吉井山 成福寺 (井原市吉井町吉井2356)

本尊 大聖不動明王

開基 天平十一年行基菩薩

中興 天正年間真識

百メートルもある城壁のような石垣

 井原市から国道313号線を北上すると天神峡で知られる芳井町に至る。町の中心部を西に少し入った山手に吉井山成福寺がある。境内は城壁のような石垣で囲まれ、遠くから見てもすぐに分かる。石垣は、文久年間から慶応年間(1860年前後)に築かれたもので全長百メートル以上もある。
 成福寺は天平十一年(739)に、行基菩薩が自ら刻んだ観世音菩薩を安置して開基したと伝えられる。
 江戸時代初期には、成福寺を中心に金剛坊、西之坊、新坊(十輪院)、日南坊等支院数ヵ寺を有する本坊寺院として地方文化の向上に寄与してきたが、現在は成福寺と十輪院だけが現存している。境内の西側にある四間四面の観音堂は、今から約三百四十年前の万治二年(1659)に建立されたこれらの寺坊の総本堂であり、往昔の名残りをとどめている。
 成福寺の本尊は不動明王で県の重要文化財に指定されている。身丈八十八・一センチ、桧の一木造りで藤原末期の作である。破損が少なく当時の原型を良くとどめている貴重なものである。秘仏とされていて、十二年に一度、酉年の元旦のみ開帳されている。かって総本堂であった観音堂には西国三十三観音が安置されている。
 現在の本堂、庫裡、客殿等の建物は、弘法大師御入定千百五十年の御遠忌を機に建て替えられた。尚、芳井町に生れ、日中友好のため一生を捧げた日中友好協会初代理事長・内山完造氏は成福寺檀家の出身であり、その偉業をたたえ、同寺において永代に供養されている。
 境内には岡山県の植物文化財にも記載されている百日紅の樹がある。樹齢二百年で高さ四・五メートル、周囲が二メートルもあり、百日紅としてはかなりの巨木である。
 毎年八月十三日には、夕方からお盆の万燈供養会が行なわれ、境内墓地には二千本以上の蝋燭が灯され、幻想的な世界が広がる。

年中行事

正月 修正会 4月 花まつり
8月13日 盆供万燈供養会 その他年に1度酉年の元旦のみ秘仏本尊御開帳

『高野山真言宗備中寺院めぐり』より