脳動脈硬化

 同年輩の人が脳卒中で倒れたという話をたて続けに耳にしますと、うーん、自分はだいじょうぶだろうかと不安にならざるをえません。で、思いきってはやりの脳ドックにかかってみたところ、エムアールなんとかという検査の結果「脳血栓**のうけっせん**がある」といわれて大ショック、というかたが最近増えています。これは「無症候性脳血栓」といわれるもので、知らないうちに脳の細い動脈が詰まった結果だとされています。

 そして、この脳血栓の原因は動脈硬化だという説明を受けて、あわてて動脈硬化の予防にはどうすればいいのか、食べ物はお酒は運動は…ということになります。

 残念ながら、それなりの年齢になっていますと、もう動脈硬化はあるていどできあがっています。その時点で摂生によって動脈硬化を治そうとしてもそれはちょっと無理。もちろん摂生しないよりはしたほうがいいのはいうまでもありませんが。

 要するに動脈硬化は若いときから始まっているものですから、脳血栓なんて心配したこともないという世代のかたこそ動脈硬化の予防を考えなければならないわけです。では高年になるともうなにをしても無駄かというと、そんなことはありません。動脈硬化という「病気」とはいえない状態が、脳血栓や心筋梗塞**しんきんこうそく**や大動脈瘤**だいどうみゃくりゅう**など、直接命にかかわる「病気」になってしまわないためには、それ以上動脈硬化が進まないようにしなければなりません。

 では動脈硬化をおこすものは何かとなると、けっきょくいつも言われる耳の痛いことばかり。つまり、酒、タバコ、運動不足、肥満、そこからはじまる高脂血症、高血圧症、糖尿病、高尿酸血症など。飽食ニッポンでは油断するとすぐにおちいる病気や習慣です。そういえば厚生省が「成人病」を「生活習慣病」と呼びかたをかえることにしました。さあ、薬や健康食品などに走る前に、自分の生活習慣をもういちど点検してみましょうか。


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