駄理雑言 '97/3月下旬



3月16日/クルマ

 往年のカーマニアである私も、最近はとんとクルマに興味がなくなっていまして、いまどんな新車が話題になっているのかも知らないでいます。でも、なんとなく SLKなどというアルファベット列が記憶の中にあったりしました。
 今日、パートナーのクルマを運転して、大阪南港の超大型量販店へと阪神高速を向かっていたとき、横をすーっと見かけないクーペが抜いていきました。うしろのエンブレムにいわく :-)「SLK」。
 ひょー、かっこええ、そかそかなるほどメルセデスの新しいクーペか、うーむ。ま、私らには縁のないクルマだけど、うーむ、そうかそうか。ひさしぶりにクルマ好きの血が騒いだぞ。

3月17日/過飽和

 今日は朝礼でしゃべらなくてはならないので、いつもよりひとつ早いバスに乗るべく家を出ました。いつも乗る路線は、始発停留所からの距離が短いので、まず定刻に遅れてくることはないのですが、今朝に限って6分ほど延着しました。そして走り出して終点からひとつ前の停留所を前にしてビタッと渋滞に捕まりました。しばしば月曜日というのは混雑するのですが、今日のそれはいつもよりもかなり異様でありました。私を含め5、6人の乗客が途中で下車しました。徒歩で駅に向かうかどうか迷いましたが、時間関係から判断してそのまま病院方向に向かいまして、けっきょく朝礼の5分前に出勤できたのでありました。
 あとで聞きますと、中国縦貫自動車道で事故があり、通行止めになっていたので、周辺の道路が混雑したのだそうです。数十キロ離れたところの事故が生活道路の混雑にまで波及していたわけです。
 「過飽和」という状態がありますね、物理で習ったのだったか。飽和を越えてバランスをとっている液体にちょっとした刺激を加えると、ワッとばかりに結晶したりする、というものだったと記憶しています。
 都市部の自動車交通は、まさにこの過飽和だと思えます。
 ちっとも動かずにいるクルマの列を横目で見つつ、ワシワシと早足で歩いてきましたが、ひじょうに正直なところ、クルマに対してはほとんどザマミロ状態であったのでした。

3月18日/お風呂ラジオ

 引っ越したマンションの風呂がいろいろな意味で快適でして、ゆっくりと入浴するクセがついてきました。で、風呂でも音楽があればええなあ、という考えが全員一致しまして、お風呂でも使える「防滴型ラジオ」を探して買ってきました。
 ほんとにモノラルのラジオだけですから、音質は云々できるレベルではありませんが、風呂に浸かりながらゆったりと音楽にも浸るというは予想していた以上に気分のいいものです。
 これから日が長くなってきたら、風呂に酒でも持ち込んで軽いクラシックでも聴きながらチビチビやったろかしらと密かに思ったことでした。

3月19日/手段を目的と思ってしまってはいかん

 はじめに書いておきますが、今日の日誌の内容は苦肉の末です ^^;
 さて、世の中でインターネットが喧しい(かまびすしい)。かくゆう私もインターネット上にホームページの真似事っちゅうもんを作っていたりするわけですが、それで、ま、マスコミなどはインターネットって情報の宝庫のようなことを書き喚いているような傾向があると思っています。
 でも、インターネットって、それは「手段」、つまりたんなる道具なんですね。でもひとつ間違うと、その単なる道具が目的になってしまう。インターネットに繋ぐことだけが目標になっちゃったりなんかしていることはないでしょうか。
 じつは、脳死での臓器移植についての法案とその質疑なんかが知りたいと思って、勇躍「衆議院のホームページ」にアクセスしたのですが、そこには古いデータがあるだけ。もともとたいして期待はしてなかったので、だから「あっそうっ」てなもんですが、要するにその程度なことも少なくないという、醒めた目でみていないと落差にがっくりきます。
 これからどんどん進むことになるでしょうけど、しょせんはニンゲンが作り上げるしかない世界です。ニンゲン以上のものはできることはないという点、期待についても落胆についても、あまり入れこむことはよくないとつくづく思う花冷えの宵なのでありました。

3月20日/超巨大書店

 お彼岸の中日ですが、それとはまったく無関係なところに行ってきました。
 大阪ミナミに NGKという劇場があります「なんばグランド花月」。あの吉本興業の本拠地です。そしてその真向かいに「ワッハ大阪」という、大阪の芸能の博物館ができています。そこも話題沸騰なのでいずれ訪ねてみたいと思っていますが、ま、こういうところは休日に出向くところではありません。
 そのワッハ大阪の建物の中に、おそらく大阪で一番大きいだろうという書店ができました。この書店は本社や地盤は神戸でして、今回はじめて大阪に殴りこんだというわけです。後ればせながら今日はじめてここを覗いたのです。
 ここのユニークなところは、店でいくらでも立ち読みしていいという点、立ち読みどころか、ゆっくり読めるようにとテーブルと椅子がたくさん置かれているのです。数冊の本を持ってきて椅子にゆったりと座って読みふけっている人も少なくありません。しかし、この商法で、この書店はいきなり話題の中心になりました。大阪では、しかも吉本のまん前というような土地柄では、これくらいの話題性はあたりまえということなんでしょうね。
 そういえばこの書店に入る前に、そのすぐ南にある千日前道具屋筋の某老舗でオロシ板を買ったのですが、休日で大混雑の店のレジ回りにもかかわらず、そこのお店の年配の店員さんたちの愛想のよいこと…。これが大阪の商売やねんなあ、とあらためて感心した今日一日でした。
 ところでこの書店「J堂」ものすごい蔵書量です。梅田のA書店やK書店よりもずっと多いと見ました。専門書フロアの2階を見てだけの印象ではありますが…。

3月21日/けむたいやんけ

 私は「嫌煙主義者」ではありませんが、しかしまあできればタバコの煙から離れていたいと思っているモノです。とくにいまのようにカゼをこじらせて喉の調子の悪いときなどはつらい。
 最近いちばん困ってるのは、バス待ちの列で吸われるときです。やはり避けようがない状況ではご遠慮いただきたいもんです。逆に、耐えられないと思ったら私のほうが避けられる状態であれば喫煙してくださってもいいのです。だから、たいていの会合では「やめてくれ」とは思いません(のでご遠慮なく吸ってくださってけっこうですよ)。
 もうひとつ、これは煙たいからという理由ではないのですが、歩きながらの喫煙は行儀悪いですね。こういうかたはたいてい吸い終えたら道路にポイ捨てして足で踏み消すか、水たまりに投げ入れるか、ミゾにほえりこんでおられますね。彼らはきっと、ゴミはそのへんに捨てまくるし、道に痰を吐くし、信号待ちで空き缶を分離帯に置いていくし、駅弁の食べカスはシートの下に置いて特急を降りるし、核のゴミは放置するし(あ、違うか)…。
 行儀の悪い喫煙者は、行儀のいい喫煙者をも巻き込んで嫌煙主義のターゲットとなります。怒れ、行儀のいい喫煙者 :-)

3月22日/桜のカウントダウン

 今年は桜前線の北上が全般的に早いらしい。家の周囲は知る人ぞ知る桜の名所。ここのところ毎日ツボミの膨らみ具合を気にしています。今朝のような雨上がりには、また一段と開花が近づいているように感じます。
 月末あたりからが見頃になりそうで、いまやまさにカウントダウン状態(私のインターネット上の WEBに「桜の定点観測」という写真入りのページを作ってあります)。
 桜の開花を見ることのできる回数=余命の年数、と考えれば、今年の桜もあだやおろそかにはできまへん。

3月23日/長引くぞ風邪

 先週らいの風邪がまだ続いていて、寝ていて激しく咳き込んで目が覚めるということをくりかえしています。もともと睡眠時間がかなり短かいほうで、寝不足には強い私ですが、さすがにそういう夜が何日も続きますとちょっとしんどくなってきました。今朝あたりは、もうぼつぼつ終焉の咳やな、と感じるようにまで回復してきました(なんだか伊東市の地震のようですが)。
 今日は休日の日直当直なので、忙しくなければかなり身体を休めることができますし、現在までのところ静かな初春の休日ですから、このまま深夜を無事に乗り切れば、きっと明日には治っているでしょう。
 それにしても、最近は年に数回は風邪をひくようになりましたし、ひいたら治るのが遅い。体力の衰えを感じます。

3月24日/黄昏(たそがれ)

 ひさしぶりの当直明けの夕、早く帰ったろと思ってたのに、会議があったりして暗くなりかけに帰宅しました。
 自宅もよりのバス停でバスを降りますと自宅へは南に向いて歩きます。つまり、視野の左が東、右が西になります。そして、今日の快晴の名残の黄昏、左側の空から右側の空へ、ほんとうにみごとなグラデーションが見えました。西の空はまだ白っぽい青、ずっと左のほうはもうほとんど黒に近い紺色で、チラチラと星が点滅しかけています。
 パソコンのプラネタリウムのソフトでこういうグラデーションを見たことがあります。まだMS-DOS全盛のころです。だから現実ほど美しくはなかった。そして、ずーーーっと昔、オヤジに連れていってもらった四ツ橋の電気科学館のプラネタリウムでも見た記憶があります。ひさしぶりにこういう空を見たような気がしました。

3月25日/顔がさす :-)

 強の訪問診察先は病院の直近のお宅ばかりです。前半はそれでも山の上だったりしたのでクルマで回りましたが、後半は汚い往診鞄を持ってトボトボと歩いて回りました。
 通勤途中でもしばしば患者さんやご家族と出会うのですから、人通りの多い午後に近所を歩きますと、これはもうご挨拶の連続です。それはそれで私の顔がそれだけ売れてるということで、ありがたいことではありますが、でもなかなか恥ずかしいもんですし、うーんと、あんまりアホなことはでけんなと思ったりするのでした。
 私はできるだけ病院の近所では酒を飲まないようにしています。もともと好きな酒ですし、飲みだしたらとどまることがありませんから、ときには醜態を演じることもなきにしもあらず。そういうところを見られたら…という恐怖がつねにあったりするわけです。
 ま、そういう状況だから、いまのところ無事に仕事を続けさせていただけているのでしょうけど。

3月26日/まめだ

 大阪でパートナーもいっしょの宴会をしていました。帰ろうとすると、外はかなりな雨。念のために持参した傘が間に合いましたが、一本しかありませんので、相合い傘で駅から歩いて帰りました。
 我が家の周辺のマンションの入口に「まめだ(*1)」の焼物(信楽焼のタヌキ)を置いてあるのには気付いていましたが、そのつもりで気をつけながら見ていますと、いやぁほんとにあるある。なにかのマジナイのように鎮座ましましてます。もっとも、我が家のベランダにも雌のまめだがおりますが…(右写真)。
 雨のなかを歩きながら、子どものころに囃したてた唄をつい口ずさんでいました。いわく…

    雨ぇがしょぼしょぼ降る晩にぃ、まめだがトックリ持って酒買いにぃ

(*1)「まめだ」は「豆狸」と書きます。子どものタヌキの意ですが、だとすると「トックリ(徳利)持って酒を買いに」いくのは不自然やし…

3月27日/茶の間

 年末に新しいマンションに引っ越してきましたが、前のマンションよりもだいぶ狭いので、私のデスクを置く部屋、つまり「書斎もどき」が確保できなくなりました。家族それぞれがすこしづつ不便を分担しているので、これはこれでしかたがありません。
 で、唯一の和室、とはいえ、この部屋はたった四畳と50センチ幅ほどの板の間があるだけの小さなものですが、この寝室用の部屋の隅に座卓代わりのものを置いてそれを書斎コーナーとしています。しかし、モニタとキーボード、電話を置くと座卓はほとんどいっぱいになっています。その机で資料を開いて書き物(たいていパソコンを使うので「書く」という行動はほとんどありませんけどね)をするスペースがありません。しばらくはなんとか我慢していました。
 それとは別に、家具調コタツの残骸、これはコタツユニットがとうの昔に壊れたのに、卓部分の作りがいいので捨てきれなかったものですが、このテーブルの置き場所に困っていました。あるとき、この卓を私の座卓と、私の座る位置をはさんだ反対側に置いてみましたら、これがなんとも具合がいい。回転機構のついた座椅子を愛用していますから、キーボードからクルリと向きをかえれば90x150cmのテーブル一杯に広げた資料にアクセスできます。
 そして、このテーブルは、パートナーの資料調べや娘の勉強などにもフレキシブルに使われ始めました。これは要するに昔でいう「茶の間のちゃぶ台」であります。言いわすれましたが、寝室にしている和室はダイニングに隣接して扉を開けば一体化できるような構造になっています。だから茶の間も同然。
 そういえば、私が子どものころ、大阪近郊の町にあった私の家の茶の間は、夜になると布団がひかれて両親の寝室になっていました。天井から停電対策のガス燈がぶらさがっていたころのお話です。

※写真は和室の隅にある私の書斎コーナー。左側のテーブルが問題の「家具調コタツの残骸」。写真では判然としないが、クラリスワークスのハウツー本や週刊金曜日が置いてある。携帯電話と(第一世代の)PHS も見える。これを書いている今、それらのすきまにお盆に乗せた片口とぐい飲みがある :-) 黒いのが回転座椅子。モニタには昨年亡くなったイヌのモモの写真の壁紙が明瞭に見えている。パソコン本体とページプリンタなどは右側のラックに置いてある。障子の向こうはベランダで、私の居場所の横を開けると金魚鉢がある。

3月28日/ちらほらとソメイヨシノ

 大阪の標準木が開花したという報道が今日ありました。ソメイヨシノです。
 近所の桜の大部分はまだツボミですが、それでもほんとにチラホラと白い花が闇に浮かんでいるのが見えました。標準木の満開予想が4月3日だというので、近所桜は5日ごろだと思えます。
 変なヤツとお思いかもしれませんが、私、この時期はなんとなくワクワクしてしまうのです。「木の芽どき」っていうんでしょうかね :-)

3月29日/酔眼睡魔

 30日の朝にこれを書いています。
 昨夜は食事のあとチビチビと酒をやりつつ「日本アカデミー賞」のテレビ中継を見ていて遅くなり(受賞は予想どおり「Shall we ダンス?」の総なめでしたね)、さて何を書こうかと端末の前に座ったものの、酔眼に加わる睡魔でメロメロでした。
 ものを考えてキーボードを打っているさいちゅうにタマシイが抜けてしまい、ふと我に帰って画面を見ると、あやや文字化けかと思えるような無意味な字の列、そのうち自分がいま何をしているのかさえ分からなくなって、このままでは恥をさらしそうと諦めて寝てしまいました。ま、その状況を判断できただけでもよかったわけですが…。
 こういうときにクルマの運転でもしていたら、きっちり事故ってるんでしょうね。

3月30日/居酒屋さん

 いろいろなめぐり合わせのため今夜は私がひとりで食事をしなければならなくなりました。しかも、最寄り駅に帰ってきたのが午後9時。日曜日の午後9時から駅前とはいえ郊外の町で一杯のめるのだろうかと不安でしたが、あるあるある、いつも前を通り過ぎている居酒屋さんが開いていました。
 店に入るとほぼ満席! カウンターに陣取ってまずは生ビール。冷奴やマグロ山かけなどの定番から始めてたっぷりと満腹しました。聞けば午前2時までやっているのだそうで…。よく考えたら、この駅は某国立大学の最寄り駅、下宿住まいの学生さんたちもおおぜいいる町なのでした。
 ふふふ、また一軒開拓したぞ。

3月31日/花冷え

 いったん帰宅してから、急用ができてまた病院へ出てきました。
 昔ならクルマでくるのですが、いまは自分のクルマを持っていないのと、パートナーのクルマは空いているとはいえ、夕食でけっこうアルコールを入れてしまっていますので、いつもの出勤のようにバスと電車を使いました。
 しかし夜も更けてバスも電車も本数が少ない、そのうえ、バスも電車もタイミング悪く、出たばかりのところというありさま。今夜は、花冷えというのか、けっこう風が冷たく、春の服装で出てきたためにかなり寒い思いをしていました。そういえば昼にテレビの天気予報で見た気圧配置、ちょっと西高東低ぎみだった。
 花見にみんなででかけて、こういう冷える晩だったりしたことがこれまでにもあったのを思い出しました。




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