブで逆にAttack CV=0V時はKey ONで即0V近く(実際は2Vくらい)までoutputレベルが下がってから22Mと0.1uFの時定数カーブが始まり目標値がすぐそこにあるのでカーブもすぐ終了。 attack CV=7V時は2パターンのカーブが分かれてはっきり見えます。

attack時の D1の ON/OFF動作と0.1uFの capacitorへの充電関係とRelase時のD3のON/OFF動作と0.1uFのCapacitorへの放電関係は EGというよりはVCOの動作と酷似しています。 またAttack時、release CVがoutputに影響しないようにD3がOffするためには間接的にD4が必要で、Relase時attack CVがoutputに影響しないようにD1がOFFするためにもD2が必要という関係になっておりこれが一瞬diode ringと同じ配置になっているのが面白い。 エンヴェロープカーブのギミックはリニアポルタメントのカーブの性質にも共通点があるところが面白い。


ちなみに上記の図で ARのEnvelopeの形が通常と反転していますがLambdaに使用しているTone generator IC S10430のVss=+15V、Vdd=GNDという電圧の与えかたおよび Key ONで GND、 KEY OFFで +15Vの関係に対してのenvelopeなので逆転しているようです。

またこれらの分周音源というのは矩形波の発振器出力を Gate回路でEGで gateingして最終出力するため通常のVCAのような2象限の出力にはならないので出力は1象限というか包絡線は片側のみに付きます。

このような片側のみ包絡線がある構造の物が全鍵盤発振音源には多いです。 これは当然というか各鍵盤にsynthで使うVCAはCOST的に使用できないからでしょう。



<2019/11/09 rev0.1>