遍照院(倉敷市西阿知町464)

本尊 十一面観世音菩薩

縁起

 この遍照院は寛和元年(985)智空上人が創建した備中国第一ということができる古寺である。本尊は十一面観世音菩薩で、現在は年一回しか開帳されない秘仏。開山以来、備中の中心的存在の寺院(中本山)となり、末寺二十四寺を持っていた。いまは末寺を切りはなし、真言宗御室派に属する別格本山となっている。たび重なる大火、水害などで、古文書、宝物などの文献は失われたが、広大な境内、三重塔の配置などに、かつての遍照院の格式高い姿がうかがわれる。


 境内の西側に三重塔と鐘楼がポツンと立っている。三重塔(国指定重文)は永享年間(1429〜40)の建造といわれ、室町初期の代表的な建物である。建物は三間(5.4メートル)四方で、高さは21.5メートル。屋根は本瓦葺、屋根の頂上の相輪は青銅製で、柱は円柱になっている。軒は大きく、壮大な木組みが往時をしのばせる。内には大日如来をまつり、室町時代特有の建築様式である塔の各部比例の見事さ、軒のそりの調子をよく残し、壮重優麗な姿である。

市川俊介著『岡山の神社仏閣』より