徐福の寺　朝原山　安養寺（倉敷市浅原1573）

・安養寺の歴史は古く、寺伝に依れば安養寺が仏教寺院、朝原山寺として開創されるのは、延暦元年（７８２）壬戌九月二十三日、板垣天皇御願、報恩大師（〜７５９）に依ると伝える。

・延暦十七年（７９８）戉寅、弘法大師空海入唐前七ヶ年、密教弘隆の祈願を修法される。
・正暦元年（９９０）己亥、浄土教弘布を祈願され、一条天皇御願、恵心僧都源信（９４２〜１０１７）朝原谷に安養寺を創建。
・応徳三年（１０８６）丙寅二月、朝原山奥の院羅教堂、後の大堂裏山に白河法皇、院政を施行に際し成就を祈願され、三つの経塚を造営供養される。
・保延元年（１１３５）乙卯、堀河法皇、鳥羽法皇と三代を経るを得て、崇徳天皇、院政成満を供養し、大堂下の段に蓮台院が備前守平忠盛に依って建立され、父神毘沙門天王（国重文）、その子善尼師童子を中尊に大堂祭祀の貞観仏四体を加え百体の等身大毘沙門天立像が祀られる。一代三十年、三千年続く家族繁栄の姿を実現される事を祈願される。
・仁平元年（１１５１）壬申、千光大師栄西当安養寺静心を戒師に出家す。
・治承元年（１１７７）丁酉六月、朝原寺に於いて安養寺調御坊（重源）を戒師に大納言藤原成親出家す。
・建仁元年（１２０１）辛酉、栄西の高弟栄朝、退耕勇猛等に依って天台、真言、禅の三教を兼学とし、朝原寺を天台より真言とする。

・弘長二年（１２６１）辛酉、栄西國師五十回忌供養の為、孫弟子京都東山東福寺開山、聖一国師円彌弁圓備中に赴き朝原塔を建立落慶す。
・建武三年（１３３６）丙子、北朝の新田義貞破れ南朝足利尊氏攻め勝つ福山合戦の際、朝原谷安養寺他十数ヶ寺と大堂のみを残し、「朝原千坊」と呼ばれた大伽藍が灰盡に帰す。
・明徳三年（１３９２）壬申、後小松天皇南朝を統合されしより三十三年後、応永三十二年（１４２５）乙巳、後小松上皇新御所に移りし年、吉備津宮遷宮式典に国中有力寺院として安養寺の稚児が舞楽を奉納す。翌応永三十三年（１４２６）丙午九月二十日、郷社二十数社を合祀した総社宮遷式に朝原寺の稚児が舞楽を奉納す。
・延暦元年（７８２）開創の朝原山寺「朝原千坊」の朝原寺の歴史は安養寺に継承される。
・寛文七年（１６６７）丁未五月、池田蕃神道請政策（廃仏棄釈）に依り朝原寺破却さる。享保二年（１７１７）戉酉、羅教堂より大堂、大堂より毘沙門堂へと祭祀された毘沙門天群像承仕の為、朝原谷（浅原911番地）より、浅原藏見谷1573番地現安養寺の地に登る。新田の庄（群馬県尾島町）、世良田郷の長楽寺は栄西の高弟栄朝に依って開かれ、新田本家新田義重の四男義季が、徳川家の祖である事より安養寺が祭祀され現在に至る。　

寺宝
・兜跋毘沙門天立像（国指定重文）平安時代、総高205.4cm　檜材
・吉祥天女立像（国指定重文）平安時代、総高168.9cm　檜材
・安養寺裏山経塚出土品（国指定重文）平安時代
　　土製宝塔一基、塔婆型題箋八本、図像瓦五枚（不動明王像､如意輪観世音像､薬師如来像､阿彌陀如来像､不空成就如来像）、般若心経一巻一枚、法華経八巻204枚　計213枚
・第三経塚出土品　応徳三年春二月（１０８６）の銘より平安時代
・金銅如来立像（旧県指定重文）平安時代、像高92.2cm　銅製
・毘沙門天立像40体　平安時代、等身大　木彫
・誕生佛立像　奈良時代、総高17.4cm　銅製
・阿彌陀堂　元大堂（旧県指定重文）　朝原寺千年の歴史を伝える唯一の建造物
・層塔　跡（市指定重文）　京都東山東福寺開山聖一国師　栄西５０回忌供養の為建立落慶した九重の塔跡

市川俊介著『岡山の神社仏閣』より