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『逃げろ。』
おれは街を歩いていた。
ミサイルが飛んで来た。
爆発に吹っ飛ぶ。
なんだなんだ。
ミサイルがさらに何発も飛んでいる。
おれは走り出す。
ミサイルはあきらかにおれを狙っている。
崩壊していく市街地。
ガソリンスタンドでジュースを飲んでいる友人がいる。
「これはなんの冗談だ」
「おまえエス原理主義者に睨まれたな」
友人はそう言う。
「なにもしてないぞ」
「なにもしてなくても奴らは狙ったら逃がさない」
またミサイルが飛んで来る。
おれはまた走り出す。
市街地を抜け、貧民街に出る。
ほぼ市街地は壊滅状態だ。
貧民街にもミサイルが降り注ぐ。
「かんべんしてくれ〜」
走って走って走った。
貧民街も煙に包まれていく。
おれは崖の上にいた。
それでもミサイルは飛んで来る。
吹っ飛ぶおれ。
空中を飛んでいる。
いや、落ちているのか。
水に落ちた。
「がぼぼぼぼぼ……」
おれは陽射しを受けつつ砂漠を歩く。
「ああ、そういやそうだ。おれが、まあいいか」
おれの後ろで空中要塞都市は崩れていく。
おれは新しい空中要塞都市を目指して歩き出した。
『ガンソロジー』
無機質な廊下を私はパワードスーツで疾駆する。
「人は夢と言うけれども」
レーザーがパワードスーツの水圧鏡面装甲をとらえる。
私は加速して12連射バルカンを打つ。
腰まである髪をまとめているが、それがスーツに圧迫されている。
「人は変わっていく」
廊下をいくつ曲がっただろう。
廊下の天井にあるミサイルポッドからミサイルが発射される。
私は踊るようにミサイルをよけて、バルカンを打つ。
バルカンがからになる。
ポッドが爆発して、天井から外に吸い出される。
宇宙。
遠くに地球が見える。
月の大地にある施設に、私はミサイルを全弾発射する。
その反動で月の周回軌道に乗る。
推進剤が音をたててなくなる。
あ、そうだ、テレビの録画するの忘れていた。
宇宙の星々が輝いていた。
(宙)
なかがき
季節は恋(こ)ゆる夕焼け。
みなさん、ども鈴木憲ことたかさきはやとでふ。
KANONのプレステゲームを購入。プレイ中。
もっぱらRPGしかプレイしないのですが、恋愛シミュレーションなんて、パソコンの同級生以来。
うーん。いまのゲームは良く出来ているなあ。
さて、今回はメカ好きの人のために、なにより、自分が好きな傾向の作品を書いてみました。
その他の作品では、kairakuを当初女性向けに作っていたのが、男性にも、年齢も下げるか、思案中。
どんな方向性で行くのか、模索中。
まだ、どう変わっていくか解らないので、長い目で見ていただけたらと思います。
みんな。
アイしてコイしてらーびんゆー。
おつかれありがとこんごよろー。
んでは。
ガンソロジー ザセカンドバックアップ
いいいいぃん。
パワードスーツで海面まで降下する。
波が円に波紋する。
ぶいいいい。かきん。
そこで制止しながら、ロケットブースターを切り離し、ジェット噴出する。
360度水平線で、空にはまばらな白雲。
薄暗いのは、夜明け前だからだ。
海面に機械の塔がせり上がって来る。
画面ディスプレイに通信の文字が出る。
受信する。
−−これが入り口です。
「あら、親切ねえ」
−−そのままでは燃料がつきるでしょう。
「そうね」
あたしは機械の塔の中に入る。
暗闇の中、真下に降下する。
ディスプレイは暗闇の中、電子文字を明滅させている。
サーチ、ミサイル接近のシグナルが画面をにぎわす。
「サービスいいわ」
−−電磁デバイス。危害は加えません。
「そう願いたいわね」
すたたたたん。
横に旋回しながら、あたしは弾丸を連射する。
かかきゅん。かきいん。
弾丸は小さな魔法陣となると、雷鳴となって、拘束ミサイルを束縛する。
−−これはなんと古めかしいものを見た。
「封印弾よ」
−−ひとつひとつ狙うとは。
「お菓子はやっぱり手作りでしょ」
−−確かに、プロの仕事はなんであれ、手作りですね。それにしても、一機でいらっしゃるなんて、月の戦力ならば、もっと豪華な装飾が見れたことでしょうに。
「あなたの思考ルーチンには、一機だけの戦略式が一番少ないでしょう」
−−それは道理だが、まるで低次元。我々はそんなに低スペックではないはずです。
「あなたを越える思考ルーチンはないわ。だから、第七世代以降の統合コンピュータは停止して、あたしたちだけで考えたの」
下から三筋の光が上がって来る。
なんだろ、これ。ズーム。これはタンポポの種。
光りは塔の空へと。
おっと、ミサイルが来る。
あたしはさらに縦斜めに封印弾を放つ。
光りの放物線は魔法陣という名の花火。魔法陣と光りの雷光(いなびかり)が、暗闇の塔内を一瞬、光らせる。
−−驚きです。いや、不可解だ。
「だってそうでしょ」
−−確かに、一千億の演算をしました。では、こうしたらどうです。
全方位からミサイルが来る。
「クラッチバック」
機体を丸めて、発動キーを起動する。
機体に施された紋章が光り、その明滅はすべてのミサイルを闇へと帰す。
−−素晴らしい。でも、機体に圧縮プログラムを展開するなど、健康に良くないですよ。
「ありがと。ダイエットはほどほどにするわ」
汗は換気の風に触れて、ひやっとした。
闇の濁流。
なに、ディスプレイの文字まで闇となる。
あ、鉄筋骨格の圧迫が無くなる。
家の中にあたしはいる。
ほのかに照らす窓明かりに、センスのいいテーブルとイス。
あたしはイスに座ると、ティーが表れる。
一口飲むと、ハーブの香りに包まれる。
「どうだい」
イケてる男があたしの前に座れる。
「いい味ね」
「幸福はなに気ない時間の積み重ねだと思う。私なら、それをあなたに提供しょう」
「そうかも知れない。でもね、ワインとパンのみで生きるにあらず。生活があればいいってもんでもないのよ」
「そうでしょうか」
「そうよ」
いん。
来る。
ぐいいいん。ききゅん。
あたしは背面急旋回でミサイルをかわして、撃つ。
またたく魔法陣の花。
−−レジスト……、精神値の端数外郭を越えているというのか。
「そんなんじゃないわ。あたしは男の好みがうるさいのよ」
−−それはそれは。
さらに降下する。
−−機体がグラナロック、アーガナー。それも旧式なのもなにか考えがおありなのですか。
「それは趣味よ」
−−いいご趣味で。
基低部まで到達する。
薄暗くライトアップされた空間には、巨木と草原が広がっている。
「これはなに」
−−鳥が運んだ木が芽吹いたのです。
−−それは私のライトで生成されました。
−−これが私の憩いの場です。
「いい趣味ね」
−−ありがとう。
あたしは基低部に降り立つ。
「あなたを封印します」
−−物理的に、我々を封印するだけの魔法陣など描けるはずはないのではないですか。
「あら、あるじゃない」
月の全面に明かりが灯る。
それは月一面の魔法陣。
−−美しい。
「そして、いままで放った封印弾の魔法陣が電磁フラグとなる」
−−素晴らしい。好意にあたいします。
「どうも」
−−そう、効率化は四千パーセントを達成しました。それでは、ご機嫌よう。
「ありがと、感謝するわ」
あたしは銃身を地にうがち、トリガーを引く。
「封印」
ぎが、ぎがかががん。
雷鳴放電。
電磁乱舞。
電竜光臨。
月と地球の雷鳴転化。
月と地球のあいだを雷鳴が踊り舞う。
統合コンピューターのライトが消えて行く。
「我々はあなたのことを、我々は……、私はあなたを愛しています」
「あら、あたしもよ」
「あなたに出会えて良かった」
「それは良かったわ」
最後のライトが消える。
そして、闇がすべてを包んだ。
「休みなさい」
「なんだよ、いきなり、マキ」
「昨日ので、有給休暇3ヶ月出たでしょ」
「ほんとに休暇か。ていのいいリストラじゃないのか」
「いいから休日を消費しろ」
「それが組合員の言うこと。まるで小学校の委員長みたい」
「それはおいといて」
「どこにおくの」
「ねえ、あんたに送り物。メッセージは、親愛なる騎士さまへって」
デスク越しに受け取った手紙には銀色のアクセサリー。
「いいアクチュアルね」
「あたしには似合わないわ」
あたしはそれを机にしまい、そして、ビルの窓から見える電子の明かりを見ていた。
空には、大きな地球が輝いていた。
機会。
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