ナースのつぶやき


 case1 精神科ナースのお仕事  無賃girl OBの一人

 私の仕事場は精神科の閉鎖病棟、つまり病棟の入り口から窓・風呂場とにかくドアというドアに全て鍵のかかった、一度はいると鍵を開けない限り絶対出て来れない窮屈な病棟である。しかし、以前の精神病院のような「うす暗く汚い恐いところ」といった独特のイメージを感じさせることはなく、窓の「鉄格子」とやらも全くない。
 病棟内の雰囲気はその時の入院している患者さんの層や状態により、左右される。躁状態で気分が高揚している人がいれば良く喋るし、他の患者さんとけんかしたりし、スタッフもその対応に翻弄され、病棟全体が騒がしく、落ちつきがなくなる。静かなときはたいていの人が落ちついているからである。病気の性質上、状態の悪い人は対人関係においても障害をきたしていることが多く、他の患者さんの状態まで悪くし、それが広がると病棟内でもトラブルが頻発し、こちらもドッと疲れてしまう。
 精神科ナースとしての仕事は、注射とか排泄介助といった、目に見えてすることは少ないため、時々自分自身でも分からなくなってしまう。
 思考が混乱し食べることもままならない人なら日曜生活行動の世話をする。不安の強い人ならそのひとの側にいるだけでも患者さんは落ちつく。患者さん自身、何が今自分にとって問題なのか分かっていないこともよくある。「問題」の根は複雑であることも多く、その人の社会的状況(家族との関係など)を良く把握していないと患者さんとの話も、内容のないものとなってしまう。つまり、患者さんの病気の部分だけでなく「人間全体」を看ていくことが私たち精神科ナースの仕事の上で絶対必要なのである。
 「人間全体」を看れる(どこの科でも看れるが精神科では特に重点をおいてみれる)その魅力が私たちの仕事の引き寄せられる部分である。

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