最初にお断りしておきますが、今日の咄はその性質上、きわめてローカルな地名や個人的な思い出がでてきます。しかもおそらく長くなり、読んでも何も残らないヨタ話になります、と予防線を張っておいてぇ、っとぉ。
職場のある川西市にも数年前に屋上ビアガーデンができました。今年も5月末に営業を始めた初日に、さっそく仲間を誘って飲みに上がりました。ここはいまや珍しくなったかもしれないトラディッショナルなビアガーデン。アテとビールを注文して、景色を見ながら仲間でワイワイしゃべるのを妨げられることのない、安物のスピーカーで音楽などががなりたてたりしていない「正しい屋上ビアガーデン」でして、しかしその難点は、夕暮れに飲んでいると西に見える「雲雀丘」の向こうに沈む夕日をまともに浴びて、ちと暑いことです。
屋上ビアガーデンが堕落したのはいつのころからでしたか。舞台を作ってトップレスのダンサーがゴーゴーを踊るのが売り物とか、よーく考えると人件費を節約するためだと分かる安物料理の食べ放題ビール飲み放題だとか、割引券の乱発とか、少なくとも「まともなビール人」には耐えられないような異郷が都心の屋上に発展したのでした。そして衰退した。
気の迷いとか、付き合いでしかたなくとか、そういう状況でこれらの異郷にさまよいこむと、そこでは飲み放題だからといってだらしなく一気飲みして騒ぎ悪酔いし反吐まみれになった青少年や、大声でおのれの職場の恥を喚きまくる馬鹿おやじや、色気のかけらもないような酔いかたで大顰蹙の女性たちがいて、とても好きなビールを味わうという雰囲気ではありませぬ。
そういう意味では、川西の、レトロともいえる屋上は、いまのところとりあえず安心してビールを飲めるスポット。日が暮れたあと山から吹いてくる風も、都心の屋上のようなディーゼル臭さなどなく快いのでありました。
で、ビヤガーデンの話。
20年くらい前に大阪住吉区にある大阪府の基幹病院に勤務していたころ、いまの阪堺電気軌道の天神ノ森駅の近くに、料亭の庭がビヤガーデンになっているところがありました。料亭の庭ですからそれなりの庭園であり、幹線道路からすこし入って静かなそこにしばし入り浸ったことがあります。残念ながら料亭の名前も忘れてしまって今どうなっているのかも知りませんが、30歳前後のいろいろな意味で元気充満していたころの夏の記憶。
梅田から東のほうにすこし歩くと新御堂筋を渡ります。それからすぐのところに郵政省の施設があり、そこの前庭が夏にビアガーデンなりました。今はそんな土地に庭のスペースが許されず、建てかえられた施設にそのようなものはありません。梅田近くの繁華街に、露天風呂から見る夜空のような切り取られた視野だったとはいえ、さんざめきがすこし聞こえる「遊び人のビアガーデン」があったことを憶えている人はどのくらいおられるでしょうか。
大阪の船場から移転した繊維関係会社が並んでいる、地名がそのまま船場というところが箕面市にあります。ここの新御堂沿いの一等地にあった、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いのあったメーカーのビル、そこには高級中華料理店もありました。ビルの中庭に従業員や顧客対象のプールがあり、ここは夏になりますと夕刻からプールサイドがビアガーデンになってました。料理が、普段はなかなか入れない高級中華料理店のもので、それがお手ごろ価格で食べられる、あまり知られていない穴場で、静かにゴージャスにビールを飲める、しかも当時私が住んでいたのがそのビルのすぐ向かい、ということで、かなりお世話になりましたが、バブルのあと店もビルもクローズされてしまいました。いまどうなっているのか…。
話はとうとつに川西に戻ります。川西市はいまでもイチジクの大産地。かつて夏だけそのイチジク畑の一部がビアガーデンになっていたという話を聞きますが、非常に残念なことに私はイチジクビアガーデンには行ったことがありません。川西で仕事をしだしたころとダブっているはずなので、かえすがえすも残念です。
暑い夏の宵、少しでも涼しい屋外や屋上でビールを飲むというビアガーデン思想は、高度成長期以前のニッポンではなかなか魅力的だったのでしょう。私も若いころにはそれなりにエキサイティングな思いで屋外ビールを楽しみました。しかしいまや世は贅沢化しました。屋外はヒートアイランド現象でかえって暑い、都市騒音がうるさい、そして採算性ばかりの結果だと思うのですが、料理がまずい、飲んでいる客の一部が品に欠ける、それなりに高い、などということもあるうえ、いわゆる「ビアホール」や「地ビールレストラン」に人気が移ってしまいました。さらに、夏→ビアガーデン、冬→鍋物、などというステロタイプな考えかたが馬鹿にされるいまの世間、ああビアガーデンはどこへ行くのでしょうか :-)
ま、私は「夏だビールだ」では断じてなく「春夏秋冬麦酒三昧」ということで優雅独尊、雰囲気よく美味いビールが飲めればそれでエエ。
私はパチンコをはじめとするギャンブル類にはまったく興味がないので、この景色にはちょっと驚いてしまいました。平日の真ッ昼間。すでに開店していて、ちょっと仕事の合間に(さぼって、か)遊んでいこうかというならまだしも、何時間も並んで待って、そしてこれから打つわけでしょう。うーん、日本は平和なのかなあ、などとつい首をひねってしまいました。
税金が高い、介護保険の保険料をとられる、年金の先行きが不安だ、といわれているわりには、期待値(*1)がけっして高くないパチンコにお金と時間をつぎこむかたがたの気持ちが私には理解できません。ギャンブル批判をするとけっこう熱い反論がくることを何度も経験してはいるものの、やはりなんか変、とあらためて思うのでありました。
(*1)期待値…かつて何かの授業で 100円つぎこんで統計的に得られる
金額というふうに習った記憶があります。たいていのギャンブルは50
円以下だったように思うのですが。「新明解百科語辞典」(三省堂)
をひいてみましたら、『《数》[expectation] 確率変数xがx1、x2
…xnを確率p1、p2…pnでとる時、x1p1+x2p2+…+xnpnを
いう』とありました。頭いて〜 ^^;
若い女性が眉間に縦ジワを寄せて前をにらみつけてはります。口を真一文字に結んで額をテラテラさせながらおぢさんが大マタでコンコースを歩いておられます。必死の形相でデイバッグを揺さぶりながら女子学生がホームへの階段を駆け上がっていかはりました。なかには、朝からうなだれてトボトボと歩く背中に疲労がいっぱいのようなおとうさんもおられますが、総じてみなさんの体からは「恐いオーラ」が立ちのぼっています。
電車通学の小学生や女子高校生たちだけが、何をしゃべっているのか分からないような甲高い声で大騒ぎをしていて、それがまた周囲のオトナたちの寝起き頭脳を不快に刺激して期限悪いモードを昂進させいていました。
自分もああいう恐い顔をして歩いているのだろうかと、ちょっと気になりながら駅をあとにした、どんよりと湿気て気持ちのよくない梅雨の朝。
私は冬の寒いときにも冷やしてグイグイいくぐらいビールが好きなのと同じように、夏の暑いときにも汗を流しながら食べる鍋物も好きです。もちろんビールを飲みながら、ということではありますが…。
ですからわが家では一年を通して土鍋は必需品。それが割れてしまったので、新しい土鍋を買いにいろいろな店を回りましたが、なぜかというかやはりというか、この時期ふつうの店では土鍋を売っていません。しかたなく、スキヤキ鍋や浅底のビタクラフトの鍋で何度か代用していたのですが、気のせいかどうも味が落ちる。もっとも、よく考えてみると、南部鉄の鍋で作る鍋物もあるわけですから、鉄のスキヤキ鍋を使ってもいいはずではあります。
日曜日に大阪ミナミへ行ったついでに千日前道具屋筋を覗きましたら、さすがにここにはいろいろな種類の土鍋がありました。でも、注文したら倉庫から持ち出すのにとても時間がかかったので、道具屋筋の専門店でも初夏にはめったに売れないもののようでした。「貫入土鍋」という白一色のものの9号というサイズを買いましたが、これが1500円弱。考えてみれば安いものです。
その夜はさっそくこの鍋で鳥の水だき。阪急百貨店地下食品売り場で入手した新しいポン酢と清荒神参道の七味屋さんの辛口七味唐辛子の相性もよく、またまたビールがすすんだことでした。
仕事を終えてちょっと寄り道して飲み物(笑)の仕入れに立ち寄った、私が住んでいる市の南部にある安売り酒量販店の前を、わが市が所属する小選挙区で立候補する予定の連立与党所属の前議員の名前を連呼しつつ拡声器をつけた車が走っていきました。よく見るとこの車、もうすでに屋根に看板を取り付けてありまして、それを白い布で被ってあります。もっとも、この白い布はかなり薄くて、そのつもりで見れば看板に書いてある内容は読めます。そして拡声器からははっきりと候補者の名前が出てきます。
つまり、これはもうほとんど告示のあとと同じ状態。公職選挙法違反スレスレのやり方なのでしょうね。
大阪でも「落選運動」の活動が始まっていて、大阪が地盤の某建設大臣が変に噛みついたりしていますが、この告示前連呼中の候補もちょっと投票したくないなあと思った初夏の夕。
しかしまあなんですねえ、その候補者は私がかつて少年のころに通っていた進学塾の後輩でありまして、それはそれであまりやっぱり愉快なことではありません。
首都圏や大阪、福岡などに超巨大ショールームを持っていて、最近では大阪福島区にあった名門ホテルの廃業後の建物を新たにショールームとして引き受けたことで話題になった会員制の家具店の、大阪南港「アジア太平洋トレードセンター(ATC)」にあるショールーム(というか「ショーフロア」というか)に初めて行って帰宅すると、留守番電話にきっちりと「本日はご来店いただきましてありがとうございました」メッセージ。会員申し込みに個人データを記入したので電話はできるといえばそれまでですが、それにしても店の営業時間を追えてからのセールストーク。新規会員には必ずそうすることになっているのだろうなと感心。少なくともイヤな気はしません。
で、今日はおそらく照明でのトップシェアを持つだろうと思うメーカーのショールームに出向いて無料相談にのっていただきましたが、そのあと千日前道具屋筋で土鍋を買ったりして帰宅しますとまたまたフォローの電話が入っていました。
翻ってわが職場のアフターケアを鑑みるに(どうも態度ならびに気分がつい堅くなってしまいますが)、いやはやまだまだ「医療や介護はサービス業である」と言うことなど、ほんと恥ずかしくなってしまいました。「患者『さま』」などと単純に言って平然としている程度の感覚では、消費者たる患者さんやご利用者にはおそらく簡単に魂胆や底が知られてしまっていることでしょう。
精進精進。
(2000/06/04)
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