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『神楽舞う空の彼方で』
思い出に時めぐらそう。
世界が空に帰る時まで、空はふわっと踊っていたから。
思い出は夢の中。
昨日の夢の中。
明日の夢の中。
いつかの夢の中。
世界は夢にどきどきと明滅している。
それは朝が昼になり、夜になるよに。
ゆっくりと明暗をくりかえす。
なにもない日は雲が飛んでいる。
なにかあった日はきっと鳥が飛んでいる。
人生は出会いと別れのくりかえし。
それでも地球は回転するよ、そのくりかえしだよ。
「あたしは出会うものすべてに感謝を込めて。寝静まった夜にも空はいつも満天の星。それはいつか夢の時。それはいつか忘れかけていた時の砂の砂塵(さじん)。思い出はいつも心の中にあるものだから」
少女は笑う夢の中で。
「ぼくは思う。自然の中にいられたら、人はどんなに楽しいことだろう。だって鳥を見れば鳥に、木々になればその感覚さえ、心の空間に波紋するというのに。それだけの時間があればいつだって楽しいに違いないから」
少年は笑ううたかたの夜に。
いつか出会いは別れを忘れ、思い出はその中で世界になる。
けれど、忘れられた人の影には、思い出の雨に悲しみ暮れる。
いつか星のまたたきよ。
いつか群青の空を心に蘇らせた日のこと。
心に彩られた時の源。
夢は際限なく広がり続けていたから。
忘れられた時よ、その影よ、すべてを夢から覚ましておくれ。
もう二度とない時をその一瞬を星の光として空へ放つとも。
時間は無限にあって、この思いの中で時は有限の世界を描く。
「時間は心の中に」
少女が思う青い鳥は心の中に。
「時間は明日から旅をしてくるから」
少年は夕暮れ時の色に照らされた、ボタンをボッケに入れてみる。
世界はたったひとつの思い出。
夢は昨日の忘れ物。
時間はいつか一人で過ぎ去り、誰も忘れたことを気づいてはいないから。
「時間はすでに先にいるよ」
少年は駆け出す。
少女はゆっくりと歩いていたから。
「そんなことは知っているもの」
世界は螺旋模様。
時間をゆっくりと宇宙の闇のカーテンにカバーしている。
世界はそれでもゆっくりとゆっくりと一日かけてあくびをしていたからさ。
顧(こ)。
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