廃用症候群(はいよう・しょうこうぐん)

 今回はちょっと専門的な言葉を表題にしました。わかりやすい言葉にひとことでいいかえるのがむずかしいのです。でも、漢字をみればなんとなく想像がつくのではないでしょうか。

 運動不足や日々の活動の少なさは、足腰を弱らせるのはもちろんですが、さらに意外な全身に影響が及びます。そのような全身が弱った状態を『廃用症候群』というのです。

 手足腰の筋肉が弱る、関節がかたまって動きにくくなったり痛んだりする、骨がもろくなる、たちくらみやふらつきがする、少し動いただけで動悸や息切れがする、足がむくむ、皮膚が弱くなって傷つきやすくなる、床ずれができる、便秘がちになる、物忘れする、気分がめいる、などなど。

 たとえばカゼをこじらせてしばらく床についたような場合、一週間寝込むと筋肉は二割がた弱るといわれています。人間の体は、使わない部分は「不要なもの」として削ぎ落とされていくのが普通です。体も脳も心も「使わない」でいると「使えなく」なってしまうのです。

 病気そのものはよくなっても、筋力が落ちているために家に閉じこもりがちになり、生活が単調になってそのうちボンヤリと横になる時間が増え、いつのまにか寝たきりになる、ということになりかねません。

 こういうことにならないように、日中はできるだけ活動するようにしなければなりません。不幸にもご自分でそれができないほど弱ってしまわれたかたのために、デイサービスやデイケアという制度もあります。

 廃用症候群を防いだり治療したりする薬や注射はありません。「楽をして」寝たきりにならないようにはできないわけですが、しかしまた、寝たきりはけっして楽ではありません。

 どうせ「楽をする」ことができないのなら、寝たきりにならないための「楽でないことをする」ほうが楽なのではないかと思ったりしますが、いかがでしょうか。


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