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題名 |
「深夜特急」 めざめれば別の国 |
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出演者 |
渡辺えり子・東銀之介・武發史郎・遠藤靖・内野智 |
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作 |
渡辺えり子 |
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演出 |
渡辺えり子 |
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作曲 |
深沢敦 |
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美術 |
和田平介 |
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照明 |
中川隆一 |
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音響 |
原島正治(囃組) |
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振付 |
菅原鷹志 |
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衣装 |
山本安規子 |
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絵画 |
市川伸彦 |
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写真 |
室岡浩一 |
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宣伝美術 |
森山信一郎・小林亜希子(ADEXinc.) |
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舞台監督 |
藤田秀治 |
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製作 |
おふぃす3〇〇(佐藤友布貴・岩間貴子) |
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惹句・挨拶 |
(渡辺えり子による文章「夢の翌日」掲載) |
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その他・ |
夢の翌日 渡辺えり子
たった二歳の幼児の頃から、私は死ぬのがひどく恐かった。 近くの神社の境内でかくれんぼの鬼になってしゃがんでいると、辺りは日が暮れかかり、自分の心臓の音だけがドクドクと鳴っていた。「もういいかあい! 」ふりしぼった声が林の中にこだました。けれど返事がない。 泣き虫の私が、泣くこともできない暗い寂しさにおそわれたのはあの時からだった。 自分は一人なのだ。私という私、他の人ではない私というたった一人の私がここにしゃがんでいる。そんな感情を初めて知ったのがあの神社の境内だった。 そして、私という命の死が恐くなった。 あれから眠れぬ日を幾度重ねたことだろう。「孤独」という言葉を知らぬ頃 から、いつかは死ななければならないという絶望感にさいなまれ、その感情が強 迫観念となって、胸を縛り続けた。
中学の時、大好きな先輩が小児リュウマチで死んだ。二十八の時、信頼し続けた芝居仲間が事故で死んだ。二年前、小学校時代からの親しい友人が癌で死んだ。愛するものの「死」の激痛はいくら時が経っても沈殿したまま重く臓物を縛る。 親しい友の手首には、自殺未遂の切り傷の跡が二本ついていた。それを見たのは高校の頃だった。絶望の淵を歩き、乗り越えた友人をなぜ死はさらっていくのだろう。
「自死」、生きていかねばならない残された人の激痛と、死んでいかねばならなかった者の激痛を癒やす術は無いのだろうか? 消えた存在と、その事実を受け取り、記憶の拷問に耐えながら、新たな生命を生むことはできないだろうか? 死んではいけない。死んではいけない。 だが、死んだ者はどうして夢の中で、あんなにも鮮やかに優しく笑うのだろうか。
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