タバコをやめてみませんか

 タバコを吸われるかたにとっては、このところどんどん住みにくい世の中になってきているはずです。駅や公共施設での分煙や、飛行機内での全面禁煙、長距離列車の禁煙車両の増加など、ともかく『自由にタバコを吸える』ところがとても少なくなってきています。

 これらのことを私は数年まえから予測し、診療などで
「これからもっと不自由になるからタバコをやめといたほうが楽やで」
とみなさんにお勧めしてきました。医者が禁煙を勧めるときには、どうしても『健康』をキーワードにしがちで、そうしますと多くのかたが
「ワシはタバコをやめるくらいなら死んでもかめへん」
という反応がになります。

 じっさい、タバコにはしばしば言われている『肺ガン』の危険性だけではなく、心筋梗塞や脳梗塞・慢性気管支炎・ある種のアレルギー・嗅覚や味覚の鈍感化など、もろもろの健康を損ねる作用があり、しかもタバコに含まれるニコチンによって依存症をきたすので、欧米では喫煙はある種の『病』として取り扱われているのはたしかです。

 しかし、そういうことが分かっていてもなおタバコをやめようと思わないかたが少なくないわけで、でも私が指摘するように、タバコを吸っているために日常生活にとても不自由を強いられるということになれば、ひょっとしたら「あーもーめんどくさい」ということで禁煙できるかもしれません(でけへんやろか…)。

 そしてこれからもっともっと急速な勢いでタバコを吸うのに不自由な状況が進むと私は予測しています。歩行喫煙に罰則が課せられたり、生命保険で喫煙者がきわめて不利な扱いになったり、喫煙できる飲食店には入口にその表示が義務づけられるなどなどということになるかもしれません。ともかくタバコを吸われるかたがもっと暮らしにくくなるのは間違いありません。

 もっとも、私がいちばん問題だと思うのは、医者をはじめとする医療関係者の喫煙率がいつまでも高いということ。全館禁煙の病院の職員専用スペースが煙もうもうという現実は、ほとんどブラックユーモアではあります。自分はタバコを吸いながら人に禁煙を説く、そりゃあ説得力はおまへんわなあ。私?もちろん十年以上まえにきっぱりと禁煙しました。

 どうです、いまのうちにタバコをやめてみませんか?


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