日々雑談 '96/9月上旬



9月1日/みんなだんだんいなくなる


 6月にイヌのモモが亡くなり(写真はモモ)夏の間に魚たちの何匹かが亡くなって、いまは水槽の金魚が2匹、ウォーターポピーを育てている庭の一斗樽の中のメダカ、それに人口不明のスズムシというのが我が家にいる生き物たちのすべてです。
 これまでずっと嵩の高いモモをはじめ、リスやカニやカメなど、おおぜいの生き物たちに囲まれていましたので、やはりなんとなく寂しい生活になっています(飼われていた生き物が幸福だったのかぁ、という突っ込みはとりあえずご容赦)。
 で、何かのきっかけがあればまた生き物の世話をしたいとは思いますが、積極的に求めようとは思えないのは、ちょっとなんとなく疲れているからかもしれません。
 テレビやビデオで動物たちを見てフラストレーションを発散しようとしている今日このごろ…。

9月2日/夜間の不安

 いつのころからか、月に一度くらいですが、非常に寝苦しい夜を経験します。「かなしばり」という言葉、現象が知られています。私のはそれほどではありませんが、夜中にふと目覚めて、なにやらたいへん胸が騒ぐといいますか、不安感が強くなるといいますか、ともかくそのまま熟睡できずに悶々としてしまう状態。
 医者になって23年、おおぜいのかたのお看取りをしてきたなかには、おそらく「無念の死」だったと思えるかたも少なくありません。最近はなんとなくそういう因果を考えてみたりすることが多いので、こういう寝不足になるのかもしれません。
 そして、それで思い当たるのは、ご老人の夜間譫妄や幻覚についてです。比較的冷静に考えているはずの私でさえ、深夜にひとり目覚めてしまっていいようのない不安を感じることがあるわけですから、お年よりの場合はいかばかりか、などと思ってしまいます。
 昨夜もそういうことで眠りが浅く、今日は一日しんどいままでありました。今夜は熟睡したいものです(熟睡のためにはアルコールがまだ足らぬ、などと言ってはパートナーに叱られるウシミツドキ)。

9月3日/大豆・イカ・昆布・アゲ

 今夜は私ひとりの夕食になりそうだったので、旨そうな刺身でもないかいなと思いつつ近所のスーパーを覗きました。
 大豆の水煮 200gで特価 100円。好物の大豆がその値段ということで、あとさきも考えず2袋計 200円也を買ってしまいました。
 家に帰りますとパートナーがほとんどのオカズの用意をしてくれていることが「伝言ノート」で分かりましたので、とりあえずこの大豆はストック用に冷蔵庫直行となりました。で、缶ビール「千都」をやりつつ食事をすませましたが、小芋とイカの煮物のダシがいっぱい余ってしまいました。これは捨てるに忍びない。
 というわけで、いまそのダシに大豆を入れて、厚揚げの乱切りを入れて、昆布をハサミで細く切ったのを入れて、ぐつぐつと煮ています。これは明朝のオカズの予定。
 飲んでいる「越の初梅」のアテにしたくなるようないい香りが台所の鍋から匂ってきます。手を出したくなりますが、我慢我慢。

9月4日/秋の風

 ちょっと買い物がありまして、今月からオープンしたコンビニまで行ってきました。家から徒歩2分ほどのところです。いままでは一番近いコンビニまで徒歩6分ほどでしたから、ほんとに近くにできたことになります。このあたりでは関西系のLというコンビニが優勢ですが、我が家の近くの店は2軒とも関東系です。
 それはともかく、鉄筋マンションである自宅の室内はなんとなくまだ蒸し暑いのですが、この時刻に外に出ますと、空気はもうほとんど秋ですね。風が秋。伝統的な日本家屋である私の両親の家ではおそらくもう室内でも秋の風を感じていることと思います。
 人間関係の秋風はできれば避けたいものですが、本当の秋の風は私のような暑がりにとってはまことに歓迎すべきものであります。

9月5日/地鎮祭およびそのような慣習

 私が勤務している医療法人が新たに作る老人保健施設の地鎮祭が今日ありました。
 完成すれば私がその施設の責任者になることになっていまして、ですから地鎮祭に参列しました。じつはこういうものに参加するのは初めてだったのです。初参加でいきなり玉串を奉ることまでしなければなりませんでしたので、、ははは、スーツなどきっちり着て(暑かったぞ)ガラにもなくなんとなく緊張していたのでした。
 いや、それにしても、意味はたいへんよく分かるのですが、この神事、うーん、なんともすごい「非日常」だと感じました。建築関係のかたにとっては、工事の安全など「たかが習慣」でかたずけられないものがあるのかもしれませんが、ふだんこういうことに縁の薄い私にとっては、いわば「民俗学的興味」のほうが勝ってしまいました。
 もちろん、結婚式などでも同じようなものはあるわけですが、結婚式の場合は突出してイベント化されているので、あまり疑問に感じなくなっているのかもしれません。
 「地を鎮める」式次第というのは、気持ちがよく理解できるだけに、いったいこれからいつまでこういうものが続けられるのか、ある種の興味もあるわけでした。

9月6日/レンタルビデオのチェーンリアクション

 先月中ごろからレンタルビデオを借り続けています。レンタルビデオは、借りない時期にはぜんぜん借りないが、一度借りるとついついチェーン化してしまうということはありませんか? 借りたテープを返しにいって、そのまま帰ることはほとんどなくて、店内をぶらぶらと見て回って新たにまた借りてしまう、そして1週間後にまた…、ということを繰り返してしまうのが私の行動です。
 新作はそうそうあるものではないのですが、昔に見た名作をもう一度見ようとか、気がめいりかけているときには能天気なスプラスティックスを見たくなるとか、たまには黒澤明なんかで頭をウニにしてみようとか…。
 そういうわけで、いまその泥沼のまっさいちゅうです。

9月7日/赤バスって知ってます?

 『(行先表示を赤く点灯することから)その日運行する最終のバス。終バス』(広辞苑第四版)。
 大阪で飲んで地下鉄/北大阪急行で帰ってき、しばしば最終の阪急バスのお世話になります。今夜もそうでした。23時08分千里中央発箕面行20号系統。満員です。乗りながらふと思い出したのが「赤バス」という言葉。かつて大阪市内に住んでいたころ、夜遊びの途中で行先表示を赤い照明で照らした大阪市バスをよく見たものです。
 で、そういえば阪急バスは終バスでも普通の照明しかしていないことに、阪急バスと十年以上つきあっているのに、今夜初めて気がつきました。もっとも、赤い照明のバスが走っているからといって、だからどうするということも、実際にはありますまい。ただ「をを、もうそんな時刻か」というアテンションの役にはたつかもしれません。
 でも、暗闇の中を赤い行先表示をおでこに灯しながら走るバスというのは、かつての都会の数少ないノスタルジックな景色だと思います。
 猫バスでは明るすぎるのですよ、うん!

9月8日/休日のビジネス街

 午後から会合があって大阪中央区の本町界隈に出かけました。浄土真宗本願寺派の津村別院(大阪では「北御堂」といいます)の近くです。
 大阪の本町というのは、東京でいえば大手町あたりになるのでしょうか、いわゆるビジネス街ですから、日曜日はほんとうにひっそりとしています。津村別院にお参りにくるかたがぱらぱらと道を歩いておられる程度。ふと路地からホームレスのおじさんが虚空に視線を向けつつ現われたりしていました。
 大阪で生まれて大阪で育ち、祖父が本町に店を持っていた関係で物ごころついたときにはもう本町を知っていた私にとっては、違法駐車であふれかえっている平日の街より、ひっそりとした日曜の本町のほうが落ち着きます。古いビルの角に客を待つ輪タクが並んでいそうに思える午後でした。

9月9日/支離滅裂

 どこへかたづけたのかと探し回っていたCDがようやく見つかりました。現地録音の「正調郡上おどり」と「伊藤多喜雄& TAKIO BAND」 どちらも民謡ものです。
 最近はなぜかクラシックと並んで民謡のCDを買うことが多くなりました。端末を扱いながら民謡をBGMとして聴くという、ちょっとしたミスマッチ。でも民謡の調子は私のキーボード打ちのリズムに合っているのか、なかなか軽快に聴くことができます。
 私の音楽の趣味はメリハリのないもので、主義も主張もないのを自分でよく分かっています。しかし、その時その時の精神状態によって聴きたい音楽が変わるのはいたしかたありますまい。
 そういうわけで、CDの棚には、インドのシタール演奏やモンゴルの馬頭琴からジョージ・ウインストン、チック・コリアがあると思えばホワイトおじさんのEW&Fがありという状況。
 で、この日誌は、いまは亡き「アバ」を聴きつつ書いているのでありました。

9月10日/しずかな秋がいいのに

 今夜は涼しい風が家を吹きぬけ、外ではいろいろな虫の鳴き声が賑やかになっています。昼間はそれなりに日差しが強くて暑かったのですが、この時刻、もう完全に秋の風情。
 夏のあいだずっとシャワー浴だけだった我が家の入浴も、今夜は久しぶりに湯を張ってゆっくりと浸かることにしました。
 いよいよいい季節になりそうです。
 と書いていたら表をウチのマンションの悪ガキどものバイクが…。

9月11日/移動入浴サービス

 往診先で移動入浴サービスのクルーといっしょになりました。
 在宅診療を始めてから10年、週のうち半分ほどを患家訪問をしていますのに、入浴現場に遭遇したのは今日が初めてでした。
 市から委託を受けた業者さんのクルーでしたが、私は彼らのフレンドリーさと手際のよさに感激してしまいました。うーんと、なんと言いましょうか、作られた優しさとか、不自然なマニュアルとか、仕事やからしゃあないねん、などということとはまつたく無縁。クルーのメンバーにはけっこうご年配の男性も、ほんとに若い女性もおられましたが、この明るさこの元気さの原動力はなんなんやと、しばし見ほれていたのでありました。
 わしらも頑張らねば。

9月12日/萩

 往診先のお宅の庭に紅萩の鉢植えが置かれていました。萩の季節です。
 何年か前の秋、京都鞍馬から花脊を通って芦生(あしう)――ダムなんか作るなよな――へと車を走らせていて、途中の佐々里峠で圧倒的な萩の野生群落を見て以来、秋になりますと萩の木に心が動きます。
 何度か買ってきて植えてみるものの、なぜかことごとく失敗、山では勝手にどんどん大きくなっているのに、なんで庭では育たないのだろうかと悩む、で、パートナーいわく「かわいがりすぎ、あまやかせすぎ」。
 往診の帰り、行きつけの植木屋さん「陽春園」に立ち寄りますと、きっちり萩の鉢がありました。でもちょっと今日はまだ買う気にならなかったのでした。

9月13日/見ておもしろくなければ映画ではないのだ

 レンタルビデオのチェーン現象の続きで「Shall we ダンス?」を借りてきました。正確には、私は乗り気ではなかったのですが、パートナーが見たかったということで、新作2泊3日なのに借りたのです(私と知り合う前なので詳しくは知らないのだが、彼女はいっときダンスに凝っていたらしい)。
 主演が役所広司さん(うーむ、おっさんになったなあ)、監督周防正行というこの映画、私が想像していた以上におもしろかった。ここ数年、邦画も頑張ってるのぉと思い続けてきましたが、またその気持ちが強化されました。
 楽しくなければ映画ではない、見終って気分がよくなければ金をとるな、というのが私の映画に対する姿勢です。そういう意味では、ビデオという追い風はあるものの、私が学生のころの邦画壊滅のころが夢だったような最近の頑張りだと思います。
 つぎはひさしぶりにハリソン・フォードの「ブレードランナー」を見るのだ(いったい何回目か分からん)。

9月14日/いやあ、なんたってジョン・ベルーシはいい

 連日の映画話でごめんなさい。
 今夜はパートナーが夜勤で不在、こういうときは彼女があまり好まないSFものなどを見てやろうと、ひさしぶりにハリソン・フォード「ブレードランナー」などを借りてきていました。娘と食事をすませたあと、さてぼつぼつビデオと思いつつ、ふと新聞の番組欄を見ますと、NHK のBSでなんと「ブルース・ブラザース」ではありませんか。
 この映画、封切のときに3回だか見に通いました。テレビで放映されたものを録画してなんども見ました。なぜかビデオやレーザーディスクが出なくてやきもきしていたのですが、リリースの1980年から遅れること10年余り、ようやくLDが発売され、2枚組みで一万円近くもしたのに、何の迷いもなく買いました。もちろんそのLD*1) もなんども見ています(LPと違って何度再生しても劣化しないのが嬉しい)。
 なにはともあれジョン・ベルーシです。「アニマルハウス」の昔から私はベルーシにあこがれ続けています。早世したベルーシだからよけいに入れこんでしまうのかもしれませんが、たとえスクリーンの中だけだったとしても、あの破天荒さにはあこがれます。
 それにしても、キャブ・キャロウエイもジョージ・ブラウンも、そしてもちろんベルーシも、もはや故人なのであります。そしてかの地でもこの映画にはヲタクな人が集まるのか、RealAudio *1) などというツールを使って映画の名場面のセリフが聞けるホームページ*2) があったりします。もちろんもうなんどもアクセスしましたよ。これからの楽しみは、名相棒だったダン・エイクロイドが売れっ子になっているということでしょうか。

    *1) しかしまあなんですねえ、レーザーディスクの、この急激な衰退
    はなんということでしょうか。我が家でもここのところLDの再生の機
    会が減ってますのでLDプレイヤーがちゃんと動くのかどうか不安では
    あります。しかし人間はなんと浪費をくり返すのだろうか(ってそれ
    を助長しとるやんか>自分) ^^;

    *2) リアルオーディオプレイヤーのダウンロード

    *3) ブルース・ブラザースの名場面セリフが聞けるサイト

9月15日/頭痛

 午前中から頭痛が続いていました。じつは、今日からある薬を飲み始めていまして、その薬の副作用に頭痛があることは知っています。ただ、その頭痛がどのような性質のものかは解説されていないので、この頭痛が薬の副作用なのかどうかよく分かりません。副作用だとしたら、この薬を続けるのは苦痛ですから、別のものにしなければなりません。
 もともと私は頭痛持ち、いわゆる「緊張性頭痛」というのをハイティーンのころから持ち続けています。今日の頭痛はいつもの頭痛と似たものですが、とりあえず緊張性頭痛を起こしそうな原因が思いあたりませんので、これがいつもの発作かどうかは分からないのです。
 また、夕べは食後にブルースブラザースを見ながら日本酒「秋鹿純米」をかなり飲みましたので、ひょっとしたら酒がまだ残っているのかもしれません(この酒は二日酔いするような質でないのは、普段から愛飲しているから知っています)。
 とりあえず、ここ1時間ほど前からは頭痛は消えてきましたので、やはり以上のいずれも可能性があります。
 明朝にはまた薬を服用しますから、それでもう少し判断できるでしょう。なにしろ今日は日直当直ですから、アルコールとは無縁です :-)




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