萬福寺 (笠岡市神島外浦2661)

本尊 阿弥陀如来

開基 天正年間

日光寺の隠居寺として開創

 第八十七番日光寺の北側の山の中腹にあるのが萬福寺である。この寺は日光寺の隠居寺として天正年間(1573−92)に開創されたとされている。その後の詳しい歴史は不明だが、いずれにせよ、当時、日光寺が笠岡諸島の総菩提寺として発展していた経緯を考えると、同じような歴史と信仰を有していたと考えられる。
 日光寺はこの萬福寺のほかに、法蔵坊というニヵ寺を隠居寺として有していた。法蔵坊は明治十五年に、それまで寺院のなかった北木島へ移転する。現在の福厳寺がそれである。それまでは、日光寺から笠岡諸島へ船で出かけていたようである。
 こうした広範囲にわたって教線を伸ばしていた日光寺だけに当然、それに応じた僧侶が必要となってくる。明護住職が「先代は六、七人の弟子を育てていたようです」と語るように、日光寺を中心に萬福寺、法蔵坊を塔頭として一大勢力を築いていたことが窺える。現在の萬福寺は本堂と庫裡が残されており、棟札は笠岡市の主要文化財に指定されている。

『高野山真言宗備中寺院めぐり』より