サムライたちの明治維新


〜リイド社 全1巻(2000.12.28初版発行)〜

この単行本は、

『リストラ武士道』 …「週刊漫画サンデー」(実業之日本社)1998.1/6+13合併〜2/17号
『異邦人(エトランゼ)サムライたちの明治』 …「コミック乱」(リイド社)2000.9〜11月号

の二つを合わせて単行本化したもの。前者は原作が「邑祭誠」で後者が「壮野睦」 となっているが、実際はダイナミックプロ出身作家・ むらまつり誠の変名である。

「リストラ」てのは1993年辺りに流行語となって、「再構築」という 本来の意味から「クビを切る」くらいの意味に堕したが、現代に生き るそんな我々の気分を非常にうまく、切なく、明治維新の時代へと移した 味わい深い一作。

江戸から明治へ。史上空前の「リストラ」が行なわれた日本。主人公は 廃刀令以後も、刀に変えて鉄棒を腰に下げ、武士であった自分から自由 になれない上田丑之助。町人長屋に嫌々ながら住み、職探しに出るも元 士族のプライドが邪魔してうまく行かない。かつての仲間達もまた、寄 り添ったり、抗ったりしながら、それぞれに時代と向き合っていた…。

上田は士族として現政権へ対抗するゲリラとなろうとするが、決意しよ うとする折も折、息子の誕生を迎える…という単行本「その1」から 「その6」が『リストラ武士道』にあたる。

続いて不平士族が暗躍を再開し、一度は捨てた士族の夢をもう一度、と 上田が西南の役に加わる後半が『異邦人(エトランゼ) サムライたちの明治』にあたる(『リストラ〜』と合わせて 単行本化するために連載された)。

勝海舟や西郷隆盛ら歴史上の有名人も登場、主人公と絡んでいく。 上田は最後に武士として生を全うすることかなわず、明治の現実に 引き戻されていく。最後のページで、自分の家の前に立ち尽くす 上田の姿は切ない。

最後のコマでは長屋の大俯瞰となるが、上田の姿はない。玄関 をくぐれたのだろうか。くぐったと信じたいのだが。


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