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『コーフクブ』

たかさきはやと




第一話。初めての幸福、それは緑茶のごとし。


 人が少なくて廃部になった写真部の部室でコーフクブの三人がいる。部活として何故か認められてしまい、担当の先生まで出来てしまった。活動方針。それが幸福探しである。
 放課後。
 部室にいる三人の女子高校生。
 桜かおりは部長だ。
「この部活はコーフクブだ。どうやったら幸福に時間が過ごせるか考えるクラブなんだ」
 とかおりがいう。
 髪が短く茶髪でつり目。背は高く丹精な顔つきだ。
「幸福な人の幸福なコツを教えるブログとか本とかテレビ番組があってもいいのにあんまりないのよ」
 もう一人の部員、水科葵がそういう。
 天然パーマの黒い肩まである長髪。長身でつり目で丹精な顔つき。
「雪菜も思うのね。親も先生も先輩も友達も幸福のなり方は教えてくれないからね」
 もう一人の部員、高森雪菜がそういう。
 ストレートの背中まである黒髪。おだやかそうな顔に低い背丈。  おっとりした話し方だ。
「そこは個人努力なんだよねえ」
 葵が残念そうにそういう。
 葵は理知的な話し方をする。
「亡くなった人の写真と話すと幸福らしいぞ。誰か亡くなった家族の写真持ってないか」
 そう聞くかおり。
 かおりはいつもオーバーリアクションをして話している。
「みんな生きてます」と葵。
「くそう誰か死なないかな」
 くやしがるかおり。
「怖い発言しないで」
 葵は辟易(へきえき)している。
 それもいつもの光景である。
 三人はゆったりと時間を過ごす。
「そうだ。生きてる人になら幸福について聞くことが出来るじゃないの」と葵が指摘する。
「雪菜のうち三世代同居だからおばあちゃんいるよ」と雪菜。
「よし意見を聞こう」
 かおりはやる気まんまんである。
 それから雪菜の家で祖母と対峙する三人。
 イスに座っている四人。
 かおりが開口一番。
「どうしてそんなによぼよぼで相方も死んで仕事も家事もしてなくて年金暮らしで幸福なんですかみげらほ」
 葵がかおりにパンチする。
「なにすんだよあおい。本当のことだろう」
 かおりは不満顔である。
 顔をさすりながら起き上がるかおり。
「世間では本音と建前というのがあるんだ。ストレートに聞きすぎだ」
 葵は怒ったようにそういう。
 雪菜の祖母は笑って許してくれた。
 雪菜の祖母が口を開く。
 しわがれた口が軽やかに動く。
「地道に積み重ねる幸福というものがあるわ。私は長生きだったから、それが出来たのね。一日五分でいいから自分を幸福にしていくと、五十年経つと一日四時間は自分を幸福に出来るものよ。料理や掃除などの小さな幸福を集めて幸福になること。若いあなたたちにはピンとこないかも知れないけれども、世の中にはいろんな幸福があるものよ。これからどんどん見つけていってね。みんな幸福でみんないいからね。人生とは幸福を探す旅のようなものよ」
 そういうとお茶をすする。
「はい。頑張ります」
 かおりは返事はいい。
 後日また部活で三人は部室にいる。
「歌とか映画のようなドラマとか本とか料理とかいいものを集めていいものがあったら友達に教えたら喜びを分かちあうことにもなるわ」
 葵の提案。
「それはいいよね」
 賛同するかおり。 「個別にいうと歌とかドラマは幸福なのかな」
「この歌なんかどう」
 聞いてる三人。
 聞き終わる。
「自分の中でヒットしないと幸福にならないな。ひまつぶしにしかならないよねえ」
 かおりは残念そうにそういう。
「雪菜ね思うのひまつぶしは幸福なのかな」
 雪菜は不思議そうな顔をしている。
「ひまつぶしは幸福じゃないだろう」
 かおりの即答。
「でもひまつぶししながら幸福を探すと幸福が見つかることがあるよ」  葵の指摘にかおりがなるほどと思う。
「ひまつぶしも生活の一部ということね」
 かおりは感心する。
 自分とは違う意見を持ってる葵をある面では尊敬していた。
「ありがとうといわれると幸福な気持ちになるな」
 かおりが指摘する。
 あたりまえのことだが、それを考えるのが幸福部の理念である。
「ありがとうをいう理由を考えることが幸福よ」
 すかさず葵がいう。
「雪菜ね思うの。おつかれさまとか一緒に頑張ってもいわれると幸福な気持ちになるよ」
 ほわほわした感じで雪菜がいう。
 雪菜の話し方は人を癒す感じすらあった。
「人にもいってあげるけれども、自分で自分にいっても幸福になるわ」  葵はそういう。
 葵は理知的であり、また哲学的なとらえ方をしていた。
「宗教は幸福なのかな。たとえば仏教とか」
 葵がそう提案する。
「仏教って天竺目指せばいいのか」
 かおりの冗談なのかどうか、葵は困惑した。
「雪菜もいえるよ。ホー法華経(ほけきょう)なんちゃって」
 葵はぐったりする。
 あまりお笑いは好きではなかった。
「まあね。イスラム教やキリスト教、ヒンドゥー教などがあるわね」
 葵が話しを持ち直す。
「神様は必ず見ていてくれる。必ず幸福になることが出来るという感じかな」とかおり。
 そうねと葵が続ける。
「神様にお祈りしてると、孤独な時間も幸福に過ぎていくわ。誰かに認めてもらうということは幸福なことよ。神様仏様に自分の存在を認めてもらえるというのはとても幸福なことなのよ。なにを話しても神様は受け止めてくださるわ」
 理論から話に入る葵。
 理屈は苦手なかおりは話を変える。
「しかし非科学的な話ね」
 対極ともいえる科学を話すかおり。
「雪菜ね思うの。ならば科学は人を幸福にしてくれるのかな」
 雪菜にはそれは不思議に思うことなのだ。
「宗教は人々の心を支えてきた歴史があるけれども科学はどうなんだ」  かおりは話を葵にふる。
「医療技術の発展は目覚ましいものがあるわ。それで助かるのは幸福なことよ」
 葵はそう指摘する。
「それは助かるわね」
 雪菜は納得したようにうなずく。
「ラジオもテレビも映画もネットも機器も科学のたまものよ」
 さらに指摘する葵。
「哲学も科学だろう」
 かおりがそう提案する。
「宗教的な哲学もあるわ」
 葵のほうがそういうとこは詳しくあった。
「哲学は幸福なのか」
 そんな葵をかおりも頼りにしていた。
「こうやって論議してるのが哲学といえなくもないわね」
 そういう葵。
「雪菜ね聞いたんだけど、考えるだけで幸福になるといいますよ」
「孤独な時間を哲学で過ごす人もいるわ」
 葵の指摘。
 葵も哲学をするので、考えるのは特異である。
「よし、かんがえてみよう。我思うゆえに我あり」
 かおりはどこまで本気なのか葵は不思議がる。
「考えが脱線してるよ」と雪菜。
 葵が割って入る。
 哲学の話になってがぜんやる気になっていた。
「孤独な時間に神様にお祈りする人もいる。メール百通送る人もいる。哲学で考える人もいる。本やメディアを見る人もいる。散歩する人もいる。酒を飲む人もいる。煙草を吸う人もいる。お茶を飲む人もいる。食事する人もいる。人と話しをする人もいる。幸福で孤独とどう向き合うかは大きなウェイトを占めているわね。子供の時は友達と遊んで夜は家族がいるけれども大人になると孤独が深くなる場合もあるから注意しないとね。逆にいい家庭を築いて孤独を感じたことがないという人もいるから驚きね。不幸に支配される人は孤独に支配されてるのよ。孤独とうまくつきあえる人が幸福になるのよ。孤独感と幸福感は表裏一体同じものよ。逆にいえば孤独とうまくつきあえない人は不幸になるわね。孤独をしのぐ試行錯誤が必要なのよ」
「孤独とか自分なんかに負けるか」
 かおりはいきおいだけはある。
 だがそれを支えるなにかを持っていない。
 若さだけである。
「もう一人の自分と仲良く出来るかどうかよ」
 葵がそう指摘する。
「雪菜ね、もう一人の自分と会話するの。とてもいい子だよ」
「そんなの雪菜だけだって」
 かおりはそういう。
 葵は興味深いと思った。
「好きなことに集中してると幸福よ」と葵がいう。
「じゃあずっと集中してればいいんじゃん」
 かおりはなんとはなしにそういう。
「でも人間の集中力はそんなにもたないのよ」
 葵が補足する。
「うまくいかないもんだなあ」
 かおりは舌うちする。
「自分がいわれて嬉しくなる言葉を見つけて自分にいってあげるとか」
 雪菜がそういう。
 それを受けてかおりがいう。
「自分がいわれて幸福になる言葉か。ありのままの自分でいいのよとか。なんとかなるさ。いつも頑張ってくれてありがとう。そのうちいいことあるわよ。やってやれないことはないよ。よくやったよ。ありがとう。頑張って。大好きだよ。だめなとこを変えなくちゃ。やってられない時もある。自分は世界にひとつとかかな」
 葵がうなずく。
 葵もかおりの鼻のきくとこは評価していた。
「自分へいってもいいわね。自分を愛することは幸福よ。自分を憎んでいたりだめだとずっと責めていたら不幸よ。自分をいたわることが出来て、初めて人は幸福となるのよ。自分の心が自分の愛情で満たされていれば幸福よ」
 葵が熱弁をふるう。
 かおりや雪菜も葵の指摘のうまさは評価していた。
 葵は続ける。そう。理論をいわせれば葵の右に出る者はここにはいなかった。
「哲学的にいえば、幸福とは心の運動。無意識の感情が動いた時に人は幸福となるのよ。逆に心が固まってくると、自殺したくなってくるわね」
 葵はそう指摘する。
「幸福も不幸も気持ちひとつとはいえ、家族や友人が死んだら無条件に不幸よねえ」
 かおりは不幸について述べる。
「生活も成立してないと不幸なもんよ」と葵。
「話を聞いてもらえることは幸福なことだよ」と雪菜。
「ひるがえっていうと、人の話を聞いてあげることは幸福なことね」
 かおりがそう話す。
「自分はやさしいと口先でいうのは簡単よ。けれども態度でやさしさを示すのは難しい」
 葵はそう指摘する。
「やさしい人は重宝されるよ。それは幸福なことだよ」
 雪菜がそう続ける。
「お茶にしましょう」
 葵がそう提案する。
 三人は一息いれる。
 かおりがポッドでお湯を入れる。
「あちちちちちっっ」
 お湯がはねる。
「大丈夫かおりちゃん。雪菜心配だよ」
「気をつけてよかおり。でもまあ苦しみに耐えるのも幸福かなあ。人それを根性という」
 お茶を飲む三人。
 ゆったりと時間を楽しむ。
「幸福にはなるな」とかおり。
「ティータイムってゆったりと時間を過ごす時間だからね。幸福だと思って飲むとさらにいいわ」
 葵はそういってお茶を飲む。
「幸福な時間ってあたりまえに過ぎてしまうから、実感することが大事よね」
 三十分はくつろいだ。
 かおりはティータイムを終えて、話に戻る。
 葵が話しだす。
「人の話を聞くと重宝されるから幸福よ。それにモテるから。人の話を聞いて自分を変える柔軟さを持っていると友達も多くて仕事でも力を発揮出来るわ」
 うなずくかおり。
「私もよくあおいの話を聞いてるよな」
「逆でしょう。まあデザートも幸福よねえ。果物なんかもいいわね」と葵。
「りんご一日一個食べる時が幸福かなあ」とかおり。
「私はバナナ一本食べる時が幸福だよ」と雪菜。
「私はメロン一切れ食べてる時が幸福ね」と葵。
「以外とリッチだなあ」
 かおりがはやしたてる。
 ちょっと羨(うらや)ましくてからかってみたかったのだ。
「一切れだってば。一個を何日もかけて食べるのよ」
 葵は弁明に似た発言をする。
 葵は話を変える。
「大事なことは幸福な時間をあたりまえだと思わずに味わうことね。楽しみにしてる時間をただ過ごすのではなく味わう手間をかけること。歌を聞き流すのではなく歌詞を聴く。果物をかみしめて食べる。お茶を味わって飲む。それだけで幸福が何倍にもなるから。それと、ひまな時に幸福と思うと幸福を実感するわ」
 なるほどとかおりがうなずく。
「いいメロディだと思って歌詞を聴くといい歌であることが多いからな」
 かおりの指摘に今度は葵がうなずいた。
 葵は話す。
「シャワー浴びてさっぱりして幸福。トイレすましてスカッとして幸福。食事を味わって幸福。あたりまえのことなんてない。幸福な時間も余韻を楽しめば何倍にでもなるわ」
「皿洗いも洗濯も掃除も手洗いも幸福だと思ってするといい感じに気持ちが幸福になってくるよ」と雪菜。
「いい歌もいいドラマも幸福だと思うとさらに効果あるわ。料理や飲み物をまずは一回舌でころがすといいわ。まあ幸福か不幸か決めているのは気持ちだからねえ。健全なもののほうが幸福もいいけどね」と葵。
「さて、幸福の試行錯誤はいい感じね。幸福を地道に積み重ねて、いまどれくらい自分を幸福にしてる」
 かおりがみんなに聞いた。
「一日三十分くらいかな。幸福の余韻を味わうのを含めると一時間かな」と葵。
 みんな一時間程度である。
「五十年後には一日四時間くらい幸福になれるのが目標よ。それじゃしめの一言いこうか」とかおり。
「幸福探しをすることが幸福よ」
 三人の声が部室に響いた。
 三人はそして笑った。
 それは三人にとって変わらない日常であった。
 夕日が三人を染める。
 三人はなんとはなしにだべっていた。
 そして夕日が輝いている。
 そして幸福になればいい。
              続く。




第二話。ふたつめの幸福、それは風のごとし。


 放課後。
 部室にはコーフクブの面々、かおりと葵と雪菜が揃(そろ)う。
 かおりは足をぶらぶらさせてきょろきょろしてる。
 葵は本を読んでいる。
 雪菜は窓からの風を感じて楽しんでいた。
「それじゃ始めるか」
 かおりが提案する。
 同意する二人。
 葵がまずは口火をきる。
「生活するには手間がかかるわ。生きるって面倒なこともたくさんあるわ。その手間を楽しむことが出来る人は幸福になるわね。かおりは出来るっていってたわね」
「うちの父にそんな話をしたら精神論だろっていうんだ」
 かおりが怒ったようにいう。
 葵がうなずく。
「目に見えないものは信じない人がいるのよ。人は理屈ではなくて気持ちで動いている。その気持ちが一番大事なんだけどもね」
「雪菜ね、多種多様な幸福があると思うの。そういう人にはなにか目に見えるものを教えてあげると喜ばれるよ。物とか番組とかね」
 葵は雪菜の話を受けて話す。
「柔軟な心があるといいわね。柔軟な心は幸福よ。そういう人は人から重宝されるからね。たとえば馬鹿にするのは簡単だけれども、興味深く理解を深めること。それを分析というわ。それが出来ると物事をよりよく見る目がやしなえるわ。雪菜もいい目を持ってるわね」
「ありがとうあおいちゃん」
 かおりが口をだす。
「いいものは試せる範囲で試すといいものか判別出来るよ」
「そうだね」と雪菜。
「生き甲斐もあると幸福だね」とかおり。
 葵が話す。
「目標とかいいわね。自分と約束するのよ。希望を持って生きるでもいい、いいものを探すでもいい。約束は書いておくとなおいいわ」
 雪菜がうなずいて話す。
「希望は大事ね。いまよりも状況が良くなると思うと幸福だよ」
 かおりが提案する。
「資本主義は幸福なのか」
 葵が答えた。
「資本主義は苛烈な競争を土台としてるわ。自分が勝つ時の醍醐味は幸福なものよ。自分の腕前を試したい人にはいいわね。ハングリー精神のやる気といったらすごいものがあるわ。けれども負ければ死ぬ可能性もあるから、それは不幸ね」
「社会主義はどうかな」と雪菜。
「負けた人を救う発想が社会主義の原点ね。クビになった人の生活を保障したり、皆保険で医療が無料だったり。みんな平等で生活の安心があるのは幸福なことよ。けれどもそれだとやる気が出ない人もいるからそこは不幸かな」
「なにもかも上手くいくといいのにな」とかおり。
 葵は続けていう。
「社会主義と資本主義の対立は何度も戦争になり、核戦争で世界が滅ぶ危機までいったわ。それは不幸なことね。主義は人を幸福にする考え方のことよ。社会主義でも資本主義でもみんなが幸福ならそれでいいんだけどね。信号機も洗濯機も誰も差別しないけれども誰もが使う。資本主義も社会主義もそうなってやさしくなっていくといいわね」
 かおりが話しを変える。
「希望があると幸福だよ」
「そうだね」と雪菜。
「明日はいまより良くなると思うと幸福よ。それは大事なことかなあ」
 かおりはのびをする。
「休憩にするか」
「ティータイムにはまだはやいよ」と雪菜。
 かおりはうなずく。
 葵はお茶を飲んでから話を続ける。
「幸福になるには努力が必要よ。好きになる努力。テレビドラマ、映画、アニメ、漫画、ゲームそういうものには人の持つクセがある。そのクセを楽しむとクセになって楽しく時間が過ぎていくのよ。いいものはたくさんあるわ。自分が食わず嫌いなだけなのよ。頭ごなしにつまらないと固定観念で決め付けている自分を変えていかなくちゃ」
 かおりがその話を引き継ぐ。
「人を自分を趣味をいろんなものを好きになる力があると幸福になるものだよな」
 葵がさらに話を受け継ぐ。
「人や物や趣味を好きになることの繰り返しが幸福な人生だからね。好きになる力って大きいわよ。好きなものが多いほど幸福になれるわ。自分を好きになることは大事なことね」
 かおりが話す。
「自分がつまらない奴だと思ってるとなにをしてもつまらないからね」  雪菜はうなずいている。
 葵が話す。
「そうすると苦しくなってくる。自分を好きで自分が世界の多様性のひとつだと信じてる人はなにをしても楽しい。お茶を飲むだけで楽しいのよ。人や物や趣味を好きになる力が幸福になる力よ」
 かおりはため息まじりに話す。
「自分を好きになるなんて学校や親は教えてくれないからねえ。自分で獲得するものって以外とあるわよ。人や自分や物や趣味のいいとこ探しをしましょうよ。それが好きになることよ」
 雪菜がかおりの話を引き継ぐ。
「人に認められることも大切だけど、自分を認めるということが必要なんだよ」
 葵が話しを変える。
「夢を見ることは幸福よ。たまに夢の話をすると幸福よ」
「じゃあしてみるか。私は給料のいい仕事につきたいなあ」
「雪菜ね、巨大ロボットに乗りたい」
「そんなのむりむり」
 かおりは断言する。
 葵は首をふる。
「かおりはそう断言するけど、中世や江戸時代に週休二日とか空が飛べるとかいったら馬鹿にされたものよ。夢見るとは一度気持ちを常識の外に置くと気持ちが幸福になることなのよ」
 かおりが話す。
「常識の外に意識がいくと心の運動になって幸福になるな」
 葵がうなずいて話す。
「柔軟な心や豊かな心のある心がいい心よ。そうすると自然と幸福になれるわ」
「心を豊かにするってどうするんだよ」かおりは悪態をつくようにいう。
 葵が答えた。
「簡単なことよ。多種多様な意見を聞いて見聞を広めて、人を理解して、自分を理解すること。人を嫌うのではなく、人を好きになること。人を愛することが出来ること。自分を愛することが出来ること。楽しく時間が過ぎていくのは幸福なことよ」
「雪菜ね、ティータイムでゆったり過ごすのが好きなの」
「しかしこれだけ酒やお茶やコーヒーにマイヒットが多いのはどうしてだ」
 かおりは不思議そうに聞く。
 葵がそれに答えた。
「酒はトイレにいくのが多くて水分補給にはならないけどね。水は体の構成要素よ。人はその構成要素を楽しむのではなくて。精神の構成要素を人は楽しく感じるのではないかしら。ドラマや歌で精神を構成する夢や友情や愛情などが楽しく時間を過ごすのよ」
「単純作業が楽しい時もあるけどな。ハズルゲームなんかそうだろ」かおりは舌打ちしながらそういう。
「そういう時もあるわね」と葵。
「それじゃあ楽しいことを書き出してみようよ」とかおり。
 みんなそれぞれ楽しいことを書き出してみる。
「雪菜は話すのがないぞ」かおりの指摘。
「雪菜ね、話すの苦手なほう」
「それじゃあ人生楽しくないよ」かおりはそういって笑う。
 葵がフォローする。
「人には個性があるからしょうがないわよ。でもかおりの意見にも一理あるわ。人と接することなくして生きていけないからね。でもまあ、相手の話を聞くだけでも重宝されるから」
「雪菜ね、それくらいなら出来るかな」
 かおりが口を出す。
「人を愛すこと、自分を愛すことも楽しいことだよ」
「ティータイムにしましょう」と葵。
「人生は楽しいことを探す旅なんだ。そのためにはどんな困難にだって勝ってやろう」とかおりが話しを続ける。
 まだ気持ちがおさまらなくなっていた。
「これだけクセの強い頑固でわがままな人たちが一緒に生活出来るのは楽しいことを探す仲間だからなのよ」と葵。
「楽しいことを探すことが楽しいよね。そういう人生が素晴らしく幸福な人生なんじゃないかな」
 かおりはそういってティータイムに同意する。
 お茶を飲みながらゆったりと時間を楽しむ三人。
 ひと時の休息。
 それを三人は存分に楽しむ。
「今日は遅くなったからこのまま部活は終わりましょう」と葵がいう。
 三人はそれぞれを見る。
「幸福探しをすることが幸福よ」
 三人の声が部室に響いた。
 三人はそして笑った。
 それは三人にとって変わらない日常であった。
 夕日が三人を染める。
 三人はなんとはなしにだべっていた。
 そして夕日が輝いている。
 風が三人を彩った。
 そんな日。そんな時。
 そして幸福になればいい。
              続く。




第三話。みっめの幸福、それは夢のごとし。


「それじゃ始めるか」
 かおりがそういう。
 一同が一同を見る。
「楽しいこと探すことが楽しいこと」
 三人一緒にそういった。
 それから話が始まった。
「人にアドバイスをもらうことは幸福よ」と葵。
「幸福な人はハマれるものを必ず持ってる。見つかるまで探すしかないよな」とかおり。
「不思議を探そう」と雪菜。
「豊かな心は知るを楽しむことかな」と葵。
「世の中をつまんないと思ってるとなにも得るものがない。世の中を興味深いと見てればいろいろ得るものがあるな」
 かおりそういってお茶を飲む。
「感性が鈍くなってくると感動しなくなっていってどんな趣味も楽しめなくなっていって不幸になるわね」
 葵はそう指摘すると雪菜を見る。
「感謝の気持ちを持つことは幸福よ」
 雪菜はそういって笑う。
「父にこの前の話をしたら話だけは上手いなっていわれた」
 かおりは不満そうにそういう。
「うーん。微妙に評価が上がったわねえ。星の王子様や絵本の良さが分かる人ばかりでもないからねえ。子供の時に情操教育で絵本読んで もらえなければ、自分でバーバパパとか11匹のねことか読まないとだめだからねえ。好き嫌いのはっきりする前にするといいんだけどねえ。大人になってくると好き嫌いが激しくなるからねえ」
 葵はしみじみとそういう。
「心の豊かさがにじみでてくる若草物語とか赤毛のアンとかトム・ソーヤの冒険とかジブリアニメが楽しめるといいんだけどね」
 そういうかおりは大のジブリファンだ。
「いい作品は心を豊かにしてくれるから見た後に気持ちが広がったような気持ちになるんのよ。心を豊かにしてくれる番組や本やブログを楽しめると幸福よ」
 葵はそういって話をつぐ。
「いい作品は感性が磨かれるわ」と雪菜。
「感性が磨かれているとなんでも楽しめるな」
 かおりはそういって笑う。
「感性が鈍って感動とかしなくなってきて、なにもかもつまらなく見える時は子供向けの番組とか本を読むといいわ。子供向けのものは感性を磨くために作られてるからね。私もつまらない時に見たりするわ。アドバイスもらえることは幸福なことよ。恥もプライドも捨てて本音で自分のだめなとこを言って助けてもらうと幸福になれるわ。馬鹿にされることもあるけれども、そこは助けてもらわないと幸福になれないからね」
 葵はそういってお茶を飲む。
「そう出来ない人は不幸に人生を送ることになるな」とかおり。
「雪菜ね思うの。人生って助けてもらうことの連続だと思うの」
「悩みを相談して、聞いてもらうだけでも気持ちが楽になるわ。それでアドバイスがきけばなおいいわ。そういうことが出来ない人は悩みが増え続けて死にたくなってきて自殺したりするわね」
 葵は静かにそういう。
「雪菜ね思うの。自分一人の力なんて小さなものだからね」
「人と話すと心の豊かさを分けてもらえることもあるな。友達に助けてもらうことって大事だよな。生活の知恵とか幸福のコツとか楽しいことの情報交換があらるからな。みんなが先生。悪いことさえ反面教師さ」とかおり。
「生きるって辛い側面もあるから、自分に楽しさを楽しませていかないといけないのよね」と葵。
「それで人と喜びを分かちあったりするとさらに幸福だな」
 かおりはそういって自分で納得する。
「高橋の奴が人の友達の悪口ばかりいうんだよなあ」
 かおりが愚痴るようにいう。
「それは注意よ。若い時は刺激がほしくてそれがある程度許されるけれども、年を取ったら相手にされなくなっていくわ」と葵。
「刺激好きで幸福ならばいいけどな。万が一友達が減ってしまうのは不幸だな」
 かおりは慎重にそういう。
「雪菜ね思うの。貧乏は仕方ないかも知れないけれども、心が貧しいのは致命的だと思うの」
「友達に助けてもらうのは幸福だからねえ。人生で人に助けてもらうってかなり幸福なことよ。心が豊かな人は心の豊かな人を見つけるのが上手い。さらに心豊かに喜びを分かちあって過ごすことが多い。だから友達も多いし、すぐに結婚する人が多い。自分の高すぎる理想に惑わされることも少なく心の豊かな人と結婚するのよ」と葵。
「それでお互いに心の豊かさを高めあい、喜びを分かちあうんだな」
 かおりは納得したようにそういう。
「そうすると幸福ね。心が豊かだと幸福になるわね」と葵。
「いじめが問題でさ。心が貧しいなあ」かおりがうなる。
「心を豊かにする教育が情操教育とかゆとり教育であるはずなのにね。まだ日本の教育はそうなってないのね。それどころか受験勉強で学生を苦しめている。それは不幸かもね」
 葵は不満そうにそういう。
「受験勉強もいいさ。受験勉強が好きな人は幸福なんだろうけれどもさ」とかおり。
「生涯学習だからねえ。勉強は好きになっていいんだけれどね」
 葵はこぼすようにいう。
「雪菜ね、受験勉強もいいけど、心を豊かにする心の教育が必要なんだと思うの」
「学校ではまだ幸福のなり方を教えてくれないのよね。それが宗教の存在理由のひとつだったはずなんだけれどもね。宗教でも教えないことが多い。そのまま大人になっても不幸にとらわれてしまう人が多いのよね」
 葵は残念がるようにそういう。
「心が豊かだと手に入る幸福も多くなるな」
 かおりが嬉しそうにそういう。
「柔軟で豊かな心はいい心なのよ。そういう人といると居心地がいいわ。話した後に自分がよくなったような気がするのは心の豊かさを分けてもらったからよ」と葵。
「それは作品や番組でもそうだな。いい作品は居心地がいいもんだ」とかおり。
「心が豊かになると小さなことに感動して小さなことに感謝して、小さなことにこだわらなくなるわ」
 いいきった感じの葵だ。
「なんでもすげー楽しいし、友達と面白しろ可笑しく時間が過ぎるし、心が豊かになるだけで日々どんどん幸福になっていくな」
 うなずくかおり。
「心が豊かになると、自分という存在が居心地のいいものになっていくわ。そうするとなにもしなくても幸福になっていくわね。これは相当幸せよ」と葵。
「心を豊かにしていると心がどんどん満たされているんだよな」とかおり。
「でもそれが理解出来る人ばかりでもないから、とりあえずいまは理解出来る人の範囲で幸福になるしかないわね。心の豊かさという定義もまだ概念としては弱いからね。実感しないと幸福ってなにか分からないものだし。いまはまだいろんな手を模索している段階ね。子供の時に無数にある幸福のなり方を学んでこなくてね、負け組がすぐに不幸みたいになってしまってね」
 葵はがっくりしたようにそういう。
「誰もが幸福になるにはまだまだ時間がかかるんだな」とかおり。
「幸福は植物を育てるように地道なものだと思うの」と雪菜。
「幸福の話をしたらそれは面倒だという人がいてさ。それじゃ幸福になれないよ」
 かおりは怒ったようにそういう。
「人には個性があるからね。多種多様な幸福があるから、いろいろ提供していきましょうよ」
 葵はいつも通り前向きだ。
 それからティータイムになる。
 三十分なにもしないでお茶を楽しむ。
「それじゃやりましょうか」と葵。
 三人はそれぞれを見る。
「幸福探しをすることが幸福よ」
 三人の声が部室に響いた。
 三人はそして笑った。
 それは三人にとって変わらない日常であった。
 夕日が三人を染める。
 三人はなんとはなしにだべっていた。
 そして夕日が輝いている。
 風が三人を彩った。
 そんな日。そんな時。
 そして幸福になればいい。
              続く。





なかがき。
コーフクブは幸福や楽しいことを探すことがテーマの作品。
幸福というと私は喜久子おねえちゃんを思い出します。
コーフクブは喜久子おねえちゃんにささげます。
17才教という人の集まるコミュニティーも応援しています。
生活も仕事もそこそこ頑張ってください。
これからも私はたかさきはやとと愉快な仲間たちと人の集まるコミュニティー作りや幸福探し楽しいこと探しをしていきます。
さあ、みなさんも一緒にいきましょう。
これからもよろしくね。
それでは、また。




第四話。よっつめの幸福、それは愛のごとし。


 部室で三人の声が響く。
「楽しいことを探す時間が楽しいこと」
「楽しいことがあるとタフになれるよな」かおりがそう言う。
「幸福の言葉があるといいわね」と葵。
「基本はありがとうとかおつかれさまとかごめんなさいとかおはようとか大丈夫かなとかかな」いろいろと指摘するかおり。
「応用はたくさんあるけどねえ」と雪菜。
「グッナイとか幸福ないい言葉だよね」かおりはなんとはなくはしゃぐ。
「良い夜をというフレーズはいいわね」葵はそう言ってうなずく。
 続けて葵が話す。
「若草物語とかトムソーヤの冒険とか赤毛のアンには幸福の言葉がつまってるわ。だからこんなに読まれているのね」
「また離婚が報道されてるな」とかおり。
「その話きわどいのー」と雪菜があわあわする。
「結婚する時には幸福の言葉を口にするけれども、一緒に生活するとお互いのずれをあわせることが出来なくて、ののしりあうようになって離婚する」と葵が指摘する。
「苦しい時ほど相手をいたわる言葉がほしいのにね」と雪菜。
「結婚生活のずれのあわせかたなんてどこでも教えてくれないもんな」とかおりはしたり顔だ。まだ結婚する年でもないので余裕である。
「そこで友達や仲間の生活の知恵や幸福のコツや楽しいことやアドバイスの情報交換が生きてくるといいんだけれどもね」と雪菜。
「結婚すればお互いの意識のずれや小さな対立が見えてくる。その時にそれをうめていく作業がある。それがうまくいくと幸福になれるけれども出来ないと離婚ということにもなるわ」と葵がしみじみと言う。
「幸福の言葉を日常で会話していればいいのに」とかおり。
「幸福の言葉を聴くことは情操教育にもいいわね。幸福の言葉で育つと幸福になりやすいわ。絵本や子供向けやファミリーものには幸福の言葉が多いわね」と葵が指摘する。
「落ち込んだ時に幸福の言葉を聴くと元気になるよな」とかおり。
「雪菜ね思うの。幸福感を感じる言葉をいつも念頭において話すと幸福だよ」
 ここで葵が話しを変える。
「いいものはいい。福祉はいいねえ。福祉は政治の幸福ねえ。福祉を発明した人はノーベル賞ものよ」
「名前も知らない人ありがとう」とかおりがおじぎする。
「ヨーロッパでは役所が趣味のサークルや福祉のコミュニティーを整備してくれる。幸福な人が多いのもうなずけるわね」と葵。
「アメリカじゃ福祉の皆保険導入だけで猛烈に言われて国民の半分に反対されるわね。ヨーロッパや日本ではどんな党でも皆保険くらい実施してくれるけどもね」と葵。
「アメリカ人は厳しいんだよ。自己責任の国なんだよ」とかおりがぶっちゃける。
「そう言ってほうっておいてはだめよ助けていかなくちゃ。アメリカはボランティアとか市民運動の本場だからなんとかなるわよ」と葵はフォローする。
「アメリカとか日本ではまだまだホームレスとかいるけれどもヨーロッパではすぐに福祉で生活保護を実施してくれる。幸福の追求ではトップクラスね」と雪菜。
「人を助ける福祉は感謝される一言が感動してえもいわれぬ幸福感よ」と葵も納得である。
 ここでかおりが話しを変える。
「お金は幸福なのか」
「人を幸福にするための道具ね」と葵。
「ならばもっと作ればいいんじゃないかな」と雪菜。
「インフレ懸念ですれないのよ。絶対量は決まってしまっているわ」と葵が指摘する。
「お金に関係なく人が助け合う社会ならば問題ないだろう」とかおり。
「そこまで高度な幸福な社会まではまだ遠いわね」と葵。
 またも葵が話しを変える。
「健康にいいものも気持ちが幸福になるわね」
「野菜ジュースは健康にいいよ」と雪菜。
「ヨーグルトは善玉菌を増やしてくれる。体の免疫力も上げてくれて病気にいいわね。ガンにも効果があるそうよ。ガンは体のさびで誰でも多少はあるそうだからねえ。ヨーグルトが予防に効くわ。私は毎日食べてるわ」と葵の説明。
「気分転換出来ることをいくつも用意しておいてそれをたまにすると幸福になれると思うな」とかおり。
「幸福のコツっわけね」と葵も納得である。
 葵が話す。
「睡眠だけが疲労を取るそうよ」
「起きた時に疲労感でいっぱいの時があるぞ」とかおりは不満顔だ。
「それは疲労感を感じられる余裕が出来たってことなのよ」と葵の補足。
「自分の人生に満足することは幸福だよ。地味に小さな満足でいいんだよ」と雪菜。
「そうね」と葵。
「この世の中は生きるには厳しすぎる。この世の中は生かさず殺さずの社会なんだよ」とかおりがいきりたつ。
「そうではないわ。助け合いの社会よ。助け合いの中で救われる人生もたくさんあるわ。ここもそのひとつよ」と葵。それには納得のかおりではある。
「前向きになって」と雪菜。
「励まされるのは幸福だな。ちょっと励ましてみてよ」とかおり。
「頑張ってくれてありがとう。負けないでかおり」
「いいね」
「歌やドラマに感情移入すると幸福だよ」と雪菜。
「気づかいに気づくのは幸福よ」と葵。
 さらに葵が言う。
「家族とか友達とか恋人というのは幸福感の交換が出来ると楽しいわね」
「あおいと雪菜と一緒にいれて幸福だよ」それは二人も同じだ。 「生活の知恵や幸福のコツや楽しいことを友達と交換出来て面白可笑しく暮して死んだら友達に悔やまれること。幸福な人生てそんなものじゃないかしら」と葵がしみじみと言う。
 葵がさらに続けて言う。
「幸福の探求が人生の一面としてあるわ。神様への祈りも毎日するわけだし、幸福の探求も毎日のことなのよ」
「幸福の探求もいいけどさ。この人生にそれほど報われずにいく人たちもいる。そんな不幸な人たちの上にある幸福なんて意味があるのかな」とかおりが水をさす。
「どういう人生かは確かに選べない部分があるわ。そんな中で幸福になること。その小さき幸運を楽しむこと。それくらいいいと思うのよ。人は幸福になるべきなのよ」と葵が熱弁する。
「心の痛みってあるよな」とかおり。
「どうすればいいんだろう」と雪菜。
「助け合いの輪に入れれば幸福になれるわ。助け合いの輪を地道に続けていくこと。それが幸福への道よ」と葵。
 続けて葵が言う。
「人間に生まれてきたこと。人間であることを楽しむことが幸福よ」  それからティータイムになる。
 三十分なにもしないでお茶を楽しむ。
「それじゃやりましょうか」と葵。
 三人はそれぞれを見る。
「幸福探しをすることが幸福よ」
 三人の声が部室に響いた。
 三人はそして笑った。
 それは三人にとって変わらない日常であった。
 夕日が三人を染める。
 三人はなんとはなしにだべっていた。
 そして夕日が輝いている。
 風が三人を彩った。
 そんな日。そんな時。
 そして幸福になればいい。
              続く。




第五話。いつつめの幸福、文化的幸福そして。


 いつもの部室にいつもの三人。
「雪菜ね文化的幸福で人は幸福になれると思うの」と雪菜。
「やっぱり幸せは食文化だよなあ」とかおり。
「花よりだんごねえ」と葵がため息つく。
「スポーツも文化だよね」と雪菜。
「汗と血の結晶が幸せなのさ」とかおり。
「それ違うから」と葵。
「物語は文化の極みだと思うな」と雪菜。
「言葉こそ文化の極みじゃない。愛と平和も言葉よ」と葵。
「やっぱり麺類が文化の極みじゃないか」とかおり。
「やっぱり花よりだんごね」と葵がため息つく。
「健康に気をつかうのも文化じゃないかな」と雪菜。
「そうね。医療も文化ね」と葵。
「文化は幸せだねえ」とかおり。
「そうね。文化的幸福は人類の作りだした最高のものかもね」と葵。
「アニメ漫画ゲーム日本の文化もたくさんの人に愛されてるよ」とかおり。
「アニメ好き」と雪菜。
「日本の文化もいいわね」と葵。
「文化は人を幸せにするものなんだよ」とかおり。
「じゃあ家族も文化なのかな」と雪菜。
「家族ね。確かに文化かもね」と葵。
「お母さんもお父さんも大好き」と雪菜。
「私も好きだ」と葵。
「私たちは家族だな」とかおり。
「そうね」と葵。
「雪菜ね。みんなと出会えて幸せだよ」と雪菜。
「私もみんなと出会えて幸せよ」と葵。
「私もみんなと出会えて幸せだよ」とかおり。
 それからティータイムになる。
 三十分なにもしないでお茶を楽しむ。
「それじゃやりましょうか」と葵。
 三人はそれぞれを見る。
「幸福探しをすることが幸福よ」
 三人の声が部室に響いた。
 三人はそして笑った。
 それは三人にとって変わらない日常であった。
 夕日が三人を染める。
 三人はなんとはなしにだべっていた。
 そして夕日が輝いている。
 風が三人を彩った。
 そんな日。そんな時。
 そして幸福になればいい。
              続く。







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