篠坂山 大坊泉福密寺 三寶院 (笠岡市篠坂626)

本尊 聖観世音菩薩 愛染明王

八葉蓮台の山間に広がる三宝の整った密教道場

 岡山県側からだと笠岡市から井原市へ抜ける県道を、広島県側からだと国道2号の笠岡市用之江交差点を、共に北へ向かって入り、陶山小学校の後を過ぎると、八葉蓮華を思わせる地形の山間に甍を垂れるのが篠坂山大坊泉福密寺三寶院である。
 同院のある篠坂と押撫の地域一帯にはかって十二坊の寺院があった。同院の寺伝によると、観音院、流誠院、常行院、知道院、妙蓮院、福生院、理教院、正楽院、教蔵院、善徳院、長明院、西妙院が記録として残されている。鎌倉時代文応年間に亡失した寺もある。惜しいことに開基年の記録があるのは三ヵ寺のみであるが十二坊形式は平安朝のものと聞く。当地の+ニヵ寺は平安朝に開基されたものと推定できる。朽ちかけた仁王像があること、元境内に経塚があることからも、当時はこの地域一帯に一大信仰勢力をもっていたことが想像できる。
 現在の三寳院は、教蔵院のあった地であるが、その教蔵院とこの地から南西へ約五○○メートルにあった観音院と西へ約五○○メートルにあった常行院が昭和十四年、先代の俊朝住職の代に合併したものである。
 従って同院には聖観音が二体、愛染明王が一体安置されている。本堂庫裡は昭和四十年に鉄筋コンクリート造りで新築。当時、笠岡では鉄筋コンクリートの寺院建築工事は初めてで話題を呼んだ。寺宝の室町時代の釈迦涅槃像(市指定文化財)が往古を偲ばせてくれる。
 同院とは別に、車で五分程度走ると、三宝院の南に神之峰という山があり、そこに弘法大師、虚空蔵菩薩、観音菩薩の三体が祀られており、毎年八月二十、二十一の両日、教海住職が導師となって法要を厳修している。同住職は「たいへん眺望がよく、将来は信仰の聖地と観光の地にしたい」と話していた。

年中行事

元日 修正会 3月 大師講
4月 水子地蔵法会 5月  旧花まつり
8月 神之峰法要 12月 除夜の鐘

『高野山真言宗備中寺院めぐり』より