マスクで表現の幅を広げよう

マスクとは

『マスク』と呼ばれる機能を使用すれば、通常の描画方法では実現できないような表現が可能になります。
具体的にどのような表現ができるのかというと、イラストレーション(またはアニメーション)の一部分を、マスクして見えなくすることができるのです。
早い話が、狙った部分だけを透明化することができます。
通常の『アルファ』による透明化との違いは、オブジェクトやシンボルなど、特定の範囲に影響されることなく、狙った範囲(マスクした箇所)だけを自由に透明化できるというところです。
ドラえもんの道具にある『透明マント』で、見せたくない部分だけを覆い隠すような感じですね。

マスクを使用したイラストの例

実際にマスクを使用すると、どのような表現ができるのかを、シンプルなイラストにしてみました。
カニ、イカ、タコのそれぞれのキャラクターイラストを、マスクによってバランス良く表示されるように調整しています。

作業工程としては、まずはカニが描かれたレイヤーを背景に配置しています。
このレイヤーには、特別な処理は何も行なっていません。
次に、イカが描かれたレイヤーを円形にマスク処理して、カニのレイヤーの上に配置しています。
最後にタコが描かれたレイヤーを円形にマスク処理して、一番上のレイヤーとして配置しています。

この円形に切り抜いているように見える表現は、通常の描画方法だけでは実現できません。
いや、100%実現不可能かというと、実はそういうわけではないのですが、キャラクターをシンボル化させない状態で大量に配置して、それを全て分解した後に円形に切り抜く…というかなり面倒な作業が必要になります。
また、同じような見た目にはなっても、切り抜いた部分を後から少しでも修正しようとすると、全て最初から作り直しになってしまうなど、作業効率は最悪です。
もちろんデータサイズも膨大になってしまうため、いいことはひとつもありません。

マスクの機能とは、見せたい部分だけを見せる、つまり見せたくない部分を透明にすることができるということだけですが、これが結構使いどころの多い機能なのです。
上記のイラストのような表現が必要な場合は、迷うことなく『マスク』を使用してスマートに表現しましょう。

マスクの設定方法

マスクは、レイヤーに対して設定することができます。
上記のイラストの、イカのレイヤーを例に解説したいと思います。

まず、カニのイラストが描かれたレイヤーを、一番下に配置します。
その上に、イカのイラストが描かれたレイヤーを配置します。
イカのレイヤーの上に、新規レイヤーを追加します。
新規レーヤーのステージ上に、『楕円ツール』で正円を描きます。
正円を描く際、塗りの色は適当でかまいませんが、線は無しにしておきましょう。
正円の大きさをステージ内に収まるように調整して、『整列パネル』などでステージの中央に配置しておきます。

ここまでの状態をおさらいすると、カニのレイヤーの上にイカのレイヤーがあり、さらにその上に正円を描いた新規レイヤーがある状態です。
今のところ正円はただのオブジェクトですが、このレイヤーをマスク用のレイヤーに変換することで、正円の塗りの部分→イカが見える部分になり、正円の外側の空間部分→イカが透明になる部分になります。
レイヤーの変換方法は超簡単で、新規レイヤーのタイトル部分を右クリックして、表示されるメニューの中から、『マスク』をクリックするだけです。
これだけで新規レイヤーはマスク用のレイヤーに変換され、正円がマスクとしての役割を果たすようになります。
正円の塗りの部分だけにイカが表示されていれば、マスクは完成です。

マスクレイヤーの仕組み

マスク処理が完成したところで、レイヤー部分を少し観察してみましょう。
まず、新規レイヤーのアイコンが、マスク用のレイヤーである『マスクレイヤー』のアイコンに変わっているはずです。
そしてイカのレイヤーはアイコンの左側にスペースができ、マスクレイヤーの中に格納された状態になっていることがわかります。
レイヤーをマスクレイヤーに変換する際は、そのひとつ下にあるレイヤーは自動的にマスクの対象となる『マスク対象レイヤー』となります。
マスク対象レイヤーは、マウスでドラッグすることで、自由にマスクレイヤー内での重なり順を移動したり、マスクレイヤーから出し入れすることができます。
ひとつのマスクレイヤーに対して、いくつものマスク対象レイヤーを設定することもできるので、いろいろな表現方法を実験してみるのもおもしろいかもしれません。

ちなみに、誰もが実験したみたくなることかもしれませんが、マスクレイヤーを入れ子の状態にするとどうなるのかというのが気になりますよね。
つまり、マスクレイヤーの中にマスクレイヤーを作り、そのマスクレイヤーの中にさらにマスクレイヤーを作り…
という風に、マスク内にマスクを繰り返し作るとどうなるのかということです。
これ、実験してみたのですが、Flash CS5 ではできないようになっているようです。
ちょっぴり残念。
それでも、マスクによってイラストの表現の幅が広がることは確実ですから、皆さんもどんどんマスクりましょう!メリー・マスクリスマスク!