駄理雑言 '97/2月下旬



2月16日/バブルの名残かはたまた断末魔か

 衣料品の安売りチェーン店を訪ねてひさしぶりにS市に出向きました。
 所在地をみて、なんでそんなところにその店が、と思ったのは、私の記憶のなかではそのあたりはまだまだ市街地の中に残った畑や雑木林の印象が強かったからでしたが、行ってみて変容ぶりに驚いてしまいました。バブルはまだ健在なんだろうか…。換金作物がずらっと植えられていた畑や、千里の丘が本来そうであったような竹薮と雑木林だった一帯はいまやシムシティの世界。高層の集合住宅とショッピングセンターとファミレスが目立つ一帯になっています。
 たかだか数年たっただけで、これほど変化した別世界になってしまうというのは、ちょっと恐ろしいことでもあります。

2月17日/テレビもたまにはエエのんするやんか

 だらだらと食事をしながら午後9時になって、日本テレビ系の「スーパーテレビ・情報最前線」というのを見ていました。痴呆症になった奥さんと、その彼女を介護するご主人のルポ。
 日常、そういう立場のかたと接することが多いので、内容そのものには(私は)それほどのショックもありませんでしたが、こういう地味なテーマのものを午後9時台の民放が放送していることに感動しました。
 でも、おそらく、こういう番組、現に介護で頑張っておられるかたが見ておられて、逆にそういうことは「他人ごと」だと思っておられる人たちは関心がなくて、見ておられないのではないかと思うのです。

2月18日/五月山の雪景色

 午後遅くから空がにわかに暗くなり、雨と雪の混ざったようなものが激しく降ってきました。ちょうど出先から帰るところで、冷たい水に濡れてしまいました。
 春が近づいて六時近くなってもまだうっすらと明るく、帰宅のために乗った電車からはまだ五月山がよく見えました。そして海抜たった三百メートルほどの五月山が、思いがけなくその半分くらいの高さから上が白くなっていました。15年ほど五月山を見続けていますが、こういう景色は初めてみました。あわててデジタルカメラで撮影しようとしましたが、電車はすぐに駅に入ってしまいました。
 墨絵のような雪景色、今年はこの北摂でもいろいろな景色を見ることができています。

2月19日/やはり頼りになるのは自分の足だった

 マンションの玄関を出てはじめてうっすらと積雪があるのに気がつきました。迂闊でした。積雪してるならもう少し早く行動をおこすべきだったと思ったものの、ま、もうしかたがない。
 いつも乗るバスが珍しく3分ほど遅れてきました。ありゃりゃ、タイヤチェーンを巻いてきた。乗り込むとすぐ発車。でも、ものの30秒も走って次の停留所が見えるか見えないところで渋滞のおしりにつきました。運転手さんが車内放送でいわく「ここから終点まで渋滞しているという無線連絡が入っていますのでご了承ください」。
 私ともう一人の若い男性が歩くから降ろしてほしいと申し出まして、もちろん運賃不要、凍結してすべりやすい道を駅に向かって歩きだしました。予想どおりクルマはほとんど動いていません。
 ふと考えたのは、駅まで歩いて電車に一駅乗ってまた駅から職場まで歩くなら、えーい面倒や直接歩いてしもたれ、ということでした。もともと、年末にいまのマンションに引っ越してから、気候がよくなれば歩いて通勤しようかと思っていたところ、少々足元が悪いものの、ちょうどよい機会でした。そのまま一目散に職場方向へと歩き始めたのでした。
 こうして歩いていますと、震災直後の何日かを電車以外ずっと歩き続けていたことを思い出しました。あのときには、けっきょく一番確実なのは、最も頼れるのは、幸い健康である私の足だと、あれほど身に染みていたはずです。2年あまりたって、震災の教訓はもう薄れかけてしまっているようです。いかんいかん…。
 歩きながら見ていますと、いやまああちこちの道路でクルマがグチャグチャになっていました。自分の足だよ、足。身体に不自由がないなら、自分一人を運ぶために1トンもある機械を使うような無駄をやめるのが一番いいように、再確認できた凍結の朝 *1)。
    *1) 今日は「雨水(うすい)」(陰暦で正月の中(チユウ)をいい草木
    の芽が出始めるという)だというのに…。

2月20日/今日は何と何を処理したんだか

 めったにないことなのですが、今日はアポイントが多層に重なりました。ふつう、こういうのを「ダブル・ブッキング」とか「トリプル・ブッキング」というのでしょう。べったりのアポイントでない予定だったので、重なった時間帯に約束をとったのですが、でもさすがに忙しかった。そのうえ、約束を消化するために職場の廊下を歩いていたら、つぎつぎと呼び止められてさらに混乱。
 訪問診察に出る時刻も押してしまって、今日は何をしていたのか分からなくなってしまっています。一番最初に面談した業者さんの話ははるか過去のような気がする。
 うー、ごちゃごちゃした一日は嫌いです。

2月21日/またまた雪や

 退勤のときにチラチラと白いものが落ちてきていると思ったら、さきほどふと外を見ましたらまたうっすらと雪が積もっています。ほんとうに今年は雪がよく降ります。この積もりかたはまた朝に混乱するかもしれませんが、まあ明日は土曜日だからなんとかなるでしょう。
 もともとほとんど雪のない京阪神ですから、雪国のかたから見れば笑止でしょう。しばらくは春一番二番…と寒気とがくり返す不安定な気候が続いて、いろいろと体調を崩す人たちが多くなる季節ですな。

2月22日/火鉢

 昨年暮れに引っ越した今の部屋は、前の部屋と違って南に面している部屋がなく、冬の寒さがかなり答えるな気がします。もっとも、北摂のこの冬はひさしぶりに寒さが厳しいという声もききますから、部屋の日当たりのせいだけではないのかもしれません。
 もともと寒さには強い一家なので、炎を出す暖房器具はありません。この部屋もメインの暖房は小型のオイルヒーターです。今日のような寒いときは、さすがにエアコンの暖房をつけていますが、このエアコンはそもそも6畳用くらいの小さなもの。リビングと隣りの和室をこれだけで暖めるには無理があるようです。
 そして、実用の暖房とは別に、この部屋にきてちょっとインテリアも気にするようになって、小さな火鉢を置いています。そして、寒さが厳しいときにはたまに炭を入れて「炎の暖かみ」を感じるようにしているのです。ただ、火鉢を使うには、まず炭の入手に苦労し、その炭に火を起こすのに難儀し、マンションの建てつけのいいことを気にしなければなりません。
 でも来年はできればもっと大きな火鉢と、それに懸ける鉄瓶、そして竹で編んだ炭入れが欲しいと思うのであった。

2月23日/寒い朝

 休日出勤の当直勤務です。
 昨日まで寒かったので、今日は暖かくなるかと期待していましたが、出勤する時刻にはまだまだ冷たい北風が強く、コートの前をきっちりととめなければなりませんでした。
 日曜休日ダイヤに合わせてバス停につきましたが、やはりお客は少なく、よい季節だと遊びにいく人がいるのにそれもなし、バスの終点までほとんど客が乗ってこないのも、前の家からのバスとまったく同じでありました。よけいに寒々とします。
 さいわいにしてこれまでのところ比較的穏やかな当直勤務です。

2月24日/手拭

 旧知の、手拭職人でありかつ手拭コレクターである、浮田光冶(うきたみつじ)さんの展示会が、ようやく職場の近くのギャラリーで開かれ、さっそく初日の今日、退勤途中に寄ってきました。
 以前から一部の手拭は見せていただいていましたし、書籍で氏のコレクションを見ていましたが、さすがに現物は違いました。微妙な色あいは、印刷では分かりません。晒しの綿を染めただけで、なぜこれほど味わいのあるものになるのか、あらためて感激してきました。
 「タオル」ではありません、あくまで「手拭」。
 氏は80代なかばを越えてもますますの軒昂、職人さんの意気がひしひしと感じられました。

2月25日/宵の口から酔っ払うなよオッサン

 酒好きニンゲンとしては情けなく腹立たしい風景でありました。
 退勤のバスに乗り合わせた酔っぱらいのおっさん、ぐたぐだ言ってるうちに運転手さんにいちゃもんをつけだしたんですね。まだ18時ごろの車内でのことです。「金ないねん」と言われて運転手さんも困ってたので、私が下車する停留所までやってるようなら、いっしょに降ろしてしまおうと決めていたんです。私の回数券で無理矢理降ろしたろという…。
 このおっさん、おおぜいの乗客が降りる団地の停留所で邪魔になったのでいったん下車しまして、運転手さん、機転きかせてドアを閉めて走り出してしまいました。取り残されておっさんは何か喚いていました。おっさんの傘が車内に残されているのをみつけた運転手さん、バスを停めて走っておっさんに渡して、酔っぱらいには追い付けない早さでバスに駆け戻り、そそくさと発車させました。
 みごとな対応でありました。パチパチパチ。

2月26日/イヌたち…

 あ、今日は二二六事件の日だ。
 などということはついさきほど気がついただけで、今日は月一度、能勢や豊能のほうの訪問診察に回る日、患家の半数以上に私になついているイヌたちがいるという楽しみなお仕事の日です。
 昨年6月に我が家のイヌが亡くなってから、訪問診察で伺う患家のイヌと遊ぶことがイヌとのほそぼそとした交流になっています。それでもまだ私はそれができるだけ幸せなほうで、ウチの他の家族はそういう機会さえなく、相当に寂しい思いをしているようです。
 それにしても、たった一ヶ月に一度しか顔を出さない私を、イヌたちはほんとうによく覚えてくれています。時間があればもっともっと彼らと遊んでいたいところです。
 あ、ちゃんと在宅患者さんの診察もしてまっせぇ。

2月27日/素朴なおかずもいいものなのに

 切り干し大根の煮物をいただきました。このかたからはいろいろとお惣菜をいただくことが多く、これがいわゆる「おふくろの味」なので、我が家ではなかなか楽しみにしていたりします。
 このいただきものはいつもいくつかのパッケージになっていますので、みんなで分けているのですが、ところが献立によっては人気がありません。今日の切り干し大根などもそういう状態。私は家に干し大根を常備しているくらい好きですし、これはかなりの健康食だと思っているのですが、どうやら今ふうの食事に慣れた人たちには人気がないようです。
 かといってこのままではもったいない、職場の他のスタッフに声をかけて分配しました。痛まないものなら私がぜんぶ持ちかえるのですが。
 それにしても…。

2月28日/2月は逃げる

 今日の北摂は、とくに昼間、たいへん暖かくなりました。ニュースでは18度くらいまで気温が上がったとのことです。今年の冬は何度も雪が積もって寒かったけど、ようやく春になってきそうです。
 ベランダに置いてある植物の元気もでてきたようですし、チューリップの芽がどんどん伸びています。ぼつぼつ歩きに出なければなりません。




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