和田山 観音寺(総社市北溝手543)

本尊 聖観世音菩薩

中興開山 元禄初年典頼法印

信仰の歴史伝える独自の寺院建築

 古墳時代には古代吉備の中心地として栄え、数多くの古墳を残している総社市にその歴史と文化の香りを感じさせる寺院が数多く残されている。のどかに広がる田園風景の中を走るJR吉備線の服部駅の近くにある和田山観音寺もその一つである。
 同寺は山号を和田山と称し、元禄年間(1688〜1704)の初めに典頼法印によって現地に中興され、聖観世音菩薩を本尊とし、弘法大師を宗祖として密教の教義を弘め今日に及んでいる。
 特に注目されるのは、観音寺の本堂である。外見は向拝が付いた普通の寺院建築の形をしている。しかし、内部に入ると、内陣のある部屋は持仏堂の形式になっており、その左右の部屋が控えの間(左の部屋は床書院付き)になっており、二の間と広間になっている。それぞれの部屋の襖を閉めると客殿となる。こうしたことも建立当時檀家の篤い信仰によって支えられた歴史を物語っているように思われる。
 観音寺の歴史が明らかになるのは、真鍋住職の父親である先代の到厳住職になってからである。それまで無住だった同寺に明治三十三年に晋山。約四百坪の境内地の諸堂を整備して旧態に戻し、その後を受け継いだ現在の真鍋住職は大師講などを始め現代に大師信仰を蘇らせている。
 残念なのは、同寺の本堂建立を記念して植えられたという幹の周囲約40.3センチの黒松が、昭和四十九年総社市の重要文化財に指定された後、枯れて伐採されたこと。同寺の歴史を知る唯一の”生き証人”だっただけに、真鍋住職も寂しそうだった。

年中行事

1月 初観音・初大師講 8月 盂蘭盆会
その他3,5,7,9,11の各月に大師講  

『高野山真言宗備中寺院めぐり』より