他作家によるマジンガー(その1)
やっちゃいけない一線を軽々と越えてみせた、ちょっとアダルトなマジンガー


桜多吾作版
マジンガーZ/グレートマジンガー/UFOロボグレンダイザー


『マジンガーZ』『グレートマジンガー』『UFOロボグレンダイザー』を通しては 秋田書店サンデーコミックス、朝日ソノラマ・サンワイドコミックス、双葉社・ アクションコミックスと今までに3度単行本化されている。なお、最初の秋田版は『グレン ダイザー』に未収録あり。「冒険王」の連載収録完全版はサンワイド版で、アクション版 もラストまで収録はされているものの、『マジンガーZ』の一部に再編集がある。 また2012年マンガショップから、ボスボロット初登場回など、 未収録エピソードの入った新編集版にて『マジンガーZ』のみ出版されている。

そもそも『マジンガーZ』はマンガの掲載権を集英社が獲得、原作者・永井豪は「週刊 少年ジャンプ」で連載開始、それに合わせて、「別冊少年ジャンプ(現・月刊少年ジャンプ)」 でも連載が始まった。コレが桜多版。後に豪ちゃんの連載が「テレマガ」に移ると、桜多版は 「冒険王」へ。以後『グレンダイザー』まで続く。


冒険王1975年8月号別冊付録

コレはあちこちのインタビューでも語られているが、週刊に比べて一回分のページ数が 多く「つづく」で引っ張りにくい月刊連載であるがゆえに、読み切り的エピソードが多い。 特に「冒険王」へ移ってからの連載は「子供に見せちゃいけません」的ハードな描写が続出。 Zがアフリカの革命騒ぎに一役買うポリティカル・フィクションや、アイヌの伝説に 絡んだ異世界へ旅立つSFファンタジーなどバラエティに富んでいる。秋田版単行本時に描き 下ろされた、ヘル始め悪役側の過去が明かされるピカレスクロマン「闘え!!Dr.ヘル」 は特に傑作。また、東映まんが祭りの『マジンガーZ対デビルマン』『マジンガーZ対暗黒大 将軍』がストーリー中に違和感少なく挿入されている。

続く『グレートマジンガー』がドラマ的には最も評価が高い。連載一回目で剣鉄也は ミケーネを瞬き一つせず拳銃で射殺してみせるわ、量産型グレートを日本の重工 業会社が外国に売りつけるわ、ミケーネを畏れた各国は日本が征服されるのを黙って 見守るわ、お陰で国際手配される科学要塞研究所の面々がゲリラ化するわ、最後は 剣鉄也特攻かますわ。テレビアニメ版では踏み込めなかった剣鉄也のリアリティを全面に 押し出している。(>だからといってアニメ版がぬるかったわけではない!勘違いするなよ)

そして『グレンダイザー』ではSF趣味が爆裂。テレビ版が星の境をも越えた「愛」につい て試行錯誤しているのを横目に、『グレート』を更に突き詰めたようなリアリティで押し進 める。挙げ句、宇門教授がデュークを戦う機械へ洗脳しようとしたり、地球人に絶望 したデュークが宇宙へ逃亡したり、ラストは弓さやかが地球滅亡のカギを握る などなど、ハードすぎる世界観となる。ただ大事なのは、テレビアニメ版、テレマガ連載版と もなし得なかった、ミケーネ帝国・闇の帝王の最期が描かれることだ!

何でもありなストーリーパターンは、かえって桜多吾作のドラマ的には破綻とか何かを越え て一貫している。結局スーパーロボットといえど、突き詰めると兵器としてしかリアリティ を持ち得ないというのをこの段階でやっちゃってるのが凄いわけだ。


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