バレエ音楽用語ガイド

    

 ここでは、19世紀後半のクラシックバレエにおける用語、とりわけ『眠りの森の美女』における曲名について解説をします。
 一般的に、音楽における名称と同じものを使用していても、バレエでは別の意味で使われていることが多いので注意が必要です。



アダジオ(アダージュ)  Adagio(Adage)
音楽では「ゆっくり」の意味ですが、バレエ用語では下記2つの意味を持ちます。
1、プリエ、ルルヴェ、ピルエット、デブロッぺなど跳躍を含まないパで構成されゆっくりした動きで行うエクササイズのこと。
2、女性が男性に支えられて踊るゆるやかな踊り。
『眠りの森の美女』のいわゆる「バラのアダージョ」として有名な曲は2番目の意味として使われています(第1幕パ・ダクションの中のアダージョ)


アポテオーズ Apotheose
 大詰めの音楽。大円団。


コーダ coda
 パ・ド・ドゥ(下記参照)の最後に踊られる男女の大技の競演。物語の大団円の部分。


コール・ド・バレエ Corps de ballet
 群舞を踊る集団、またはその踊り手。そのバレエ団の実力を見せ付ける踊りそのものも意味します。


パ Pas
 歩み、ステップ、歩調といった本来の意味から様々な使われ方をしますが、曲名に使われるのは「踊り」という意味になります。


パ・ダクシオン Pas d'action
 芝居の情景、筋の運びの踊り。19世紀後半のクラシックバレエ形式できわめて重要な踊りとされています。当時のバレリーナは優れた踊り手であると同時に優れた役者であることを要求されていて、この踊りで自ら持つすべての力量を誇示しました。『眠りの森の美女』でも、初めてオーロラ姫が登場するのがこのパ・ダクシオン(有名な「バラのアダージョ」を含みます。)で、彼女の幻がデジーレ王子の前に姿を見せるのもパ・ダクションです。


パ・ド・ドゥ Pas De Deux
 直訳すると2人の踊りの意ですが、通常は男女の主役を演じる二人の踊りという意味です。それぞれが名人芸を誇示できるように特別な振り付けがなされている踊りで、特に華麗で技巧に優れたものをグラン・パ・ド・ドゥと呼び、通常のものと区別します。チャイコフスキーと組んで『眠りの森の美女』を創りだしたプティパによって完成されました。厳格な構造を持っていて、
1.アントレ(導入部)
2.アダージョ
3.ヴァリアシオン
4.コーダ
からなります。アダージョは、女性の見せ場です。男性が女性の体を支えることが多く、女性の身体が描き出す調和の取れた優美な線を披露します。ヴァリアシオンは、男性、女性の順位それぞれひとりずつ踊ります。軽快で高度な技巧を伴う短い踊りからなります。コーダは、最初男性が踊り、次に女性が加わり非常に速い動きで跳躍や回転を行なう踊りです。高度テクニックの見せ場となり、バレ全曲のクライマックスとなります。


パ・ド・カトル Pas De Quatre
 4人の踊り。通常は女性の4人の踊り。


パ・ド・シス  Pas De Six
 6人の踊り。


パ・ドゥ・カラクテール、キャラクテール Pas De Caractere
 ある特定の物語を表わす踊り、芝居がかった踊り、あるいは喜劇的な要素を持った踊り。地方色を濃くしたりその場の変化を与えたりするために、民族舞踊を加えたものもあります。『眠りの森の美女』では、原作者のペローにちなんで「長靴を履いた雄猫と白い雌猫」、「シンデレラとフォーティネ王子」、「青い鳥とフロリナ王女」、「ちいさな赤頭巾と狼」「一寸法師とその兄弟と人食い鬼」がパ・ドゥ・カラクテールとして取り上げられています。


ヴァリアシオン Variation
 音楽では、ヴァリエーション、変奏曲の意味ですが、バレエではソロの踊りのことを言います。


<参考> 

基本数詞(バレエ用語は基本的にフランス語です。)
1 un アン
2 deux ドゥ
3 trios トロワ
4 quatre カトル
5 cinq サーンク
6 six シス
7 sept セット
8 huit ユイット


リフト Lift
 持ち上げること、(気球などを)上げること
男性ダンサーが女性ダンサーを持ち上げること フランス語ではアンレブマンEnlevment


チュチュ tutu
 元の意味は、お尻、スカートのこと。女性舞踊手が着るスカートの衣装。腰まわりだけの丈の短いものをクラッシック・チュチュ。ジゼルのように丈の長いものをロマンチック・チュチュという。パリ・オペラ座ではチュチュと呼ばずにジュポナージュ、ロシアではパシュカと呼んでいる。


エトワール etoile
 星、スター。そのバレエ団の頂点に立つスターのことです。


タイトル・ロール
 外題役。例えば『眠りの森の美女』のオーロラ姫役のこと。


ディヴェルティスマン Divertissment
 気晴らし。物語の進行とは関係のない踊り。


{ 終わり }


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