気  候

次のような諺が昔から言い伝えられている。
 汽車の汽笛がよく聞こえるから雨が近い。
 太陽に傘ができると雨が降る。
 秋の夕焼けは鎌をとげ、春の夕焼けは蓑
(みの)を出せ。
 朝雷は大水
(おおみず)のもと。
 朝虹は雨のもと、朝曇は天気。
 法華のお講がくると寒くなる。
 東風
(こち)は雨となる。
 雨蛙が鳴けば雨になる。
 雷が鳴れば梅雨があける。
                  等々

 これらは、空のようすや自然のようすをみて体験的に天気を占ったことを示している。
 測候所の天気予報もあたらなかったようで、それを皮肉
(ひにく)ったことに次ぎのようなエピソードがある。
 ある人が、渓流で水を飲もうとした。ちょうどそこに居合わせた老婆が「なま水を飲むと腹痛をおこすから、おまじないをして飲みなさい」といって教えたそうだ。まず水を掌に汲んで、測候所、測候所、測候所といって息を三回ふきかけて飲めばよい。というのである。つまりそれ程、当時の天気予報はあたらなかったと言うことである。
 前述した観天望気は、必ずしも、福田村のみのものではなく、広く言い伝えられていたようである。

1.気温・風雨
 岡山県は、気候の点から見れば、温帯のうちの温暖湿潤気候に属している。そのうち、私達の郷土は、日本の中の気候.区分でいえば瀬戸内気候である。
 とくに夏はむし暑く、夕凪は特徴的でしのぎにくい。年較差は約二十五度あって、瀬戸内気候の中で、較差の大きい地域になっている。雨量は日本列島の中でも少ない方である。
 一年間の各月の平均気温と月降水量の関係を一つのグラフにして示すと(題6図)のようなものが得られる。

第6図 岡山のクライモグラフ

  一月 二月 三月 四月 五月 六月 七月 八月 九月 十月 十一月 十二月 全年
温度℃ 3.3 4.0 7.1 13.0 17.5 21.4 26.8 27.0 22.7 16.2 10.7 5.7 14.5
雨量mm 39 48 79 107 131 185 183 96 168 98 58 35 1218

  一月 二月 三月 四月 五月 六月 七月 八月 九月 十月 十一月 十二月 全年
日最高気温の
月平均値℃
8.8 10.1 13.2 18.7 22.7 26.3 29.9 31.7 27.5 22.4 17.5 12.1 20.1
日最低気温の
月平均値℃
-10.8 -10.5 2.3 7.1 11.8 17.0 22.2 22.9 18.5 11.2 5.4 1.0 9.8

 気温の最高及び最低気温
最高値  37.1℃ 1942年7月24日
最低値 -18.9℃  1963年1月24日          

 降水量の最大記録
日降水量 177mm 1892年7月23日

 月間の日照時間(単位平均)

  一月 二月 三月 四月 五月 六月 七月 八月 九月 十月 十一月 十二月 全年
時間 150 155 191 208 225 194 222 250 182 183 172 100 2302
第7写真 一面藻の群生した寺池

 月平均湿度

  一月 二月 三月 四月 五月 六月 七月 八月 九月 十月 十一月 十二月 全年
72 71 71 71 74 77 80 78 70 77 77 74 75


 風速最大記録
最大風速    25.8m/s  南東   1896年8月18日
最大瞬間風速 35.2m/s  南南西 1954年9月26日

 月別最多風向
1月 西     4月 東     7月 東     10月 北

2.月別天気日数

  一月 二月 三月 四月 五月 六月 七月 八月 九月 十月 十一月 十二月
快晴 14 10 10 9 7 4 5 8 6 11 13 12
晴れ 3 3 3 4 2 3 5 6 3 5 5 4
曇り 12 12 13 12 16 17 17 14 17 11 10 11
2 4   3 4 5 4 2 4 3 3 3
                       
その他 1     1 1 1 1 1 1 1 1 1

 年間の寒暖日数
最高気温が30℃以上の日  51日
最低気温が 0℃未満の日  61日
               (理科年表、岡山県統計年表による)

3.凪の現象
 岡山を中心とした瀬戸内海一帯に凪の現象がおこるということはすでにのべた通りであるが、普通、真夏でも太陽が沈む頃から涼しい風が吹いてきて一日の暑さをいやしてくれるはずなのに、この地方一帯は、夕方になるとともに風が止まり、むし暑い数時間が経過する。これを夕凪と言っている。そして夜がふけたころになってようやく風がふきはじめるのである。また、太陽の昇るころ、再び凪の状態になる。これを朝凪とよんでいる。このような状態が朝夕起る。これを「備前の凪」と呼んでいる。
 この凪の現象は、海面上と陸上の気圧が同じになり、空気が動かなくなって無風状態になるので起るといわれている。こんな時には、寝つかれないままに一畳台(涼み台)の上で涼をとりながら、うちわでバタバタと蚊を追う風情があちこちで見受けられる。