退院を迫られる

 今回もちょっと社会的な問題についてお話しましょう。

 入院していても三ヶ月たつと退院を迫られるということ、だいぶ以前からなかば常識のように伝えられています。とくに高齢の患者さんの場合、政府の医療費抑制の標的になっていて、長期の入院が病院にとって『損』になるような制度になっていることが主な原因です。

 そして、平成一二年四月の制度の改訂では、七十歳以上のかたが一般病院(いわゆる急性期病院)で三ヶ月を超えて入院している場合、一部の例外を除いて極端に病院の収入が減るようになり、それが十月から実際に適用されはじめましたので、これからさらにいろいろな問題が出てくる恐れがあります。

 もっとも、たしかに現に一般病院で治療をしなければならない病状の患者さんを無理やり追い立てるようなことは論外ですが、リハビリテーションや介護が主の状態になっている場合には、それらに力点を置いていない一般病院で入院を続けるより、それぞれの専門性を確保している療養型の病院や介護保険施設で療養するほうが、けっきょく患者さんにとってよい環境であるということも冷静に考える必要があります。

 もちろん、病院や施設にはピンからキリまでありますから、その選択にまた迷うということになるわけで、だからこそすべての一般病院のケースワーカーさんのお仕事が『早く退院させる係』ではなく、ほんとうに患者さんのほうを向いた専門職になっていただきたいものだと私は思っています。いうまでもありませんが、ケースワーカー自体がいない、時代錯誤な病院はいまや問題外であります。そういう病院は経営理念や医療水準すらも疑わしいと考えなければなりません。

 『医療におけるあいまい』というものが最近つぎつぎに明らかになってきています。あいまいなまま医療という大きな買い物をしてしまわないよう、患者さんの側にもある程度のお勉強が必要になっているのではないでしょうか。


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