2004年カンボジア(トンレサップ湖)

 かつて地理の時間にその覚えにくい名前を覚えようとしていた時は、自分がそこに行くとは想像もしていなかった。今その湖に浮いている。抜けるような空と日差しが心地よい。湖なのに対岸が見えない。それでも今は乾季で湖も狭くなっているが、雨季には3倍以上にも広がるらしいから、想像を超えている。その湖の膨張に合わせてお家も移動するというからこれまた理解を超えている。

 子供達は矢切の渡しのような舟を漕いで通学し、ドリフのたらいをマイカー代わりにしている。昔日本でいかだの上に家を建ててしまった人がニュースになっていたが、ここではそれは普通のことで、お店も教会も水に浮いている。

 

 

 

 

 

 

 市場へ行こう。やはり、市場に行かないと始まらない。その芳しき香りと共に、その国にどっぷりと飲み込まれてゆこう。ニンゲンはうそつきな生き物だが、こと食欲に関しては正直である。だから、その国のホンネを聞きたければ市場を歩けばよい。

 カンボジアは結構魚を食べる。市場には沢山の干物がぶら下がっている。魚からナンプラーを作りタイへ売られ、身の方はカンボジアで食べるらしい。市場のあちこちに、無造作に積まれているとげとげの物体はドリアンである。その味わいは日本語では表記できないが、あえて言えば濃密。それを大事に次の日までとっておいたら、その芳醇な臭気が2次曲線を描くように輝きを増して、ホテルには大分迷惑を掛けたように思う。

 アジアン市場での最高のエンターテイメントはやはり価格交渉。カンボジアの通貨はリエルだが、ある程度の金額以上のものはドルで売られている。1ドルは4,000リエルくらいとかけ離れていて、リエルだと高いのか安いのか全然わからない。で、カンボジア初心者の我々が使いこなせるのはほぼドルのみとなってしまう。日本人相手ならもっともっと吹っかけても言い値で買っていくと思うが、この国の人たちはおっとりしていて、それ程吹っかけてこない。しかし、一応は旅人の端くれ、値切らないわけにも行かず、結局値段がすぐに1ドルとかになってしまう。それ以上は値切りようがないし、値切るのも忍びない。

 

 

 

 

 

 

 次にこの国に来られるのはいつの事だろうか。その時にまだあの木はあるだろうか。