この単行本は、
『リストラ武士道』
…「週刊漫画サンデー」(実業之日本社)1998.1/6+13合併〜2/17号
『異邦人(エトランゼ)サムライたちの明治』
…「コミック乱」(リイド社)2000.9〜11月号
の二つを合わせて単行本化したもの。前者は原作が「邑祭誠」で後者が「壮野睦」
となっているが、実際はダイナミックプロ出身作家・
むらまつり誠の変名である。
「リストラ」てのは1993年辺りに流行語となって、「再構築」という
本来の意味から「クビを切る」くらいの意味に堕したが、現代に生き
るそんな我々の気分を非常にうまく、切なく、明治維新の時代へと移した
味わい深い一作。
江戸から明治へ。史上空前の「リストラ」が行なわれた日本。主人公は
廃刀令以後も、刀に変えて鉄棒を腰に下げ、武士であった自分から自由
になれない上田丑之助。町人長屋に嫌々ながら住み、職探しに出るも元
士族のプライドが邪魔してうまく行かない。かつての仲間達もまた、寄
り添ったり、抗ったりしながら、それぞれに時代と向き合っていた…。
上田は士族として現政権へ対抗するゲリラとなろうとするが、決意しよ
うとする折も折、息子の誕生を迎える…という単行本「その1」から
「その6」が『リストラ武士道』にあたる。
続いて不平士族が暗躍を再開し、一度は捨てた士族の夢をもう一度、と
上田が西南の役に加わる後半が『異邦人(エトランゼ)
サムライたちの明治』にあたる(『リストラ〜』と合わせて
単行本化するために連載された)。
勝海舟や西郷隆盛ら歴史上の有名人も登場、主人公と絡んでいく。
上田は最後に武士として生を全うすることかなわず、明治の現実に
引き戻されていく。最後のページで、自分の家の前に立ち尽くす
上田の姿は切ない。
最後のコマでは長屋の大俯瞰となるが、上田の姿はない。玄関
をくぐれたのだろうか。くぐったと信じたいのだが。
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