「水谷君!」
ピンじろうは戸をたたいた。しかし、辺事はない。まだねているらしい。ピンじろうはもう1度、大声でさけんだ。
「水谷君!」
あまりのピンじろうの大声で、屋根につもっていた雪がドサッとおちてきた。(この表現、決して嫌いじゃないぞ(笑))
ドアを開けて、水谷がでてきた。
「フワー。なんだよ。まだ6時じゃないか」
水谷は大きなあくびをした。
「10本足の怪物が現れたんだよ!」
「ええっ!」
水谷はおどろいた。水谷はピンじろうに聞いた。
「殺人事件か!? それとも、なにか盗まれたのか!?」
「まだ、はっきりわからないんだ。それで、足あとたんちきをかしてほしいんだ」
「いいよ。ちょっとまっていてくれ」
水谷は部屋へもどっていくと、足あとたんちきをもってきた。(おいおい。自宅に置いてあるのか? ひょっとして、刑事は1人1台携帯しているんだろーか)
ピンじろうは水谷にれいをいうと、もときた道をまたかけはじめた。スイッチをいれた足あとたんちきには反応がない。
「おや? 変だな……」
足あとはそこできれたままで、もう10本足の怪物はそこから1歩も前へ進んではいないのだ。
(じゃあ……じゃあ、怪物はなんのために道をうろついたんだ。それに、足あとがここできれたまま、帰り道もついていない。どうやって帰ったんだ!)
ピンじろうの前に現れたなぞ。またひとつ、なぞが増えたのだ。
しかし、これでなぞがひとつとけた。とけたなぞとは、谷山が犯人ではないということだった。
(もし谷山が犯人としたら、しゃくほうされてずぐに10本足の怪物の足あとをつけたりするだろうか……。そんなことをしたら、どんどんうたがわれるはずだ……)(いや、「だから谷山は犯人じゃないのだ」と断言するには、ちょっと無理があるような……)
――女――
ピンじろうには、まだ犯人の見当はまるっきりついていなかった。
字水でもない……谷山でもない……。いったい、だれなのか……。
ピンじろうは歩きながら考えこんでいた。
「ドン!」(喪黒福造ではありません。ぶつかった音です。念のため)
ピンじろうはだれかとぶつかった。
「すいません」
ピンじろうはあわててあやまった。しかし相手の顔を見て、ピンじろうはおどろいた。
とても美人な……きれいな女の人だった。
「こちらこそすいません」
女の人はいった。
女の人は向こうへ歩いていった。ピンじろうはずっとみつめていた。そしてつぶやいた。
「きれいな人だな……」
家に帰ってからもピンじろうは考えていた。しかし、考えていたのは事件のことではなく、あの時の女の人のことだった。(おいおい)
(本当にきれいな人だったな……)
そんなことを考えているうちに、電話がかかってきた。
「ハイ。便ですが……」
「おやっ!? ピンじろうさん。うれしそうですね」
電話の相手は水谷だった。
「いや、実は女のひ……いや、なんでもない」
「実はピンじろうさん。ちょっときてほしいんです」
「よし! わかった」
ピンじろうは電話をきると、水谷の家へむかった。
(いったい、何の用事だろう)
ピンじろうはゆっくり走った。またあの女の人と会うのを願っていた。
(しかし、美人だったなー)
(↑ ……美人? しかも、周りで星が光ってるし)
(次回、謎の女性の正体が判明!)