米騒動と小作争議

 ・米騒動 大正6年米の全国実収高が全国民の消費高より下廻り、供給不足が原因で米価が昂騰の勢をみせた。そして需給の円滑をかき大阪堂島の初相場が大昂騰した。(1石当り25円12銭)。日清戦争後の米価が10円前後、日露戦争後が14、5円、大正の初期が20円程度であった。政府は買方が買占めすることに警告を発したが、尚暴騰を続け、1日に1円づつ上昇を続け、最高が50円まで騰貴したので政府は全国38ヶ所の取引所へ取引停止を命じた。かくして大正7年8月3日に騒擾の烽火はあげられた。それは富山県西水橋町の漁師の女房連300名が一団となって米屋を襲撃したことに始まる。ついで同県滑川町の女房連2000名が蜂起し米を掠奪した。それが富山に飛火し京都・大阪・神戸、そして8月11日から12日にかけて、近くは倉敷・早島・妹尾・撫川・庭瀬・総社等の各地で暴徒は商家を襲い、闖入暴行したとある。(『岡山県郡治誌』による)それに対しては岡山県は論告第二号を出した。大正7年8月18日付で、当時県知事は笠井信一であった。論告文は、次のようなものであった。
 「凡そ」騒擾暴動は其の原因の如何を問わず、情状重きものは刑法に依りて処断せられるべきは言を俟ず、米価の暴騰に対する生活難の危惧心に至りては素より同情を寄すべきものあれどども之が為正義を無視し、秩序を紊乱する行為は断じて容認することを得ず、殊に衆力を恃んで暴行脅迫、甚だしくは人を傷け火を放ち、国法を蹂躙して社会の基本を破壊するに至りては実に是れ不逞の乱民にして一歩も仮借する能はざるなり、同情と制裁は其の間截然たる区別あり(略・・・)故に新に県令を発して市街地に於て、5人以上の集団又は連行は違反者を処罰するのみならず此際内務省令警犯処罰令を励行し、極力秩序を保持する方針なれば左の条項を示し特に各人の注意を促す。
 1.公衆の自由に交通し得る場所に於て喧噪し横臥し又は泥酔して徘徊したる者。
 2.雑踏の場所に於て制止を肯ぜず混乱を増すの行為をしたる者。
 3.濫に他人の身辺に立塞り又は追随したる者。
 4.水火災其の他事変に際し制止を肯ぜずして其の現場に立入もしくは其の場所より退去せざる者、」
 
小作争議 大正7年の米騒動が勃発して、暴動化や民衆の示威運動の熱狂振り、あるいは大衆団結運動の威力を経験した小作者達は、封建時代からの権力による主従関係から、自由平等な人間的利益配分を問題とするようになって小作組合を設立した。その後、小作を中心とする農民運動は、集団的小作争議に進展してその数を増していったのであった。福田村の小作争議は大正10年に大福で作柄不況により小作料を2割減額、即ち1俵に付4升乃至6升減額で大正11年2月に決着した件がある。地主30名、小作人18名、36町余りに関するものであった。また、大正12年1月には、大福で小作料が高率であることに対して、永久小作料相当減額を要求して大福小作組合を結んで争議下。地主25人、小作人299人で269町歩に関する争議であった。
 参考までに明治以降の米価の移動と人夫賃(日当)をあげておく。

 (1) 明治以降、米価の移り変り      (単位:60kg)

米価 米価 米価 米価
明治元年 1円69銭2厘 明治12年 2円66銭4厘 明治23年 2円04銭 明治34年 3円80銭
2 1円74銭4厘 13 4円8銭 24 2円64銭 35 4円96銭
3 1円45銭6厘 14 3円28銭 25 2円28銭 36 4円36銭
4 1円11銭6厘 15 2円10銭 26 2円66銭4厘 37 4円32銭
5 84銭 16 1円24銭8厘 27 2円86銭 38 5円28銭
6 1円20銭 17 1円84銭 28 2円88銭 39 5円28銭
7 1円87銭2厘 18 1円72銭8厘 29 4円 40 5円72銭
8 2円5銭2厘 19 1円55銭2厘 30 4円12銭 41 5円36銭
9 1円17銭6厘 20 1円51銭2厘 31 3円28銭 42 4円
10 94銭4厘 21 1円43銭2厘 32 4円 43 5円36銭
11 1円92銭 22 2円 33 3円76銭 44 6円16銭

米価 米価 米価 米価
大正元年 8円32銭 大正5年 6円 大正9年 10円 大正13年 15円32銭
2 7円28銭 6 8円48銭 10 14円20銭 14 15円92銭
3 4円32銭 7 14円60銭 11 10円20銭    
4 5円12銭 8 20円 12 12円40銭    

米価 米価 米価 米価
昭和元年 13円96銭8厘 昭和13年 13円 昭和25年 2540円 昭和37年 4866円
2 13円54銭 14 15円20銭 26 2976円 38 5268円
3 10円80銭 15 15円20銭 27 3454円 39 5985円
4 10円 16 17円20銭 28 4273円 40 6538円
5 8円 17 19円60銭 29 4003円 41 7140円
6 7円20銭 18 19円60銭 30 4064円 42 7797円
7 7円 19 18戦80銭 31 4028円 43 8256円
8 8円72銭 20 60円 32 4129円 44 8256円
9 9円60銭 21 120円 33 4129円 45 8272円
10 10円40銭 22 680円 34 4133円 46 8522円
11 11円20銭 23 1436円 35 4162円    
12 12円 24 1887円 36 4421円    

 (1) 人夫賃の日当
 明治40年頃の賃仕事
 大  工  1日  金九十五銭
 左  官  1日  金九十五銭
 石  工  1日  金壱円弐拾銭
 人夫賃  1日  金五拾銭乃至六十銭
 農夫常備
  男1ヶ年     金六拾円
  女1ヶ年     金弐拾円
 農夫日傭
  男 1日     金五拾銭
  女 1日     金弐拾銭
  農繁期   男 壱円      女 五拾銭
  農閑期   男 四拾五銭   女 弐拾銭