erem34
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神々の剣
グラウディアソード
まえがき
タイトルが長いわりに意味がないので、タイトルを変え、リニューアルスタートということにしました。内容も変わるといいな。うんうん。では。
第一話 エルフィール、闇の竜との出会い
道の分かれ道。ダリルが立ち止まる。
「私はここで別れようと思う」
ダリルがそう言う。
「残念です」
エルフィールがそう言う。ダリルがエルフィールに言う。
「出会いがあれば別れもある。それは出会いの鉄則だからな。こればかりはどうしょうもないのだから、な。まあ、笑ってくれよ。また会うこともあるだろうさ」
ダリルの言葉にうなずくエルフィール。
ドクン
エルフィールの体が揺れた。
エルフィールが風船のようにメタモルフォーゼしていく。
エルフィールはみるみるうちに竜に成っていく。
巨大なドラゴンに変身するエルフィール。
二階建てのビルくらいはある。
ひょろっとした顔にでかい太鼓っ腹。小さな手足。指は恐竜のように爪となっている。蝙蝠(こうもり)のような羽が申し訳程度についている。色は深い緑色である。
「コーヒーをどうぞ」
ダミエールがジョルディーに鉄のカップを渡す。
「ありがとう」
ジョルディーは感謝する。
カップを口に当てるジョルディー。
と、カップを草に近づけるジョルディー。
ちょっとコーヒーを垂らす。
草はすぐに枯れた。
「あはははは」
「はははははは」
ジョルディーとダミエールは笑う。
「ジョルディーにダミエール。なにをなごんでるんです。エルフィールがこんな時だというのに」
ハイベルはそう言う。
ダリルがミラルの前に出ると一言うなる。
「ミラル。こんな姿になってまで、私と別れたくなかったのか」
「違いますって」ハイベルは困っている。
ジョルディーとダミエールは一緒にお茶している。
「呑気ねみんな」そう言うミラルは大地に横になっている。
「これは私が大神に聞くしかないのか」ハイベルは悩む。
「ふむふむ」
ミラルが立ち上がるとエルフィールの前に行く。聞いたこともない言葉を竜となったミラルに言う。ドラゴンはうなずくと喉を鳴らして音楽を奏でる。それは人の心に浸透していく。ダミエールの卓越した歌も叶わない素晴らしさであった。
「エルフィールが古代神竜の言葉を話せるとはな」ダリルがそう言う。
ミラルは話し終わる。
「なんだって」ジョルディーが聞く。
「喉がかわいたって」
川を探して歩く一行。
川に着く一行。そこは干上がっていた。
「仕方ない、私が住む国の町がもうすぐある。あそこならば井戸もある」
ダリルの提案に誰もがうなずいた。
道幅はどんどん広くなっていく。
「でもね」
ミラルが話し出す。
「この竜を売ったらすごい金になるわよ。一生遊んでいられるかも知れないくらいよ。想像もつかいなような大金よ」
そう言うミラルの頭をエルフィールドラゴンはでこぴんする。
「あいたー」
まるでハンマーで叩かれたように痛い。
「冗談よ冗談だってば。やあねえ最近の子はジョークも通じないんだから」
町が見えてくる。町は三十くらいの白い石の四角い家が建ち並んでいる。
町人はエルフィールを見るとみんな去って行く。
家の窓は次々と閉められた。
エルフィールドラゴンが立ち止まる。エルフィールが歌う。
「なにか聞こえると言っているわ」
ミラルが通訳する。
「誰かが呼んでいるようだってさ」
老婆が道を歩いてくる。黒茶のフード付きマントをしている。とがった鼻。しわだらけの顔。目は閉じていた。
ミラルたちの前まで来ると立ち止まる。
「私には光も見えなければ歌も聞こえない。だが、あんたがここにいると感じるよ。竜の子どもだね。まだ竜に成り立てだね。声が聞こえるんだね。声の聞こえる方に行ってみなさいな」
エルフィールは歩き出す。どすどす地が響く。その後に仲間も続いた。
平原が続く。そこに岩が折り重なっている。
エルフィールは岩を蹴りどかす。
岩の下には竜の骨があった。ずいぶん小さい。エルフィールは歌う。
「ここから声が聞こえたそうよ」
ミラルが訳す。
ジョルディーがエルフィールドラゴンにさわる。
ダミエールがエルフィールドラゴンに触れる。
光の螺旋が舞った。暗闇に人のエルフィールが一人でいた。
いや、もう一人誰か気配がする。それは小さな竜だった。その子供竜はじっとエルフィールを見てる。
「なにかして欲しいの?」
エルフィールはそう聞く。
ドラゴンは空を眺めている。
「飛びたかったのか。空を」
竜はエルフィールを見る。
エルフィールは竜に近づく。竜を抱きしめるエルフィール。
「どうかしたの?」ミラルが聞く。
そこは元の平原だった。
エルフィールドラゴンは羽ばたく。
気がつくとエルフィールは空を飛んでいた。
雄大な雲を越えてさらに飛んだ。
風は竜の召使い。
神楽舞う空が永遠に広がっている。
風が気持ち良かった。
エルフィールドラゴンは音速を超える。
それでもさらに飛んだ。
心に竜の子供をエルフィールは感じた。
世界を一周した。
エルフィールドラゴンは光に包まれる。人の姿になるエルフィール。光ながら地面にゆっくりと降りていく。
ジョルディーがエルフィールを抱きとめた。
「だいじょうぶか」
ジョルディーの言葉にうなずくエルフィール。
――ありがとう。
エルフィールの心に声が響く。
「どういたしまして」
エルフィールはそう言って空を見た。竜が飛んでいる姿が見える。竜は透き通っていた。竜は飛んで行ってしまう。
「良かったな」
ジョルディーがそう言う。
エルフィールはうなずく。
エルフィールたちはまた歩き出す。
道はまだ続いていた。