・novels−小説&SS
((08.10.21更新)


・『独立小隊カルディア』

 

「アナタが新入りのテンパチ?」



 RNAの海上エアポートに着いて十分後、少年は突然声を掛けられた。
 声のする先に居たのは一組の男女。
 黒い短髪の精悍な男と、その男の腕をしっかりと抱きしめた紫色の髪をした少女だった。
 声を掛けてきたのは少女の方で、凛とした眼差しに自信ありげな表情を浮かべている。
 可愛い。
 そんな第一印象にどきどきする少年をよそに、少女は首を傾げる。
 二つに括られた髪を海風に躍らせながら、少女はもう一度口を開いた。
「ねぇ、違うの? そうなの? その目の色、VRの証拠でしょ?」
 赤い瞳はVクリスタルの影響を受けた結果なるものだ。RNAに属すると赤に。DNA
だと緑っぽくなる。
 僕と同じ赤い瞳を光らせ、少女は頬を膨らませて更に問いかけた。
「て、テンパチ、10/80(テンエイティ)の事、かな?」
「それ以外に無いでしょ? ね、やっぱりあの人うちの部隊に編入された子だよ!」
「……らしいな」
 少女に揺らされ、男は低く答えた。
「うちの……部隊? あなた達が「カルディア」の……」

 カルディアはRNAの独立部隊の一つだ。
 明日配属になるから今日中に移動しておけと上の人に言われて、ココに到着したのが十
分前。出迎えてくれたカルディアのサイファーは「隊長達はここの端っこにいるさ。多分。
腕に大きいのぶら下げてるから、直ぐにわかるぜ?」とだけ言い残し、どこかに行って
しまった。言われるままに隊長を探して歩いてきてようやく見つけたのがこの二人という
訳なのだ。
 
「ね、名前は?」
「ぼ、僕は、エイヤです。機体はMBV−04−10/80spです。えと、あなた達は……」
「私はフェイ=イェン・ザ・ナイトよ。だからフェイって呼んでね。カルディアの
副隊長よ。んで、こっちが……」
「俺はライデン。カルディアの隊長だ」
「え、えと、名前は……」
「いいのフェイで。どうせこの部隊には一機種づつしかいないんだから。他所でも、カル
ディアのフェイで通じるもの。彼も一緒。ライデンで通じるわ」
「そ、そうですか」

 自信満々のフェイに、エイヤは強引に納得させられる。
 兎も角、これからこの人たちが仲間で、命を預け預かるのだ。

 不意にフェイが手を差し出し、にこりと笑う。

「歓迎するわ。よろしく。テンパチ」
「よろしく……って、だから僕の名前はエイヤですってば!」
「丁寧語禁止ー。仲間だから。ね?」
「あ、はぁ……」

 うぅん。なんだか今まで居た部隊とは全く雰囲気が違う。
 なんというか、こう自由な感じが伝わってくる。
 そんな事を考えながら、少年は握手した手を見てみる。
 どうでもいいことだったが、フェイの柔らかい手の感触がやけに残っていた。

「じゃ、みんな呼び出さなきゃねー」

 少女は嬉しそうに駆け出すと、艦内へ向かっていった。

「あいつはあんなだが、まぁ、慣れてくれ」
「りょ、了解です。隊長」
 肩をこきこきと鳴らしながら、隊長はフェイの後をのんびりと追いかけた。

 妙に気が楽だった。
 
 独立部隊カルディア。

(ココが、これからの僕の居場所だ)

 少年はぐっと拳を握り締め頷くと、先を行く隊長と少女を追いかけ走りだした。



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