大藤山 弘方寺 (笠岡市神島外浦字西大藤833)

本尊 弘法大師

開基 昭和五十五年山本浄心尼

除災招福一開運のお大師像を祀り、浄心尼が開基

 笠岡市街から神島大橋を渡り、外浦へ向かって走ると、右手に幟の立った大藤山弘方寺がある。同は先代住職の山本浄心尼が昭和五十年に開基した新寺であるが、除災招福・開運の弘法大師の霊場として日夜、祈祷が続けられている。
 浄心尼が同寺を開くきっかけは、本尊の弘法大師像との法縁である。この大師像は狩野探幽(1602−74)が四十一歳の時に描いた尊像を京都の仏師が寄木造りで彫刻したものである。これまで何度も災厄から逃れた霊験があり、以来、除災招福、開運のお大師さまとして信仰されてきた。
 この大師像は浄心尼の夫・哮氏が神戸在住の時、近くの神社の宮司から偶然に修復を依頼されたもの。明治の廃仏殿釈から逃れるために信者の手で隠されていたという。やがて、戦争で修復に手をつける暇もなく、疎開先の白石島鳥で預かっていると、神戸の神社は空襲で全焼。残ったのはこの大師像だけとなった。戦後、修復が進み、四十八年に神戸の神社に行くと、宮司は「あなたと三十年以上の縁があるのだから、お祀りして下さい」といわれ、同年五月浄心尼が高野山で得度。神島へ安置することになった。
 以来、現在の地で安置し、護摩供養を行なっているが、その霊験には枚挙に暇がない。
 現在、浄心尼は引退し、山本忠徳住職が二代として、護摩を焚き信者の相談に応じながら祈願を続けている。また、近くには神島霊場第二十番札所もあり、同寺も平成五年に開創した中国楽寺三十三カ所観音霊場第十二番札所にもなっており、四季を通じてお遍路さんで賑わっている。

年中行事

1月元旦 初護摩祈祷 2月3日 節分星祭
7月土用 きゅうり加持 8月7日  施餓鬼会
12月大晦日 越年祈祷 その他、春秋2回高野山、四国、西国巡拝
毎月第四日曜日 不動祭  

『高野山真言宗備中寺院めぐり』より