曹源寺(岡山市円山1069)

 護国山曹源寺、通称”円山大寺”。
 この大寺は、備前藩主池だ綱政が元禄11年(1698)、祖父信輝や父光政の菩堤をとむらい、自らの冥福を祈るため、上阪外記に命じて池田家菩提所として建立した。開山に名僧絶外を迎え、臨済宗妙心寺派の大禅寺として栄えた。江戸時代には、寺領として備前円山村山崎の田畑、山林など260石を与えられ、1万700平方メートルの広い境内には、総門・三門・本堂方丈・庫裡・禅堂・書院・経蔵など20棟に近い建物が、禅林にふさわしく、いかにも荘厳な雰囲気をかもしだしている。

総門 三門 仏殿

 県内最大の規模をもつ本堂は、正面の仏壇に本尊十一面観音(平安中期の作)を中心に、左側に綱政、継政、宗政、右側に治政、斉政、斉敏の等身大の木像が厨子(ズシ)に安置されている。一つだけ横に設けられた厨子には、廃藩後なくなった章政の写真が祭られている。本堂は完成後百年目に焼失し、文政七年(1824)再建された。本堂西隣の経蔵(教本を入れる倉)は、珍しい堂の一つである。
 拝観道を通り、表書院から眺める庭園は、心字池を中心に美しい。池泉回遊式のこの庭は、開山絶外和尚が津田永忠といっしょに築造したもので、庭を抜け裏山への石段を登ると、広大な約9,900平方メートルの池田家墓所に、巨大な墓石が整然と並んで、往時の池田氏の豪勢さを如実に感じさせる。
 その塔頭(たっちゅう)には、もと真言宗光明院、天台宗玉泉院、日蓮宗大光院、浄土宗清光院、臨済宗浄心庵など諸種の宗派をもうらし、一つの奇観であったが、いまは玉泉院、大光院の二寺だけ。大光院には、大覚大僧正の題目石がある。

市川俊介著『岡山の神社仏閣』より

経蔵 多宝塔 鐘楼