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2 研究史

クワガタムシ科Lucanidaeは、世界から約1200種が記録され
ていryが、ミヤマクワガタ属として扱われているものは50種余り
である。この属の中で、形態・生態がもっとも古くから研究され
ていたのは、ヨーロッパに広く分布するヨーロッパミヤマクワガタ
Lucanus cervusである。本種はC.LINNE(1758)によって、
コガネムシ科のScarabaeus cervusとして記録されたことから
始まる。その後、J.SCOPOLI(1763)によってミヤマクワガタ属が
設けられ、この属に移されることになる。しかし、クワガタムシを
独立した科として取り扱ったのは、MACLEAY(1819)が最初である。


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[外国における研究]LANETは、世界のクワガタムシの蒐集家と
しても知られていた。彼の著書(1902)には、ミヤマクワガタ属の
記載とともに、多くのすぐれた絵がみられる。絵は自ら描いた
ものであるとこがサインからわかる。クワガタムシの分類は、前述
のように古くは18世紀から、そして19世紀には、すでに多くの
研究者によってなされているが、20世紀になって、G.VanRooN(1910)
が、世界のクワガタムシを網羅した「ユンク(Junk)のカタログ」を世に
出して注目された。このカタログは、PARRY(1864)による世界で最初
の絵入りカタログ(亜種をすべて科として扱っている)を、より充実
させたものとなった。ミヤマクワガタ属の研究はその後も、R.DIDIER
(1937ほか)G.J.AROOW(1949ほか)などによって深められていった。
これらの論文は、日本の研究者に広く引用されている。また、D.SHARP
とF.MUIR(1912)は、ヨーロッパミヤマクワガタを含む多くの甲虫の♂交
尾器を図示し、交尾器が分類に役立つことで注目を集めた。この
書物は、テキストブックとして今日でも引用されている。
第二次世界大戦後はR.DIDIERとSEGUY(1952〜53)が世界の種類を
「絵入りカタログ」として出版し、さらにB.BENESH(1960)が、「ユンク(Junk)
のカタログの改訂版」を出版した。この2つの文献の重要さは今日でも
変わらないが、亜科の区分はひどく相違している。
一方、ミヤマクワガタ属の幼虫や蛹については、ヨーロッパミヤマクワガタ
で古くから知られ、E.BI.ANCHARD(1868)が昆虫の変態・習性をまとめた
書物には、幼虫・蛹のすぐれた絵もみられる。しかし、この種(属)の幼虫
形態の研究による分類は20世紀に入って進展した。とりわけ、A.G.BOVING
F.C.CRAIGHEAD(1931)による甲虫幼虫の分類は、今日でもこの方面の研究
のバイブルとなっている。図版の中には、ミヤマクワガタ属も含まれている。
イギリスのF.I.VAN EMDENは、アメリカのBOVINGらと同様に、甲虫の幼虫を広く
研究してすぐれた業績を残している。
EMDEN(1935)はクワガタムシ科の幼虫を研究し、その後、クワガタムシ科
の幼虫による検索表を作成している(1952)。ミヤマクワガタ属幼虫を含む
検索表はT.E.LEH.ER(1950)S.I.MEDVEDEV(1952)のほか、多くの研究者に
よってもつくられている。
アメリカのJ.F.LAWRENCEはイギリスのR.A.CROWSONとともに、甲虫の系統分類
で知られる。LAWRENCE(1981)は、原始的とみられるオーストラリアのツツ
クワガタ属Syndesusuなどの幼虫形態から進化を考察し、検索表も作成して
いる。
クワガタムシ科は、古くから異常に発達した♂成虫の大あごに関心がもたれ
、分類にもとり入れられてきた。しかし、体長を含めて個体差の著しい種が
少なくない。J.T.CLARK(1977)は、ヨーロッパミヤマクワガタにみられる個体
変異を研究し、亜種(変種)や型についての分類上の問題をとり上げている。



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[大あごと体長の相関]
ヨーロッパミヤマクワガタについてもよく調べられていて、P.J.KUYTEN(1964)
J.T.CLARK(1977)らの研究がある。

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CLARKは同一の地域で採集したヨーロッパミヤマクワガタ537頭を、雄雌に分け
て相対変異を記録している。



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[性モザイク]
ミヤマクワガタ属の性モザイクは、ヨーロッパミヤマクワガタで古くから知られて
いて、E.DUDICH(1923)H.V.LENGERKEN(1928)J.MEISENHEIMER(1930)らが、その形態を
記録している。DUDICHが記録したものは体の左半分が♀、右半分が♂であり、
LENGERKENが記録したものは体の左半分が、右半分が♀である。