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『星の光り』
たかさきはやと
第一話 星の風。
男の学生服が風を生み出す。
やさしさは誰もが奏でるメロディ。
きっと誰もが毎日心に響かせているんだ。
心の速度は星の光り。
流星のように心は飛んでいる。
高架線が雷音(らいおん)を響かせる。
小鳥が負けじと朝日を歌い、それは音楽となって合唱となって街を彩る。
朝の光りに照らされた女性が一人いる。
「ゆう、おはよう。学生服よれよれじゃないの」
「なあ、かなた。おれたちはどこまでいけるんだろう。どこへいくんだろう」
「ゆうが願えば、この星が歌う彼方までいける」
「かなたは詩人だなあ」
気持ちのギアが夢へとチェンジしていく。
地球の咆哮が青となって空を染める。
気持ちが星へと光りとなって旅立つ。
桜の花びらが舞う、心では雪が積もっている雪道を踏みしめる。
空の青さが群青という。
歩幅が流れいく時の速さとなっていく。
「かなたはどこからきてどこへいこうとしてるんだ」
「そうねえ、人が知らない街から来て、私しか知らない街へいくわ」
「そうか。おれには無理だな」
「そうね」
ガラスの欠片のような言葉が空気を切る。
砕けた心の欠片が風へと変わる。
海の青さが空へととけていく。
風は青さとなって駆けていく。
風は音速を越えて雷鳴となって心へと響いていく。
心の速度が光へと近くなっていく。
星まで届く速さへと変わっていく。
そして、星の光りとなる。
第二話 星の思い。
木漏れ日が風とたわむれる。
意識が風となる。
過ぎ去った幾千日が風とたわむれている。
疾風迅雷。
風は心の一部。
今日も世界を駆け巡る。
星の光りが雷鳴となって心に響く。
幾多の時代でも叶わない夢。
人は歩く旅人。
風は心の速度。
今日は無風で無心。
夕日のグラウンドに二人。
「ゆうは放課後になにをするの」
「幸福を探している。かなたはどうするのさ」
「夕日を着ている」
「それはいいな」
夕日が二人を彩る。
風以外にさえぎるものはない。
やさしさの疾風が悲しみを越えていく。
忘れていた時代が二人の夢に追いついていく。
この気持ちは疾風以外にない。
この夢は疾風以外にない。
雷鳴が苦しみの疾風を越えていく。
崩壊していく青さが夕日に消えていく。
「こんな一日が好きだな」
「かなたはどんな一日だった」
「いたわりに追い抜かれた一日だったわ」
「それは良かったな」
希望という雷鳴に打たれる絶望。
ひとつひとつが縁でつながっていく。
出会いと別れを繰り返す時代。
闇が歌う夜と成す。
滅びの闇が夜と成す。
すべては眠れ夜の内に。
朝日が雷光(らいこう)が空を駆ける。
光りはなにものよりも速い。
人の心は滅びて光りとなる。
光速となる心。
すべては光りとなって宇宙を駆け巡る。
そして、星の光りとなる。
第三話 星の雷鳴。
朝日が照りつける。
朝日が放射線というやさしさが心をつらぬいていく。
雲と雲が踊る。
雷鳴のワルツが走り舞う。
雷鳴が心をふるわす。
雨、心が泣いたように。
みんなの悲しみが雨となる。
雨がすべての苦しみを水に流してくれる。
雷鳴がすべての痛みを癒す。
この痛みを癒す轟音が鳴り響く。
痛みはやさしさにとける。
希望に癒される時間。
それは幸福なのかも知れない。
煙草の煙りがさびしさを歌う。
痛みだけが雷鳴となって心を駆け巡る。
叶わない夢を歌う。
叶わない恋を歌う。
叶わない慈(いつく)しみを歌う。
人が人であるために、自分が自分であるために、なにが必要なんだろう。
雨だけが答えとなって降り注ぐ。
傘もなく走る二人。
「カサくらい持ってないのゆう」
「文句は天気予報にいってくれよかなた」
「文句を聞いてくれてありがとう」
「おう、任せておけ」
心にありがとうの一滴の波紋。
それは幸福感。
やまない天気雨がざあざあとふっている。
心は水分で出来ている。
変幻自在でつかみどころがないんだ。
心は雨となって海まで辿り着く。
ああ、海に帰りたい。
心だけが海で泳いでいる。
気持ちが海の青になる。
心が青くなっていく。
探していた気持ちに出会えたよ。
「タオルあるわよゆう」
「サンキューかなた」
「いつまで降るんだろう」
「明日までかな」
「いま世界が終わっても、いい人生だったかな」
「きっとそうさ」
「ありがとうゆう」
「どういたしまして」
ありがとうをポケットに入れて歩きだす。
ありがとうが幸せの雷鳴となって心を駆け巡る。
心の速度が上がっていく。
悩みが音速を越えていく。
その雷撃が心を打ち抜いていく。
希望が地平線を越えていく。
いつか見た景色が広がる。
願いごとひとつ。
明日幸せでありますように。
今日はきっと幸福だったと自分にいう。
幸福の雷鳴が心に鳴り響く。
幸せのサウンドが心踊る。
いまから始まる躍動感。
それに身を任す。
砕けた心が風に癒されている。
砕けた心を癒しながらまた歩いていく。
幸せを探している。
たくさん幸せがあればいいのに。
願いは光りとなって世界を駆け巡る。
それは星へと広がる。
光りが星へと届く。
稲光(いなびかり)。
すべての思いが雷鳴となる。
そして星の光りとなる。
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