脱水症にご注意

 また暑い季節がめぐってきました。私は寒さにはめっぽう強いのですが、暑いほうはまったくダメ、この原稿を書いている六月の時点でもう食欲低下や不眠に悩んでいます。ま、私のことはともかく、気温が高くなりますと身体の水分が不足しがちになることに注意しなければなりません。

 高齢になりますと、若いときのように暑くてどっと汗をかくというようなことは少なくなりますが、それでも発汗や呼吸に伴う水分蒸発などのいわゆる「不感蒸泄」(ふかんじょうせつ)は多くなります。

 ところで、高齢のかたのなかには、心臓の病気などで利尿剤を服用していたり、夜中にトイレに行きたくないために自分で水分を制限していたり、糖尿病があって尿の量が多くなっていたりなど、もともと体内の水分が不足しがちになりやすいうえ、年とともに全身のいろいろな感覚がにぶくなってきて、身体の水分が減っていてもノドが渇いたと感じなくなってきたりもします。つまり、自分で身体の水分の量を調節することができにくくなっているわけです。

 脱水状態になると、意識がもうろうとしたり、精神状態が不安定になったり、ひどい立ちくらみがおこったりというような症状がみられますが、これらが水不足のためであるとはなかなか思いつきにくいものです。また、それほど重い病状でなくとも、脱水の状態が長く続きますと、血液が濃縮されて粘り気が増し、血管が詰まって脳梗塞や心筋梗塞になる危険性がでてきます。

 運動や暑い戸外の散歩のあと、風呂上がりなどには、ちょっと意識して水分をとるようにしましょう。ただし、かといってあまり多く飲み過ぎることもよくありません。体内の水分が多くなりすぎますと、年とともに衰えている腎臓の能力を越えてしまい、心臓に負担がかかって「心不全」になり、命にかかわるようなこともおこりかねません。なにごともほどほどがたいせつであります。

 さて、〆切が目の前で緊張しながらこの文を書いていたら、私はまだ若いので(半分ウソ)かなりノドが渇いてきました。目の前に茶色い麦の泡立ち水の幻が浮かんでおります。これも脱水の症状のひとつかもしれませぬ。


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