観音庵 (笠岡市神島内浦1681)

本尊 十一面観世音菩薩

観音・大師信仰を集め、遍路が絶えない

 笠岡市街を抜けて国道2号線から神島方面へ入り、神島大橋を渡り、厄除神島大師像前の交差点を左に入ると、山の中腹に本堂の甍が二つ見えてくる。手前が第八十三番の自性院でその右手が第八十一番の安養院である。どちらというと、小さなお堂が多い神島霊場の札所の中で、このニヵ寺は威風堂々としている。
 そこからさらに進み、寺間という地の手前の山の中腹にあるのが第八十六番の観音庵である。自性院が元あった地で、山門、本堂、庫裡、鐘楼堂などが整然と並び、境内の石仏があり、遠くは笠岡市街を望むことができ、巡拝の疲れを癒してくれる。
 開基や縁起は不詳であるが、自性院は一端、青島という地に移り、さらに海沿いに移転し、万治元年(1658)に現在地に鎮まった。観音庵は自性院発祥の霊跡でもある。本尊は十一面観音菩薩で秘仏。三十三年に一度のご開帳で、最近では平成四年に開扉され、多くの参拝者で賑わったという。
 観音菩薩は正式には「観世音菩薩」、あるいは「観自在菩薩」。世の中の人々の声(音)を、はっきりと見極め(観)、自在に救うという意味である。十一面観音は「六観音」の一つに数えられ、広大無辺の慈悲を象徴したものである。同庵では毎月十八日、本尊供が厳修され観音信仰を育んで今日に至っている。
 また、同庵は神島霊場の五十四番札所でもあり、観音信仰に加え、同行二人の大師信仰を集める札所で、四季を通じて一遍路が絶えることがない。

『高野山真言宗備中寺院めぐり』より