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題名 |
赤い靴 |
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出演者 |
渡辺えり子・東銀之介・立花弘行・武發史郎・前田守和・内野智・中川圭永子 ・遠藤靖・いしいすみこ・上野晴美・大内史子・大谷桃子・小林紅一・宍戸久利 子・杉嶋美智子・土屋良太・樋口浩二・溝上朗生・村田泉・山下仁美・遊上良子 ・岩間貴子・小笠原みき・岡本恩・鷹田ゆき・友寄有司・平畠勝則・松田亜紀・ リュソン・フレデリック山崎ハコ・河野洋一郎・三浦隆史 |
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作 |
渡辺えり子 |
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演出 |
渡辺えり子 |
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作曲 |
深沢敦 |
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美術 |
渡辺えり子 |
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照明 |
中川隆一 |
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音響 |
原島正治(囃組) |
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振付 |
菅原鷹志 |
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殺陣 |
矢車猛(オフィス風来坊) |
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絵画 |
市川伸彦 |
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宣伝美術 |
飛田久美子 |
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舞台監督 |
藤田秀治 |
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協力 |
南河内万歳一座 |
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製作 |
おふぃす3〇〇 |
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惹句・挨拶 |
人魚の足に合う靴は、海を焦がした夕日色 |
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その他・ |
赤い靴 渡辺えり子 どういう筋書だったのかは忘れてしまったが、踊りの好きな少女が決して脱げない赤い靴を履いて死ぬまで踊り続けなくてはならぬという映画があった。赤ん坊の頃、生まれて初めて観た映画がその『赤い靴』というバレエ映画であったらしい。 「死ぬまで踊り続ける」このシーンは、今でも心を縛り続け、後に、グりムの「白雪姫」を読んだ時、姫を助けた王子のお城の大広間で、罰として、群衆の面前で真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、その熱さに耐えきれず、踊るような格好を続けながら死に絶えたという継母の姿と『赤い靴』の少女が重なり、踊り続けるというあの少女は、一体、何の罪で踊らされるはめになったのかということが気がかりであった。 それにしても、真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされて踊る継母を取り囲む人々が、手を打ち、喜び笑い転げる様を思うと、「見せる」ということの力の方向を思わずにはいられない。 そんな時、〈少女クラブ〉のカラーグラビアを開いて息を飲んだ。「砂地獄」と題されたあざやかな色に彩色されたようなその写真は、幾人かの赤いチュチュを着たバレリーナが、砂の中に引き込まれていくもので、ある者は腰まで、ある者は首まで悲しげな、今思えば何やらエロチックな表情をしてずるずると引きずりこまれているのである。しかも踊りながらまるでそうしなければならぬとでもいうように、あがくでもなくただ苦悩の顔を残したまま軽やかに沈んでいくのである。遠くには合成の青い海が静かに波打っていて、どこか絵葉書で見た南洋の島のような感じである。この残酷な写真は、ずい分長い間幼い私の眠りをさまたげ映画の『赤い靴』と一緒に「踊ること」に微妙な暗い予感のようなものを覚えさせることになったのである。踊りながら砂地獄に引きずりこまれ死に向かうバレリーナに「自分」を重ね、恐怖し、不眠の夜が続いたのであった。 それから三十年以上たった今、また眠れぬ夜が私を待ち受けている。劇団を守り、舞台を造っていくという作業を仕事に選んでしまったということは、あの幼い頃の暗い予感だったかも知れない。エクスタシーの表情を浮かべ「砂地獄」に向かう心は、果てのない夢をつかもうとする者に定められた罰なのかも知れない。「赤い靴」を捨てられぬ、突きあげる感情は不治の病のように、生涯の「我が友なる敵」として魂を冒し続けるのであろう。
二月公演延期の際は、皆様にご迷惑をおかけし、本当に申し訳ありませんでした。 そして、優しいお心遣いをいただき、本当にありがとうございました。
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