肩こり

 かつて「何もせんのに肩がこる」というコマーシャルがテレビで流れていたことがあります。肩は、何か根(こん)をつめてやったときにもこりますが、何もしないで身体を動かさなかったときにも、やはりこるのです。

 ところで、医学専門書で「肩こり」を調べようとしても、ほとんど載っていないことに今回気がつきました。肩をこらした人はとても多いのに、です。肩こりなど病気とはいわないというわけなのでしょうか。

 肩こりは日常のいろいろな不具合が原因になっています。何かしたり何もしなかったりというようなことはもちろん、視力の問題、精神的ストレス、運動不足、喫煙、姿勢の悪さ、衣服や寝具の不具合、暑さ寒さ、車の運転などなど、まさに生活のあらゆる場面が肩をこらすことになります。

 冬は、厚着の衣類や布団が体に負担をかけるうえ、寒さのために血液の循環が悪くなって、とくに肩こりをおこしやすいときです。肩や首筋が冷えると、そのあたりの筋肉の血流が悪くなって、筋肉が疲労してしまいます。冷やす湿布は、ですから、肩こりには一般的には逆効果です。張りつけたときに気持ちがよいのでしばしば使われていますが、じつは温めて血管を広げ、血液循環をよくするのが正しい方法です。動かして筋肉をほぐすこと、ぬるい目の風呂でゆっくりと温まること、寒いときには首筋が冷えないような工夫をすることなどが肩こりの予防になります。

 上手なマッサージをしてもらったり温泉でのんびりしたりなどは、とてもいい予防と治療なのでしょうが、マッサージといい温泉といい、気持ちのよいのはそのときだけで、すぐ元どおりにこってしまいます。肩こり歴三十五年の私もたびたび経験していますが、原因が生活のなかにあることが多いのでしかたがありません。

 頭痛の原因でもある肩こり、しかし中には首の骨(頚椎)の変形や椎間板ヘルニア、あるいはまれではありますが腫瘍など、治療を必要とするものもあります。一度は病的なものでないかの検査をしておいても無駄ではないでしょう。


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