『魔獣戦線 THE APOCALYPSE』レビュー その(1)

#1「ローマ使徒への手紙 復讐するは我にあり」 <2003.2/23(日)>

科学者の父に体を改造され、母を殺された来留間慎一は共に戦う 愛する少女・真理阿を今正に失おうとしていた。自分は「神を生 まれさせるスイッチ」だと告げ、慎一に「最後のお願い」をする 真理阿。…真理阿の死と共に、神の眷属が出現、殺戮と破壊の限 りを尽くすのだった。

そのしばらく後。壊滅した新宿は弱肉強食の掟が支配する土地に 変わり、人々はその外で復興生活を営み、何事もない日常を過ご していた。そんな中、少女・亜矢可サンダースは父・ジェームスの手 によって心臓の持病を直す手術を受け、学園生活を送っていた。 彼女は手術以来、愛する人を失う魔獣・来留間慎一の夢を見ている。

ある日、亜矢可の前に謎の魔獣が現れる。彼女を喰らおうとする 魔獣。その危機を救ったのは、誰あろう、来留間慎一だったのである。 そして、ジェームスは慎一が復讐を誓う、13使徒の一人なのだ。

しかし、タイトルに「黙示録」ってついてるのがダサい、っ てのは誰も言わなかったのか。

つーわけで、見ましたよ一回目。何はともあれ、上村栄司氏 の名前が原画にっ!『ダンテ』の進藤満尾氏に続いて古き東 映動画の血脈が。

まずは「絵」の話。

作画の方は、『バロムワン』くらいか、ややいいカンジ…っ て見てる人の方が少ない例を出すなよ俺。『ダンテ』の3話 くらいです。少なくともこのレベルで続けば良しだが。予告 見る限り、次もそんなカンジ。

…と言いたいところだが、『北斗の拳』の「やっちまえ〜!」 と有象無象が来るカットそのままみてえな格闘シーンには、 思わず笑ってしまったりもする。前日『エク セル・サーガ』の北斗パロ回を見たからかも知れんが。 (>といって、エクセル話するつもりは毛頭ないからな。) 枚数少ないから致し方ない、引きセル風処理なのは分かるけ ども。

慎ちゃん心臓握りつぶしカットは実写『バロム1』のクチビ ルゲ思い出したな。心臓に照明ベタ当てみてえな絵作りには 反対だが、狙いは分かるです。そのアオリでサンダースも、 萌えカット出る前に心臓さらけ出してます(笑)

あと、モーフィング変型。4枚の原画の間を繋ぐという作りで ゴールドちゃん出て来ました。いかにもソフトを「素」で使 ってるカンジが違和感でしたなあ。その後の一瞬で手前にゴ ールドの顔が出る作画の方が、それっぽかったし。いや、じ っくり見せるカットと、パワー押しで見せるカットによる狙 いの違いは分かるのよ。更に違和感なく見せる使い方希望。 「変型」つーなら、ゲッターロボの変型の方がまだケレン味 たっぷりのイイ動きだし。

関係ないけど、13使徒のグループショットは十面鬼思い出し ました。

ストーリー・脚本など文芸面。

まだ1話なのでどうこう言えないけど、賢ち ゃん節を変に指向してないのでいいのではないだろうか、 中途半端にやるくらいなら。逆に1話としては過不足なく、 今後の展開を予測させる材料提示として、手堅いっす。

どうやら亜矢可・サンダースをぶち込むことで、この作品は 賢世界に入るのではなく、賢世界のキャラを引きずり込むつ もりのようだし。まあ「親衛隊」云々は俺の好みじゃないけ どさ。それと語尾に「ゴン」て付けるガキはなんだ。

亜矢可・サンダースが慎一と接触するキッカケになったのが、 心臓病を治すために父ヤコブが使った「万能細胞」。亜矢可 本人でなく、激闘の際に奪い取った慎一の細胞、てのがミソ なワケ。

「万能細胞」のキーワードが引っかかったんでネット調べた ら、「骨髄性幹細胞」という言葉を使った方が適切なのは分 かった。ヤコブの施した手術ってのは、現在再生医療分野で 実現に向けて邁進してるんだね。

そういや、今回は亜矢可の父・サンダースが13使徒の一人と いう新設定導入。コレもムリに過去の設定を引っ張らずに新 作ワールドを展開するのにはイイ選択ですな。この博士が恐 竜キチガイなんだが、ゲッターオマージュはやめてくれよー。 (ちなみに次回は恐竜魔獣出現)

しかし、だな。

さて、好意的に書いてますが、一個だけどうにも納得行かな かったのは、地理的説明が全くもって分かり難いというコト。

どうやら新宿界隈は真理阿の死と共に壊滅したのだが、それ 以外の地域では割と普通に日常生活送れる程度にしか影響が なかったらしい。せこいなー。コレでもかって、原作の描き 足されたラストシーン描いてるのに、その程度しか影響なか ったってか。

要は縮小版『バイオレンスジャック』といったカンジの設定 で、外部も多少描くというトコなのね。それが分からなかっ たので、今展開してる事が、未来なのか現在なのか、亜矢可 の夢の出来事なのか、いささか混乱した。

どっかで一発都市俯瞰入れるなり、交通封鎖かなんかやって るところ見せるなりして、「ココから先壊滅」てカンジで、 新宿とそれ以外の地域の連続性をカンジさせて欲しかったぞ。

主題歌はアレが好きなヒトもいるかも知れない。知れないが、 まあ俺は賢ちゃんジャケでない限りCDは狩らない。詞がつれ えよなー。エンディングは「ナニ癒されてやがんだ、コイツ ら」ってカンジ。

#2「マタイ伝 眠れる子供」 <2003.3/2(日)>

カタストロフィによって壊滅した東京都心。そこへ向かう一台の 黒塗りのリムジンがいた。中に乗っているのは、亜矢可・サンダース とお付のドライバー。ドライバーは、災厄に見舞われた土地へ行くのを 渋ったが、慎一の血に呼ばれる亜矢可は無理を言って、車を回してもら ったのだ。

その目前に突如現れたのは、亜矢可の父・ジェームスこと使徒ヤコブが作り上げた 3人の恐竜型の新人間(ニューマン)だった。一人の男はティラノサウルス ・レックス、今一人の男はトリケラトプス、もう一人は翼竜の女。

車は横転、ドライバーは血祭りに挙げられ、亜矢可にも恐竜どもが 迫る。そこへ現れたのは、慎一とともに壊滅した新宿副都心で暮らす 浮浪児たちだった。新宿の地下の網目を知り尽くす彼らと共に、 何とか逃げおおせた亜矢可。

亜矢可は地下の世界で聞いた。浮浪児たちが家を、親を失い泣いて いたところに、突如現れた慎一の話を。「獣たちの世界には『子別れ』 の儀式がある。子が、親の敵となるまで成長した時には分かれねばな らないのだ」…そして「親の醜い一面を見ぬまま、美しいものとして 独り立ちしたお前達は幸せなのだ」と。

慎一の心の中には「美しい」ものはあるのか?浮浪児の問いかけに 慎一はうなずく。彼の脳裏には、自分を生かした母と真理阿の思い出が よぎった。

一方、来留間源三率いる神の使徒の元、最も優れた新人類として 名を上げようとする恐竜人間たちは、慎一をおびき出すために、 同じ血を持つ亜矢可を追う。逃げ回る浮浪児のリーダーは翼竜女 の爪の餌食となり、少女はトリケラトプスの角に貫かれる。

慎一が駆けつけたときは遅かった。全てを失った彼が心の拠り所に していた、逞しい浮浪児たちの命をいとも簡単に奪った魔獣に、 慎一の怒りが爆発、トリケラトプスは一瞬にして殺される。

だが、狡猾な残りの二人は、亜矢可を人質にして慎一を待ち受ける。 そしてそれはジェームス博士にも来留間源三から知らされた。「神の 血のいけにえ」なのだ、と。

てなわけで、2話。つくづく、普通の感性が何人束になっても、 一人の特異な才能にはおっつかないのだなあ…というのが第一の感想。

もうこの作品の慎一は、あらすじに書いた通り、子供たちを励まし、 命の大切さに素直に感情移入し、その表し方も非常に分かりやすい。 怒る時は怒るし、自分の感情を割とキチンと言葉に出せるヒト。

賢ちゃんの描くマンガでは「いつブチ切れるか分からない」、 ナニ考えてるんだか分からない猛進振りが魅力の慎一だが、この アニメでは、「ブチ切れたら何するか分からない」という 視聴者から見て分かりやすいキャラクターに変えられている。

この違いは大きいですよ。賢ちゃん節の魅力つーのはまさにそこ を外さないから、ストーリーが思わぬ方向に引っ張られるわけで。 『魔獣戦線』しかり『極道兵器』しかり『爆末伝』しかり…『ゲッタ ーロボ』だって世界の平和とは言ってるけど、戦いが面白そうだから、 という感覚も十二分にあるワケで。それが例えば、「身近な人間」がその都度 死に追いやられることで、怒る悲しむ、というのが動機となると、 もう明らかに違う。そこまで人懐っこい連中じゃないっすから、本来。

てなわけで、それはそれとして今回だが(なげーよ)。

▼『バイオレンスジャック』のオマージュシーンが印象的です。 浮浪児たちが壊滅した都心を泣きながら高台から見下ろしてる時に、 いきなり背後の地下からメリメリ言わして、慎一登場。これは もう違うといったって、ジャックです。ジャックはその後、 子供に説教こいたりしねーけど。

その後の、浮浪児たちが新宿の地下街跡を縦横無尽に駆け抜けるという 描写も、黄金都市編辺りで大人は通れないが、子供なら抜け道だらけ という描写と通じるものはあるし。…頼む、豪ちゃんマンガを手本に しないで、賢ちゃんマンガからせめて引用してくれ…ゲッターの 「野郎組」とか。

あっさり子供たちが殺されるのも、「らしく」ない。せめてどこから 探し出してきたのか分からないが、ダイナマイトを体に巻きつけて、 泣きながらトリケラトプスに特攻カマすくらいでないと、 ダイナミック世界の住人とは認められぬ!認められぬぞ、ケンシロウ!

▼前回非常に分かりにくかった、地理上の問題。今回は、やや生き残った 土地から、副都心へ亜矢可を乗せた車が移動することで見せてました。 でも、前回見せた「何事もなく普通の学園生活が営まれる土地」との つながりが感じられないのは、フォローしようがないけどもね。

また、都心だと燃え盛るビル群をあれくらいの距離で見通せる高台は、 実はない。都心は、高い所でもせいぜい20〜30m。あえていうと、 新宿区内の箱根山が山の手線内最高地点で45m。これでも、アソコまで 見下ろせないですね。(例えそうだとしても、一緒に燃えてる)後は緩やかに 練馬方面へ高台になってるんだけど、石神井ですら54m。もう少しそう いうディテールは気をつけて欲しいなあ。

揚げ足のようだけど、劇中であれだけ繰り返し「副都心」と強調したり、 有名な地下のオブジェ「新宿の目」を利用したりしてる以上、現実の土地を ちゃんと生かさないと、出す意味ないし。

▼演出は手堅い。カットの長さも適切で、今のところ、AT-X作品の中では 破綻の少ないレベル。作画の方は、慎一と亜矢可の顔が崩れる以外はまあまあ (>おいおい)。モーフィング変型も翼竜女で見られるのだが、 今回は原画がキチンと変形する方向を意識して描かれていたのか、効果を 出していた。ただし、慎一の方は使いまわしでゴールドとクマさんが飛び出る 2カット。あんまし「どうぶつ大行進」的に体から離れるよりも、 慎一の肉体の一部として描いた方が『魔獣』らしいフリーキーさが 出るんだけども。

ま、『魔王ダンテ』ほど極端に話数によって差が出るということは なさそうですな。とはいえ、今回最も力が入ってるのは、ラストに現れる、 にわか作りの十字架に掛けられた亜矢可の下着姿、というのはどうだい、兄弟。

▼今後一切この作品は、石川賢の『魔獣戦線』からは切り離して考えないと、 まともに作品として見ることが出来んですよ。いや、分かってるつもりでも まだ引きずってたな、俺。というわけで、この作品の評価軸は、『バイオレ ンスジャック』『北斗の拳』『マッドマックス2』などの分野に属する 「カタストロフィ以後」を舞台にした格闘アクションアニメと、単純に 割り切るべき。

というのも、割と今回で武上氏が指向する来留間慎一像、てのが見えた。 上に挙げた作品群の中では、ケンシロウが一番近いです。まあ武上氏は 『北斗の拳』の脚本やっておられましたからねえ。

#3「ヨブ記 主与えたまい、主取りたまう 」 <2003.3/9(日)>

十字架に掛けられた亜矢可の前でティラノサウルス男と翼竜女が あざ笑う。「<主与えたまい、主取りたまう>という聖書の言葉 を知ってるかい?神は自らへの忠誠心を試すためなら、大事な者を 生贄にすることすら求める。お前の父ジェームスは、それをしたのだ」 と。魔獣・慎一を呼ぶために、亜矢可を使ったのだと。

衝撃の事実に苦しむ亜矢可。そこへ慎一が現れる。亜矢可を盾に 着いて来いと言う恐竜魔獣たちだが、慎一は…

「あいにく俺には赤の他人を助けるなんて情はねえ!悪魔だからな!」

恐竜魔獣たちの血を求めて、慎一は踊りかかる。ゴールドの牙と ティラノサウルスの牙が互いの肉体に食い込み、血が流される。 拮抗した牙と牙の戦いは、そこへ戻った富三郎の言葉で決する。 ジェームスに指示を出したのは、慎一が仇と捜し求め、その命を 奪いたいと復讐を誓う父・来留間源三だった。それを聞くなり、 慎一に力がこもり、ティラノサウルスは噛み砕かれ、隙を見て 背後から襲う翼竜だが、慎一の鷹に切り裂かれる。

亜矢可を十字架から下ろそうとする慎一。が、その背後で、 ティラノサウルスと翼竜は最後の愛を交わそうとしていた。 残された命のないティラノは、翼竜女に自分の肉体の全てを捧げた。 合体した恐竜魔獣の形をなしていない細胞が襲う。 亜矢可は合体され、恐竜魔獣の心臓の手前にその半身を晒していた。

慎一は動きがとれず、恐竜魔獣になす術もなく翻弄され、意識を失う。 絶体絶命のその時、突っ込んでくる車。降りてきたのはジェームス博士だ。 娘を助けたい一心のジェームスを恐竜魔獣が笑う。お前は自分たちを 手術する時に何と言った?進化する至福だと…更に彼ら恐竜魔獣は ジェームスよりも上位の来留間源三の指示で動いているのだと。

爪がジェームスを引き裂く。ジェームスは、恐竜魔獣の細胞結合を 破壊する薬品を叩き込む。苦しむ魔獣。死を賭けて飛び掛る魔獣だが、 その瞬間亜矢可が光を発する。それの応えるかのように慎一は立ち上がり、 更に進化した姿へ変身を遂げる。一瞬にして恐竜魔獣は息の根を止められた。

今は逃げろ、と慎一と亜矢可、そして富三郎を送り出すジェームス。 そして追っ手が訪れた時、自爆して果てるのだった。

さて今回。まあ第一に『デビルマン』のシレーヌ+カイム合体編の 匂いがするシーンがあったりするワケだが、まあこの際ドラマとしちゃ 成立してるので、良しとしよう。全くダイナミックだからって豪ちゃん ばっかりモチーフにするなよ、賢ちゃん作品読んでねーのかよ云々。 まあ次回、へライの里・忍法帳編のようなので、そこへ期待しよう!

とのっけから終わりの話書いてるが、前回のレビューに基づき、 ダイナミック作品原作つーフィルターとケン・イシカワ節希望 のフィルター外せば、1話以来比較的安定した展開だったと言えるかな。

いや、そりゃ慎一が随分人懐っこすぎるのだけども。それ盾にとって 人質作戦て展開も「昔ながらの手」だって斬って捨てるのは簡単だしね。

で、まずは「魔獣の中の魔獣」たる慎一の描写はつーと、前回より いいカンジ。ティラノサウルスと首根っこ噛み付き合戦に入り、 右腕が大きくゴールドに変形した慎一という図柄は、これでもかと うまくカットが割られていて、良かったんじゃないでしょうか。 背後の鳥さんもいい味出していたし。

何より、前回2話で最も不満であった、「獣を分離して戦う」という 描写が今回は鳥だけだったので、ダイナミックプロイズムにもつながった と思う。ゴールドもクマさんも無事慎一の肉体の一部として機能し、 ゴールドが傷ついても慎一が「痛い」という感覚の絵でまとめられてたし。

枚数のかけ方もメリハリを作る方向へ動いている。アクションシーンは 全身がちゃんと入る絵で作って、会話シーンはアップ多用。お陰で慎一 はいっつも「目でしゃべってる」んじゃないかというカンジだが(笑)、 シナリオが要求するセリフのメリハリに合わせて、キチンと動かされている。 例えば瞳が感情爆発に合わせ三白眼になったりしてるので、とりあえずは 飽きずに見られる工夫がちゃんとあるということだ(『ダンテ』はこれすら 疎かだったのがマズイんだよね)。

というわけで、そういうメリハリを付ける役割であるところの 演出上でもコンテの上でも、『魔獣』のワイルド加減は ちゃんと出ているのだ。慎一だけちょっと別人なシナリオは除いて (>くどいよ俺)

そこでラストシーンのジェームス博士の自爆攻撃が問題になる。 これ、賢ちゃんの慎一ならにっくき復讐の相手・ジェームスを 目の前にして殺さないはずがないワケで。いくら亜矢可に感情 移入してようが、原作でバルビアをああも残酷に殺した男が そうそう優しくなるはずがない。そこをどうするんだろう… てのは注視してたのよ。しかし結局それを回避したラストなんだよな。

原作マンガではユダ博士が「親子の情を断ち切れなかったゆえに 神を裏切り、歯向かう男」として設定されていた。今回のジェーム スの行動も、亜矢可をサブの主人公として設定するためにユダを踏襲 したものとなっているが、コレがネックにならないことを祈るばかりだ。 そのユダにしたって、動きを止めるスーツを着せて「生殺与奪権が誰にあるか」 を慎一に対して見せつけることで、かろうじてのど笛噛み切られるのを回避 してるのよ。それと比べると、ジェームスに対する慎一は形としての主人公 でしかない。通り過ぎるんじゃねーよって。

『魔獣戦線』てマンガは慎一がいかなカタチで13使徒への復讐を遂げていくか、 というのがミリョクなんで、ユダは原作のラストが近づいたために 登場が早まった「ストーリー上の掟破りキャラ」だったワケだ。 本来は復讐を積んでいく中で、最後の最後にユダが出て、復讐と言う 動機に戸惑いが生まれ、更なる大いなる神への戦いを発見する要素 なんでしょ(神への引き金は無論真理阿)。

この「ユダパターン」を最初にやっちまった以上、今後ワルの使徒どもが いくら改心しようが泣いて悔いようが、止めるわけには行かなくなる。 パターンになっちゃうからねえ。なので、俺としてはどのくらい残りの 使徒が憎たらしく描けて行くか、これ当然期待しちゃうから。

そのシナリオだが、恐らくテーマとして追究しそうな気配があるのが、 この作品の中でどのくらいの「愛が裏切られるか」という描写。今回 までの3本で言うと、

・親子の情愛が断ち切られた源三と慎一
・夫婦愛、そして親子の愛をも分かたれた静江と慎一
・育て始めた愛が死によって分かたれた慎一と真理阿

これがまずは物語のベースであり、これに対する復讐がタテ筋である。 まあこれは原作を動かす動機なんで、武上氏としては、その続編を書く にあたり、裏切られる愛を新たに設定した。これが亜矢可が

・源三と真一の関係をトレースして、ジェームスと亜矢可の親子の愛を斬る
・そして今回、ティラノと翼竜(プテラつーのね)の愛が裏切られる

慎一と真理阿の愛は「真理阿の血」が慎一の中に生き、最大の敵「神」 がそれを欲している、というところから、今だ健在となり物語の中で 守られる対象として機能する。今後は亜矢可の慎一への愛ってのが、 育つものか裏切られるものか、という展開なんですね、分かりました。 「三角関係」なんていう安い言葉で言わないでよ、前島監督。

もう一つ。今回いかにもケン・イシカワイズム溢れる人質となった 亜矢可だが、慎一の細胞持ってるってことは、今後亜矢可も魔獣として 足手まといにならないくらいのキャラになるんだろうか。今のところ 説明セリフ担当でしかない富三郎の「元来持ってるえげつなさ」発動の日も含め、 4話以降こそ、『魔獣』が『魔獣』らしいアニメになるか、「世紀末 救世主伝説」バリエで終わるかの境目だったり。


『魔獣戦線 THE APOCALYPSE』TOPへ

[TOP]