基本的に速めのテンポを採用し、音符が詰まっている箇所は一層加速して一気に聞かせようとしています。しかしシュトラウスは、時として音符のひとつひとつにさまざまな音価を与えて、ニュアンスの移り変わりを克明に表現する手腕に長けていて、例えばオペラにおいて
登場人物の瞬間瞬間の心の動きを伴奏のオーケストラが微細に表わすことがあります。アルプス交響曲では歌がないだけに、オーケストラの技量と設定したテンポからするとこの演奏ではシュトラウスの期待に応えることはかなり難しいかもしれません。「嵐」の後の「終末」では、高音域での繊細なヴァイオリンの長いフレーズを比較的大きめの音で弾かせていますが、この解釈はどうもしっくりきません。やはりスコア通り
p (ピアノ=弱音)で演奏すべきでしょう。