建築士の業務



建築士の業務は,これを区分すれば次のようになります。

           1.調査・企画業務
           2.設計工事監理業務
           3.設計・工事監理業務に関する追加業務
           4.特別業務


以上のうち

2.の設計・工事監理業務は建築物の質を確保するために,通常必要と考えられる業務であり,これを通常業務とします。

1.の調査・企画業務、および、3.の設計・工事監理業務に関連する追加業務は,通常業務には含まれませんが,それに関連して委託者の依頼に応じて追加して行なう業務で,これらを迫加業務とします。4.の持別業務は,以上の業務のほかに建築物に関して別途に依頼される業務です。



1.調査・企画業務

委託者は,設計.工事監理業務を依頼する際して,建築士に対し基木的な設計条件を提示することが原則です。しかし,それら基本的な設計条件が碓定していない場合には,建築士は委託者の求めに応じて,それを確定するために委託者の企画について,建築士としての知識,技術をもって法律的,技術的調査・検討を行ないます。

1.敷地条件、環境条件等の調査・検討
2.関係官庁との法律的、技術的な協議
3.企画についての予算的検討、全日程の検討
4.資金計画等に関する協力
5.敷地測量、地盤調査への協力
6.以上各項の調査・検討に基づく調査報告書、企画説明図書等の作成


2.設計・工事監理業務

設計・工事監埋業務とは,委託者の意図する企画の実施が決定し,設計の前提となる基本的条件が確定した段階で建築士が依頼を受けて,その確定した条件に従って,委託者の要求する機能と空間を実現するために行なわれる業務で通常,基本設計,実施設計,工事監埋の段階にわけて行なわれます。また,建築士が行なう設計・工事監理業務は広い範囲の知識,技術,能力を要求されるため,全段階を通じ,各分野にわたる専門家の協力によって遂行されます。専門家はその主たる専門技術,知識によって建築,構造・設備に大別されます。

ここにいう建築とは,建築物の空間構成を計画するほか,各専門技術者の行なう業務を総合的にまとめる業務をいい,構造および設備の業務とは,それぞれ各専門分野における業務をいいます。


2.1基本設計

基本設計とは,与えられた条件により,建築士がその知識,経験に基づき設計方針を定め,建築物の全体像を確立する建築設計・工事監理の基本となる業務であり。建築士が委託者と協議の上,委託者の意図を十分理解し基本構想をまとめ,その基本構想に基づいて,次の実施設計で各分野の業務が支障なく進められるように主要な技術的検討を行ない、建築物の空間構成を具体化する段階であって,次の内容からなります。

l)基本構想に関する協議

委託者と十分な打ち今わせを行ない,必要に応じ関係官庁や専門技術者と協議し,法律的,技術的な検討を行ない,基本構想を提示する。

2)基本設計図の作成

基本構想に基づき,具体的に建築物の配置,平面、立面,断面,仕様概要書の計画案を作成する。

3)計画説明書の作成

計画の概要(建築・構造・設備)については,必要に応じ計画説明書を作成する。

4)工事費概算書の作成(施工業者の指定がない場合)

基本設計に基づき,建築物の面積,規模および内容等による工事費概算書を作成する。


2.2実施設計

実施設計とは,前記の基本設計が委托者に承認された後,それらに基づいて.工事の実施に必要であり,施工者が工事費内訳明細書,施工図の作成に必要で十分な設計図書を作成することをいい,次の内容からなります。

1)実施設計図書の作成

a)敷地案内図,配置図,各階平面図,立面図、断面図、詳細図等の建築設計図

b)伏図,軸組図,各部材断面表詳細図等の構造設計図および構造計算書、電気,給排水衛生,空調換気,その他所要の設備設計図および計算書

2)仕様書の作成

3)工事費概算書の作成

実施設計図に基づき,建築物の面積,規模および内容等による工事費概算書を作成する。

4)建築基準法に基づく確認申請書手続きへの協力

確認申請に必要な設計図書の作成ならびに保存を行なう。


2.3工事監理

工事監埋とは,設計意図を実現させるため,施工図等を検討・承諾し,工事の確認を行なう業務である。また,工事監埋業務として通常あわせ行なっている建築士法21条の「その他の業務」も工事監埋の一部とみなし,この業務に加える。

1)工事監埋

a)設計意図を施工者に正確に伝える業務

b)施工図書の照合・承諾工事の確認・報告

d)工事監理完了報告

2)工事の契約および指導監督に関する建築士法第21条の「その他の業務」のうち,工事監理業務として通常あわせ行なわれている業務工事請負契約への協力

b)工事費支払審査・確認

c)施工計画の検討


3.1設計・工事監理業務に関連する追加業務

2.1に述べた業務は,設計・工事監理業務として通常必要とされている業務であるが,その外に委託者が特別に要求するか,建築士が必要と判断し委託者が合意した上で行なわれる次の追加業務があります。

1)開発許可申請等,都市計画法,建築基準法,その他法令に基づく申請に関する業務

2)日照(日影等,環境問題についての会議のための専門技術の提供、聴会,説明会等  への出席およびこれに必要な図書類の作成

3)特定街区,総合設計に関する業務

4)建築審査会,構造審査会等への資料作成,および審査等に関連する業務

5)近隣構造物の調査に関する業務

6)特殊な技術の提供

  高度の設計・解析を行なうにあたり,スーパーコンピュータの使用を必要とする技術また  は特別な実験・測定を必要とする技術の提供

7)設計契約が複数の場合の総合調査

8)模型,透視図の作成

9)工事費内訳明細書の作成

l0)請負工事契約が複数の場合の調整

l1)現場常駐監理者の派遣

12)委託者の都合、その他の与条件の変化等による設計変更の処理

13)現場、工事における特株な作業方法.仮設方法および、工事用機械器具について  の検討・助言

14)竣工図の作成

15)海外または特殊な条件での業務

16)その他


特別業務

特別業務とは,下記の業務その他をいう。

l、地域計画に関する業務

a)都市計画

b)団地計画

c)公園・緑地計画

2、建築物に関する調査鑑定業務

a)建築物の現状概要調査,経過年数ならびに耐用年数の調査推定

b)建築物の実測調査

c)建築物の防災予防診断

d)建築物の補修,補強箇所の指定

e)建築物の利用価値の認定ならび評価・鑑定

f)建築物の災害調査,構造強度の鑑定

g)特殊建築物定期調査報告

3、手続代理業務

a)建築基準法関係の建築確認申請の手続き

b)住宅金融公庫法関係の建築設計審査手続き

c)建築資金融資の申請手続き

4、諸調査業務

a)建築の経営および企業に関する基礎的調査

b)敷地の測量,地質調査,その他特別の調査

c)構造,音響,空気調和,機械装置,村料等に関する特別な技術的研究、実験的調査または理化学的試験