地域に根ざしたネットワーク作り
2002/11/15 川西市生涯学習センター
資料(02111501.pdf)のダウンロード(40KB)
資料(02111502.pdf)のダウンロード(26KB)

目 次

はじめに
病院の制度の実情
医師とくに勤務医の実情
老健施設の実情
おわりに


はじめに

 こんにちは。あらためて自己紹介することもないかもしれませんが、協和会の、というより今回は川西市医師会のといったほうがいいかもしれませんが、上農でございます。

 今日は、ケアマネージャーのみなさんの研修会で、病院や施設の実情などについて話してほしいというご依頼を受けまして、医師会の藤末理事といっしょに医療の人間としていろいろとみなさんと話し合いたいと思います。

 で、私が今日お話しますのは、まずいまの病院などをめぐる状況がどのようになっているのか、以前から「三ヶ月で退院させられる」という、一種の『都市伝説』がありますが、それはほんとうなのか、そして、社会的入院として悪者扱いされてきた患者さんたちはどうなるのか、そして、二つ目に、なにより医療の中心であるお医者さんたち、なかでもイザというときに一番頼らなくはならない『病院』のセンセイがたは、介護というものをどのように見ておられるのかということ、最後に私が仕事の中心としている介護老人保健施設の状況はどうか、以上の三点について、であります。

 さて、みなさんがたは介護保険のプロでありますから、介護保険については私のような傍流の人間がいろいろお話するのはおこがましいのですが、しかし、介護保険のことを考えるとき、じつは医療保険のことを知っておかないわけにはまいりません。

 といいますのは、介護保険とは、医療保険のある部分と、福祉制度の措置のある部分を切り離していっしょにしたものだからです。介護保険の医療に近い部分は、じつは平成12年の3月までは医療保険で対応されていたのです。

 ところで、介護保険の制度も、始まったあとにもいろいろと手直しなどがあって、けっこう複雑で難しい状態になっていますが、医療保険のややこしさからみますと「ものすごー簡単」といってもいいほど、医療保険の複雑さはえげつないものです。

 まあ医療保険にもいろいろとあるのですが、今日は私たちのように、在宅医療や、あるいは介護保険を中心に仕事をしている人たちにとって特に関係が深い、病院などの入院に関する制度を中心にちょっとお話しておこうと思います。

 ケアプランを作成するにも、クライアントの相談に乗るにも、この入院に関わる制度について理解していないととてもたいへんだと、私は思います。福祉系出身のケアマネージャーさんが医学的なことが分からなくて…とおっしゃっているのを聞きますが、医療保険の制度については医療系出身のケアマネージャーさんでも詳しいかたはそれほどおられないと思います。

病院の制度の実情

 さて、時間がありませんのでどんどんいきます。

 さきほどもいいましたように、病院からは三ヶ月たつと退院させられるという話は、いつまでたっても繰り返し出てきます。しかし、私はそれに対していつも言うのですが「いまやそんなことはありません」。

 レジュメのギッシリ字が詰まったほうをご覧ください。いちばん上にある表は、入院したときにいちばん基礎となる『入院基本料』に関する診療報酬、これは介護保険での介護報酬と同じものですが、その診療報酬の規定のごくごく一部を引用したものです。

 これは、いわゆる一般病院の、救急車で入院したり、外来診察で入院を勧められたりして入院したときの入院基本料の一部です。右が老人保健の場合、左はそれ以外の人の場合です。まず「基本料」というものがあって、それに入院日数によって加算減算されるものがあります。T群はその病棟の平均在院日数が28日以下の場合、U群は29日以上の場合です。つまり、平均在院日数によって、基本になる金額にすでに差がつきます。

 で、加算は2週間と一ヶ月を節目に変化します。ここには、とくに老人以外の場合は三ヶ月という要素はない、三ヶ月で退院を迫られる根拠はいまはなくなっていることがお分かりいただけますでしょうか。

 ただし、老人については、特定患者というなんとも高飛車ないいかたで三ヶ月目からとんでもないペナルティが課せられます。これについてはあとで少し詳しくご説明します。

 それで、この表から分かることがいくつかあります。

 病院側にとって、なるべく収入をよくしようとすれば、まず第一に平均在院日数を28日以下にしなければなりません。平均在院日数を短くしようとするには、ともかく入院患者さんのすべてのかたを、できるだけ早く退院させなければなりません。

 病院というのは、数人の医者が医療をしているところではありません。たとえば協立病院は常勤の医者が30人以上います。多くの医者がいる病院で、それぞれの医者が受け持っている患者さんの入院期間をうまくコントロールすることは事実上不可能ですから、ではどのようにするかというと『ともかく早く退院させること』です。

 その結果として、なんとなくまだ治っていないようなかたが退院してきたりすることが散見されるようになっているわけです。あるいは、みなさんご経験かと思いますが、退院をえらい急かされるということが起こります。もし私が勤務医で、入院期間を気にするように言われていれば、もっとも簡単に目安とするのは、平均在院日数の分かれ目である28日を目処にすることでしょう。そういうわけで、現在の退院迫られ期間はほぼ一ヶ月ということになっています。

 さて、特定患者です。

 レジュメでお分かりのように、ある一定の条件以外の高齢者の場合、入院期間が90日を超えますと特定患者とされます。こうなりますと、入院基本料は928点とガックリと安くなります。診療報酬の1点は10円ですから、基本料1ですと89日目までの1,396点からいきなり5000円ほど落ちてしまいます。しかも、この928点には、投薬や処置やリハビリテーションなどがすべて含まれ、いわゆる「マルメ」になっています。それまでは出来高払いですから、その差はさらに大きくなります。

 人員配置が少ないために基本料の安い4や5の場合は一見したら高くなっているように見えますが、マルメになっているぶん、実際には減収になるはずです。

 つまり、これを見ますと、おそらく一般病棟では高齢者を90日を超えてはほぼぜったいに入院させてくれないだろうということです。そういう意味では、三ヶ月伝説は再び復活したといえるかもしれません。それも非常に強力な形でです。

 誤解のないように言っておきますが、これははっきりいって厚生労働省の政策として医療費を減らし、とくに高齢者の入院を減らすということの現れでして、けっしてそれぞれの病院が儲け主義のためだけにやるのではありません。もっとも、厚生労働省の官僚さんたちはとっても賢いですから、そういうタクラミだとはぜったいにおっしゃいません。

 ところで、こういう入院期間のことを申しますと、それではいっぺんちょっと退院して、すぐに再入院したらエエのんちゃうんとか、別の病院に移ったらエエやんとかと考えてしまいます。でも高級官僚はやはり頭がいい。レジュメのまんなかあたりを読んでみてください。

 基本的には三ヶ月でリセットということですね。でも、その間に介護老人保健施設に入所することも建前上はダメだというのです。これは、系列の介護老人保健施設と病院とでピンポンすることを防ぐためだと思われます。ウエルハウス川西のように、いちおう病院と離れた場所にある場合はともかく、病院に併設されている介護老人保健施設だと、廊下やエレベータを移動するだけでリセットになるという抜け道を封じているのでありますね。まあ、このあたり官僚と経営者のいたちごっこという観があります。

 そのうえ「特別の関係」などという、なんだかちょっと艶っぽい言葉まで書かなくてはならないのは、官僚さんたちのご苦労なのかもしれませんね。

 ところで、今年の診療報酬の改訂でさらにまた強烈なものが出てきました。それが『特定療養費』です。しかし、お役所は特定って言葉が好きですね。

 これは、レジュメの下にありますように、入院期間が180日を超えたときに診療報酬は一定の割合で出さなくする、そのぶんは病院が勝手に患者さんからもらいなさい、金がかかるという苦情は病院が受けなさいというものです。下に試算したものがありますが、負担増だけで4万円以上です。これは患者さんにとってはかなりの負担でしょう。

 これもまた、入院を抑制しようとする政策にほかなりません。しかもこれは一般病棟だけではなく、療養病棟など、他の病棟にも適用されますから、現在医療保険での療養型病棟になっている病院も直撃します。おそらく負担に耐えられなくて介護保険施設に移りたいという希望が激増するでしょうし、それによって医療保険の療養型を減らそうという政策誘導がミエミエです。

 そして、これは本題ではないのでちょっと触れるだけにしますが、医療保険の療養型病棟から介護療養型医療施設への転換を増やしておいて、つぎにはもっと安くあがる介護老人保健施設へ転換させるなんらかの経済的な誘導を、きっとなさいますでしょうね、厚生労働省は。

 こういうところには国民医療費の削減という経済論理だけがあって、患者さんや高齢者や介護者の気持ちはまったく考慮されていないのが、この国らしいところではあります。本当は別の意味で在宅医療を推進したいのに、いかにもいいことがあるように『在宅医療在宅医療』と言い散らすことはやめていただきたいと、私は思うのであります。

 というわけで、病院でのいろいろな規制のために、いったん退院して在宅医療になったあとの、急変時のフォローにも病院がいやがるようになってきた昨今、在宅医療と旗を振ってもじっさいに在宅医療をしているスタッフの腰が引けてしまう原因になっているのは、皮肉というほかありません。

 じつは15年ほどずっと在宅医療をやってきた私が、引き受けたはいいがイザというときにちゃんとフォローしてもらえなさそうで、責任をもって在宅のお世話ができないのではないかと実感していまして、ここのところ新規の在宅医療をお断りしているほどなのであります。

 繰り返して申しますが、この原因の多くは政策的なものであって、個々の医療期間には責任はほとんどないと私は言い切ってしまいます。ただ、制度だからと追随して患者さんのことを全く省みない病院か、やむをえないのでそれをカバーすべくいろいろと考えている病院かというところで、どこが患者さん本意の病院かという評価が、いずれなされてくると思われます。

医師とくに勤務医の実情

 以上が制度としての問題点でしたが、つぎは病院の医者の悪口であります。今日は病院のセンセイはいらっしゃらないか、いや…。

 私は川西市の介護認定審査会の委員をしていますし、ウエルハウス川西で介護施設の運営に携わっています。そこで痛感するのは、多くの病院勤務医の介護保険制度や在宅介護への無理解、無知、偏見、蔑視です。もちろん病院の医師のなかにもたいへん理解してくださっているかたもおられなくはないですが、でもまあほとんど少数ですね。

 今回のシンポジウムにあたってのアンケートのなかに医師会に対するご意見がいろいろありましたが、じつは介護保険については医師会ではかなりいろいろな啓蒙がなされています。それでも無理解なセンセイがいらっしゃるようですが、それはもう人間性かなとか思うものの、総じて医師会の先生がたは協力的だと思います。このあたりみなさんのなかにはご異論のあるかたがいらっしゃるかもしれませんね。勤務医に関しましては、医師会とは別に考えなくてはならないということを申しあげたいのです。

 意外に知られていないことですが、病院の勤務医は医師会とはあまり関係が深くなく、医師会に加入していないことが少なくない、というより、ほとんど無関係であるというほうが正しいでしょう。

 看護師さんはけっこう強制的に看護協会に加入させられたりするようですし、弁護士さんはそもそも弁護士会に入っていなければ弁護士活動ができないようになっているらしいですが、医者は医師会に入らなくてもぜんぜん不自由がありません。開業医の先生はいろいろな理由で加入されるかたがほとんどですが、勤務医にはなんのメリットもないというのが正直なところ。ですから、医師への窓口を医師会にするというのは、きわめて不完全なチャンネルでしかないのです。

 それで、病院でずっと仕事をしていると、どういうことになるのかというのを、まあ私の独断と偏見でご説明してみたいと思うのですが、これはまあひとつの例としてここだけの話にしておいてください。

 どなたかの言葉に「病を見るのは小医、病人を見るのは中医、国家を見るのは大医」というような意味のがありました。そういう意味では9月に亡くなった長野県の諏訪中央病院の元院長で民主党参議院議員の今井澄(きよし)さんなんかは大医ちゅうの大医だったのでしょうね。ちょっと脱線しました。

 その「小医」の、病だけ見て病人を見ずという医者が、病院ではとくに最近多いような気がします。高度な検査ができるようになって、病人さんよりもモニター画面を見る機会が多くなったからか、あるいは人を相手にするのは面倒なのか。

 病院でみる目の前の患者さんに対してもそうなのですから、見えない在宅の環境など、まず考えてくれないのはしかたがないのかもしれません。

 在宅療養というのは、患者さんにとっても、家族にとっても、そしてサポートする専門職にとっても、非常にたいへんなものであるというのは、ここにおられるケアマネージャーさんはよくご存じのことと思います。だからこそ、社会的入院がなくならず、介護施設はいつもいっぱいなんです。

 でも、昨今の、いままで説明してきたような大きな変化がおきているいま、どうかんがえても在宅療養しか選択肢がないという時代はすぐそこにあるのではないかと、私は思います。

 そのことは、いま病院で、介護保険のことなんか知らんでぇといってふんぞりかえっているお医者さんたちも、やがて居場所がなくなってくることを意味しています。厚生労働省は病院のベッド数を三分の一にするといっています。単純に計算すれば、病院の医者や看護師も三分の一でいいということです。勤務医のみなさんは、いまや医局のソファでテレビを見ながらゴルフの話にのんびりと興じている時代ではないのですが、病だけみているお医者には自分の置かれた立場も分からないのかもしれません。

 病院の医者に偉そうに言われたら、ああ気の毒な裸の王様とか思ってあげて、すこし溜飲を下げてください。

 ちょっと口が滑りすぎましたね。

 話は変わりますが、みなさんのアンケートを拝見しますと、医師への連絡をどうすればいいのか、かなりのかたが悩んでおられる様子が分かります。

 お医者たちは二言目には「忙しい」を連発します。まあじっさい忙しいのは忙しいのでしょうが、現実にはそんなに一日中時間がないことはないでしょう。それは私自身の経験からも言えます。変な売り込みや営業に割く時間は惜しいかもしれませんが、自分の患者さんのことに時間をとられるのをいやがるのはプロとして情けない。失格だと私は思います。日常的に患者さんとの時間もいやがる医者も残念ながらいるのが現実なので、このあたりは今後医者が余りだしてちょっと状況が変わってくることを期待するしかないかもしれません。

 それはともかく、じつは医者である私も、あまり親しくないドクターに電話連絡をするときは、時間帯などにかなり気を遣います。自分のことを考えますと、たとえば診察の最中に複雑な電話があったりすると、診療のリズムを乱されることもあってかなり不快な思いをします。では実際に連絡、とくに電話連絡をするにはどの時間帯がいいのか。

 開業の先生のところだと診療時間の最後ギリギリのタイミング、たとえば午前9時から11時半までの受付なら、11時半少し過ぎくらいに電話、私はそのように考えていますが、相手さんがどうなのか、あとでまた藤末先生にお尋ねしてみましょう。
るからです。

 勤務医の場合だとなかなか難しいのですが、正午から午後1時のあいだの昼休みくらいがまだマシかと思います。外来診察の時間は避けたほうがいいでしょう。病院の事務所であるていどは医者の動向、たとえば外来だとか検査だとか手術だとかが分かりますので、事前にリサーチするのも方法です。ただし、勤務医の場合は、入院患者さんの診察を随時していることがありますし、どういう場合でも電話が通じたときに必ず「今いいでしょうか」と念押しすることは最低のマナーでしょう。

 ファックスですが、私個人的にはあまり好みません。まず、職場だと誰の目に触れるか分からないというセキュリティの問題、読みにくいこともありますし、こちらからの回答の方法に迷うなど、いろいろと問題があるからです。

 E-mailでとりあえずアポイントをとっていただくというのが、私にはいちばんありがたい方法ですが、でもまあ電話がつながったときにきちっと配慮した対応ではじめてくだされば、私の場合は直接の電話でかまわないのが本音のところです。

 E-mailに関していえば、いまや医者同士の連絡にも常用することがごく普通になっています。職場がインターネットの常時接続環境になっているなら、ぜひメールを活用されるように考えてください。ただし、ひとつだけ注文しますと、職場共通のメールアドレスを使うという非常識なところには、メールで連絡することは避けます。メールは個人個人宛にしていただかなくてはプライバシー保護になりませんからね。

老健施設の実情

 さて、長くなりました。最後に介護保険制度になってから介護老人保健施設のご利用者の動向にどのような変化が起きているか、ちょっとまとめてグラフにしましたので簡単にご説明しておきます。

 その前に、みなさんすでによくご存じだと思いますが、介護老人保健施設の目的というのは、あくまで『在宅支援』ということにあります。病院から居宅に戻るあいだの日常生活動作訓練の場、あるいは在宅療養中のかたの介護負担軽減のために一時的に入所していただくという場、そういうのが本来の役目です。

 一般のかたによく「介護老人保健施設は期限があるんでしょ」といわれますし、ケアマネージャーさんでもそのようないいかたをなさる場合があります。『期限』といういいかたをされますと、なんとなく釈然としないものがありますが、老健施設の目的からしますと「ずっとはいれる」と期待するのが間違っているわけです。

 もっとも、介護保険になってから『老健の特養化』つまり入所の長期化、固定化は全国的な傾向であるといわれ、以前の医療保険のときのような長期入所での施設療養費の逓減制がなくなり、監督官庁からもあまり長期入所に対して強い指導がなされなくなっているのは確かです。

 そういう流れはじゅうぶんに把握したうえでなおかつウエルハウス川西は老健施設としての原則をできるだけ貫いているわけですが、やはり私どものところも無関係ではいられない現実がでてきています。

 じつは、介護保険になった直後はそれほどではなかったのですが、とくに今年になってから、いわゆる『老健めぐり』が激増しているのではないかと、漠然と思っておりました。もちろん近隣の介護老人保健施設の数が増えましたので、『巡る』ことがたやすくなったという事情もあるのですが、それにしても多いのではないか、と。

 で、グラフです。上は介護保険直前の1999年度から今年度までに入所してきたかたがどこからこられたかというもの、下は2000年度から今年度まで退所されたかたがどこへ行かれたかというものです。

 ずっと4割前後の在宅からの出入りを維持できているのは我ながらよくがんばっているのではないかと思ったりしていますが、老健施設からの入所、老健施設への退所が年度を追うごとに明らかに増加してきている傾向はお分かりいただけますでしょうか。

 退所のほうでみますと、2000年度に新設の特養におおぜいのかたが入居されたあと、特養への移動は減り、そのぶんを老健施設が吸収する格好で激増しているわけです。白の「その他」の部分は介護療養型医療施設とグループホームですから、ほぼずっと約4割のかたは居宅復帰が無理で、特養にはいれない部分が『老健巡り』とっていると分析できます。

 これらのかたがたは今後もずっと同じ状況でしょうし、厚生労働省が特養入居に新たな基準を作ったいま、要介護1や2のかたは特養入居がどんどん後回しになり、したがって『老健巡り』のかたが増え続けることが装うされます。

 現にグラフの下の平均在所日数の推移をご覧ください。とんでもなく入所が長期化しているのがお分かりいただけますか。この原因は主として老健巡りのかたの待機が多くなったからです。

 このままいきますと、現状で4割を維持している在宅支援部分がどんどん圧迫されていき、介護老人保健施設ほんらいの機能である居宅支援の部分が事実上不可能になるのではないかと懸念するのであります。

 ちなみに、いちばん下のグラフは入所されているかたの住所の割合ですが、ごらんのようにウエルハウス川西は川西市民のかたは約半数ていどです。老健巡りのかたはヨソの市のかたが圧倒的に多いので、つまり川西市の居宅支援がいちばん影響を受ける、それはみなさんがた川西市のケアマネージャーに直接関係していることだという点にご注意いただきたいと思います。

おわりに

 ちょっと長くなってしまいましたが私の話題提供を終わる前に、まあいろいろと医者の悪口などを言わせていただいたので、最後に行政のほうにじゃっかんの苦言をいわせていただきます。

 私が中心になつて介護サービスの会社を設立したことをご存じのかたもいらつしゃるかと思いますが、私がビジネスとして別の目で介護保険を見始めたところ、民間ではそれぞれがサービス産業としての介護に知恵を絞り努力しているのに、行政側はやはり腰が重いというか、やっぱりお役所かと思うところがあるのにあらためて気づきました。

 一例が、介護認定の通知のさいに同封されているというこの「介護保険ガイドブック」です。平成14年4月発行とありますが、お役所は年度で動いておられるかもしれませんが、患者さんやご利用者に年度は関係がありません。こういうデータは、すくなくとも年4回くらい、願わくば月一度の改訂はしなくては、まつたく意味がないのです。

 まあ私の会社がリストアップされていないという恨みが皆無ではありませんが、しかしたとえば「さわやか北摂」さんのデイサービスが記載されていないし、「ひだまり」さんや「たお」さんの所在地の変更が反映されていない、それよりなにより、11月からの市外局番の修正さえなされていない、こういう冊子はそのままになっているほうが市民には迷惑でしょう。

 市民のみなさんは、市が出しているガイドブックをいちおう一番信用なさいますでしょう。介護ビジネスを巡る悪徳業者のことが話題になっているいま、間違いの多い資料をそのままにしておかれては事業者はたまつたものではありません。

 最近ではこのような印刷物のアップデートが間に合わない場合のいいわけとして「インターネットのホームページに最新のものを提示しています」というのがありますが、じつは川西市のサイトではそちらのほうがもっと古いままだったりします。企業なら顧客からは完全に見放されるようなホームページです。

 そういうわけで、ケアマネージャーのみなさんには、市民のかたは古い資料をもとにいろいろと考えておられるということを念頭に置いて対応をしていっていただきたいと思います。

 先日あるところで柴生市長と同席させていただく機会がありました。市長は、このままでは近く高齢化率30パーセントを超すことが確実であり、それをすこしでも減らすために若い世代を取り込む町にしなければならないと、これはすこしアルコールが入ってのことですからきっと本音だと思います。若い世代が安心して川西市民になるように、時代に遅れない行政をし続けていただきたいと思います。

 それでなくとも来年度から周辺市をさしおいて川西市だけが特甲地をはずれることになりまそうです。川西市は田舎やと烙印を押されたようなもんでないかとさえ勘ぐってしまいますが、まあご利用者にとっては他の市のサービスより少しでも安くなるというメリットもありますから、頭ごなしに反対もしずらいものの、周辺からバカにされるようなことだけはないようにしたいものです。

 ちなみに、私は宝塚市民ですので、仕事でさえなければ川西市がどうこうというのは無関係といえば無関係なんですが、という憎まれ口で締めくくることにします。

 ありがとうございました。

※「おわりに」で指摘した「介護保険ガイドブック」の件ですが、シンポジウムの当日に行政の責任者がお約束してくださったとおり、翌週には最新のデータに変更されたものが配布されるようになりました。迅速な対応に敬意を表します(もっとも、そんなに簡単に対応できるのに、なぜいままでできなかったのかという意地悪なつっこみはできますが)。

ページの先頭へ
目次へ
湾処屋のホームページへ