AC-ACアダプターを使って +5V/+/-2電源を得る方法 


90年代以降 Digital synthの電源はSWitching電源を使用する機種が増えましたが特にLOWcostの物はAC-ACアダプターを使って3電源を得るものも数多くありました。 以下に典型的な1例を示します。


* ALESISの AC-ACアダプター電源回路の例

Analog synthと違ってDigital synthの場合 analog の +/-電源はanti alias filter用のOP AMP数個をまかなえばいい場合が多いためか?上図のように半波整流+ ケミコンで得た電圧を3端子Reg.に印加するパターンが多いです。

上記回路回路では ACアダプターは9VのAC-ACアダプタなのでアダプターの +方向の振幅のピークは無負荷で12V程度はあるでしょう。 これだと半波整流でも +5Vのレギュレータに与える電圧としては消費電流にもよりますがまかなえるという設計でしょう。 一方analog 電源に対してはこの電圧では12Vレギュレータを駆動することができません。

それを回避するためのテクニックとして上記回路ではD2、C6と D4、C13による半波整流の前に半波整流回路を回転させDiode側をoutにしたような形のものが入っていますがこれはいかに。 通常の半波整流であれば diode で半波整流した後の電圧をケミコンで蓄積(or Filtering)するのですがこの配置だとどうなるのか?。

ここで半波整流の原理を考えてみるとケミコンの後に負荷が無いとすれば + 電源の場合、 AC電圧が +方向に増大しDiodeがONしているとケミコンの充電電圧が同様に増大しますがAC電圧のピークを過ぎ下降するととdiodeがOFFする為、ケミコンの電荷はホールドされるわけですから直流電圧が発生していることになります。

  AC電圧out = Diodeの電圧降下 + ケミコンの充電電圧

となるのでケミコンの電圧が +の直流電圧であればDiodeに印加されている電圧は AC信号電圧と +直流電圧の逆極性の直流電圧ということになり、0Vを中心としたAC信号電圧が直流シフトされた信号となり+/-間に存在せず+か - の片方向にかたよります。


* 緑:Diode電圧

AC SIN波の上昇に対応してCap.が充電されていきますがSIN 90度から下降するとDiodeがOFFになり以後Cap,に充電された直流成分は保持されます。以後DiodeはONすることがないのでDiode間の電圧はAC SIN波とはCap.に充電されている直流電圧分マイナスにOFFSETがかかったSIN波として現れる。CとRの直列回路とはだいぶ動作が異なるというトリッキーな反応になります。  すなわちCap.の両端子電圧はSIN波のピークをホールドしているわけでそれとのつじつま合わせとしてDiodeにかかる電圧は印加SIN波にCap.の直流分をマイナスした電圧で変化する。


* 水:Diode電圧 (Diode方向(+)


* 水:Diode電圧 (Diode方向(-))

いったんほぼSIN波のピークまでCap.が充電された以後は電流は流れない状況でのCap.とDiodeに印加される電圧。Cap.は単に電池。Diodeには電流が流れないから印加SIN波電圧変化が電池電圧を引いた分伝わる。 CacitorをSIG IN側にセットしてDiode側をGND側につなぐとAC電圧の直流レベルシフターとして機能していることになる。

上図の回路では D2とC6による- 側の半波整流回路の形の回路において diodeにかかる電圧が +側の半波整流の印加電圧になるので AC信号が +12V程度 OFFset加算された信号が印加されている形で波高値のピークは +24VになりオリジナルのAC信号の2倍となります。 (すなわちAC電源のPP値が(+) or (-)側のピーク値となる)

さらにその信号が本来の半波整流のdiodeに印加されるわけですが、すでにマイナス成分はなくなっているのでこの場合のdiode D3はケミコンの電荷が入力側に逆流するのを防止するための機能のみで、全体で見れば本来のAC信号の2倍のピーク値をもった半波整流波形とほぼ同じ形となります。 この場合+12Vの半波整流の値の2倍ありますので +12Vの3端子レギュレータを十分駆動できるということになるのでしょう。

半波2倍圧回路

* 負荷無し時


* 負荷あり時

出力電流150mA程度であれば12V3端子の前で15Vを保持

であれば小細工をしないで初めから 18Vの AC-ACアダプタを使えばよいようにも思えますがそうなると +5V用の3端子に対しては電圧が高すぎてしまい電圧ドロップ用の抵抗を使ったりする必要が出てしまうので、+/- のアナログ電源側の電圧を擬似的に2倍することでつじつまをあわせているのでしょう。 - 側の電源に対しても同様の原理で電圧を倍電圧にしています。

ちなみに上記回路の +5V発生回路部分は半波整流ですが diode bridgeによる全波整流の方がリップルは少ないのでそうしているケースもあります。


・ 半波整流

基本動作はAC電源の1/4周期でcapacitorをチャージ。その後DiodeはOFFになるので負荷が無い場合はそのままチヤージされた直流電源が保持されるが負荷があればcapacitorが放電される。放電されればDiodeが再度ONする電圧にAC電源の電位が上がればチャージされ 放電を補う。


* 半波整流の電圧変化

初期状態ではcap.電圧0だから充電するのに電流がいっぱい必要。 次からはある程度充電されているので追加電流は少し。


* 半波整流の電流変化
 (わかり易くするため負荷を重くしCap.のインピーダンスと同程度にした場合)
赤: diode電流
水:抵抗負荷電流
黄:Capacitor電流

電圧で追っていくと簡単なように見える半波整流の現象も電流変化で見ると結構複雑な反応であることがわかります。

上図は負荷が大変重い場合でdiodeがOFFしてケミコンに蓄積された電荷が消費される半周期で負荷の電流(電圧)が0になっています。diodeを流れる電流はAC in < Output電圧で DiodeがOFFすれば 0になりACからは電流が供給されません。

またケミコンの電圧= AC inの電圧 - diodeの順方向電圧になった時点でケミコンの充電は終了でその時 OutPut電圧はピーク、負荷が無ければOutPut電圧はHOLDされますが負荷があるのでCapacitor充電電圧も下がるのでこの段階ではDiode電流が流れています。

Capacitor電流はAC電源のピークで0になりそれ以降放電電流となり負荷に流れます。 すなわちこの時点で負荷には放電電流とdiode電流が流れている。AC電源の変化が0であるからCapacitorのインピーダンスはMAXで抵抗のみにDiode電流が流れている。

ピーク点を過ぎたAC電源のカーブは急激に低下して行き負荷の電圧低下曲線より急になるとDiodeがOFFしここからはcapacitorの電荷のみによって負荷の電圧が生じることになるので上図においてはSIN波の半周期で負荷の電圧は0になります。再度AC電源が0を超えて上昇すればDiodeがONして電流が流れ Cap.を充電します。

DiodeがOFFするまではcapacitor電流と抵抗負荷電流との関係において位相差が90度の関係というCapacitorの基本特性で動く。 DiodeがOFFしてしまえば電流は単に放電特性なので直流電源とCR時定数回路の対応。



<2023/11/28 rev0.1>
<2021/06/21 rev0.0>