天竺山 円明院 興禅寺(久米郡美咲町錦織172)

本尊 聖観世音菩薩

本堂

縁起
 遠い昔、天竺の国の摩詞迦羅神が、しばしこの山に、とどまられた。そこで、この霊場である天竺山一帯を寺域として貞観三年(861)に興禅寺は開山した。本尊は、行基〔(670〜749)奈良薬師寺の僧〕作で、脇士に毘沙門天・不動明王を安置している。
 元暦元年(1184)近江の人で、錦織天丞勝重と名のる武人が、西国における合戦におもむく折、この興禅寺へ詣で堂宇を寄進した。
 天文二年(1533)に、雲州尼子晴久の門属、嵯峨山城主錦織右馬允利政が、篤く三宝に帰依して当山を再興した。
 元亀三年(1572)嵯峨山城の落城のとき兵火により城と共に焼失す。このため、光禅庵跡の現在地に本坊を移した。
 寛文二年(1662)方丈を建立し、堂守の整備をしながら現在に及んでいる。

本堂天井絵

年中行事

1月1日〜3日 修正会 9月中 檀徒の総供養
2月15日 常楽会(お涅槃) 11月10日 日天供(お十夜)
3月21日 正御影供(お大師さま) 12月31日 除夜鐘
4月8日 仏生会(釈迦の誕生日) 毎月21日 お大師様の縁日
6月15日 宗祖降誕会 毎月24日 お地蔵様の縁日
8月13日〜15日 盂蘭盆会 毎月28日 お不動様の縁日
8月16日 百万遍 毎月4日 淡島さま(へちま封じ)の縁日
9月社日 奥の院のお祭り(権現さまのお祭り その他 春・夏 彼岸会

寺宝・文化財
・宝篋印塔
 花崗岩製で、相輪、笠、塔身、基礎、反花座を有する基壇を有し、高さ、上端から相輪の宝珠上端まで、1.27メートル。塔身は、縦横ともに18.0センチメートル。
 基壇反花座の復弁の脹らみの量感や、笠の隅飾り突起が垂直に立っていることなどに、鎌倉時代のおもかげが見られる。(南北朝から室町初期の作と推定される)
・医学古文書(昔、この寺に光後荊叔・箕作阮甫と光後玉江という女医が居られ、江戸末期まで医業を開いていた。)
光後玉江肖像
 
処剤録 18冊
患者届書控 1冊
附属書類 多数

・持佛堂(方丈)
 この方丈の欄間に、輪ちがいのすかし彫りが見られる。この模様は江戸初期にさかんに用いられ、その時の物が今も使用されていると考えられる。
・美作版大般若経発刊の史跡
 岡山県立博物館に、此処興禅寺で出版された、600巻の大般若経が保管されている。
・広瀬台山の画
 文化四年(1807)に書かれたもの。
・延命地蔵尊(石造)

高野山真言宗美作八十八ヶ所霊場会発行『高野山真言宗美作八十八ヶ所霊場』より