2004中国(胡同、前門)
2004年9月20日
今日の午前中はフリータイムとなっている。フリータイム、実にいい響きである。皆が起き出す前に、レストランで朝食を済ませ出発。朝食くらい屋台で粥でも啜ればいいのであるが、無料ということで、ここで貧乏性が出た。中国のものが何もないとかなんとか文句言いながらも、お代わりまでしている。
まずは、一昨日三輪車で走った胡同を、ゆっくり歩いてみたい。スターバックスの前から地鉄永安里駅へ下っていく。時間が無い時は地下鉄が有利だ。建国門で乗り換えて、鼓楼大街下車。地上に這い上がるとそこには、自転車やバスや人がひしめく、正しい中国の朝があった。引き込まれるように街へ流れていき、安物のレンズが光景を心地良く切り取っていく。胡同の通りから見える部分はすべて潰されている。オリンピックまでには古い街並みのレプリカが完成するのだろう。沢山の三輪車が目の前を通り過ぎていくので、これを眺めているだけでも飽きない。ビールも積めるし、子供も積めるし、彼女も積めるし、実に合理的な乗り物である。それでもすぐにマイカーに変わっていくのだろう。
片っ端から、カメラを向けてはシャッターを切っていたところ、突然、軍服を着た男に銃口を向けられる。銀行から現金輸送車へ積み込む作業ルートを横切ろうとしたらしい。「スマンスマン」と退散。ここは日本ではない。
地鉄の駅から離れてしまったので、無軌電車(トロリーバス)に乗る。これに乗らないと中国へ来た気がしない。中国へ来た意味がない・・・とか言ってしまうと、良識ある人から口を訊いてもらえなくなるので言わないけど。やっと小物を買いながら崩した1元札の出番である。相変わらず混んでいて期待を裏切らない。地鉄に乗り換え。出入り口ドア付近に立っていると、乗り込もうとする人が「これ北京駅行きます?」と尋ねてくる。どうやら中国人になりきっているらしい。肩に一眼レフ下げてても観光客と認めてもらえないらしい。次に乗ってきた人も、行き先を尋ねてくる。電車はまだ出ない。大きな荷物を抱えたおばあちゃんが乗り込んできて、「北京駅に行きますか・・・」
小皇帝という言葉があるらしい。子供は小さな王様だという意味である。例の政策により子供が少なく、子供を大事にし過ぎるのは日本の比ではない。観光地で他の人を押しのけ、最高の記念写真ポイントに我が子を立たせ記念写真を撮る姿は、皇帝と家臣そのものである。経済発展に沸くこの国、この子達が大人になる頃どうなっているのか、日本と同じ轍を踏むようで少々不安になる。しかもそれは人口十倍の規模で動いているのだ。
前門で地上に上がる。昨日団体旅行で歩いた地点に、今日は個人旅行として訪れる。目立つクラシックな建物は旧満州鉄道の駅である。・・・というような事はやはりツアーでガイドさんに説明してもらわないと気付かなかっただろう。そしてその前に続く混沌のマーケット。ここは個人でなければ歩けない。服屋に入る。旗袍(チャイナドレス)を眺めていると、早速お姉さんが盛んに勧めてくる。そう来なくっちゃ。色鮮やかな様々な模様がある中で、直感的に黒地に紅で模様が入ったやつが眼に入った。この模様が一番エロい(選考基準が間違ってるが)。「いくら?」「180元(2500円)よ」「ちょっと高いね。勉強してよ」ここまでは、定型句である。「120元でどう?」あまりに早く暴落したので、ちょっと面喰いつつもなんとか「50元でいいでしょ」と言う事はできた。「冗談でしょう!」(と言った気がする)「仕方ないわね。110元にしてあげる」50元はちょっと言い過ぎで、お姉さんも侮れないと感じたのか下げ幅が急速に小さくなった。こっちも多少は妥協しなければならないだろう。「70元でどう?」「100元!」「80元!」90元(1,250円)で妥結だ。この時100元札を出すというのは無粋であるから、きっちり90元ちょうどを支払うのが最低限の礼儀というものである。
旧満鉄の駅にはセブンイレブンが入っていた。セブンイレブンも元はアメリカのはずだが、これはセブンイレブンジャパンそのものである。おにぎりだって手に入る。敬意を表して燕京ビールを購入する。このあたりで、カラータイマーである。地下鉄を乗り継ぎ、永安里駅スタバ前に浮上する。飯店に戻り、日本では回らなくなった回転ドアをくぐると、客に挨拶する為だけに立っているチャイナドレスの小姐を写真に収めて部屋へ戻る。
3日間世話になったマイクロバスは今日も快適に走り、一眠りすれば首都机場(空港)である。ガイドさんは「中国語をもっと勉強して、また来なさい」と言った。少ない語彙で辛うじて返答できたのは「仕事頑張って」という、あまり粋でない言葉だった。確かにもっと勉強しないといけないな。次来る時は、この街はどうなっているのだろう。もう一眠りすれば名古屋であり、やっとかめである。空港にはクレハ観光バスが待っていて、明日の朝はもちろんいつも通り、仕事を頑張る訳である。